
【インタビュー】「生きることへの執着が失われる」石川恋が映画『祝山』で見せた“気味が悪い”ほど振り切った演技の裏側
2026年、出演作が続く石川恋(いしかわれん)が本格ホラー映画『祝山』に参戦。かつてのモデルのイメージを鮮やかに更新し、禁忌に触れて狂気へと堕ちる難役・矢口朝子をどう演じ切ったのか。撮影秘話から俳優としての現在地まで、その舞台裏について話を聞いた。(読者プレゼントあり)
作家・加門七海の体験を基にした本作は、人が足を踏み入れてはならない禁忌の地を巡る衝撃のホラー小説を映画化。スランプ中のホラー小説家・鹿角南(橋本愛)のもとに、中学の同級生・矢口朝子(石川恋)から不穏な手紙が届く。軽い気持ちで訪れた「祝山」での肝試しを境に、周囲で異変が連鎖。静かに理性を侵食していく闇と、逃れられない呪いの運命が描かれる。劇場長編デビューを飾る武田真悟監督が、緻密な心理描写で「一度足を踏み入れれば、もう戻れない」恐怖をスクリーンに立ち上げた。
石川恋 インタビュー&撮り下ろしフォト
‐ 本作の脚本を読んだ時、石川さんが演じる矢口朝子という女性にどういう印象を持たれたか、役への取り組みと共にお聞かせください。
石川恋(矢口朝子 役)
原作と脚本を読ませていただいて、変化していく過程が興味深いキャラクターだな、やりがいがあるなと思いました。
ぜひ挑戦したいと思った反面、すごく難しいだろうなとも思っていましたし、実際、本当に難しかったです。
‐ 具体的にどういった点が難しかったのでしょうか?
石川恋
肝試しに行って、その山に……人知の及ばない”何か”に侵食されていってしまう。実際に怖い体験をしたことがないので、その感覚を掴むのが難しいというか、さまざまなリサーチを経て自分なりに苦労した点です。
‐ 劇中では、途中で人格が変わっていくような描写もあります。そこはどう演じ分けようと考えられましたか?
石川恋
今回の脚本で私が矢口を考える中で思ったのが、「何か」に侵食されていくというのは結局どういう状態なのか。私自身もまだ正解はわからないんですけど、なんだか「生きることへの執着」みたいなものがどんどん失われていってしまうことなのかな、と。その「生」をも手放してしまうみたいなことなのかなと思って、それに関連することをたくさん調べて想像したり、ヒントをもらったりしました。
あとはバランスですね。どのくらい恐怖を感じているのか、それとも自分の中の矢口の人格を保ったまま山からの侵食を排除したいと思っているのか……。そのバランスは常に考えていました。
今、思い返すと、演じている当時の私は「矢口というすごく強烈なキャラクターに飲み込まれていたんだな」って思います。矢口としている間は、自分という軸ともう一つ、役作りとして作り上げた「核」みたいなものが頭の中にずっと存在している感覚でした。それが変形したり大きくなったりするバランスを、自分の中でずっと取っていた感じです。
‐ それは役作りをする中で、初めての感覚でしたか?
石川恋
その核みたいなものは毎回、役柄やシーンに合わせて作っていますが、今回は特に意識しました。それもあってか、他の作品だと、役と自分の心が一つに合わさっていく感覚があるんですけど、今回はそうではなくて、役ともう一つの「何か」があって、それがバランスを取っている、という感じでした。
‐ 橋本愛さん演じる鹿角南との関係性が大きいですよね。
石川恋
はい。鹿角南と矢口朝子とは、中学時代の同級生で、当時は矢口がいじめられていて、でもどこか鹿角を拠り所にしていた部分があった。でも、当時の鹿角は矢口を突き放しているところがあり、そのせいか「鹿角さんへの執着」みたいなものがずっとあったのかなと。だから大人になった今も、何か繋がって巻き込んでいってしまう。あの時も助けて欲しかったし、今回も鹿角に何か求めていた部分があったんだと思うんです。そこの二人の関係性がこの映画のもう一つの見どころだと思って演じていました。
‐ 矢口が狂気を出すシーンについてもお聞きしたいです。山の中で鹿角と喧嘩するシーンなどは、ビジュアル面も含めてかなり「振り切っている」印象を受けましたが、こだわった点はありますか?
石川恋
目の前の鹿角を怒鳴るシーンでは、自分の中にある「核」が最大限に大きくなって、黒くて気持ち悪くなっている感覚でした。お芝居で「こうしよう」と考えるより、「あの物」が喋っている、というような。言語化が難しいのですが…(笑)
‐ かなり入り込まれていたのですね。髪を振り乱して青白い顔になっているご自身を映像で見て、どう感じましたか?
