中井友望

【インタビュー&撮り下ろしフォト】中井友望の“一番古い記憶”映画『かそけきサンカヨウ』

今泉力哉監督映画『かそけきサンカヨウ』(10/15公開)で、主演の志田彩良と鈴鹿央士の繊細な2人の関係の間で重要な役を演じる中井友望(なかいとも)。2020年に俳優デビュー後すぐにコロナ禍となった世の中で、役者として駆けて来た2年間の振り返りと共に、本作のこと、そして本作にちなんで“一番古い記憶”を明かしてもらった。

『かそけきサンカヨウ』は、家庭環境のせいで早く大人にならざるを得なかった高校生・陽(志田彩良)の葛藤と成長が、同級生・陸(鈴鹿央士)との“恋まではたどり着かないような淡い恋愛感情”を交えて描かれている。
監督は作品に流れる空気感やリアリティが高い評価を受けている今泉力哉。主人公・陽が家族について悩みながら成長していく姿を丁寧に映像化した。

中井友望 インタビュー&撮り下ろしフォト

■とても優しい物語

-まず最初に本作の台本を最初に読んだ時の印象・感想を教えてください。

中井友望(鈴木沙樹 役)
まず原作を読んで、それから台本を読んだのですが、読み終わった後に最初に思ったのは、とても優しい物語だということでした。
人を傷つける嫌な人が一人も出てこないので、それが単純に嬉しかったです。

中井友望

中井友望

-中井友望さんが演じられた“鈴木沙樹”は、陽(志田彩良)のことや、陸(鈴鹿央士)のことなどについて、本人たち自身が気づいていないかもしれない気持ちを代弁したりしますが、どういった女の子なのでしょうか?

中井友望
まじめで、気が強いところがありますが、根は優しい女の子だと思います。陽のこと、陸のこと、二人のことを同時に考えられる優しい女の子だと認識して演じました。
そして、陽と陸の関係のバランスにナチュラルに入っていける子だと思うので、こういう女の子だと決めすぎないで、2人の間にすっと入っていける女の子でいられることを意識しました。

-陸は陽に対してははっきりしない態度ですが、沙樹が相手だと自分の気持をスラスラ話できたりします。沙樹はそんな陸に対してどういった感情、気持ちを持っていると思いますか?

中井友望
表には出しませんが、たぶんどこかに(陸のことを好きな気持ちが)あるからこそ、陸が陽に対する態度と沙樹に対する態度をどこか比べていると思うんです。

-陸はもしかしたら沙樹に友人以上の好意を持っているのかもしれないけど、だとしても陸は自分の気持ちには気づいてない無邪気さが沙樹に対してありますよね。

中井友望
はい。なので、(陸に)感情をぶつける時は子どもの部分が出てるなって思って。でも個人的にはそこがすごく好きです。

中井友望

-沙樹を演じるにあたって、今泉力哉監督に相談されたことはありますか?

中井友望
自由に演じさせてもらえるところが多かったです。私がこのセリフはこの方が言いやすいとか相談すると、それを尊重してくださったり。自分の中ではほんとにこれでいいのかと迷いもある中、寛大な心で受け止めてくださいました。

-中井さんご自身と沙樹と似ているところ、違うところについて教えてください。

中井友望
ちょっと頑固なところは似ているかもしれません。でも、(体調不良で学校を休んで)陸が家に来てくれた時に、壁を作る態度を取るところは、沙樹の頑固なんだけど可愛らしさも出ていて、そういう可愛らしさは私にはないところかも…。そして相手を思う優しさについては、沙樹を通して勉強になりました。

■志田彩良さんはすごい方

-共演された鈴鹿央士さんはどんな方でしたか?

中井友望
良い意味で、ずっとそのまんまでした。陸だけど鈴鹿さんのようだし、鈴鹿さんだけど陸。そしてセリフをセリフだと思わせないのはすごいなって思いました。

-鈴鹿さんは舞台挨拶では物静かな印象を感じたのですが、現場ではいかがでしたか?

