• HOME
  • News
  • インタビュー , 映画
  • 【監督&キャストインタビュー】映画製作実現までの“長い道のり”。TV業界30年、今も報道に携わる屋良監督の思いとは?
かくも長き道のり

【監督&キャストインタビュー】映画製作実現までの“長い道のり”。TV業界30年、今も報道に携わる屋良監督の思いとは?

映画『かくも長き道のり』(2/13公開)より、映画初主演となる北村優衣、25歳年上の恋人役・デビット伊東。そして、テレビ界に身を置きつつ、抱き続けた映画制作への思いをついに実現した屋良朝建やらともたけ監督に、撮影時のエピソードや本作への思いをたっぷりと語ってもらった。(ビデオメッセージあり)

北村優衣は、「レプロ次世代スターオーディション」(2013)で見いだされたのち、テレビ(「日立世界ふしぎ発見!」、「女子グルメバーガー部」)、映画(『シグナル100』『13月の女の子』)への出演など、今後の活躍が期待される女優。本作では、撮影当時の自身と重なる駆け出しの女優・椎名遼子役を演じている。
その相手役となるのは、芸歴33年を迎えるデビット伊東。劇中では25歳差の恋人・村木順次役を演じ、作品内にとどまらず撮影中も北村を支えている。近年では、『図書館戦争』、『臨場』などに出演し、性格俳優として評価される実力派だ。
監督は屋良朝建(やら ともたけ)。30年以上テレビ現場の最前線にいて、今も現役の報道番組プロデューサーとして活躍している。

北村優衣 × デビット伊東 × 屋良朝建監督 インタビュー

■ビデオメッセージ

■テレビ業界で30年。抱き続けた映画制作への強い想い

映画制作に至るまでの経緯

-屋良監督に質問します。テレビ業界で30年以上過ごされて、ついに初めて映画を制作されての感想はいかがでしょうか?

屋良朝建監督
私は若い頃から映画を作りたい気持ちがありました。東京に出てきたのですが、うろうろしていても仕方がないので、当時バブルが最盛期で勢いのあったテレビ業界に入りました。そこで夢中になってテレビマンを続けていたら何十年も経ち40歳後半になっていました。
そこでふと思ったんです。「自分はテレビマンとして割と幸せだったけど、このまま映画が好きで撮りたいという気持ちを持ち続けたまま終わるのか?映画が作りたくて東京に出てきたんじゃないのか?」と。
そこで一念発起して、「じゃぁ、やってしまおう!」と思い立ち、シナリオを書いて賞を獲り、それを映画化するという流れを考えたんです。ただ、そこから賞を獲るまでに2年かかりました。でもこの考えは一度失敗しているんです。賞を獲った作品を映画化するのが一番良い方法だろうと思って映画祭で奨励賞を獲り、映画を撮り始めたのですが、予算がかかり過ぎて頓挫してしまったんです。

北村優衣
そのシナリオを読んでみたいですね。

屋良朝建監督
そこからまた、賞を獲ろうと思ったのですが、世の中そんなに甘くはなく、さらに2年くらいかかりました。なので今回は現実的に映画が撮れることをまず考えました。
すると実際に映画を撮り始めたら、自分が本当にやろうと思ったことがスクリーンに出てくることを感じました。映画制作が動き始めると、まるで生き物のように歯車が動き出し、廻って行く中で北村優衣さんと出会いました。その流れは、現実にある劇場のスクリーンに向かって突き進んでいくかのようで、情熱を持ち続けていれば、そのまま進んでいけると思いました。
自分自身は演技指導の経験は全く無く、うまくいくわけがないのですが、役者の皆さんのおかげでうまくいきました。これは映画を観ているときにも思ったことですが、映画は一人で作るわけではなく、みんなの力を結集するものだということがわかりました。映画を作ってみて、本当に面白かったです。

