原作者・桜木紫乃、映画ならではの表現に大絶賛。映画『ホテルローヤル』トークイベント
映画『ホテルローヤル』(11/13公開)の舞台となった北海道で初の試写会が実施され、原作者である北海道出身の桜木紫乃が登壇するトークイベントが開催された。
映画『ホテルローヤル』のメガホンをとるのは、武正晴。脚主人公であるホテル経営者の一人娘の雅代には、映画やドラマで圧倒的な演技力と存在感を示す波瑠。桜木自身を投影した役を、繊細さの中に意志の強さを感じさせて好演。共演には松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣、伊藤沙莉、岡山天音ら実力派俳優陣が名を連ねる。
誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる場所、ホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む雅代が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓。誰しもに訪れる人生の一瞬の煌めきを切り取り、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらす。
トークイベントレポート
「小説では書けなかったことが映画では描かれている」
出来上がった映画を観て、「武監督ならではの音楽と映像の融合でした。いち観客として楽しみました。」と桜木紫乃。「全編がお気に入りです。その中でも特にお気に入りなのは、5千円を握ってホテルローヤルを訪れる夫婦のエピソードのシーン。私が小説を書いた時は冷めた目で深刻なフリをして書いていましたが、映画ではカメラを少し引き、そこを面白く描いてくれて、なおかつホロリとさせてくれて、原作とはまた別のものを見ている感覚で、とにかく身につまされました」と印象的なシーンを明かした。
本作は、桜木紫乃の実家だった実在のラブホテルが舞台で、桜木さん自身、主人公の雅代と同じように学生の頃から家業の手伝いをしていた。その意味で雅代という役は桜木を投影した役であると言える。そして、波瑠演じる雅代の眼鏡と白シャツというルックが桜木を彷彿とさせると関係者の間で話題となっている。
そのことについて、「やりすぎでは?と思うほど、私もそう思いました(笑)眼鏡をかけて白シャツって、世の中に一番出回っている私の写真によく似ているんです。武監督にその真意について聞いたら、監督は、『いや、違うんだ。眼鏡をかけさせたのは、女性が眼鏡を外すところを撮りたかった。白シャツは、ホテルのシーツが白で、キャンバスも白だから』と胸を張られてそうお答えになって・・・決して私に寄せたのではないそうです。私の過剰な自意識がそこに残ってしまいました(笑)」と、雅代のビジュアルについての真意を明かし、会場の笑いを誘った。
桜木の念願が叶う形で実現したのは、雅代の父を演じた安田顕の出演。「何年か前に安田さんが『俳優 亀岡拓次』の舞台挨拶で北海道にいらっしゃった時、ご挨拶の際に『私の原作でお話がいった時にはよろしくお願いします』と申し上げたら、今回本当に受けていただけました」と喜びを語った。
従業員役の原扶貴子には、自身の経験を活かし、ホテル従業員としての役作りのポイントを伝授したそう。「原さんに、『掃除の時に気をつけていたことはありますか?』と聞かれ、『バスルームを掃除する時にアカがついていないか指で確かめていました』と告げたところ、原さんが実際に演技に取り入れてくれました。私の経験がこんな風に役立つんだなと感慨深くなりました」と裏話を披露した。
「必ず誰かの背中を押してくれる、温かく包み込んでくれるような映画」
最後に「私が原作では書かなかったことが、映画には描かれていると思います。自分が無意識のうちに待っていた言葉だとか、待っていた場面が映画で描かれていると思うのです。その場所で生活する人に寄り添った、それでいて暖かく包み込んでくれるような映画に仕上がっていると思います。それは小説ではしてこなかったことだし、私の筆では出来なかったこと。是非、映画と小説の両方を楽しんでいただけたら嬉しいです。必ず誰かの背中を押してくれる映画になると思います。一歩踏み出したい人、前に進みたい人、前向きに“逃げたい人”に届いたらいいなと思います。」と熱いメッセージを送った。
映画『ホテルローヤル』
ストーリー
北海道、釧路湿原を背に建つラブホテル、ホテルローヤル。
雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルの仕事を手伝うことになる。
アダルトグッズ会社の営業、宮川に淡い恋心を抱くも、何も言いだせずに黙々と仕事をこなす日々。
しかしホテルには今日も、閉塞感を逃れ“非日常”を求めて様々な人々が訪れる。
投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと姑の介護に疲れささやかな高揚を求める夫婦、行き場を失くした女子高生と妻に裏切られた高校教師。
そんな中、ホテルの一室で心中事件が起こり、雅代たちはマスコミの標的に。
さらに父・大吉が病に倒れ、家業を継ぐことになってしまった雅代は、初めて「自分の人生」に向き合う決意をする…。
出演:
波 瑠
松山ケンイチ
余 貴美子 原 扶貴子 伊藤沙莉 岡山天音
正名僕蔵 内田 慈 冨手麻妙 丞 威 稲葉 友
斎藤 歩 友 近 / 夏川結衣
安田 顕
原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武 正晴 脚本:清水友佳子
製作幹事:メ~テレ ファトム・フィルム 製作プロダクション:ダブ 配給・宣伝:ファントム・フィルム
(C)桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
公式サイト:https://www.phantom-film.com/hotelroyal/
予告篇
11月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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