石川恋
「気味が悪いな」って(笑)。でも、すごく新鮮でした。あの状態を無理に作っていると見えてしまうと違和感があると思ったので、どうしたら自然に見えて、受け入れてもらえるかを考えていましたが、本番だけはあえて何も考えずにその場で出てきた感情や身体の動きに身を任せていました。完成した映画を見て、「いい意味で気味が悪いな」と。今「同じことやって」と言われても多分できないと思うので、面白く見てもらえるんじゃないかな、やり切ったなという感覚はあります。
‐ 橋本愛さんとの共演についても伺わせてください。現場でのコミュニケーションや、刺激を受けたことはありましたか?
石川恋
ファミレスのシーンやカレー屋さんのシーン(=物語中盤で既に矢口の人格が変わり始めている)からのクランクインだったので、私も矢口の心情的に余裕がなくて、現場では静かでした。
でも、このシーンを超えてから少しずつ肩の荷が下りて、愛ちゃんとも距離を縮められるようになって、そこからは楽しくおしゃべりする時間も多くなっていきました。
本当の同級生みたいに楽しくおしゃべりして。「もし二人が友達になれたらこんな感じなのかな」って。そうして、愛ちゃんから受け取ったものはたくさんあるし、役的にも影響し合っているものは大きかったので、すごく特別な時間でした。
‐ 橋本愛さんの印象は?
石川恋
しっかりと地に足がついている印象を受けました。ブレずに芯があって、お芝居に対するスタンスも、現場に対する姿勢も、本当にかっこいいなと思いました。
一番影響を受けたのは、最後、鹿角に説得されるシーンです。愛ちゃんのあの表情や必死さは、現場でも「目に見えない力」というか、導かれてしまいそうな自分を引き止めてくれる存在感がすごくて、完成した映像で見ても、本当に素敵だなと思いました。
‐ 本作のテーマの一つに「禁忌の土地」がありますが、石川さんは祟りやそういった存在を信じる方ですか?
石川恋
難しいですけど……あると思います。足を踏み入れてはいけない場所とか、敬意を持って行動しなきゃいけない場所っていう雰囲気は、確かに存在すると思います。そういった場所に敬意を持たずに踏み込むような人間にはなりたくないですね。
‐ 撮影中に、何か怖い体験などはされませんでしたか?
石川恋
私はそういう体験はありませんでした。私がとにかくそういうのに疎いというか、鈍いみたいで。他のスタッフさんは「嫌な感じがする」と言っていたりしたみたいなんですけど、私はそんなふうに言われていた場所とは知らず、後からそこでメロンパンをもりもり食べていたことに気付いて、本当に自分って鈍感なんだな…と思いました。
‐ そのほかの共演者の方々との雰囲気はいかがでしたか?
石川恋
松浦(祐也)さん(田崎正人 役)が本当に面白くて、ずっとお話を聞いていました。昭和の映画現場の話とか、今有名な監督さんたちがまだ駆け出しだった頃の裏話とか……。すごく面白かったし、勉強になりました。
‐ 石川さんは今年、本作の他にも映画『黄金泥棒』や、ドラマ『ゲームチェンジ』、そして現在放送中の『ディープリベンジ-顔を捨てた家政婦-』など出演作が続いています。多忙な中で、役を切り替える「スイッチ」などはあるのでしょうか?
石川恋
本当に難しくて、重なる時期は混乱しちゃうんですけど……。意識的に「何も考えない時間」を作るようにしています。電車でも家でも、作品を抱えていると頭がパンパンになってしまうので、それを強制的にオフにするのがサウナです。サウナだと携帯も見られないし、台本も読めない。あの「暑い」っていう状態、何も考えられないじゃないですか。
水風呂に入って「整って」いる時は、頭がクリアになるんです。それが一番の切り替えになっていますね。あとは、お風呂に入ったら「今日はもう終わり!」って区切りをつけて、バラエティや他のドラマを見たりするようにしています。
‐ 俳優としてのキャリアにおいて、今後はどうしていきたいですか?
