上村侑

【インタビュー】上村侑「現場のピリピリ感がすごく好き」

公開中の映画『GONZA』。5人の心と身体が入れ替わる本作は、ラブコメディの一面もありつつ、ジェンダー、障害、宗教などの多様性の課題に対する疑問も投げかけている。本作で、主人公を演じる上村侑(うえむらゆう)に撮影エピソードのこと、中学生当時の主演作で新人賞を取ってからの今の気持ちの変化などについて話を聞いた。

上村侑 インタビュー&撮り下ろしフォト

■入れ替わり後の役をメインに役作り

-撮影場所は奈良だと伺っていますが、撮影の合間などで奈良らしい体験はできましたか?

上村侑(鹿島拓海/かしまたくみ 役)
ほとんどのシーンは、大和ハウスさんのコトクリエをお借りして撮影をしていたんですが、東大寺の門の前を歩くシーンと、その近くの奈良公園でも鹿とたわむれる感じのシーンの撮影で、少しだけ奈良を感じることができました。撮影の合間は、鹿せんべいをあげたりもしてました。

上村侑

上村侑

-5人の心・身体が入れ替わるという物語で、上村さんは、元々の役の鹿島拓海と、入れ替わり後の坂巻有紗(さかまきありさ)さん演じる北島ナディアと2つの性格を演じていますが、これについてどう取り組まれましたか?

上村侑
千村監督から言われていたのは、入れ替わったあとをメインに役作りしていいよ、ということ。で、いちばん役作りの見本となる坂巻さんが近くにいるので、それがすごく参考になりました。
あと、撮影に入る前は、女性らしさを感じる振る舞いの観察や研究も重ねました。

GONZA

心と身体が入れ替わった5人(場面写真)

-演じるにあたって坂巻さんとはどういうコミュニケーションを?

上村侑
お互いを演じ合うということで、男性らしさ・女性らしさという点で話し合いました。たとえば座ったときに足を開くのか閉じるのか、それひとつでも違って見えてくるよとか。

-坂巻有紗さんの印象は?

上村侑
とっても元気な方でしたし、一方で、拓海に近い方なんじゃないかなとも思いました。元気いっぱいな雰囲気の方ですが、周りへの気配りはしっかりされていますし、周りの皆さんを見ながら動いていくという感じでした。
“鹿島拓海”という人間は、周りがイエスって言ったらイエスって言うし、周りに同調しやすいという“ザ・平均”な日本人の側面があります。坂巻さんは、“ザ・平均”からはかけ離れていますが(笑)、芯の部分、周りの空気を読めるという点は拓海と似ている部分かなと思いました。坂巻さんは、実は周りに配慮しつつ、でもはっちゃけてる方という印象です。

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北島ナディア(演:坂巻有紗)

■坂巻有紗さんから「怖い」って言われた

-先日は、坂巻さん、千村監督とインスタライブもされていたそうですが。

上村侑
はい。作品のことなどを話しました。そのときに坂巻さんから僕の第一印象について「怖かったです。ケモノのような目をしていて食われるんじゃないかなと思った」と言われました(笑)

-それに対してどういう弁解を?

上村侑
先ほども言いましたが、坂巻さんが演じる北島ナディアが、僕の役作りにとって大事な材料なので、なにひとつ坂巻さんの言動を見逃しちゃいけないと思ってすごく集中して坂巻さんを見ていたのが、そういう怖い目に見えてしまったんだろうなって(笑)

-以前、上村さんご自身で「自分は眼がチャームポイントだと思っている」とおっしゃってましたが、たしかに眼力(めぢから)を感じます。

上村侑
そうですね、眼力ある人が集中したら怖い目になってしまうという(笑)

上村侑

■現場のピリピリ感がすごく好き

-その他の共演者(久住小春さん、鈴原ゆりあさん、篠田諒さん)との共演はいかがでしたか?5人が入れ替わるので、誰が誰なのか?と認知することでの苦労はありましたか?

