【インタビュー】坂ノ上茜「ひとつひとつの積み重ねで今の私がある」
現在公開中(2023年2月現在)の映画『BAD CITY』でアクションに挑戦、『ぬけろ、メビウス!!』では主演も務めた俳優・坂ノ上茜。今年中の公開待機作もある彼女に、それぞれの作品の撮影の振り返りや、今後の抱負などを聞いた。
坂ノ上茜 インタビュー&撮り下ろしフォト
■映画『ぬけろ、メビウス!!』
-『ぬけろ、メビウス!!』(2月3日公開)で、坂ノ上さんは演じられた“優子”のイメージにピッタリだと感じたのですが、そもそも本作主演が決まった経緯は?
坂ノ上茜(主演・櫻川優子 役)
監督からオファーいただきました。
-台本を最初に読んだ時の印象は?
坂ノ上茜
村上かのんさんの脚本の文章がとても面白くて、読み進めていくごとにリズムを感じました。読み終わった後は、単純にすごくいいお話だと思えて、優子の役柄も自分と遠くない印象を持ったので、この役やりたいなと素直に思いました。
-どのあたりが遠くないと感じられましたか?
坂ノ上茜
ちょっと語弊があるかもしれないですけど、いい加減な感じ(笑)突っ走る感じだったり、自由な感じはちょっと似てるなと思いつつ、優子は田舎育ちでずっと地元にいる子なんですけど、私も熊本で生まれ育ったので、その当時、進路や学歴で悩んでいる子たちが身近に多かったので、そういう意味でも遠くない存在な気がしました。
-そういう優子を演じる上でご自身で取り組んだことや、加藤慶吾監督に相談されたことは?
坂ノ上茜
本読みの時に、一旦自分なりの優子を出したところ、監督が「優子のイメージが出来上がった」ということをおっしゃってくれました。
自分の役作りとしては、身近で悩んでいる子たちがいたから、その子たちに改めて、進路や学歴のコンプレックスのことや、地元でずっと働くのか、福岡や東京に出るのかという葛藤について聞くことをしました。
私も高校までずっと熊本にいたから、自分自身の等身大な部分でも理解できるところがあって、そういったことをヒントにして役作りをしていきました。
藤田朋子さんの大きな熱量に圧倒された
-お母さん役の藤田朋子さんとは、親子ゲンカのシーンがありますが、印象に残っていることを教えてください。
坂ノ上茜
親子ゲンカのシーンは、何度もあって、最初は多分母親に対する反抗心みたいなものだけど、だんだん優子の気持ちと、母の心配する気持ちが、お互いヒートアップしていきます。それが最高潮に達してぶつかり合うシーンは、とにかく藤田さんの熱量が大きくて、それに圧倒されてしまいました。優子としてそれを振り払うことができなくなり、一旦撮影を止めてもらって、藤田さんと話し合い、親子としての関係性、気持ちを作る時間をいただきました。
長年俳優をされている藤田さんを止めるってこんなに大変なんだなって。でも負けないぞって気持ちで必死にそのシーンに挑んで、最後に爆発する優子の決意のシーンが撮れたと思っていますので、それは深く印象に残っています。
-撮影全体で印象に残っていることはありますか?
坂ノ上茜
泊りがけのロケだったので、共演者やスタッフの方々と距離が近くて楽しかったです(笑)
作品のために自動車免許を取得!
-劇中、優子は自分で運転する車の中で、「浜辺の歌」や「箱根の山」などの唱歌や童謡を歌いますが、これは優子の学生時代の合唱コンクールでの(本人曰く)唯一の成功体験から来ているのでしょうか?
坂ノ上茜
私もそうだと思っています。優子は無意識かもしれないですが、自分の良き思い出、大変だったけど何かを成し遂げたという体験から、この曲を歌っているんじゃないかなと。
後のシーンでは、英語のリスニングに変わったりもしますが、車内空間は優子にとって、一人で考え事したり、気持ちの変化が見える場所。会社を休んだときも車の中で過ごしていて、車内のシーンは優子の心情を表しているんじゃないかなと思います。
-坂ノ上さんご自身は車の運転をされるんでしょうか?