観る側に喜んでもらえる作品を

屋良朝建監督
映画を作る際に、もう一つ考えたのは、(作り手の)独りよがりな映画では絶対だめだということでした。きちんとお客様に喜んでもらえる作品を作らなければいけないと思いました。私が若い時だったら、もっとエッジのきいた尖ったものを作ったと思うのですが、今になって、きちんと観られるものを作る事が大切だと感じました。予算がなくてもきちんと映画として成立するものを作らなきゃいけないですし、稚拙なところが出てしまうとダメだと思ったんです。どこに持っていってもきちんと映画だと言われるものを作らなければいけないと思いました。とにかくやるしかないと思いました。

劇中に流れるジャズとスウィング、そしてダンス

-劇中に流れる音楽として、ジャズが盛り込まれていますが、その理由にはどういったものがあるのでしょうか?

屋良朝建監督
私はシナリオを描く時からずっとジャズを聴いていたんです。『かくも長き道のり』は、その世界観で成立した物語なんです。ジャズのスウィング(躍動感・ノリ)で踊るということが欠かせないものだったんです。

かくも長き道のり

デビット伊東
だからこそあのダンスシーンはカットしてほしいんです。

北村優衣
私もカットしてほしいと切実に思っています。
あのシーンだけ「恥ずかしい!」と思っています。もっと練習してからやりたかったですね。

デビット伊東
もっと稽古したかったよね。

屋良朝建監督
北村さんは前の晩に練習をして、ステップをよく踏んだなって思いました。あの2人(遼子と順次)の世界だから、きれいに踊られると面白くないなと思っていました。

デビット伊東
いくら努力してもきれいには踊れないですけどね。

かくも長き道のり

北村優衣
前の晩、室内でひたすらステップの練習をしましたね。監督はずっとこっちを見て笑っていました。

屋良朝建監督
俳優さんとしてはビシッと決めたいところでしょうけれども、僕としてはあの山の中の2人の独特の世界だから、2人がずっとこうやってきたことが伝わるといいなと思ったんです。山奥で誰も見てないので楽しければいいんです。ここは、勝手なことを言って申し訳ないですが、観てた僕が楽しめればいいやって(笑)

■キャスティングの理由

19歳・北村優衣に大きな存在感を感じた

-監督の映画初作品と初主演の女優。30年以上のキャリアのある俳優と、テレビ業界で30年以上過ごしてきたご自身と。初主演・キャリア(ベテラン)・初映画監督作品のつながりには何か繋がりがありますか?

屋良朝建監督
このシナリオが賞を獲った時に審査員からキャスティングについて指摘されたことがありました。「このシナリオに出てくる順次を演じ切ることができる俳優を探すことは難しいよ。誰ができるのか」と言われたんです。そんな話があったので、経験のある任せて大丈夫と言える間違いない俳優をキャスティングしないと破綻するなと思いました。そこで、僕は吉田さんというプロデューサーを招き入れて、二人で長い時間をかけて話し合ったんです。
遼子役の候補が何人か出て、映画を観ていく中で北村さんの舞台を観に行ったら、大きな存在感を感じました。当時19歳という若さに不安はあったのですが、これはもうやってもらうしかないと考えていたら吉田さんも同意見で、これならいけると思いました。

北村優衣
私はそんな風に決まったんですね。

デビット伊東はいろんな顔を持っている人に違いない

屋良朝建監督
そして相手役はどうすると言うことになったわけですが、これが難しかったんです。多少枯れた味がありつつ、25歳年の差がある女性を愛さなければいけないという、その存在感がなければいけないと、吉田さんにも言われました。
吉田さんは最初からデビットさんで大丈夫だと言っていたのですが、僕はデビットさんの印象って今と違ったんです。僕の年代的に芸人時代の若い姿しかなかったんです。そこでデビットさんが出演する映画をたくさん観ました。マキタスポーツさんが主演の『この世で俺/僕だけ』で、ちょっとやくざっぽい男を演じられていたデビットさんを見た瞬間にいけると思ったんです。『図書館戦争』で重厚な役も見ましたが、いろんな顔を持ってる人に違いないと思ったんです。
僕はこれらの作品を見て、この2人ならきっとやり切ってくれると思いました。
結構時間がかかったのですが、あの時間が大事だったんだと思っています。やはり、映画って役者さんなんだなって思いました。今回の作品は、登場人物が特に少ない映画なので、役者さんの選択を外したら終わりだと思っていました。映画を観た人の感想を聞いても、順次と遼子を観て、映画は役者だと言う考えがその通りだという感想が返ってきます。