上村侑
脚本を読んでいる段階で、すでに誰が誰だかわからなくなってました。一般的に、自分以外のセリフも頭に入れて、流れを理解するように努めるんですが、この作品は、もちろん自分のセリフは覚えて現場に臨んだんですけれど、他の方のセリフは見ても見てもまったく覚えられないんです。
それは撮影が始まってからもそうで、このシーンは誰が誰だっけ?というのがわからなくなるので、みんなで擦り合わせの協力をしながら進めました。「今、私は◯◯だよ」って。
すごい大変でした(笑)

-お芝居そのもので難しかったことはありましたか?

上村侑
やっぱり、“違う文化と宗教を持った異性”を演じるということが難しかったです。

-印象に残っているシーンは?

上村侑
予告編にもある映像ですが、現場がピリついたという意味で印象に残っているのは、小西貴大さんに僕が胸ぐらを掴まれて、壁に押し付けられるシーンの撮影です。このとき、お互い究極に集中状態に入っていたので、周りもすごく緊張感が漂っていました。
ただ、僕はこういうピリピリ感がすごく好きで、それは思いっきりやってもいいという環境が整えられている感じがするからです。

-それは周りのスタッフのこれから撮るシーンを理解して雰囲気づくりをされているからでしょうか?

上村侑
それもあると思いますが、一番大きかったのは、小西さんが作ってくれた空気だと思っています。

上村侑

■「主演に決まったわけじゃないから」

-主演として、すなわち座長として撮影現場に居ることについて心がけたことはありますか?

上村侑
座長として意識したことは、「現場の空気に食われないよう、みんなのお芝居に対して本気で立ち向かう」ということです。
撮影の前日から現場のコトクリエに入って、監督を含めた全員で最終ミーティングをしたんですけれど、そのときに監督が「上村の名前が一番上にあるけれど、主演に決まったわけじゃないから。」と急に言いだして、全員「えっ?そうなの?」ってなって(笑)
続けて監督は「誰が主演になってもいいように脚本を書いているから、みんなは上村を食うつもりで行けよ」と、圧をかけてきたんです。
それを聞いて僕は「食われるわけにはいかない。ここで負けたら恥だろ」って思いつつ、もちろん芝居で勝ち負けを判断するのは難しくて、要するに、相手に飲まれないように、食われないようにと、次の日からの撮影に取り組みました。それがあったからこそ、現場でのピリつきの空気感も生まれたと思います。

-もしかして、千村監督流の応援方法なんでしょうか。主演俳優のモチベーションを上げるための。

上村侑
そうだとすると、僕はまんまと監督のやり方に乗せられた形となりました(笑)

-そういう千村監督の印象は?

上村侑
僕と上村監督とは、性格的に似ている部分があって、頭の中に組み立てているものにも近いものがあってやりやすかったなという印象があります。
たとえば、あるシーンの撮影のリハで、僕が頭の中にイメージしていた立ち位置に立ったら、監督も同じことを考えていたりとか、僕と監督は同じ“絵”を描いていたんだなって感じる瞬間がありました。

上村侑

■大黒摩季さんとの贅沢な時間

-大黒摩季さんが歌う主題歌「リアル」に坂巻さんと上村さんがコーラスとして参加することになったきっかけは?

上村侑
レコーディングのあとに聞いたんですけれど、大黒さん御本人が「2人をコーラスに入れたい」とおっしゃってくださったみたいで、とても光栄なことだなと思いました。
そして先日放送された「金スマ」番組内で、デビュー30周年として出演された大黒摩季さんがコーラスに賭ける熱い想いを語られているのを拝見して、そんな大黒さんに声をかけていただいたことは、ほんとうにありがたいことだし、大事な経験をさせていただいたなと思いました。

-レコーディングのときは大黒さんも一緒に?

上村侑
はい。レコーディングの日に大黒さんも来てくださって、しかも歌の指導もしてくださったんです。

-それは贅沢な経験ですね!

上村侑
ほんとにこれ以上ないくらい贅沢なことでした。
歌については素人な僕ですが、大黒さんが指導してくださる前と後では、モニター室のスタッフの方々も「たった1日でだいぶ変わったね。すごく良くなった」って言ってました。僕自身はまだ実感が無いんですけれど(笑)

GONZA

レコーディング時のオフショット(上村侑/坂巻有紗/大黒摩季)

-上村さんは元々歌はよく歌われるんですか?