坂ノ上茜
車内のシーンがとても大事だと思っていたこともあって、この作品の撮影のために、2ヶ月間、教習場に通って自動車免許を取得しました。
教習所のスケジュールもマネージャーさんにお願いして全部組んでもらって、サボろうと思ってもサボれない環境を作って、朝から夕方まで教習所に通いストレートで合格できて、何とか撮影に間に合いました。
-いいきっかけになりましたね。
坂ノ上茜
そうなんです。もともとは運転免許を取ろうと思っていなかったので、いい機会でした。その後、他の作品でも運転するシーンがあったりしましたし。
-プライベートでも運転されますか?
坂ノ上茜
(熊本の)実家に帰ったときに両親を乗せて運転はしてみましたが、東京ではまだちょっと怖いですね。
-優子のように運転しながら歌うという余裕はまだ無い感じですか?
坂ノ上茜
はい。なので、撮影の時もいっぱいいっぱいでした。「箱根の山」を歌っているシーンは、途中歌詞がわからなくなって「なんちゃら~♪」って謳っているんですが、実は本当にわからなくなってしまったんです(笑)でも、監督はそれを面白がってそのまま本編に使ってくださいました。
ひとつひとつの積み重ねで今の私がある
-この映画の一つのテーマかもしれないですけれども、坂ノ上さんが自分を肯定してあげられるような成功体験みたいなものって何かありますか?
坂ノ上茜
私の場合は、大きくこれが成功体験ですとは言えないですけど、一個一個の積み重ねな感じがしています。
18、19歳ぐらいでやっとお仕事させていただけるようになって、こうして主演作品をやらせてもらうまで8年ぐらい。始めのうちは、「初めまして」と言う機会が多かったのが、だんだんと「お久しぶりです」って言える機会が増えたり、以前お仕事でご一緒した方が、また呼んでくださったり、そういうことの積み重ねで、より多くの方に知っていただく機会が増えて、お仕事にも繋がっていく。
どこで誰が見ているか分からない世界だから、少しずつの積み重ねで、今やっと主演作品含めて、いろいろな作品に携わることができていると思っています。それが自信にもつながってきています。
-なるほど。
坂ノ上茜
1、2年目の20代前半の頃は、名前を覚えてもらえなくて、「そこの子、もっとこっち!」みたいな感じで。嫌な思いをすることもありましたが、吉岡里帆さんが主演の作品に1日だけ撮影で参加したときに、「茜さん、吉岡里帆です。よろしくお願いします!」と声をかけて下さり、スッと現場に馴染めたことがとても嬉しかったんです。
この経験から、自分が主演をやる時がきたら、ちゃんと名前を呼んでコミュニケーションを取ろうと、そこから学ぶものがありました。
自分がされて嬉しかったことの積み重ねと、今、それを意識してやれる環境になったことも、とても嬉しいなって思います。
-嬉しい体験はそのまま引き継いでいけばいいし、嫌だった体験は、反面教師にしてやめておこうって思えますもんね。
坂ノ上茜
本当にそうですね。
“頑張れ”とはあんまり言いたくない
-この作品は、いろいろともがいている若者への応援歌的なところもあると感じましたが、その点について坂ノ上さんのお考えをお聞かせ下さい。先日の完成披露舞台挨拶では、「頑張れ」という直接的な言葉はあまり好きじゃないともおっしゃってましたが。
坂ノ上茜
届く人に届けばいいなって思っています。映画は、興行収入はもちろん、評価サイトでの評価もある時代ですけど、この作品をいいと思ってくれる人が多ければ多いほど、そんな嬉しいことはありません。やっぱり観る側のその時のさまざまなコンディションで、映画を観た感想って変わってくると思います。たとえば、今もがいていて悩んでいる人が、その道を貫くのか、やっぱり別の道を選択するのか、どちらも勇気がいることだと思うので、そういう人生の選択で背中を押せるような作品であれば、私は嬉しいなって思います。だから、一概に“頑張れ”とはあんまり言いたくないです。頑張っている人は頑張っていますから。
-本作で、優子は新たな選択をしようと奮闘しますが、坂ノ上さんが出演されたテレビ朝日のCM「未来をここからプロジェクト2022」手を上げる篇を見ると、ほんの少し未来の優子のような印象を持ちました。
坂ノ上茜
嬉しいです!