■監督の初映画作品の脚本を読んで

-北村さんに質問します。屋良監督の映画初作品でご自身も映画初主演な訳ですが、初めて脚本を読んだ時の感想やエピソードを教えてください。

北村優衣
初めに脚本を読んだときに、私の年齢設定が25歳と言うことにまず驚きました。私は当時19歳になったばかりだったんです。撮影当時は声とか見た目で大人っぽいと言われることが多かったんですけれども、実際に25歳の役をやるってなったときに所作だったり話し方が19歳だねって監督に言われました。最初に立ち方とか体の重心の置き方から練習をしましたし、そういった視点で大人の女性の観察もしました。でも、脚本を読んだときに、歳の差の恋愛ではあるけれど。遼子には順ちゃんが必要なんだなと感じたので、屋良監督は純愛の物語を書いたんだなとわかって楽しく読ませていただきました。

■北村優衣「現場でやらかしてしまったこと」

北村優衣
現場では一回やらかしたことがあります。真瀬樹里さんが演じる夕子に対して、イライラした遼子が「うるさい!どきなオバちゃん!」って言うセリフがあるんですけれど、「うるさい!どけ!ババァ!」って言ってしまったんです。あれはひどかったですね(苦笑)本当に口が悪くて深く謝罪しました。

デビット伊東
あの時はもうこの子にはついていけないと思いましたよ。ひど過ぎる(笑)

北村優衣
オバちゃんならまだいいと思うんですが、ババァって言ってしまって、それってオバちゃんの最上級ですよね…。

デビット伊東
クソババァって言わなくてよかったよね。

北村優衣
クソババァが最上級ですかね。本当にあれは今でも申し訳ないなと思っています。

デビット伊東
その流れで撮ったから、次のシーンの僕への肩パンチは痛かったんだね。

北村優衣
そうですね。ちょうど順ちゃんが浮気をしているように見えた場面からの流れで肩パンチのシーンを撮りましたからね。本当に悪かったなと思っています。ただ、泊まり込みの撮影だったので、前夜に翌日の撮影の話をして、事前にお互いの信頼関係を築けていたのが良かったと思っています。

■北村演じる“遼子”の乱暴な行動の背景は?

-遼子の言葉遣いやパンチや蹴りなど、乱暴に見える一面には何か背景があるのでしょうか?

屋良朝建監督
僕は映画マニアで、今までに多分2000本ぐらい観ていると思うのですが、その中に『ミニー&モスコウィッツ』という映画があるんです。その映画のヒロインを演じるジーナ・ローランズと言う女優がやたらと蹴るんです。その子にインスパイアされてヒロイン像をいただき、遼子はとにかく強いヒロインにしようと思ったんです。
ただ、そこに順次が出てくることで、彼女の弱さが少しだけ出てくる面があるようになればいいなと考えていました。普段から蹴っているように見えないとダメなので、北村さんには蹴りの練習をしてもらいました。

かくも長き道のり

デビット伊東
北村さんは、僕のことを人として見ていないんでしょうね。思いっきり蹴ってましたからね

北村優衣
遼子なりの愛情表現なんですよ~

デビット伊東
だとしたら俺はどMだよね

北村優衣
遼子の不器用だけど寂しがりだったり弱いところがある部分に、すごい人間味があるなって思いました。

デビット伊東
印象深いシーンですよね。でも本当にあそこで「痛いっ!」て言ったら、もう一回蹴られると思って、それが嫌だったので我慢しましたよ。

北村優衣
「男のくせにそんなことくらいで弱音を吐くな!」というセリフがあるんですよね。私は今まで、ヤンキーとか不良の役が多くて、やっと恋愛映画だと思って蓋を開けてみたら、愛情表現の一部ではあるのですが暴力を振るうシーンがあって、やっぱりそういう要素が入ってくるんだなって思いました。遼子に私が今までやってきた役も活かせるなと思いましたね。