上村侑
歌は好きですし、カラオケにも行きますし、周りから特に褒められるということはないですね。これまで、自分の表現方法のひとつとして“歌”を意識することなく、“芝居”に集中していましたが、今回の経験を通して、今後は徐々に“歌”にも足を進めて行けたら面白いのかなと思うようになりました。まだまだ早い気もしますけれど(笑)

上村侑

■プロフェッショナルとしての“役者”に。

-主演映画『許された子どもたち』(20/内藤瑛亮監督)で、第75回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞されたときの授賞式で「この作品がきっかけで役者としてやっていくことの覚悟がついた」と話されてましたが、その後、2年ほどしか経ってないものの、俳優としてご自身の成長や手応えを感じられていることがあれば教えてください。

上村侑
日々、作品ごとに成長させてもらっているなとは常に感じています。それこそ、昨年秋の「ファーストペンギン!」(日本テレビ)というドラマにレギュラーで出させてもらったときに、奈緒さんと堤真一さんをはじめとして、いろんな先輩方のお話を聞いて、お芝居を目の当たりにして、「ぜんぜんまだまだ伸びしろがあるな」と自分に感じたので、これからも役者として生きていこうという気持ちは変わっていません。
でも少しだけ変わったかなと思うのは、20歳のときに「役者を“仕事”として生きていこう」と、より明確になったことですね。役者を生業として生きていくということは、自分がどんな状況でどんなことを感じていたとしても、プロフェッショナルとして“仕事”を進めていくということを意識するようになってきました。
毎日映画コンクールのときは、自分自身、覚悟を持ちたいという気持ちもあったからですが、そのときから一歩大人になったかなと思います。

上村侑

■鳥になって空を飛んでみたい!

-本作にちなんで、もし、他の人や動物に入れ替われるとしたら何に?

上村侑
鳥になって空を飛んでみたいですね。ワシやフクロウだったりの猛禽類に。自分の身体ひとつで空を飛ぶなんて、人間だと絶対にできないじゃないですか。なので鳥になって飛んでみたい!

-最後に本作の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。

上村侑
予告編を観てくださった方は感じられているかもしれませんが、奈良を舞台にいろんなテーマが組み込まれた作品です。とはいえラブコメでもあるので、気軽な気持ちで観てもらえたらなと思います。その上で、“多様性とは?”というちょっと重めになりがちなテーマについて、自分の身近な人と話すきっかけになればいいなとも思います。いろんな方々に届いてほしいので、是非劇場でご覧ください。

上村侑

上村侑 プロフィール
2002年11月2日生まれ、鹿児島県出身。
主演映画『許された子どもたち』(20/内藤瑛亮監督)で第75回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。
主な出演作品に『親密な他人』(22/中村真夕監督)、『さよなら、バンドアパート』(22/宮野ケイジ監督)、『海の夜明けから真昼まで』(22/林隆行監督)、『空のない世界から』(22/小澤和義監督、『ワタシの中の彼女』(22/中村真夕監督)、『近江商人、走る!』(22/三野龍一監督)、『Single8』(23/小中和哉監督)、テレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ)などがある。

■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎]


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映画『GONZA』

《INTRODUCTION》
全てが平均点で、絵に描いたような“普通”が代名詞の主人公・鹿島拓海を演じる上村侑は、映画『許された子供たち』(2020年/内藤瑛亮監督)で主演に抜擢されると、高い演技力が認められ、「第75回毎日映画コンクール」スポニチグランプリ新人賞を受賞。昨年は日本テレビ系ドラマ「ファーストペンギン」出演や、映画『近江商人、走る!』(2022年/三野龍一監督)にて主演を務めるなど、目覚ましい活躍をしている。

