それぞれの知られざる裏話。広瀬すず×松坂桃李×横浜流星×多部未華子×内田也哉子 映画『流浪の月』初日舞台挨拶
2022年5月13日、TOHOシネマズ日比谷にて、映画『流浪の月』初日舞台挨拶が行われ、広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、内田也哉子、李相日監督が登壇。また、サプライズゲストとして、NHK連続テレビ小説「なつぞら」以来の広瀬すずとの共演となった増田光桜(ますだみお/10歳)が登場。広瀬すずと松坂桃李に花束を贈呈した。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画
※動画概要欄には見どころチャプターを記載しています。
■フォトレポート
-2年半の撮影期間、いろんなハードルがあったと思いますが、振り返っていかがですか?
李相日(リ・サンイル)監督
もちろん撮影は過酷ですし、コロナ禍で中断もあったので大変は大変なんですけど、大変さを伝えたいというよりも、どうして大変でも一生懸命やるのか、そのそのことを言えるといいなと思っています。
いい映画を作りたいという、みんなそれだけだと思うので、なかなか言葉にできないいろんな思いを見る人に届けたいっていうそれだけなので、大変だったのかどうかはこの場に立つと忘れます。
-その李組で再び主演を務めた広瀬すずさん。以前撮影を振り返って「マグマを吐き出すように演じた」とおっしゃってましたけど、こうして全国公開となってお客様を前にどんなお気持ちですか?
広瀬すず(家内更紗 役)
「マグマを吐き出すように」というのは、感情を強く出すシーンで毎度監督から言われていた言葉です。
作っている最中は必死すぎてどう伝わるのかということよりも、“更紗”として生きることに必死でしたし、そうして吐き出して映画を撮りきってこうして初日を迎えられて皆さんに届くということは、特別にドキドキと楽しみとちょっとした緊張感みたいなものを感じます。
▼「なんでこんなに痩せているんだ」
-松坂さんは撮影のために体重を落とされて、当時は「なんでこんなに痩せているんだ」ってニュースにもなりましたね。
松坂桃李(佐伯文 役)
「激ヤセでなにかあったのか?」ってありましたね。でも情報解禁前だったので理由は言えず(笑)
そのうちわかるだろっていう感覚で日々いました。
-広瀬すずさんと挑んだ李組はいかがでしたか?
松坂桃李
今までにないぐらい、役との向き合い、作品との向き合いをじっくりと時間をかけてアプローチさせていただきました。
これは自分にとっては初めてで、もちろん楽しいってことではないんですけど、ここまでやれるのかっていう、でも終わりがないという感じを初めて体験しました。
この仕事を続けていく上でとても大切なことを教えてもらったなと思っています。
-今までにない横浜流星さんの顔を見たという気がしましたが、今回の役を演じてみていかがでしたか?
横浜流星(中瀬亮 役)
この作品を観る方は、更紗(さらさ)と文(ふみ)の目線で観るので、そうすると、亮はとてもイヤなやつに見えるかもしれません。
けど自分がちゃんと亮の一番の理解者で、亮を愛して生きていこうと思ってました。あとは、更紗をまっすぐに愛すること。
僕も役作りの時間をじっくりと設けてくださったのでそこは感謝しています。そのおかげで更紗と亮との関係が作れました。
こんな贅沢な現場は無いので、この作品よりあとは自分でそこまで持っていかなくてはいけないので、ほんとうに幸せな現場だったなと感じています。
▼「桃李くんを触ってみて」
-多部さんは李組は初めてだったんですよね。苦労された点は?
多部未華子(谷あゆみ 役)
短いシーンの中でどれだけキャラクタが出るかなと悩みながら現場にいたことを覚えています。
あと、監督から「桃李くんを触ってみて」と言われて、撮影の空き時間とかセッティング中にずっと触らせていただいてました。さっきお話にあったように、その時ほんとうに痩せられていて、ウエストもゾっとするくらい細くて、この日に至るまでいろんな思いで今ここに立ってるんだなっていう気持ちも触りながら感じました。
自分も頑張らないといけないと、そういう気持ちに常にさせてくれるお人柄と体型でした(笑)
▼母・樹木希林のようには演じられないので
-内田さんは本来役者ではありませんが、こうして再び映画に出られることになりました。監督からはどんなオファーだったんですか?