■丁寧に向き合ってつくっていった撮影現場

デビット伊東さんを囲んでの話し合いと向き合い方

デビット伊東
北村さんとは撮影前に話し合って、セリフを合わせながら作っていったんですよね。それをずーっと積み重ねていきましたね。みんな準備なくできると思って接しているんじゃないかな。どんな役も難しいと思うんだよね。絶対難しいはずなんだけれど、やって当たり前と言う雰囲気でしょ?リハーサル何回もやるけどさ。向き合わないと絶対できないよ。

北村優衣
こんなに丁寧に向き合ってくださる方って本当にいなかったんです。いや、本当にいないですよ。ここまでずっと会話してくださった方が今までいなかったので、私自身もとてもやりやすかったです。本当にお世話になったと思っています。

屋良朝建監督
その日の撮影が終わると役者さんたちはみんなお酒を飲んでたよね。北村さんは19歳だったから飲んでませんけど。合宿みたいになってましたよね。ゴルフのロッジにみんなで泊まりこんで、夜はデビットさんを中心に集まって、キャラクターについて話し合う中で、みんなでキャラクターを作っていった感じですね。

デビット伊東
僕は眠たかったんですよ、本当は。

北村優衣
「助けてくださいどうしよう、明日のシーン…」って言ってましたよね。

屋良朝建監督
その話し合いの場に、僕は入りませんでしたけどね、デビットさんにお任せしていたので。

デビット伊東
「監督は寝てください!撮影のほうに集中してください!」と伝えましたものね。

■北村自らダメ出しを言ったラストシーン

北村の涙の理由わけ

屋良朝建監督
役者同士の話し合いの場で作り上げたものが、自然な関係につながったんだろうなぁと思いました。北村さんが自らダメ出しを言ったのが一回だけありましたね。

北村優衣
ダメだなんてそんな言い方していないですよ(笑)そんな偉そうにしてないです。「どうしましょうか、この感情」って聞いたのを覚えています。

屋良朝建監督
いかにも映画っぽかったですね。「このキャラクターはこんな事は言わない!」って。結局、僕は出たとこ勝負にしようと言いましたよね。

デビット伊東
北村さんは本番じゃないところで思いっきり泣いてしまったりして、でも反省してたよね。泣くのが全てじゃないからね。思いが伝われば。

北村優衣
ラストシーンがなかなか思うように撮れなくて、監督もOKを出されなくて、私も納得がいかなくて、そんな時にデビットさんが現れて話をしてもらってまた撮影をして…と、終わってから号泣でした。クランクアップのシーンがラストシーンだったので、終わった瞬間に遼子として終わりなんだと思って、遼子のことを自分自身が見送ったと思って、いろんな感情が混じって嗚咽の号泣でした。

かくも長き道のり

デビット伊東
本番ギリギリまでずっと、「ありがとう、遼子と接することができて嬉しかったよ。」って話して、それで本番で泣いてくれるかなと思ったら、撮影が終わった瞬間に泣いてね。

屋良朝建監督
あぁ、それを言いに行っていたんですね。最後に来て耳打ちをしているから、感情を高めるために何かを仕掛けているな・言っているなと思っていました。2回3回とNGが出て、最後の手前ぐらいにデビットさんが来たんですよね。終わったあとの涙もいい感じでしたよね。

デビット伊東
涙を流すのが全てじゃないと思うし。 あそこでわっと泣かれちゃうと冷める場合もありますから。

屋良朝建監督
ドキュメントのつもりで撮っていて、面白かったですよ。いつものテレビのパターンだと思っていれば良いと思っていたので。役者さんが演じているキャラクターが本物だと思って、ドキュメンタリーだと思って回してしまえって。そんなつもりでいました。