中井友望
物静かというより、フワフワしている感じでした。

-なるほど、少なくともドラマ「ドラゴン桜」で鈴鹿さん演じるキャラとはぜんぜん違う感じということですね。

中井友望
ぜんぜん違います。「ドラゴン桜」は見ていましたが、鈴鹿さんも志田さんも、(キャラクターとは)ぜんぜん違うと思いました。

-同じ事務所の志田彩良さん含めて、撮影現場で共演者の方々とのエピソードがあればご紹介ください。

中井友望
作品冒頭、喫茶店で5人がしゃべっているシーンが最初の撮影だったのですが、待ち時間でもあんな感じで5人でお話したりして、そこでちょっとずつみんなのことを知れて、距離感を縮められたのが良かったなって思います。実際の役と同じように、遠藤雄斗さんがムードメーカーとなって盛り上げてくれてました。

かそけきサンカヨウ

画面奥:中井友望 中央:志田彩良/場面写真 (C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

中井友望
志田さんは、普通の言葉になっちゃいますけど、すごいなって思いました。お芝居の時もそうなんですけど、現場での立ちふるまいも。私含めてみんなに話しかけてたりされてて。あと、カメラがお好きのようで、現場の写真とか、鈴鹿さんの写真とかも撮ってて、いい関係だなって思いました。

かそけきサンカヨウ

鈴鹿央士(陸)、志田彩良(陽)/場面写真 (C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

■家族にはいろんな形がある

-『かそけきサンカヨウ』では、陽の家族、陸の家族、そして演じられた沙樹は母子家庭と、それぞれの家庭にそれぞれの事情があり、今泉監督も「(原作の)短編集は“歪みのある家族”について描いていた。その点に惹かれました」とコメントされています。逆に、まったく歪みのない家族っていうのも世の中にどれほど存在するのか?という考え方もあるかもしれません。本作を通して、中井さんが改めて“家族”について思うことはありましたか?

中井友望
私自身も歪みはあるものだと思っていたんですけど、それは絶対にコンプレックスじゃないんだなって思いました。いろんな形があっていいし、それが何も恥ずかしがることじゃない。それをこの作品を通して、家族にはいろんな形があることを知れました。
そして、この作品に登場する大人の人たちは皆、まっすぐなで信じられるなって思いました。

中井友望

■デビュー当時はすべてがいっぱいいっぱいでした

-ご自身のことについて伺います。舞台「アルプススタンドのはしの方」では関西チームとして出演されていましたが、中井さんのご出身は大阪でしょうか?

中井友望
はい。大阪市で通天閣の近くです。ザ・大阪のところで住んでました(笑)
大学生になって上京しました。

-そしてミスiD2019でグランプリを受賞されましたが、そもそも応募されたきっかけは?

中井友望
もともと中学生の時から女優になりたいなって思ってたんですけど、18歳の頃、楽しさを感じられず、もうやめようかなと迷っている時、たまたまエキストラとして参加した現場で、ミスiDを受けている方と出会って、その方が「私も一度やめようと思ったけどミスiDを受けてまだここにいるんだよね」って話をしていて、私も最後に受けてみようかなって思って受けました。

-結果、見事グランプリだったということですね。

中井友望
驚きましたし、嬉しかったですけど、受けた時から絶対にグランプリしかいらないって思ってました。

-なるほど、それだけの強い意志があったということですね。

中井友望
はい。

中井友望

-そして、2020年のドラマ『やめるときも、すこやかなるときも』で俳優デビューと伺ってますが、初めて俳優活動を始められた時のご自身を振り返って当時はいかがでしたか?

中井友望
今だから笑って話せることもたくさんあるんですけど、当時はすべてがいっぱいいっぱいでした。ドラマの現場では、できないこと、わからないことだらけで、とても楽しむ余裕がありませんでした。
でもこのドラマの現場を最初に経験できたことで成長できましたし、その時のスタッフさんや共演した方々にはとても感謝しています。

-今、成長できたとおっしゃいましたが、たとえば俳優としてどういう点でそう感じられましたか?