内田也哉子(佐伯音葉 役)
恐れ多くも李監督からオファーをまずいただいて、でも後ずさりしてしまって。
姿形は母の樹木希林に似てるので、きっとそういう演技力を求められてるんじゃないと思いましたが、私はいつも仏頂面で表現力が乏しいので、無理だと思っていったんは丁重にお断りしたんです。
そうしましたらご丁寧にお手紙をいただきまして、「そもそも演技力は求めてないので大丈夫です。役の気持ちが理解できれば、もうそこに存在しているだけで大丈夫です」と。
そして、「余談ですけど、『悪人』という映画で、樹木希林さんにお世話になって、その時に『監督はしつこい』と言われました・・・」と結ばれてました(笑)
そうして一度お会いましょうということになって、カフェでいろんなお話を伺って、李監督はもちろん、韓国から撮影監督としてホン・ギョンピョさんがいらっしゃって、美術が種田さんで、そして素晴らしいキャストさんが決まっていて、そんな中に飛び込まない方が後で後悔するなと納得しました。
そして、初日に本読みという形でリハーサルを行った時、長い時間かけて文と母親の関係性をインプロビゼーション(即興)も入れながら進めました。
その時、母が「監督はしつこい」と言っていたことの意味が腑に落ちました。しつこいというのは、ちゃんと意味があって、一人一人の役どころに人物に魂に向き合って行くと、このように長い時間がかかるんだなと。
たくさんいろんなことを教わりました。全くお芝居できないんですけども、李監督に導いていただいて一つ一つ教えていただきました。
-松坂さんは樹木希林さんと、内田さんと親子共演になりましたね。先日は宿命の共演ともおっしゃってましたが。
松坂桃李
そうですね。『ツナグ』という作品では、孫とおばあちゃんという関係でご一緒させていただいて、今回は、也哉子さんとは親子関係という、そのつながりで共演させてもらえるっていうのはこれは宿命と言わざるをしてなんと言えばいいんだろうかと、個人的なことですが、自分の中で特別な想いがありました。
▼本作の知られざる裏話(横浜流星編):撮影中にサプライズの誕生日プレゼントを仕掛けられた
横浜流星
文と更紗がすごく大事なシーンを撮っていて、僕は待機していたんですが、急遽1シーン追加すると言われて、嬉しいと思って現場に行ったら、監督から「激昂して部屋に入ってきて2人にゴミ箱を投げつけろ」と言われて。
「けっこう責める演出するな」と思って、でもシーンが追加になったのは嬉しいので、よしと思って意気込んで段取りをやったら、ごみ箱の中にプレゼントが入っていて。
嬉しいんだけど1シーン追加っていうのは無いんだっていうちょっと残念な気持ちもあって、なんだか不思議な気持ちになりました(笑)
松坂桃李
(サプライズの段取りだってことは)聞いてました。
普通に部屋に入ってきた瞬間にサプライズでおめでとう!だったらわかるんですけど、部屋に激昂して入ってこないといけない。
広瀬すず
(笑)
松坂桃李
激昂の流れからゴミ箱を開けたらプレゼントが入っている。俺今日は誕生日だ、そういうことか。っていう、怒りから一気に喜びにいくまでのストロークが凄まじかったなと思います(笑)
広瀬すず
ゴミ箱を開けた瞬間の横浜流星さん、「へっ?」みたいな聞いたことのない声を出されてて、私はすごいツボにハマってしまいました(笑)
-何をもらったんですか?
