【インタビュー】坂ノ上茜「高校2年生のときの夏休みが思い出深いです」
公開中の映画『神回』。何万回も繰り返す5分の果てに炙り出される切ない想いと人間の本性とが交錯する新感覚タイムループを描く本作にヒロイン役として出演する坂ノ上茜に、本作の魅力と自身の高校時代の思い出などを聞いた。
高校の夏休み。文化祭の実行委員になった樹(青木柚)と恵那(坂ノ上茜)は教室で出し物の打合わせを始めた。しかし、しばらくすると、打合せを始めた13時に戻ってしまうことに樹だけが気付く。その状況から抜け出そうともがく樹だったが・・・。
新たな才能を発掘する新プロジェクト【TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY】の記念すべき第1回製作作品に選ばれた中村貴一朗監督による本作は、「タイムループもの」という洋画・邦画ともに数多くの作品が存在するジャンルに挑みつつも、凡庸な青春ストーリーにとどまらず、学校という閉鎖空間の中で人間のさまざまな感情をあぶりだした脚本が、特別審査員を務めた足立紳(監督・脚本家)ほか、多くの審査員から絶賛された。
なぜ、樹はタイムループにハマってしまったのか。抜け出すことはできるのか…!? 数えきれないほど繰り返す時間の果てに炙り出される切ない想いと人間の本性とが交錯する新感覚タイムループ青春物語だ。
坂ノ上茜インタビュー&撮り下ろしフォト
■女子高生役を演じてみて
‐『愛ちゃん物語』(2022年公開)に続き、女子高生を演じるのはいかがでしたか?
坂ノ上茜(加藤恵那 役)
『愛ちゃん物語』の撮影は4年前だったので20代前半でしたが、『神回』は昨年の夏、26歳のときだったので、まだ女子高生を演じてもいいのかな?と思っていました。
でも、衣小合わせのときも周りの皆さんの反応が大丈夫!という感じだったので、現場に入ってからも心配はなかったです。
‐青木柚さんとの同級生感がよく出ていたと思います。
坂ノ上茜
ありがとうございます。柚くんとは5歳差なんですが、柚くんが大人っぽく見えるのもあるかもしれないですね。
‐演じられた“加藤恵那/かとうえな”とはどういうキャラクターだと捉えられましたか?
坂ノ上茜
17歳らしい高校生ではあるけれども、長女ということでしっかりしているし、ものごとを俯瞰で見て冷静な側面もある女の子です。
‐青木柚さんとの共演はいかがでしたか?
坂ノ上茜
出演映画を拝見していて、すごく雰囲気のある役者さんだなと思っていたので、ご一緒できるのがすごく嬉しかったです。
今回初めてお会いするということもあり、実はすごく人見知りしてしまったんです。でも、お話ししてみると年相応のとても気さくな方で、ギャップを感じるとともにすぐに仲良くなりました。
‐青木さんとはどんなお話をされましたか?
坂ノ上茜
作品の話ももちろんするけれど、ずっとふざけていました(笑)撮影場所が学校というのもあって、学生時代の思い出話をよくして、文化祭・体育祭でなにをやったの?とか、おじいちゃん先生は可愛いって好かれるの、あるあるだよねとか、それこそ初恋の話とか。
■何万回も繰り返す5分間
‐5分間を何万回もタイムループするという設定のシーンで苦労したことは?
坂ノ上茜
柚くん演じる“沖芝樹/おきしばいつき”は、タイムループから脱しようといろいろともがくんですが、私が演じる恵那はタイムループしていることに気づいていない設定だったので、毎回、柚くんが起こすアクションを受ける立場でした。
でも5分に1回のループだからシーン数もすごく多いし、1日中同じ場所で同じくだりを何回もやるということと、たとえば前のシーンで涙を流していても、次のシーンではケロッとしていないといけないという難しさがありました。
‐沖芝樹が目覚めた直後の恵那の「ありがとう。って聞いてる?」っていうセリフも数え切れないぐらい繰り返されますがあれも毎回演じられているんですか?
坂ノ上茜
毎回です。なのでその言い方も最初の新鮮さをどこまで保っているかわからなくなってきて、言い方が変わってきているんじゃないかなと思ってすごく怖かったので確認しながら進めました。
‐それは敢えてずっと同じ言い方なんでしょうか?
坂ノ上茜
ネタバレになるので具体的には言えませんが、あることがあって少しずつ変わっていきます。
‐ひとつの作品で「ありがとう」をこれだけの回数を言うのは珍しいかもですね。
坂ノ上茜
そうですね。ありがとう選手権があったら第一位かもしれないです(笑)
■「すごく恵那っぽい」「この結末を受け入れられる人がいるのか!?」
‐長編映画初挑戦という中村貴一朗監督からの演出は?