中井友望
すごく根本的なところなんですけど、ひとつの作品に入る前の(作品のことや役のことについて)考える時間です。
最初のドラマの時は、そういうところがほんとに足りてなかったなって振り返って思います。

-ちなみに、中井さんが俳優デビューされて間もなくの2020年2月21日に、アップリンク吉祥寺で行われた、映画『COMPLY+‒ANCE コンプライアンス』の初日舞台挨拶に、斎藤工さんらと一緒に登壇されていた中井さんを取材でお見かけしたことがあります。この時は舞台挨拶登壇自体が初めてのことだったそうですが、その時の気持ちを覚えていますか?

中井友望
初めての経験・場所で人がいっぱいいて(*)、緊張というよりも、遠足に来たようなワクワクの方が大きかったです(笑)
*斎藤工、秋山ゆずき、平子祐希(アルコ&ピース)ら、総勢15人ものキャストが登壇する舞台挨拶だった(記事LINK)。

中井友望

■中学時代は、部活の時だけ学校に行っていた。

-以前のインタビューで「デビューするまで、学校生活などで人間関係の悩みもあったけど、割と最近楽しく生きられるようになった」と語られていましたが、どういったことがきっかけだったのでしょうか?

中井友望
コロナ禍になって、人と会う場所って、お仕事の現場に限られることが多くなりましたが、逆にそこで人と会えてコミュニケーション取れることが嬉しいことなんだと思うようになって、さらに、そういうお仕事があるということそのものも嬉しいことだと気づいたからです。そういうひとつひとつのことに、嬉しさを感じられるように自分が変わってきたような気がします。

-中井さんは、学校生活がイヤだったそうですが、学校や一般の会社だと、長期間ほぼ同じ人間関係の中で過ごすことになります。そういう意味で、中井さんにとって撮影などの、現場によって人間関係が変わるお仕事は向いている感じでしょうか?

中井友望
そう思います。学生の時ってすごくイヤでしたが、今はすごく楽しいので、(俳優というお仕事は)私に合っているのかなって思います。

-逆に、学生時代で楽しかった思い出や、打ち込んだことなどがあれば教えてください。

中井友望
小中とバスケットボールをやっていて、中学校でもバスケ部に入っていて、その部活だけは楽しかったです。部活以外の学校生活はイヤで、授業には行かずに部活だけ行ったりしてました。部活だけ行っているのを先生にバレないようにマスクして(笑)

-そうなんですね。でも、部活の顧問の先生にはさすがにバレるでしょうし、部の他の生徒たちはどういう反応でしたか?

中井友望
顧問の先生は優しくしてくれましたし、友だちも笑って私を受け入れてくれて、それが嬉しかったですね。

-それはとても救われましたね。

中井友望
はい。

中井友望

■本はいつでも寄り添ってくれる

-中井さんが俳優活動を始められてほどなくコロナ禍突入となってしまいましたが、おうち時間での中井さんの過ごし方は?

中井友望
小説など、読書がすごく好きです。好きな作家さんは、宮本輝さんや西加奈子さん。
映画やドラマも好きなんですけど、観るのがしんどいなと思う時もあります。映像は視覚情報が多すぎるかなと思ったり、自分がお芝居がうまくできなくて落ち込んでいる時とかは、「(映像の中の)役者さんたちがすごいなぁ。私は俳優には向いてないのかなぁ」とか、そんなことを考えてしまったりする時があるので…。
それに対して本は、自分の頭の中でいろいろ解釈することができますし、いつでも寄り添ってくれるのですごく好きです。

-本は読む人の想像力によって無限大の広がりの可能性がありますからね。音楽はいかがですか?

中井友望
その時によっていろいろなんですが、最近は銀杏BOYZさんとか、忌野清志郎さんとか聴いています。

-忌野清志郎さんでいうと、RCサクセションとか。

中井友望
好きです。

中井友望

■中井友望の“一番古い記憶”

-本作では、陽や陸、沙樹らが“一番古い記憶”について語り合うシーンがありますが、それにちなんで、中井さんご自身の“一番古い記憶”は?

中井友望
5歳ぐらいの頃、両親が夫婦共働きだったので、幼稚園に持っていくお弁当を作る時間がない時などはたまに、買ってきたコンビニのお弁当を、8歳上のお兄ちゃんがお弁当箱に詰めてくれました。
でも5歳だからコンビニのお弁当で食べられるものって、備え付けのスパゲッティとごはんぐらいしかなくて、だからスパゲッティとごはんだけをお弁当箱に入れて、それを持って行ってたんですけど、悲しい記憶です(笑)
お兄ちゃんは両親と交代で私の送り迎えもしてくれてました。

中井友望

-ちなみにご兄弟は何人ですか?

