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轟音

嫌いだった地元を圧倒的な希望として描きたかった。映画『轟音』初日舞台挨拶

2月15日、にて、映画『轟音』初日舞台挨拶が行われ、安楽涼、太田美恵、大宮将司、岸茉莉、中山卓也、松林慎司、柳谷一成、片山享監督が登壇。1週間で撮影した辛い現場を笑い話として披露した。
本作は、俳優 片山享による初の長編監督作品で、国内の多数の映画祭にて観客を沸かせた実績を持つ。主人公の誠役は『1人のダンス』にて監督・主演をつとめた気鋭の安楽涼が熱演。その他にも実力ある俳優陣が集結し、俳優出身の監督だからこそ描ける嘘のない芝居が魅力の作品となっている。

池袋シネマ・ロサでの上映は2月28日(金)までの2週間限定レイトショー(20:30~)。
また、連日イベントが行われるので、詳しくは下記ページをチェック。
http://www.cinemarosa.net/goon.htm

轟音

舞台挨拶レポート

嫌いだった地元を圧倒的な希望として描きたかった

片山享監督
僕は福井県の出身です。昔、福井県がものすごく嫌いで、東京に飛び出してきました。それがいろいろなことを経験して、福井の見方が変わっていきました。言い方が悪いのですが、以前、地元・福井は僕にとって絶望の土地でした。
けれど、その土地に住む人は一生懸命生きていて、ある時、僕はその人たちを愛おしく思えてきました。そして、自分が映画を撮りたいと思った時に、かつて絶望だと思っていたその土地で生きる人たちを描いたら、圧倒的な希望になるのではないかと思って、この映画を撮りました。そうして出来上がったのが、この映画です。
僕は、希望の映画だと思っています。撮影はとてもタイトで、このメンバーが実際に福井に行って撮影しました。
一週間くらいの撮影でしたが、福井の人たちには本当に良くしていただきました。

中山卓也
福井出身の片山さんが『轟音』を語るときに、福井が絶望の土地だっていう風に表現されています。僕も出身が同じですが、福井はめちゃくちゃ良いところです。幸福度ランキングで福井は1位になるくらい、幸せの土地なんです。それが、このような映画になるっていうのは、「えー!?」っていう感じです。まさか、こんなに暗い映画になるとは思いませんでした。

撮影期間は1週間

◆深夜に及んだ撮影

安楽涼
大変だったのは、東京から福井まで大宮さんと交代しながら8時間も、ずっと車の運転をしたことです。

片山享監督
主演(自ら)が車両部(も担当していた)ってことね(笑)
そういえば、“商店街で寝る”という。あり得ないことがありましたね。
借りていた宿のオーナーがとてもいい人だったのですが、僕が出演者を連れまわして夜中まで撮影しているのが許せなくて、夜中の3時くらいに撮影現場に乗り込んできたことがありました。「お前は何をやっているんだ。明朝は何時から撮影をするんだ」って言ってきて、「朝6時からです」って答えたら、「ここで寝ろ」と言いだして、オーナー自身が率先して、商店街のその場で寝始めたので、4時から6時まで、安楽・大宮の二人で寝ましたね。

安楽涼
疲れ過ぎていたので、寝られればどこでもよかったです。

轟音

安楽涼、片山享監督

太田美恵
本当に男性陣は帰ってこないなと思っていました。
朝、ガサガサという音がすると、片山さんが帰ってきているなぁ、起きているかなと、確認しに行きました。
そんな状態なので、当日の朝にならないと、その日のスケジュールが分からなかったのを覚えています。こんな経験は初めてで、二度とやりたくないなと思いましたね(苦笑)
ぁ、それで毎回いらしていたんですね。

轟音

太田美恵

片山享監督
なにかいい話はありませんか?(汗)お芝居に関してとか?