坂ノ上茜
私は『神回』の台本に基づいたワークショップを経てこの作品に関わらせていただくことになったんですが、そのときから中村監督が「すごく恵那っぽい」とおっしゃっていたので、そのときの印象を思い出させてくれるような演出をしてくださいました。
ワークショップのときはラフな気持ちで演じられていたこともあって、そのときどうやっていたのか思い出すために、逆に私から監督に確認していました。
‐中村監督の印象は?
坂ノ上茜
淡々とされている方です。冷めているということではなくて、内に秘めた熱い想いがあるタイプで、外にその熱をあまり放出しない感じがちょっと恵那っぽいなとも思いました。
‐完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
坂ノ上茜
台本を読んでいる時点でこの作品は面白いなと思っていた感覚を、映像を見て再確認できたことと、この結末を受け入れられる人がいるのか!?とも思いました(笑)
私は結末がわかっている上で観たので、これから公開されて初見で観ていただいく方の感想を聞けるのがすごく楽しみです。
■高2の夏の思い出
‐本作は夏休み期間中の文化祭打ち合わせが背景にありますが、坂ノ上さん自身の夏休みの思い出は?
坂ノ上茜
まだ熊本で暮らしていた高校2年生のとき、東京にある事務所の寮に1ヶ月間滞在したことがあって、友だちがいない寂しさがあったんですが、ずっとワークショップに通っていたので、なかなかできない経験をすることができた楽しさと嬉しさがあってとても思い出深いです。
‐ある意味、部活の夏休み合宿というようなものでしょうか?
坂ノ上茜
舞台のワークショップだったんですが、その合間にオーディションを受けにいくこともできて、熊本にいるときにはほとんどできなかったことができたのがすごく嬉しかったですし、早く高校を卒業して上京したいなっていう気持ちが高まりました。
中学生のときに今の事務所に入ったんですが、オーディションを受けることも滅多になく、同期はすでに活躍していたので、私はこのままやっていけるのかという不安もあったから、このときの一ヶ月が今の自分にも繋がっているのかなと思って。普段の学生生活とは違う夏休みではありましたが、とても良い時間だったなって思います。
■楽しかった高校生活
‐演じられた恵那は率先して文化祭に参加する子ですが、坂ノ上さんご自身は学校行事について積極的な方でしたか?
坂ノ上茜
高一の文化祭では、みんなでAKB48の曲でダンスしたり、体育祭では御神楽(みかぐら)も踊りました。私が通っていた高校は3年生で御神楽を踊るんです。私はバトントワリング部だったんですが、バトン部は絶対に最前列で踊らないといけないし、ダンスを教える役目もあったので、自分の気持ちに関わらず、率先してやらないといけない立場でした。
‐続けて本作にちなんだ坂ノ上さんの思い出について伺います。よく「この瞬間が永遠に続いたらいいのに」というセリフがあったりしますが、坂ノ上さんがこれまでそう思った「神回」「神瞬間」があったとしたらなんでしたか?
坂ノ上茜
さっきの話と矛盾するようですが、高校時代はほんとうに楽しくて、毎年クラス替えしたくないって思うぐらいクラスの子とも仲良く過ごせたなと思っていたので、高校生活が永遠に続いたらいいのにと思う瞬間はありましたね。
■舞台出演は毎日が実験でした
‐「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」に出演されていましたがいかがでしたか?
坂ノ上茜
大きな劇場での舞台出演は初めてだったので、(映像作品とは)また全然違うなと思いましたし、毎日お芝居できるのが嬉しかったです。特に大きな劇場でお客さんに直接声を届けるということが、今までやってこなかったことだからこそ難しいなって思う反面、逆にその場を借りて実験しているような気持ちにもなって、どうやったら声が聞こえやすく届くんだろうとか、声を張っているだけだとお客さんは聞きづらいだろうから声の高低差を変えてみようとか。
毎公演なにかを変えてお芝居できることが楽しいし勉強になるなと思いました。
‐お客さんの反応を直に感じるという体験はいかがでしたか?