■現場におけるデビット伊東の存在

-ここまで話を聴いているとデビットさんの存在が大きかったんですね。

デビット伊東
いえいえ大きくないです。

北村優衣
そうは言ってますけどね。大きかったです。

デビット伊東
僕は火種を作るだけですから。監督にも何度も話しましたけど、実は僕もチャレンジだったんです。この作品を読んだときに、役者としての技術とか思考とかを全部やめたかったんです。アドリブになるかもしれませんが、役としてお互いから出てきた言葉になるのでそれが作品のひとつのエッセンスになれば一番いいなと思ったんです。
何回もやってきたことだと思いますが、いろんなことが両肩に乗ってることがイヤだったんですよね。それが今回チャンスをもらったので、「え?これはおれの役じゃないでしょ」って思いながらも、必死になって優衣ちゃんにも他の役者さんにも粉をまくことだけしかしなかったんです。それをやらないとはじまらない気がしたんです。
そこに乗ってきたのは何人かいて、そこがうまく絡まっただけじゃないかな。よく作品は監督のものだってみなさんは評価しますけど、役は僕たちのものなので、役が映像の中で活きていないと意味がないんですよね。デビット伊東だろうが、名のある有名人であろうが、あの街でこの役が活きていなかったら、台無しだと思っているんで、それが優衣ちゃんが目覚めたことで活きたんじゃないかなと思っています。なんて、いいこといっちゃったな(笑)
でも、大変でしたよ。さっき優衣ちゃんが“向き合う”って言ってくれましたけど、僕たちはずっと向き合って作ってきているんです。今回、遼子の人生に僕を背負わせるんじゃなくて、どうやったら遼子をそこから押し出せるかっていう部分に、恋愛というところも含めてより向き合いました。それはきっと言葉ではないんですよね、お互いの生き様をどうやってだしてあげるかによって、変わってきてしまうので、この作品に入っている間、そこは本当に悩みましたね。
そのためにはより二人の関係が強くないと押し出せないし、だからといって周りの子たちも共演しているので、そこも引っ張り上げなきゃいけないし、その葛藤はありましたね。特に殺陣のシーンは。

■最高の殺陣シーン

-予告編でもみられますが、殺陣のシーンは迫力がありますよね。

屋良朝建監督
あの殺陣のシーンは撮影していて最高でした。

デビット伊東
感情が高ぶり過ぎてね。ファーストテイク、ツーテイクくらいまで何を言っているかわからないくらいでした。

屋良朝建監督
僕は優衣ちゃんの撮影をしている間、デビットさんが別の場所でずっと下準備をしていましたね。それでも何が起こるかわからない。急に椅子が飛んできたりして危なかったですよね。殺陣は怖いなって思いました。

デビット伊東
今の子たちは殺陣についてあまり教わらないけど、僕たちはデビュー当時から教わってきているので、本当に危ないと思います。

屋良朝建監督
撮影中に「危ない!」と思うことが起きて、やはりプロの世界を知っているデビットさんにお願いして本当に良かったと思いました。

デビット伊東
やはり、どうしても映像での見せ方があって、いわば喧嘩ですからね。

北村優衣
私もモニターでみていたんですけど、めちゃくちゃ迫力があるシーンでした。

屋良朝建監督
机を掻き分けるシーンは、デビットさんのアドリブですごいシーンでした。椅子や机がある教室の中でぐるぐる回るような動きをイメージしていたのですが、デビットさんは「真ん中から行きます!」っていうんです。「真ん中からいく!?どうやっていくの?飛び越えるんじゃないか?」ってカメラマンと話していたのですが、「デビットさんの言うとおりに撮っておけや!」って言って撮れたのが、あのシーンです。

かくも長き道のり

デビット伊東
本当にそんな感じだったんですか?全然おぼえていないや。

屋良朝建監督
その時、僕はカメラのモニタをみていて、すごいなこれっておもって、このシーンで終わりにしようって言って、本当はあのあとに窓ガラスを破ったりする予定があったんですけど、これならばこれで終わりでいいと思って。あそこは立ち上がる所から素晴らしいシーンでした。

