阿部サダヲ「宇崎竜童さん、生きてたんだ」映画『アイ・アム まきもと』完成報告会
2022年8月4日、東京国際フォーラムにて、映画『アイ・アム まきもと』完成報告会が行われ、阿部サダヲ、宇崎竜童、松下洸平、水田伸生監督が登壇。キャスティングや役作りを明かすと共に、自身が「迷惑をかけてるのに止められないこと」、そして映画の物語にちなんだ「まきもと度チェック」を行った。
舞台挨拶レポート
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▼出演オファーについて
映画のオファーがきたときのことを問われた阿部サダヲは「監督の映画は4本目ですが、今作でまたお声がけいただいて感謝の気持ちでいっぱいでした。台本を頂いて素敵なお話なんだなと。このようなハートフルコメディはあまりやったことはなかったので嬉しかったです。監督の言うことは間違っていないと思っているので、今回も言う通りにやるだけでした」と冗談を交えつつ絶大な信頼を寄せて最新作に挑んだことを語った。
宇崎竜童は「(自分の役についての)詳細は言えないのですが、このような出演の仕方もあるのだなと光栄に思いました。内容を詳しく知らずに出演をOKしたのですが、実際に読んでみると、改めて面白いお話だなと思いましたし、孤独死が世界中で問題になっているのでタイムリーなテーマだなと思いました。」と明かし、
松下洸平は「監督の作品に出演させていただくのは今作が初めてですが、初めてお会いしていたのは自分が出演していた舞台の楽屋でした。僕を見るなり、お声をかけていただいてお話したのをよく覚えていて、いつかご一緒できればと思っていたところで、こうして声をかけていただいたのですごく嬉しかったです。周りのスタッフにも(監督の作品に出演したいと)言っていたので、願いが叶いました。」と喜びをコメントした。
▼キャスティングの理由
そんな三人のキャスティングについて問われた水田伸生監督は「お三方の共通点はなんだと思いますか?」とMCの伊藤さとりに逆質問。
「宇崎さんはもちろんですが、阿部さんも洸平くんも歌をうたう、俳優であると同時にシンガーでもあります。演技というものは表情もそうですが、身体の動きであったり、身体から生み出すことで表現するものです。その音の部分である声において、このお三方は名器と言えます。無論、宇崎さんは子供の頃からのファンですし、阿部さんは何本もタッグするほど愛する俳優のトップ、そして楽屋で声をかけるくらい好きな洸平くん、俳優として尊敬するお三方ですが、そのなかには音の部分も(キャスティングの理由として)入っているんです。」とこだわりを語った。
監督のコメントを聞きながら頷いていた阿部は共演した宇崎について「僕が演じた牧本は宇崎さん演じる蕪木さんのことをすごく想っている役なのですが、(すでに亡くなっている役なので)お会いするのは(今日が)初めてで不思議な気持ちです。生きていたんだ!と思いました(笑)」と語ると、会場も笑いに包まれた。
▼それぞれの共演について
松下は今作で初共演となった阿部との撮影について問われると、「テレビも映画も舞台も拝見していたので、本物だ!と思いました!」と興奮気味にコメントし、「ずっと画面越しや、客席で見ていた人がこの距離にいると、牧本さんなのですが、阿部さんなんですよね。変わったヘアスタイルをしていていたり、いつもと違う阿部さんというわけではなく、僕が知っている阿部さんで、でも牧本なので…。僕は牧本を詰めないといけない役なので心を鬼にして怒鳴らせていただきました…!」と現場での本心をドキドキしながら吐露。一方、阿部はそのエピソードを聞いて「(松下のお芝居は)素敵でした。叱ってくれる人はなかなかいなかったので…。」と再び冗談交じりに恐縮するなど、会場を笑わせた。