横浜流星
(原作で出てくる)バカラのグラスです。それにお酒を入れて飲んでます。
▼本作の知られざる裏話(内田也哉子編):母・樹木希林と李監督のエピソード
内田也哉子
母が、李監督の『悪人』という作品で長崎の離島でロケがあった時、翌日東京で仕事があるから、飛行機に乗るためその日のタイムリミットをお願いしていたそうなんです。
でも、李監督が撮影を粘りに粘ってなかなか終わらないから、母は監督に「これ以上良いものは撮れない!」って言って、逃げて帰ってしまったというエピソードを母から聞きました(笑)
▼本作の知られざる裏話(広瀬すず編):撮影中はモリモリ食べてた
広瀬すず
いっぱい食べてました。撮影中はものすごくエネルギーを使うので(笑)
李相日監督
桃李くんは役柄的にかなり体重を絞らないといけない話はましたが、すずの場合は、どこか影を背負っているという意味で、少しほっそりとしたラインくらいでというお願いはしていました。でも撮影中はカロリーを消費するので逆に食べないといけないと思います。
広瀬すず
お昼は特に食べてました。トレーナーさんに管理していただきながら。
で、炭水化物も食べてくださいってことで、ちょっとした息抜きにもなりますし、ふわって一回軽い気持ちになれるので、よくマネージャさんと焼き肉に行って食べてました。
李相日監督
桃李くんのことを考えるとちょっとね・・・
広瀬すず
ほんとうに申し訳ございませんでした!!(ペコリ)
松坂桃李
いえいえ。むしろ良かったですよ。最初のカメラテストの時、「これは痩せてきたなぁ」って思って、これを撮影中キープするのは大変だろうなって思っていたので。
でも、食事管理のトレーナーさんが付いてくださってたんですよね。
広瀬すず
はい。体重をキープするための食事管理をしてもらってました。その中で、お昼は好きなものを食べていいってことになって、ラーメンも食べたり。
でも一度、間違って桃李さんを食事に誘ってしまいましたよね(笑)そうしたら「僕は大丈夫です・・・」って。
で、私たちはその日監督とコンビニのご飯にしました。
李相日監督
そして、最後のシーンの撮影が終わってから、外食に行って何でも食べていいってことになったんだけど、まずは胃に優しいものってことで、最初に雑炊を頼んだんだよね。
松坂桃李
はい。食べだしたら手が止まらなくて。
李相日監督
雑炊をこんなに美味しそうに食べる人は初めて見ました。
松坂桃李
(笑)美味しかったですね。監督がぜんぶごちそうしてくれて。
李相日監督
その時笑顔を見れただけで、罪悪感が消えました(笑)
▼本作の知られざる裏話(多部未華子編):李組の情報収集をしていた
多部未華子
もちろん監督の作品はすごく好きでよく見ていたんですけど、撮影現場の雰囲気やお人柄までは知らなかったので調べてみたら、恐怖に慄くような言葉しか載ってなくて。それこそ広瀬すずさんのインタビュー記事とか。なので最初はビビリながら撮影現場に行ってました。
実際お会いしてみたら、もちろん厳しい方ですが、怖いというのはちょっと違う気がします。「久しぶりの撮影現場です」って言ったら、「僕も久しぶりの監督の仕事です」って優しくフォローしていただきました。
松坂桃李
確かに、衣装合わせとかで多部未華子さんにお会いした時、珍しくガチガチに緊張されていて。聞いたら「李組のことを調べた」っておっしゃってて(笑)
その時、李監督は厳しいというよりは、愛情深いので妥協しないところがあって、それが厳しく感じるのかもというお話はしました。
▼本作の知られざる裏話(松坂桃李編):コーヒーを淹れる練習を兼ねてスタッフ・キャストにコーヒーを振る舞っていた
松坂桃李
劇中、文が営んでいるカフェが登場しますが、ほんとうにコーヒーを淹れられるように美術部の方が組んでくださったんです。
なので、撮影期間中も現場でコーヒーを淹れる練習をずっとしていました。
で、コーヒーを淹れたら飲まないといけない。でも自分ひとりで飲むとカフェイン中毒になるので(笑)、皆さんに配っていました。
そうしたら、現場で僕よりも美味しいコーヒーを淹れる人がいることに気づいたんです。録音部の方なんですけど。で、だんだん張り合う気持ちになってました(笑)
▼サプライズゲスト登場!
増田光桜(ますだみお)(安西梨花 役)
今回が映画に出るのも舞台挨拶をするのも初めてなので、今すごく緊張しています。よろしくお願いします。
-光桜(みお)さんは、広瀬すずさんと朝ドラの「なつぞら」で親子役共演されてますよね。
広瀬すず
そうなんです。娘なんです。
-光桜さんの演じる安西梨花は、更紗と文に影響を与える重要な役柄です。広瀬さん、共演してみてどうでしたか?