太田美恵
私は、片山さんとじゃなかったら、ひろみにはたどりつけなかったと思います。
それはかけがえのない経験でした。
すごくタイトな環境で撮影している中で、片山さんは私がまだ準備ができていないのを見抜いてくれていて、待って時間を与えてくださいました。
どういう風にすれば、いかに嘘をつかずに芝居ができるかを片山さんが分かってくださっていて、言葉をとても選んで、私を導いて下さいました。

片山享監督
いま、“嘘がない芝居”っていう言葉がでてきましたが、僕が演出する中で大切にしていることがあります。僕は嘘の芝居が嫌いなんです。芝居自体が(事実ではないという意味では)嘘なので難しい部分がありますが、自分の生理に対して反することをして欲しくないというのがあります。その点を徹底しました。

◆辛かったけれど、思い出は笑い話に

大宮将司
撮影は大変でした。良ったことを思い返してみようとしたんですけど、思いつかないですね(笑)
まぁ、現場で辛いなと思った時って、後で笑い話になるような現場だったってことで楽しいですよね。辛いだけで、出来上がりも最悪だったら、楽しい思い出にもならないじゃないですか。今回は、やり切った感があったし、出来上がったものを観て、思い出話に出来たのが良かったと思います。

轟音

大宮将司

◆徐々に痩せていく男性陣

岸茉莉
私はぬくぬくとしながら撮影させてもらいました。それに反して、男性陣は。1日目、2日目と日にちが進むにつれて徐々に痩せていくのが分かりました。片山さんの場合は、役としてシーンの繋がりがあるので、(浮浪者の男役ということもあり)髪の毛や汚れがひどくなっていって、毎朝、片山さんの姿を見るたびに、ビックリしたのを覚えています。

轟音

岸茉莉

片山享監督
毎朝、「僕、臭くないですか?」って聞いていましたね。

岸茉莉
臭いは大丈夫でした(笑)
あと、寝ていたら、大宮さんのイビキが聞こえてきて、帰ってきたことが分かって、あぁ、寝られたんだなってことで安心したのを覚えています。

安楽涼
大宮さんの隣のベッドで寝ていたんですけど、寝られるわけがない音量なんです。

大宮将司
「またまたぁ(笑)」

◆身の危険を感じた撮影現場

中山卓也
撮影の中で一番印象に残っていることは、波打ち際に停めた赤い車の中でのシーンを撮影した時のことです。
海がものすごい荒れていて、地元の人間からみて、波のヤバさがわかるんです。片山さんに、「今日の波はさすがにヤバいです。やめましょう」って伝えたんですが、ちょっとイラつきながら、「大丈夫」って言われました。それくらい真剣になって撮影していたんだなって思いました。

轟音

中山卓也

片山享監督
あの雨がすごくよかったんです。
雨の中で守られているっていう感じだったので、ワンカットで撮りました。すごく優しい雨だなと思っていました。

中山卓也
あのシーンにはぴったりでしたね。でもすごい波でした。正直殺す気かと思いました。早く終わればいいのにって思いました。

◆至近距離で鳴り響く“轟音”

柳谷一成
僕は、そんなに出演シーンがなくて、3日間くらいだったと思います。寝る所はみんな同じところで、男性、女性で分かれていました。
1日目、2日目と大宮さんの横で寝ていたんですが、すごい怖い体験をしました。
朝、目覚めると、大宮さんの顔が目の前にあるんですが、これがめちゃくちゃ怖いんです。
でっかいガマガエルの幽霊が出たって思いました(笑)
常に僕のそばで“轟音”は鳴り響いていました。

轟音

柳谷一成、中山卓也、岸茉莉、大宮将司

大宮将司
「地獄や!生き地獄とはこのことや!(笑)」

◆強風とひまわり

片山享監督
松林さんは山口県出身ですが、福井の映画に一緒に出演されていかがですか?