そんな松下演じる刑事の神代が、阿部演じる牧本から、何度も迷惑を被り、その度に怒るような2人のテンポの良い掛け合いも本作の見どころ。撮影ではアドリブもあったのかと問われると、「アドリブはなかった気がします」と語る松下に対し、阿部は「アドリブはなかったと思いますが、松下さんは舞台のように動き回れていて、素敵でした。怒り方も軽やかでした」と演技を絶賛。監督は「おふたりとも演劇というフィールドで修行を積んでこられた方なので、テイクを重ねることよりも、ひとつひとつの瞬間が、ものすごく変わっても良いくらいに新鮮にやってくださるのですが、それは本当にとても尊かったと思います」と舞台の経験がある二人でしかみれない絶妙な掛け合いを絶賛した。
以前、自身の演じるちょっと迷惑な牧本壮について“なんとも愛おしいキャラクター”とコメントしていた阿部は、演じるにあたって難しかった事や意識した点について問われると、「牧本はなによりもまっすぐなキャラクターなので、ぶれないことを意識しました。劇中では牧本が様々なところでいろんな人々に出会っていくのですが、それぞれキャラクターの強い方々が(山形に)いらっしゃっていて、そのなかでも牧本のキャラクターをぶれないようにと気をつけて演じていました。」と振り返った。
そんな牧本の個性的なキャラクター性について問われると、宇崎は「僕は映画を観たときに迷惑なキャラクターとは思いませんでした。牧本のような人間が日本中にいたら、すごく平和でいい国になっているだろうなって。でもこの映画を観て、“牧本きてよ!”って思いました。」と牧本への愛を熱弁。
阿部は「凄い人だって思いました。こんな立派な人、なかなかいませんよね!」と明かし、松下は「僕は劇中では迷惑をこうむる立場ですが、自分にはない牧本の無垢な部分に、ついつい手を差し伸べたくなる魅力を感じてしまっていて。神代がなかなか突き放したりしなかったのは理解できると思いました。牧本に憧れてしまう自分もどこかにいるんじゃないかなと。」と、それぞれが牧本の魅力を噛み締めながら分析した。
牧本に負けないくらい迷惑をかけてきた人生を生きた蕪木を演じた宇崎が役に共感する部分についてと問われると、「昔、蕪木のような人ばっかりだったんです。僕は70年代にデビューしたのですが、周りは蕪木みたいな人ばかりで、いろんな意味で少し無骨な人。だから蕪木を演じるにあたってそのキャラクターを否定することはなかったです。」とコメント。
監督はそんな蕪木を演じた宇崎について「蕪木はいうならば、恐ろしくモテる男性なんです。品行方正ではないのにモテる。なかなかお願いする方が頭に浮かばないなか、宇崎さんが引き受けてくださって最高に幸せでした。」と宇崎が蕪木を演じたことへの喜びを語った。
▼エンディングテーマ『Over The Rainbow』
そしてここで、宇崎が俳優として蕪木役を演じているだけでなく、エンディングテーマである『Over The Rainbow』を歌唱しているという新情報も明らかに。
宇崎は誰もが知る名曲『Over The Rainbow』について「自宅で録音してみて、ジャパニーズイングリッシュになってしまうことで困っていたんですが、この名曲は世界中でいろんな方々が歌っていてどれも素晴らしい。自分が歌うにあたって中盤からレゲエのリズムを使うなど工夫したら、気を楽にしながら歌うことができました。」とオリジナルのアレンジをしながら歌い上げたことを明かした。
阿部は「エンディングはどうなるんだろうって撮影現場でも話していたんですが、こうきたかと!ニヤニヤしながら聞いてしまいました」、
松下「僕もニヤニヤしました!胸に沁みるようなラストのなか、すぐ宇崎さんの『Over The Rainbow』がかかるので、追い打ちをかけられるような想いでため息をついたり、ニヤニヤしたり…。」とそれぞれが称賛。