坂ノ上茜出演CM「未来をここからプロジェクト2022」(15秒)
■5分に1回タイムリープ!映画『神回』
-次に今年の夏頃公開映画の『神回』についても、ご自身の役どころ含めた作品の紹介をお願いします。
坂ノ上茜(加藤恵那 役)
この作品は、「TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY」という新たな才能を発掘する新プロジェクトによる第一作目となります。なので、中村貴一朗監督にとっては初長編作品。私も、そのプロジェクトのオーディションで選んでいただいたのですが、とてもフレッシュな座組です。
物語としては、青春×タイムリープの青春映画なんですけど、本作は5分に1回タイムリープするんです。
-そうなんですか!?
坂ノ上茜
5分に1回タイムリープするので、とてもテンポが早くて、13時00分から始まって、5分経つとまた13時00分に戻ります。だから、タイムリープって言ってもこんな短いタイムリープがあるんだって。
主人公の男の子・沖芝樹(演:青木柚)がタイムリープしていて、彼が目覚めると目の前にいる女の子・加藤恵那を私が演じています。だから私はタイムリープしている自覚がない役なんです。
だからすごく演じてて難しかったのは、
タイムリープする青木柚くんは、その5分間でいろいろやらなくちゃいけないので、大変だったと思いますし、それを受ける側の私も、5分経ったら、またまっさらな状態でお芝居をスタートさせないといけないのがとても難しかったです。「今のカットは、(タイムリープが)何万何千何百回目ね」と言われたりして、今どういう状況なんだろう?って(笑)
-えっ?何万回も?
坂ノ上茜
はい。相当な数の5分を繰り返していくので、単なる“青春×タイムリープ”じゃなく、人の本質も描かれていて、脚本を読んだ時に、最初はどういうこと?ってなってたんですけど、ある瞬間を境にページをめくるのが止まらなくなるぐらいにのめり込みました。「TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY」プロジェクトで選ばれた作品だけに、とても面白いなと思いました。完成映像はまだ観てないんですが、どうなっているんだろうと、ソワソワしています(笑)
-何回も13時00分に戻るということは、その度に同じ表情・セリフのお芝居をやり直すということですよね?
坂ノ上茜
毎回、同じセリフを言うんです。なので、ニュアンス変わってないか心配になりながらやっていました(笑)
-違っていると観ている人が違和感を持つかもしれませんしね。
坂ノ上茜
そうなんですよ!でもちょっとずつの変化も・・・これはまだ言えないんですけど、そうなるんだ!って私もビックリしました。是非公開を楽しみにしていてください!