坂ノ上茜
すごい!って思ったのは、カーテンコールでスタンディングオベーションをしていただくことがあって、あれは何回体験しても感動します!客席にも照明があたって、こんなにも大勢の方々が立ち上がって拍手してくれているその空間を共有していることに、うわーっ!と感動しました。
■長編映画の良さを体感してほしい
‐最後に『神回』の見どころ含めたPRメッセージをお願いします。
坂ノ上茜
この作品は、青春もの&タイムループを題材としていますが、蓋を開けてみたら今までにない作品になっています。昨今、短い動画が流行っていたり、あえてネタバレしたものを見るという傾向もありますが、長編映画の尺だからこそ感じられるものもたくさんあると思っています。
主人公の“芝樹(いつき)”と一緒になんだなんだ?ってモヤモヤしながら答えを見つけたときの感動を映画館で体感していただけたらなと思います。
‐88分の作品ですが、観始めたら一気に最後まで観てしまいますよね。
坂ノ上茜
そうですね。私も台本を読んだとき、最初はよく分からないと思いましたが、伏線が回収され始めると、ページをめくる手が止まらなくなって、読むのもとても楽しかったんです。映像だとより見やすくなっていますし、モヤモヤした時間を乗り越えた先に気づきがあるのは、長編映画の良さだと思うので、それを体感してほしいなって思います。
坂ノ上茜(さかのうえあかね)プロフィール
2015年、テレビ東京「ウルトラマンX」のヒロイン・山瀬アスナ役で女優デビューを果たす。
ドラマTBS「チア☆ダン」月9ドラマ「監察医 朝顔」 、映画『見えない目撃者』、『きみの瞳が問いかけている』などに出演。
現在BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」にレギュラー出演するなど、幅広く活躍している。
2021年に1st写真集「あかねいろ」(光文社) を発売。2022年8月にはデジタル版も配信。
今年は主演作「ぬけろ、メビウス!!」、ヒロインとして出演した『BAD CITY』も公開された。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[ヘアメイク:カスヤユウスケ/スタイリスト:豊島今日子/写真・インタビュー:三平准太郎]
関連動画
映画『神回』
INTRODUCTION
高校の夏休み。文化祭の実行委員になった樹(青木柚)と恵那(坂ノ上茜)は教室で出し物の打合わせを始めた。しかし、しばらくすると、打合せを始めた13時に戻ってしまうことに樹だけが気付く。その状況から抜け出そうともがく樹だったが・・・。
「タイムループもの」という洋画・邦画ともに数多くの作品が存在するジャンルに挑みつつも、凡庸な青春ストーリーにとどまらず、学校という閉鎖空間の中で人間のさまざまな感情をあぶりだした脚本が、特別審査員を務めた足立紳(監督・脚本家)ほか、多くの審査員から絶賛された。
監督・脚本を務めるのは、短編『GUNKANJIMA -Traveler in Time-』が国内外の映画祭で評価された新鋭・中村貴一朗。プロジェクションマッピングやドローン撮影などの先端技術を駆使した映像表現を得意とし、ストーリー、映像ともに斬新な表現で日本映画界に新風を巻き起こすこと必至!
主人公・樹に扮するのは、NHK連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」<ひなた編>でヒロインの弟・桃太郎役を好演し注目を集め、今後も続々と出演作を控える青木柚。その同級生・恵那役を、2021年ぴあフィルムフェスティバルで高評価を得た自主制作映画『愛ちゃん物語』や『ぬけろ、メビウス!!』と主演が続く坂ノ上茜が演じ、樹の心情が変遷していく中でループし続ける時間に対峙し続ける。
なぜ、樹はタイムループにハマってしまったのか。抜け出すことはできるのか…!? 数えきれないほど繰り返す時間の果てに炙り出される切ない想いと人間の本性とが交錯する新感覚タイムループ青春映画、どうぞご期待ください。
STORY
夏季休校中の高校。文化祭の実行委員となった2年生の沖芝樹は、打合せのため教室に向かっていた。夏休みだけに校舎に人気は少ない。教室でもう一人の実行委員・加藤恵那と合流し、打合せを始める。しかし、その5分後には、打合せを始めたはずの5分前に戻ってしまうことに樹だけが気付く。5分間のループに陥った樹は何とかその状況から抜け出そうと奮闘するが、なかなか脱出することができない。数えきれないほど同じ5分間を繰り返していくうちに樹の精神は混乱を極め、物語はあらぬ方向へ加速していく。
果たして樹は無事に“時の監獄”から抜け出すことができるのか――。
青木柚 坂ノ上茜
新納慎也 桜まゆみ 岩永洋昭 平山繁史 渡辺綾子 横江泰宣 仁科かりん 中條サエ子
井上想良 日下玉巳 三浦健人 平山由梨 藤堂日向 岡部ひろき 三好紗椰 中村莉久 彩香 上野陽立
森一 南一恵
監督・脚本:中村貴一朗
製作:東映ビデオ
制作プロダクション:レオーネ
配給:東映ビデオ
©2023東映ビデオ
公式サイト:toei-video.co.jp/kamikai/
TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY公式Twitter:@TV_NCF
本予告映像
2023年7月21日(金)新宿シネマカリテほか全国公開
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