中井友望
2人です。

-妹としてはそういうお兄さんの存在とは?

中井友望
歳が離れすぎてて、お兄ちゃんだけど親近感というよりも、ちょっと気を使ったり、憧れのような存在でした。

中井友望

-最近は、お兄さんとの関係はいかがですか?

中井友望
今は誕生日おめでとうって、お互いに送り合ったり、私が大阪に帰った時や、逆にお兄ちゃんが東京に来た時に一緒にごはんを食べに行くことはあります。
でも今もあんまりお兄ちゃんって感じがしないですね。でもそういう家族の形もあるかなって。

-お兄さんは中井さんの俳優活動については応援してくれてますか?

中井友望
応援してくれてます。「雑誌を買った」って言ってくれたこともありました。

中井友望

■最後にメッセージ

-最後に映画『かそけきサンカヨウ』の見どころについて、これから映画をご覧になる方へ向けてのメッセージをお願いします。

中井友望
今泉さんの作品の中でもちょっと違った雰囲気の作品だと思っています。今までの今泉さんの作品は、人のダメな部分、嫌な部分、ずるい部分を描いていることが多いかなと思いますが、この作品は人の温かい部分、優しい部分をとても感じます。
そして、公開が10月というのが私はすごくしっくりきています。それは秋っぽい映画だなと思っていて、作品の季節感、温度感が10月という時期にピッタリだと思うんです。そういう意味でも、是非この10月、劇場に来て作品を観てもらいたいです。

中井友望

■撮り下ろしフォトギャラリー

[スタイリスト:中村美保/ヘアメイク:住本彩/聞き手&写真:桜小路順]

【衣裳】
〈トップス〉
ottod’Ame/STOCKMAN(オットダム/ストックマン)
03-3796-6851

〈スカート〉
アンアナザーアンジェラス
03-5843-0395

〈靴〉
NO NAME/STOCKMAN(ノーネーム/ストックマン)

■プロフィール

中井友望/NAKAI TOMO
2000年1月6日生まれ、大阪府出身。
ミスiD2019でグランプリを受賞。ドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」(20/NTV)でドラマ初出演。主人公の初恋の相手を好演し、一躍注目を集める。その他の出演作に映画『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』(20/齊藤工総監督・岩切一空監督)、舞台「アルプススタンドのはしの方」高校演劇 ver.(21)など。
11月には、「シノノメ色の週末」(11月5日公開/穐山茉由監督)、「ずっと独身でいるつもり?」(11月19日公開/ふくだももこ監督)と映画の公開が控えている。

映画『かそけきサンカヨウ』

STORY
高校生の陽(志田彩良)は、幼い頃に母・佐千代(石田ひかり)が家を出て、父・直(井浦新)とふたり暮らしをしていたが、ふたり暮らしは終わりを告げ、父の再婚相手である美子(菊池亜希子)とその連れ子の4歳のひなたと4人家族の新たな暮らしが始まった。
そんな新しい暮らしへの戸惑いを、陽と同じ美術部に所属する陸(鈴鹿央士)に打ち明ける。実の母・佐千代への想いを募らせていた陽は、絵描きである佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をする。

志田彩良/鈴鹿央士
中井友望 鎌田らい樹 遠藤雄斗
石川 恋 鈴木 咲 古屋隆太 芹澤興人
海沼未羽 鷺坂陽菜 和宥 辻 凪子 佐藤凛月
菊池亜希子/梅沢昌代 西田尚美/石田ひかり/井浦 新

監督:今泉力哉
原作:窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』(角川文庫刊)所収「かそけきサンカヨウ」
脚本:澤井香織 今泉力哉
音楽:ゲイリー芦屋
配給:イオンエンターテイメント
(C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会
公式サイト:https://kasokeki-movie.com
公式Twitter:@kasokeki_movie

2021年10月15日より全国公開!

かそけきサンカヨウ

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