エンディングテーマをお願いするきっかけについて問われた監督は「ラストシーンのイメージをプロデューサーに語る機会があり、霧雨と虹のイメージを伝えたら、早速翌日に”『Over The Rainbow』を聞きながら台本を読むと泣けて仕方ない”と言われまして、じゃあやるしかないと思って、劇中で一声も演じない宇崎さんに歌っていただくのが良いのではないかということでオファーしました。」と貴重なエピソードを明かした。
▼”迷惑かけている”とわかりつつ、やめられないこと
主人公牧本のキャラクターにちなみ、”迷惑かけている”とわかりつつ、やめられないことについて問われると、松下は「クランクインの日に現場に車で向かうなか、準備を終わらせて待っていたんですが、気づいたらスタンバイ場所がすごく静か。あれ?と思って車の方にいくと何もなかったんですよね。僕だけが残ってしまって、初日から皆さんをお待たせしてしまうことがありました…。シーンとしたところで待っちゃう癖があります…気配のなさをやめられないという…。」と変わった癖を告白。
宇崎は「妻が洗ってくれて乾かしてくれた洗濯物を、僕の部屋に畳んでおいてくれているんですが、タンスに入れたことがないんです。毎日、洗濯物が溜まっていくので、今日家を出るときは腰の高さくらいまでになっていました。”あなたは20年経っても30年経ってもそこに置いとくのね”とプンプン怒っていました。」と奥様との微笑ましいエピソードも披露され、会場はにっこり。
阿部は「地方のロケのときですが、地元の方のことを好きになって、仲良くなってしまうのがやめられないんです。今回の撮影もたまたま控室として使っていた場所のレストランの料理長が高校の先輩だったのでべったりとくっついてしまってやめられない。優しさに甘えちゃうというか…。やめられないですし、やめたくないです。」と笑顔で明かした。
▼“まきもと度チェック”
ここで、ちょっと迷惑なまきもとが主人公の本作にちなみ、キャスト&監督に“まきもと度チェック”を実施することに!
“人の乱れた髪型が気になる”との項目には、宇崎、松下、監督が○。阿部は✕。
阿部は「自分は帽子を被るので気にしていないのですが、乱れている髪型をみるほうが楽しい!」と陽気に明かし、松下「気になるほどではないですが、見ちゃいますね。現場でご一緒にしている俳優さんが跳ねていたら、直したり、お節介をついやってしまうかもしれないです」と語った。
続いて、“人の話を聞かない”との質問には、阿部、宇崎は○、松下、監督は✕。
宇崎は「数人で会食しているときに誰かが話題を提供するはずなんですが、妻に”あなたは人の話を聞かないで自分の話ばかりしている”と言われるので…心がけて会食に出かけるんですが、終わると人が話した情報をキャッチしていないことに気づいて、結局自分が話していたんだなと思うんです…」と静かに反省すると、阿部が「宇崎さんの話は聞きたくなってしまうと思いますよ!」とフォローするなど和やかな空気になった。
▼最後にメッセージ
最後に、監督が「予告がネット上でもお披露目になった日にTwitterで“どうやら『アイ・アム まきもと』は水田が真面目にやっているときの作品らしい”と書いてあって、その日食事ができませんでした。(笑)いつも真面目にやっているので今作もどうぞよろしくお願いいたします!」、
松下が「この作品はたくさん笑っていただけるし、最後にはほろっと泣けるようなラストとも待っています。先程もお話しましたが、牧本のような人物に憧れを抱いてしまったり、自分も牧本さんみたいに素直になれたらなと思えたりもすると思います。共感できる部分や自分の毎日に活力を見いだせる作品になってると思いますのでぜひ劇場で御覧ください。」、
宇崎が「真面目にやったつもりです。歌も真面目に歌ったつもりです。その真面目度をぜひ皆さんに観ていただきたいと思います」、
阿部が「本当に素敵な映画で宇崎さんの歌声を聞くと良い気持ちになると思いますし、これから観る方にとって身近な問題と思わせるメッセージも込められている映画ですし、たくさんの方に観ていただきたいなと思っています。ありがとうございました!」とそれぞれが思い思いにコメント。