広瀬すず
朝ドラの時は撮影期間が長くて、お母さん役も初めてだったので、光桜ちゃんとのコミュニケーションは大事に、半年間、休憩中もずっと遊んでたんだよね。
なので、こんなにすぐに、しかも李組で共演できたことがものすごく嬉しくて、どこかお母さんの気持が離れず、監督と横に並んでいると感動して泣きそうになりました。
ずっと距離が近いままお芝居ができたので、今回もその延長線上でご一緒できて本当に幸せです。
増田光桜
2年ぶりに広瀬さんと会えて、すっごい嬉しかったです!
-松坂桃李さんはどうでしたか?
松坂桃李
素晴らしかったです。3人でいるシーンがけっこうあるんですけど、そこでは、文を通してずっと幸せな時間が流れていたので、幸せをありがとうという感じです。
増田光桜
演技中に、松坂さんの声が心の中でじわぁって響いて、松坂さんってすごいなぁ、素敵だなぁって思ったのを覚えています。
松坂桃李
今の感想がじわぁって響いてます!
▼最後にメッセージ
松坂桃李
この作品は、いろんな理由で人には言えないことを抱えて生きている登場人物しかいないです。
そんな人たちの息遣いや、生きている姿というものを、是非この『流浪の月』を通して観ていただくと、何か得るものがあるんじゃないかなと、皆様に通ずるものがあるんじゃないかなと思っておりますので、どうか最後までご覧いただけると幸いです。
広瀬すず
初日を迎えてこの作品がどんどん世の中に広まっていく、一人でも多くの方に届いていくというのはとても嬉しいことですけど、なんだか寂しい気持ちもあるような、そんな作品となりました。
きっと、いろんな方に、いろんな目や肌で感じてもらえるものがたくさんある作品になっていると思います。
美しくて強くてたくましい人を、皆さんにぜひ見届けていただけたらなと思います。
■フォトギャラリー
[写真:金田一元/動画・記事:桜小路順]
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映画『流浪の月』
INTRODUCTION
実力と人気を兼ね備えた俳優・広瀬すずと松坂桃李の2人が紡ぐ物語は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1 位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうによる傑作小説が原作。
10歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗(かない さらさ)を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文(さえき ふみ)を松坂が演じる。
また、事件から15年後に文と再会してしまう更紗の現在の恋人・亮を横浜流星が、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じることも発表されている。
恋愛、友情、家族愛……そんな既存の言葉では括れない、限りなく稀有な2人の関係性をスクリーンに描き出すのは、デビュー以来そのエモーショナルで骨太な作風で観客の心を鷲掴みにしてきた『悪人』『怒り』などの李相日(リ・サンイル)監督。
また、『パラサイト 半地下の家族』『バーニング』『哭声/コクソン』『母なる証明』など、韓国映画史に残る作品を次々手がけてきた撮影監督・ホン・ギョンピョ、『キル・ビル Vol.1』『ヘイトフル・エイト』『フラガール』『悪人』『三度目の殺人』など、世界を股にかけて活躍する美術監督・種田陽平ら、国境を越えた才能が集結した。
いつまでも消えない“被害女児”と“加害者”という烙印を背負ったまま、誰にも打ち明けられない秘密をそれぞれに抱えて生きてきた2人。15年後に再会した2人が選んだ道とはーー?
第一線を走る俳優陣とスタッフが集結して作り上げる2022年必見の1本。
STORY
雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。
それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて…
原作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
出演:広瀬すず 松坂桃李
横浜流星 多部未華子 / 趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 / 柄本明
監督・脚本:李相日
撮影監督:ホン・ギョンピョ
製作総指揮:宇野康秀
製作幹事:UNO-FILMS(製作第一弾)
共同製作:ギャガ、UNITED PRODUCTIONS
配給:ギャガ
(C)2022「流浪の月」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/rurounotsuki/
公式Twitter:@rurounotsuki
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