石川恋
ありがたいことに、今年は『黄金泥棒』や『ディープリベンジ』、そしてこの『祝山』と、今までよりも役の幅がすごく広がって、いろんな顔をお見せできている時期だと思っています。
20代の頃は、CanCamの専属モデルをしていたこともあってモデルのイメージが強く、そこに派生した役柄をいただく機会が多かったのですが、そうしてイメージが固まってしまうことに不安や焦りがありました。それを打破するためにもがいてきたのが、今30代になって、ちょうどいい方向に繋がっていっています。
今回の矢口という役も、最初にお話をいただいた時は「私に!?」ってすごくびっくりしたし、嬉しかったです。
「石川恋ならこの役を面白くやってくれるだろう」という信頼を持ってもらえる俳優になっていきたい。そういう機会を確実に増やしていきたいです。
‐ 矢口のようなキャラクターは、これまでの石川さんのパブリックイメージとは全然違いますよね。それを乗り越えて、演技の幅が広がったという手応えはありますか?
石川恋
そうですね。乗り越えるたびに広がっていく感覚はあります。今回はアプローチ方法が難しかっただけに、今後も活かせるようなプロセスになったと思います。
『ディープリベンジ』の役(御堂絵梨華)も、ベクトルは違いますけどかなり振り切っているので(笑)、今年は本当にいろんな私を見てもらえる年になりそうです。
石川恋(いしかわ れん)プロフィール
1993年7月18日生まれ。栃木県出身。
2013年に発売された書籍『ビリギャル』のカバーモデルとして注目を集め、一躍話題に。その後、ファッション誌「CanCam」の専属モデルを務めるなど、モデルとして幅広く活躍。
近年は俳優としても活動の幅を広げ、ドラマ「東京タラレバ娘」「silent」「ギークス〜警察署の変人たち〜」など話題作に出演。
2026年にはドラマ『ゲームチェンジ』『ディープリベンジ−顔を捨てた家政婦−』に加えて、映画『黄金泥棒』『祝山』などの出演作が公開される。
また、バラエティ番組や情報番組でも活躍し、明るく親しみやすいキャラクターでも支持を獲得。モデル・俳優として多方面で活動を続けている。
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[写真・インタビュー:三平准太郎/ヘアメイク:野由梨乃/スタイリスト:金野春奈/衣装協力:THE silhouette、Sorbet、SYKIA、ダイアナ]
関連動画
映画『祝山』
《INTRODUCTION》
数々の傑作ホラー小説を世に出してきた作家・加門七海が自身の体験をもとに描いた「祝山」が遂に映画化。
人が足を踏み入れてはならない場所にまつわる禁忌の記憶と、そこに触れた者の逃れがたい運命を描き、刊行以来多くの読者に戦慄を与えてきた衝撃作。
主演に10年ぶりのホラー映画出演となる橋本愛を迎え、6月12日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開いたします。
《STORY》
一度足を踏み入れれば、もう戻れない——。
禁忌に触れた瞬間、逃れられない運命が動き出す。
その手紙は、すべての始まりだった。
スランプに陥っているホラー小説家・鹿角南(かづのみなみ)のもとに、中学時代の同級生・矢口朝子から一通の手紙が届く。
そこには、ネットで噂の心霊スポットである廃墟へ肝試しに行ってから、周囲で説明のつかない異変が起き続けているという、不穏な告白が記されていた。
ネタを拾えればと考えた鹿角は、話を聞くため矢口と再会し、当時行動を共にしていた若尾木綿子、小野寺淳、田崎正人らと顔を合わせる。
しかし、その出会いを境に、鹿角の周囲でも異様な出来事が静かに忍び寄り始める。日常はわずかに歪み、やがて一人は突然の死を迎え、他の者も狂気へと駆り立てられてゆく――。
不可解な出来事は連鎖し、逃れる術のない恐怖へと姿を変えていく。
真相を探るため、鹿角は懇意にしている山岳ライター・吉村司に協力を仰ぐ。調査の末に浮かび上がったのは、彼らが軽い気持ちで足を踏み入れた山——『祝山』に潜む、あまりにも深すぎる禁忌の存在だった。そこは本来、人が触れてはならない領域。知らぬ間に境界を越えてしまった彼らは、すでに“こちら側”へ引き込まれていたのだ。
やがて鹿角は、矢口たちとともに祟りの根源へ向かう決断をする。
足を踏み入れた者は、もう戻れない——祝山が、その代償を求めている。
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出演:橋本愛 石川恋 久保田紗友 草川拓弥 松浦祐也 利重剛 ほか
原作:加門七海『祝山』(光文社文庫刊)
脚本・監督:武田真悟
配給:S・D・P
製作:映画「祝山」製作委員会
©︎2026映画「祝山」製作委員会
公式サイト:https://iwaiyama.com/
公式X:https://x.com/iwaiyama_movie
予告編
2026年6月12日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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