“まきもと”らしいマイペースな進行で進められた本イベントは終始穏やかな笑いに包まれながら幕を閉じた。
■フォトギャラリー
[写真・動画:三平准太郎]
映画『アイ・アム まきもと』
ある見知らぬ男の人生を“まき”戻すことになった「おみおくり係」のまきもと。
彼がたどり着いた“奇跡のさいご”とは――
INTRODUCTION
本作の主人公である牧本は“おみおくり係(=お一人で亡くなった方を埋葬する)”として小さな市役所で働いているが、全く空気が読めない、人の話を聞かない、なかなか心を開かない、周りからするとちょっと頑固で迷惑な存在。
そんな牧本は、つい周囲のルールより自分のルールを優先してしまい、同じ市役所で働く同僚たちや上司、警察や葬儀屋さんにもご迷惑をおかけしてしまう日々を送っていた。
ある日、人知れず亡くなった蕪木の身寄りを探すため、彼のかつての友人や知人を訪ね歩くうちに、唯一の身寄りである娘・塔子に辿り着き、蕪木の知られざる想いと共に彼の人生を辿ることとなる。“亡くなった人の想い”を大切にするがゆえに、ちょっと迷惑な牧本の行動は、やがて人と人を繋ぎ、自らも変えていく――。
主人公の牧本壮役は、『舞妓Haaaan!!!』(07)、『謝罪の王様』(13)等に続き水田伸生監督とタッグを組む阿部サダヲ。
牧本が出会う蕪木の娘・津森塔子役に満島ひかり。そして牧本の迷惑にまき込まれる人々に、國村隼、宮沢りえ、宇崎竜童、松下洸平、でんでん、松尾スズキ、坪倉由幸(我が家)と個性豊かな豪華キャストが集結。
第70回ヴェネチア国際映画祭で4つの賞を受賞したウベルト・パゾリーニ監督『おみおくりの作法』(15)を原作に、ドラマ『ゆとりですがなにか』、『初恋の悪魔』で知られる水田伸生監督が笑って泣けるエンタテインメントに昇華させた。
STORY
小さな市役所に勤める牧本の仕事は、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」。故人の思いを大事にするあまり、つい警察のルールより自身のルールを優先して刑事・神代に日々怒られている。ある日牧本は、身寄りなく亡くなった老人・蕪木の部屋を訪れ、彼の娘と思しき少女の写真を発見する。一方、県庁からきた新任局長・小野口が「おみおくり係」廃止を決定する。蕪木の一件が“最後の仕事”となった牧本は、写真の少女探しと、一人でも多くの参列者を葬儀に呼ぶため、わずかな手がかりを頼りに蕪木のかつての友人や知人を探し出し訪ねていく。工場で蕪木と同僚だった平光、漁港で居酒屋を営む元恋人・みはる、炭鉱で蕪木に命を救われたという槍田、一時期ともに生活したホームレス仲間、そして写真の少女で蕪木の娘・塔子。蕪木の人生を辿るうちに、牧本にも少しずつ変化が生じていく。そして、牧本の“最後のおみおくり”には、思いもしなかった奇跡が待っていた。
阿部サダヲ
満島ひかり 宇崎竜童 松下洸平 でんでん 松尾スズキ 坪倉由幸(我が家)
宮沢りえ 國村隼
監督:水田伸生
脚本:倉持裕
原作:Uberto Pasolini “STILL LIFE”
製作総指揮:ウィリアム・アイアトン 中沢敏明
エグゼクティブプロデューサー:堤天心 志賀司 中西一雄 島本雄二 井川泉 Uberto Pasolini
プロデューサー:上木則安 厨子健介
制作:セディックインターナショナル ドラゴンフライ
製作:映画『アイ・アム まきもと』製作委員会
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2022 映画『アイ・アム まきもと』製作委員会
公式サイト:iammakimoto.jp
公式Twitter:@iammakimoto_JP
本予告映像
9月30日(金)全国の映画館で公開
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