才色兼備なヒロイン北嶋ナディアを演じるのは、高校生で出演した人気リアリティ番組で話題となり、TGC teenやファッションリーダーズ、関西コレクションに出演などモデルとして参加。短編映画『魔女』『CAT』( 2020年/大塚祐吉監督)の2作品で立て続けに主演となり、映画『夜を走る』(2022年/佐向大監督)で長編映画デビューを果たし、モデルの枠を飛び越えて女優としての活躍の場も広げている坂巻有紗。

また、研修センターで拓海やナディアと共に人間が入れ替わってしまう伊藤英美里役、王優役、花村イバン役に、それぞれ久住小春、鈴原ゆりあ、篠田諒が出演し、車椅子ユーザー、LGBTQなどマイノリティ性を孕んだ難しい役所を見事に演じている。

そして、数多くの作品に出演しその世界観を補強するバイプレーヤーの小西貴大や、今年注目されている若手俳優の望月歩(友情出演)が集結。
主題歌は、デビュー30周年を迎えた大黒摩季が主題歌を書き下ろした作品。
コミック「サトラレ」の作者・佐藤マコトがSDG’sを取り上げながら原案を担当し、監督は 「週刊赤川次郎」で監督デビュー後、「HiGH&LOW SEASON1」「PRINCE OF LEGEND」「京阪沿線物語・古民家民泊きずな屋へようこそ」など作品を手がけ、多くの話題作・人気作品を作りあげている千村利光。本作で、オリジナル脚本も手がけている。

《STORY》
大のゲーム好き以外は取り柄がない鹿島拓海は、奈良で実施する新人研修に初日から遅刻してしまう。
あわてて走り込んだ研修センターの廊下で、すれ違いざまに才色兼備な新人女性社員・北嶋ナディアとぶつかり一目惚れ!
5人が一組となり、研修最終日にプレゼン発表のミッションがくだる。
拓海はナディアや英美里、王、イバンと同じチームになり、資料作りをしていると、予期せぬ出来事が!
神様のお供物・権座(GONZA)を口にした後、 「人間が食べると罰が当たる」とされる鹿せんべいをつまみ食いした拓海のせいで、チーム5人の身体が入れ替わっちゃった!?
「僕の私の身体はどこ?」「秘密がバレてしまう!」「思うように動けない⁉」「そもそもなんで!!!」
LGBTQ、 車イスユーザーなどごちゃまぜな状態に。
うろたえる5人に、研修担当社員・松永は、奈良観光気分を味わえるように開発されたゲーム「ファイ奈良ファンタジー」のヒントを出した。
入れ替わったことで、私ではない誰かの悩みやコンプレックスが浮き彫りになり、ハプニングと想いが交錯する中で徐々に見えてくる現実(リアル)。
プレゼン最終日までに、果たして5人は元に戻ることが出来るのか?

上村侑 坂巻有紗
久住小春 篠田諒 鈴原ゆりあ 小西貴大 / 望月歩(友情出演)
川井亘 須賀由美子 真弓 大阪フィルム・カウンシル

原案:佐藤マコト
脚本・監督:千村利光
主題歌:「リアル」大黒摩季  コーラス:上村侑・坂巻有紗
劇中使用曲:INNOSENT in FORMAL「EVERYBODY」
鉄風東京 「know pain」「Orion」

ごんざ監修:おかずや こよい
ゲーム監修:あをにまる
音楽制作:ロードアンドスカイ・オーガニゼイション
撮影協力:春日大社 東大寺   大和ハウスグループ みらい価値共創センター「コトクリエ」
奈良県奈良公園室 奈良クラブ
ゲームソフト協力:株式会社Gotcha Gotcha Games
協賛:大和ハウス工業株式会社 エームサービス株式会社 株式会社応援団
AIコンサルタント株式会社 一般社団法人U6ランバイクチャンピオンシップ機構
後援:奈良県 (公社)奈良市観光協会 奈良商工会議所
制作協力:クープ 宣伝:とこしえ 劇場営業:FLICKK
配給:ベストブレーン
「GONZA」製作委員会:株式会社ハピト 株式会社G・カンパニー 株式会社MVサービス
©2023「GONZA」製作委員会
公式サイト:https://gonza-movie.com

予告編

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6月23日(金)よりシネマサンシャイン大和郡山にて先行公開
6月30日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

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