デビット伊東
僕はセリフをほとんど言わずに遼子に対する思いだけを言っていた気がしますね。

北村優衣
私、そのモニタを見ながら泣きましたもん。「えー!そんなことを思ってるの?」って思いながら。あのシーン、私も好きです。

デビット伊東
あそこで言わないと、遼子のすべてのことがうかばれないと思ったんです。
集中し過ぎていて覚えていないんだよね。すごいクリアだった。

屋良朝建監督
すごかったですよ。その空気が全部うつっているんだとおもうんです。本当にピリピリしていましたからね、あの現場は。

■デビットからみた北村のイメージ

―デビットさんから見た、初主演の北村さんの印象はいかがでしたか?

北村優衣
やだーまたいじられるよー

デビット伊東
いじらないよー、(恋人役なのに)妹みたいって言われるのイヤでしょ。素敵だなって思ってるよ。僕たちの先輩の役目は、若手の方々をサポートして、支えてあげるものだとずっと思っています。その中で真っ白な状態の北村さんをこの作品の色に染められたかなと思っています。それに見事に染まってくれた女優さんが素晴らしいんです。
「私はこんな色ですから」って言って、真っ白なら真っ白でい続けたいという女優さんもいるのですが、北村さんは撮影の特に中盤から後半にかけて、きちんと役の色に染まってくれたと思います。最初のうちは覚えてきたんでしょうけど、その形に形にってどうしても固くなっているところがありましたけどね。蹴りの部分を除いて(笑)
これだけ長くやっていると、北村さんはいいなぁって惚れますよ。若手の方とやらせてもらえる機会が多いので、そこに僕は粉をかけることができるという、もしかするとそういうお役目をもらっているのかもと最近は思いますね。

-映画のチラシにはデビットさんの紹介文として、“性格俳優”ということが書かれていましたが、ご自身で何か思うことはありますか?

デビット伊東
どうでしょうね。自分の可能性はまったくわからないのですが、最近特に人・相手役によって生かされているのがよくわかるので、北村さんがいなかったら僕の役は難しかったと思います。

北村優衣
こういうこというんですよ、本当に~

デビット伊東
真剣にこられたら、僕だってそれに応えますよ。それはもう、痛いのをぐっとガマンしてでもいい芝居をしないと。

-デビットさんはアキレス腱断裂の後遺症とかもあるそうですが、激しい蹴りをもらって大丈夫かなと、映画を観ていて感じました。

デビット伊東
左足が不自由なんです。足が全く動かなくて装具をつけてまで役をやったことが過去にあります。ラーメン屋を始める前のことですね。段々と動くようになりましたが、実は殺陣は全くできないんですよ。

北村優衣
本当ですか!?そんなことがあるなんて知らなかったです。それを知っていても本気で蹴りましたけどね(笑)

■キャスト、監督からのメッセージ

-作品の見どころ、ご自身の役柄のこのシーンを見てほしい部分を紹介してください。

屋良朝建監督
この作品は説明のシーンなどを全部省いて余分なシーンがまったくないんです。これは意図して削ぎ落としていて、説明し過ぎないようにしています。それは観る側が自身で感じられる仕組みをつくってあるんです。僕の中の解釈はもちろんありますが、それをあえて押し付けないようにしています。説明し過ぎないことで生じる隙間の中で観ている人がいろんな感じ方をできるように、その最低限の材料でつくろうとしています。だから、回想シーンが1カットもないことに気づくと思います。隙間をあけるんだけど、それをどうみてもらえるかというのが勝負になっています。今の映画って説明しすぎるじゃないですか。なので、説明描写は省いています。こういうのはオーソドックスな映画の作り方で、昔の映画はみんなそうでした。ある種オーソドックスな映画で、僕が好きだった50年代、60年代の映画の影響を強く受けている映画で、それがひとつの世界観になっています。最近はそういう映画が無いので、逆に新しい作り方かもしれないと思っています。この作品を観た方々からどんな反応が来るか、楽しんでもらえるのかを皆さんにきいてみたいと思っています。