松林慎司
福井の皆さんはあったかいですよね。「お久しぶりです」っていうと、「おかえりなさい」って返事をくれます。
それが印象に残っていますね。あと、食べ物がおいしいとか。でも、片山さんが、空がどんよりしているとかいうのは、いまいちよくわからないです(笑)
先ほどの中山さんの話にもあったように、撮影時、台風が来ていたじゃないですか。それが、撮影していて大変だったと思いますが、スクリーンを通してみたら、味方になっていたことを感じました。風が強くて、お墓の前で花をお供えしたひまわりの花が、風で横を向いてしまうのを正面に向けるシーンは、ひまわりがあたかもあなたのことを見ていないですよという感じがして、すごい切ない気持ちになりました。

轟音

松林慎司

◆記憶に残るトラウマ

安楽涼
今日、劇場で改めて観て、鮮明に思い出したのが、母親のあるシーンで、トラウマを覚えたことです。役柄の誠としてではなく、自分自身の母親を思い出してしまったんです。それが原因でしばらく立てなくなりました。テンションがものすごく堕ちてしまいました。

片山享監督
それは、現場でも言っていましたね。実の母親にしか見えなくて辛いとか、すごくホームシックにかかったとか。

安楽涼
あの時に、片山さんからの演出で声を出すなって言われました。そこで耐えていたら、、オシッコを漏らしてしまうんじゃないかってくらいの状態になっていました。限界が来て叫んだら終わった感じでした。そこから放心状態になっていたのを思い出しました。

◆キスシーンのエピソード

片山享監督
安楽さんには、役者だけじゃなく、スタッフとしても働かせてしまって、申し訳なかったですね。

安楽涼
でも、大宮さんと太田さんのキスシーンを撮影出来たので大満足でした。

片山享監督
あのシーンでは、8テイクくらいやりましたよね。

太田美恵
永遠に終わらないんじゃないかって思いました。
あと、カットをかけていないのに、もうこちらをみていなくて、Sだなと思いました。

片山享監督
あのシーンは、スタジオでガラス越しだから、僕と役者の間で声が通らないんですよね。
撮影している安楽の隣にいましたね。

太田美恵
なにか二人で相談している感じがみえましたね。でもカットがかからなくって、どうしようっていう。

監督からのメッセージ

片山享監督
苦労して1週間で撮影して、こうやって劇場で上映できるっていうことはとてもありがたいことです。
こんな風に、ひどいと思ったことでも笑い話にしてくれるっていうのは、出演者みんながすごく仲が良いってことなんですけど、そうでなければ、誰かが去ってもおかしくない現場でした。
僕一人だけが撮り切れると思っていたのですが、後から聞いた話だと、誰もそうは思っていなくて、「早く言ってくれればいいのに」って伝えたら、そんなの言えるわけないでしょっていう言葉が返ってきました。それでも撮り切って、上映できてありがたいと思っています。
作品に対して、賛否はいろいろあると思いますが、感じたことがありましたら、2週間レイトショー上映しているので、SNS等で発信していただけたらと思います。

轟音

片山享監督

映画『轟音』

あらすじ
ある日、誠(安楽涼)の兄が犯罪を犯した。
それを苦にした父は自殺し、誠は母親に助けを求めたが、母は助けてはくれなかった。
誠は家を飛び出し、自分を傷つけてくれるものを探した。
そして、一人の浮浪者に出会う。
彼との出会いをきっかけに、誠の生と向き合う音が静かに響き始める。

クレジット
出演:安楽涼、太田美恵、大宮将司、岸茉莉、中山卓也、柳谷一成、松林慎司、片山享、宮田和夫、他
プロデューサー:夏井祐矢・宮田耕輔 脚本:片山享 撮影/照明:深谷祐次 録音:マツバラカオリ 特殊メイク:北風敬子 編集:片山享 サウンドディレクター:三井慎介 カラリスト:安楽涼 監督・脚本:片山享
2019/日本/99分/カラー/16:9/ステレオ/DCP

公式サイト:https://www.go-on-film.com/

池袋シネマ・ロサにて2週間限定レイトショー公開中 ほか全国順次公開

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