■バラエティとはギャップがある私を見れます!映画『BAD CITY』
-先日『BAD CITY』が公開されましたが、小沢仁志さんはじめ、怖いおじさんがたくさん出演される中、坂ノ上さんもアクションに挑戦されていますが、ご自身の役どころとその取り組み、そして作品の見どころをご紹介ください。
坂ノ上茜(新人刑事・野原恵 役)
『BAD CITY』というタイトルだけあって、財閥、韓国マフィア、ヤクザなど、そういう人たちが裏で癒着し、暗躍している構図が描かれています。そこで悪さをしている人たちを取り締まるために特捜班が結成され、その中の新人刑事・野原恵が私の役で、いろんな抗争に揉まれながら悪を暴いていきます。
この作品は、小沢仁志さんの還暦記念アクション映画で最後の無茶と宣伝されているとおり、アクションパフォーマンスも素晴らしいんですが、その背景の熱い人間ドラマや人情が描かれていて、それを踏まえてのアクションとなっています。単に振り付けただけのアクションじゃなく、本当に魂でぶつかっている泥んこ喧嘩のアクション作品です。
アクションの練習期間は短かったんですが、園村健介監督や、同じチームで行動していた、アクションが素晴らしい三元雅芸さんに教えてもらいながら、現場に挑みました。
私が演じた野原は、新人刑事なので、最初はどうしようもない感じだったのが、映画が終わる頃にはすごく成長しているので、その野原の成長にも注目をしてもらえたらと思っています。
-完成披露舞台挨拶では、「殺陣の練習中に足の指が変な方向に行って脱臼した」ということを、小沢仁志さんのモノマネを交えておっしゃっていましたが、坂ノ上さんのアクションも見どころということですね?
坂ノ上茜
アクションも頑張りました!「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS)などのバラエティ番組で私のことを知ってくださった方からすると、ギャップがあると思います!いつも笑顔で天真爛漫だと思っていた子が、こんな顔するんだ、怒らせたら怖いなって、多分思ってもらえると思います(笑)
劇中冒頭の新人刑事丸出しの段階では、いつもの私のイメージに近いかもしれませんが、物語終盤になって成長してくると、バラエティだけで私を見ている方は知らない私に変わります(笑)
■届けられる人であり続けたい
-最後に、2023年の抱負含めて、ファンの方へのメッセージをお願いします。
坂ノ上茜
2023年は、ここ1、2年間で撮りためてきた作品が、まだ情報解禁されてないものも含めて、皆さんに観ていただける1年になりますので、是非楽しみにしていていただきたいです。
今日お話しした作品もそうですが、メインキャストでやらせてもらえる機会が多かったですし、これからも届いてほしい人に届けられる人であり続けたいです。作品の想いと自分の気持ちを言語化して、届けるまでが俳優の役目だと思っているからです。
あとは、変わらず、人とのご縁を大切にし、バラエティーでもお芝居でも作品を大事にして、いろんなことに挑戦していけたらなと思います。
坂ノ上茜(さかのうえ あかね)プロフィール
2015年、テレビ東京「ウルトラマンX」のヒロイン・山瀬アスナ役で女優デビューを果たす。
ドラマTBS「チア☆ダン」月9ドラマ「監察医 朝顔」 、映画『見えない目撃者』、『きみの瞳が問いかけている』などに出演。
現在BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」にレギュラー出演しているなど、幅広く活躍している。
2021年に1st写真集「あかねいろ」(光文社) を発売。2022年8月にはデジタル版も配信。
映画作品としては、ヒロインとして出演した『BAD CITY』が2023年1月20日公開、『神回』が2023年夏公開予定。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[メイク:つばきち/スタイリスト:豊島今日子/インタビュー・写真:三平准太郎]
映画『ぬけろ、メビウス!!』
2023年2月3日(金)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開中
出演:坂ノ上茜、藤田朋子、細田善彦、田中偉登、松原菜野花、棚橋ナッツ、吉岡そんれい/寺脇康文、加藤貴子
監督:加藤慶吾
脚本:村上かのん
映画『BAD CITY』
2023年1月20日~新宿ピカデリーほかにて公開中
出演:小沢仁志
坂ノ上 茜、勝矢、三元雅芸
中野英雄、小沢和義、永倉大輔
山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴
壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー
製作総指揮・脚本:OZAWA
監督・アクション監督:園村健介
主題歌:クレイジーケンバンド「こわもて」(doublejoy international/UNIVERSAL SIGMA)
映画『神回』
2023年夏 公開予定
出演:青木柚 坂ノ上茜
監督・脚本:中村貴一朗
製作:東映ビデオ
制作プロダクション:レオーネ
配給:東映ビデオ
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