デビット伊東
僕は自分のことは自分では評価できない人なので作品に関していうと、最初から最後まで飽きないで観られる作品だと思っています。それに加えて北村優衣が変わっていく様。本当にこの子は芸能界で生き抜こうという生き様と何かを捨てて、プラスアルファの何かを得て行くんだという思いが現れています。ただ、それを一回観ただけではわからないかもしれません。なので、2回3回とみていただければ、北村優衣のためになりますのでよろしくお願いします。

北村優衣
初主演をやらせていただけたこの環境に本当に感謝したいと思います。蹴りや殴るシーンはぜひ見てもらいたいと思います。
私が演じる遼子目線の“好きなんだからいいじゃん”という考え方と、順ちゃんの“好きなだけじゃだめだし、好きだからこそ身を引く”という考え方があって、どちらの目線でみても共感できると思います。見る年代によっても観方が変わって来るんじゃないかと思うので、皆さんがどう感じていただけるのか、それをとても楽しみにしています。二人の純愛の姿を見て頂けたらなって思っています。また、撮影した群馬の中之条がすごくきれいなところなので、その美しい自然と相まってこの作品はできているなって感じています。そういった所も観ていただけたらなって思っています。

デビット伊東
あとひとつ、北村優衣の好きな顔がありました。ここだけは絶対見逃さないで欲しいところがあります!
背景でお祭りをしている中に、橋のシーンがあると思います。二人で橋の上でやり取りしていて、僕が北村さんと向き合って髪の毛を触って、おでこにキスするのかなぁっていう時の顔がすごくタレ目でぶちゃいくなんです。

北村優衣
もう、サイアク~
なんでブサイクなところを言うんですか~

デビット伊東
あの顔が、「ぶちゃかわいい!」ってこのことなんだなって思ったよ。

北村優衣
ぁぁ、もう全然嬉しくないです(苦笑)

デビット伊東
“きれいなものはこの町を離れてからやってくれ、俺の前でだけは、そのぶちゃかわいい姿でいてくれ。その顔は俺の前でだけだろ。”ってね。あるじゃないですか、男って。カメラの向きの関係で、その顔を正面から見られるのは僕だけなんですけどね。めちゃくちゃブサイクで。

北村優衣
サイテー、2年も前のブサイクな顔のことを覚えているって、本当、たちが悪い。
ぁぁ、もう私、そのシーンをみられないじゃないですか!

かくも長き道のり

[聞き手・写真:Ichigen Kaneda]

映画『かくも長き道のり』

STORY ~未来に向かう若き女優の忘れられない日々~
主人公、椎名遼子は25歳の新人女優。
オーディションで連続ドラマに抜擢されたばかりだ。
夏の終わりに4カ月ぶりに故郷の山の中の村に帰って来た。
25歳年上の恋人、村木順次と別れるように所属事務所から迫られていたのだ。
村木は元プロの賭博師で、今は山の中で静かに暮らしている。
孤児として生きてきた遼子にとっては唯一愛する人。
女優を目指す遼子を支えてくれた、かけがえのない存在。別れの決断は出来ないでいた。
一方、事務所はマネージャーを現地に放ち、身辺整理を迫るのだが、遼子には思いもよらない危機が迫っていた。

キャスト
北村優衣 デビット伊東
真瀬樹里 坂本充広 沖ちづる 宗綱弟 山家浩 佐藤ザンス
監督・脚本 屋良朝建 製作・配給:ナインプレス
2020年 日本 DCP/BD カラー ヴィスタ 71分 5.1Ch

【映画】かくも長き道のり
公式オフィシャルサイト http://www.kakumonagaki.jp/
公式Twitter @kakumonagaki

2021年2月13日(土)池袋シネマ・ロサほか全国公開順次公開

かくも長き道のり

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA