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蒲田前奏曲

【インタビュー】瀧内公美×松林うらら 女優として映画界における#MeToo問題について語る。映画『蒲田前奏曲』

伊藤沙莉らが出演する連作スタイル長編映画『蒲田前奏曲』(9/25公開)より、出演・プロデュースの松林うらら、そして、#MeToo問題をテーマにしたエピソードに出演した瀧内公美に本作のこと、そして、映画界で感じる#MeToo問題についての思いを伺った。

本作は、中川龍太郎監督、穐山茉由監督、安川有果監督、渡辺紘文監督による連作スタイルとなっており、売れない女優マチ子(松林うらら)の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。
瀧内公美が黒川瑞季役として出演するのは、第3番「行き止まりの人々」(安川有果監督)。瑞季は女優としてある映画作品のオーディションをマチ子と共に受けるが、そこでパワハラを受ける。

『蒲田前奏曲』は、9月25日公開。伊藤沙莉(『小さなバイキング ビッケ』 『タイトル、拒絶』)、福田麻由子(NHK連続テレビ小説「スカーレット」)、古川琴音(JT「想ウタ」シリーズ『姉妹を想う』篇CM、『街の上で』)、和田光沙ら、注目の女優が多数出演する。

松林うらら×瀧内公美インタビュー

蒲田前奏曲

瀧内公美/松林うらら

■松林うらら→4人の監督

-松林うららさんのコメントに本作製作のきっかけが書かれていますが、4人それぞれの監督さんに依頼する時、どのようなことを話されたのでしょうか?

松林うらら
実際に私の身の回りのことを表現していただくことをベースに、監督ひとりひとりにお題を出していきました。
私には弟がいるので、中川龍太郎監督には、“弟LOVE”を描いていただきたいとお願いし、舞台となった蒲田も被害にあった「城南大空襲」も絡めて描いて頂きました。
穐山茉由(あきやままゆ)監督には、女子会編をテーマに。主人公マチ子は女優ですが、他の職業の子の方が目立っているという設定で、そしてそのうちそれぞれの違った顔が見えてくるというお話です。
そして、瀧内さんが出演くださっている安川有果監督の作品は、“#MeToo”をテーマに。
最後の渡辺紘文監督には、東京中心主義を批判してください、とお願いしました。

-4人の監督さんの出来上がったシナリオをご覧になって、依頼前と比べて、松林さんの中で本作テーマの捉え方で変わったことがあれば教えて下さい。

松林うらら
4人の監督それぞれが、まったく違ったアプローチでシナリオを書いてくださって、それが新しい表現に感じられて面白いなって思いました。

蒲田前奏曲

松林うらら/瀧内公美

■瀧内公美「松林うららさんが気になった」

-安川有果監督の第3番「行き止まりの人々」について伺います。瀧内公美さんご出演のきっかけについて教えて下さい。

瀧内公美
私は『21世紀の女の子』という作品に参加していたのですが、その作品に安川監督も参加されていて、素敵な作品だなと思っていました。
そして、女優が何かテーマを持って映画を作りたいというのは面白い企画だなって思って。海外ではよくありますけど、日本では少ないことですし、しかも題材が“#MeToo”と“セクハラ”。こういう題材で女優が作った作品って叩かれやすいかもしれない。そういった意味で、(松林うららさんは)何かよっぽどの考えや想いがあるんじゃないかな、と気になったのがきっかけです。

瀧内公美

瀧内公美(『火口のふたり』(2019)で、第93回キネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞)

■女優さんの中ではあるあるネタ

-松林さんは瀧内さんとどういうお話をされましたか?

松林うらら
撮影前に、瀧内さんが“パワハラ”についてどう思われているのか、安川監督含めて3人でお話しする機会がありました。

-劇中、オーディションのシーンでまさしく“パワハラ”が行われていましたね。

瀧内公美
このシーンはどういうふうに構築していくのかなって思ってたんですよね。私自身、何度もオーディションを受けてきた身ですし。でも、大西信満さん演じる監督さんが言うパワハラ発言は、私も言われたことあるので、「生っぽいなぁ」って思いました(笑)

-実際にああいうことはあるんですね。

瀧内公美
この作品をご覧になった女優さんは「わかる!」って共感してくださっていましたね(笑)

■印象的なオーディションシーン

-“#MeToo”問題は一般社会でももちろん問題になってますが、女優さんのいる映画の世界は、キャスティングする側とされる側ということで独特の関係性があるように感じました。

瀧内公美
もともと「オーディション」っていうシステムが、選ぶ、選ばれるという形なので、必然的にパワーバランスみたいなものが生まれてしまうとは思うんですよね。

松林うらら
安川監督には、「オーディションの場面は必ず入れてほしい」とはお願いしました。男の人に審査されるという構図が、私には違和感があるからです。

-オーディションシーンでは、松林さん、瀧内さんがそれぞれオーディションを受ける女優として登場します。

瀧内公美
オーディションシーン全体は、安川監督とお話ししてリハーサルを重ねながら作っていきました。
実際のオーディションでは、別パターン、別パターンと言われていろいろ表現させてもらえる時もあるので。同じ台本でも、「こういう設定だったらどう?」とか、与えられたことに瞬時に応えられるのかっていうのを見られるところではあるんですけど、そういったものを劇中にも取り込んでいます。

-このオーディションシーンは、瀧内さんの演技が大きな見どころですね。

瀧内公美
ありがとうございます。でも、あのようにオーディション中にふてくされたりはしません(笑)
映画の中で設定があったからこそできたっていうのはありますよね。ちょっとカリカチュア(誇張)されているところはありますけども。

■“闘う女性”を描いてもらった

-第二番の伊藤沙莉さんのキャラクターと、この第三番の瀧内公美さん演じる黒川と共通しているのは、どちらも“姉御・姐さん”のような痛快な性格だと感じました。この2人のキャラクターは、松林さんがお考えになられたものですか?

松林うらら
いえ、それぞれの監督さんが生み出したキャラクターです。それぞれの作品で、“闘う女性”というものを描いていただきたいということもお願いしました。
その中で、私が演じる「マチ子」はどちらかと言うと傍観者の役割です。

蒲田前奏曲

■スゲエ服!

-第三番には、監督もされる二ノ宮隆太郎さんが登場します。劇中、瀧内さんが二ノ宮さんに「スゲエ服」って言ってますが、このセリフは台本どおりですか?(註:二ノ宮氏が劇中で着ている独特の服装は、彼の私服)

瀧内公美
いえ、私のアドリブです(笑)だって、すごい服を着てませんでした?
私、まだこの世界に入って間もない頃、映画の撮影現場の見学に行かせていただいた時、みんなすごくラフな服装をしているのに衝撃を受けたんですよ。二ノ宮さんの服装を見て、その感覚を思い出したんだと思います(笑)

松林うらら
彼にとって、あの時期のトレンドだったのかもしれません(笑)ライオンを背負ったような服装でしたよね。

瀧内公美
なかなかあれを着こなせる人はいませんよね。素敵です。どこに売ってるのかな(笑)

■女が生意気なのはなぜダメなんですか?

-この第三番への出演を通して、#MeToo問題について、瀧内さんの中で意識が変わったことあれば教えて下さい。

瀧内公美
私の性格のせいかもしれませんが、普段、そういうことを意識したことはありませんでした。物事は違うって思ったらハッキリ言うタイプですし、「私はこう思います!」って。
過去に、「女のくせに生意気だ」って言われたことがあったんですけど、「男だったら良くて、女が生意気なのはなぜダメなんですか?」って普通に聞き返すタイプなんですよ(笑)
そうやって疑問に思ったことを素直に言う人間ですので、#MeToo問題についてそれほど繊細になったことはなかったんですけど、自分が何をしたくて、何を大切にしているのかということをしっかり持っていないと、流されてしまうこともあったりしますし、流されていい時もありますし。その都度その都度しっかり自分の考えを持たないといけないなっていうことは感じましたね。
あとは、うんと勉強すること。言葉をひとつ間違えると、(今の世の中は)問題が大きくなりがちなので、ちゃんと学び、教養を蓄えなきゃとは感じています。

■瀧内公美が演じてみたい役

-瀧内さんがこれからやってみたい役柄がありましたら教えて下さい。

瀧内公美
いろいろあります(笑)
いくつかあげると、『ブルージャスミン』(2013)のケイト・ブランシェットの役、『クレイマー、クレイマー』(1979)のメリル・ストリープの役、『ゴーン・ガール』(2014)のロザムンド・パイクの役など。役柄としてはこういった役をやりたいですね。
東陽一監督の『もう頰づえはつかない』(1979)の桃井かおりさんの女子大生の役も、設定年齢はもう過ぎてはいるのですが、魅力を感じます。
年齢を重ねていく中でこの役をやってみたいというのが、また変わってくるとは思います。

-最近の作品では、『裏アカ』(2021年春公開予定)という社会問題を扱った作品で主演されてますよね。

瀧内公美
今、SNSでの誹謗中傷が問題になっていますからね。自分的にはもがき悩みながらも一生懸命に生きるひとりの女性を演じたつもりではいます。

瀧内公美

■プロデューサーという立場でも作品を作っていきたい

-エンドロールに「うらら企画」とありましたが、女優業にとどまらず、今後もプロデューサー業などをお考えということでしょうか?

松林うらら
「うらら企画」は屋号のようなものです。私もは今までは役者としてしか映画に関わってこなかったので、作るっていうことが今回すごく勉強になったし、プロデューサーという立場で作品を作っていければなって思っています。

■最後に映画をご覧になる方にメッセージ

-最後に、お二人から映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。

松林うらら
連作長編映画という形の作品で、1人の監督だけではなくて、4人監督というところが新しいタイプの映画です。
作品のテーマとして、女性だけではなく、男性にも気づいてほしいことを込めています。重い話ばかりではなく、滑稽で笑える要素もあります。その点を楽しんで観ていただければなと思います。
そして、男女問わず、年齢問わず、いろんな方の感想をお聞きするのを楽しみにしています。

瀧内公美
うららさんが今、思い悩んでいることを映画という形で表現したいと考えて始まった企画で、うららさんの最も個人的なことを描いた作品です。
4つのテーマと、蒲田といううららさんが生まれ育った場所について、ひとつの作品として作り上げたということは素晴らしいことですし、それに参加できたことは嬉しかったです。
男女問わずいろんな方に観ていただきたい作品ですね。

蒲田前奏曲

[瀧内公美/スタイリスト:小宮山芽以、ヘアメイク:藤原玲子、衣装協力:那由多]
[取材場所:リョーザンパーク/写真・インタビュー:桜小路順]

映画『蒲田前奏曲』

◆INTRODUCTION
売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。
これを4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品。
監督には日本映画界の若手実力派監督が集結。
最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集める中川龍太郎、長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSIC LAB グランプリ受賞、東京国際映画祭上映の穐山茉由、『Dressing Up』(第8回CO2助成作品、OAFF2012)で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の安川有果、最新作『叫び』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝き、第22回ウディネ・ファーイースト映画祭では大田原愚豚舎作品、渡辺紘文監督特集が組まれるなどの渡辺紘文(大田原愚豚舎)が務める。
『飢えたライオン』で主演を務め、舞台、TVドラマなどでも活躍する松林うららが自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演。
また、伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』)、瀧内公美(『火口のふたり』)など、旬の俳優が名を連ねる。

◆STORY
第1番「蒲田哀歌」
監督・脚本:中川龍太郎
出演:古川琴音 須藤蓮 松林うらら
オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優、マチ子。
ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女を紹介されショックを受ける。
だが、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけとなる。

第1番「蒲田哀歌」

第1番:松林うらら、古川琴音

第2番「呑川ラプソディ」
監督・脚本:穐山茉由
出演 : 伊藤沙莉 福田麻由子 川添野愛 和田光沙 松林うらら 葉月あさひ 山本剛史
アルバイトをしながら女優をしているマチ子。
大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。
そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案する。
5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていく。

第2番「呑川ラプソディ」

第2番:和田光沙、福田麻由子、松林うらら、川添野愛、伊藤沙莉

第2番「呑川ラプソディ」

第2番:松林うらら、川添野愛、伊藤沙莉、福田麻由子、和田光沙

第3番「行き止まりの人々」
監督・脚本:安川有果
出演 : 瀧内公美 大西信満 松林うらら 吉村界人 二ノ宮隆太郎 近藤芳正
映画のオーディションを受けたマチ子。
セクハラや#metooの実体験やエピソードがあれば話すという内容だったが、皆、思い出すことに抵抗があり、上手く演じられない。
そんな中、マチ子の隣にいた黒川だけは迫真の演技を見せる。
マチ子は共に最終選考に残ったが・・・。

第3番「行き止まりの人々」

第3番:瀧内公美、松林うらら

第4番「シーカランスどこへ行く」
監督・脚本:渡辺紘文(大田原愚豚舎)
出演 : 久次璃子 渡辺紘文
マチ子の実家は大田原にある。
大田原に住む親戚の小学5年生のリコは、大田原で映画の撮影現場にいる。
そこへとある映画監督が撮影現場の待合所にやってきて・・・。
渡辺紘文監督ならではの視点で東京中心主義、映画業界、日本の社会問題批判を皮肉に表現し描く。

第4番「シーカランスどこへ行く」

第4番:久次璃子、渡辺紘文

出演 : 伊藤沙莉 瀧内公美 福田麻由子 古川琴音 松林うらら
近藤芳正 須藤蓮 大西信満 和田光沙 吉村界人 川添野愛 山本剛史
二ノ宮隆太郎 葉月あさひ 久次璃子 渡辺紘文
監督 ・脚本 : 中川龍太郎 穐山茉由 安川有果 渡辺紘文
プロデューサー・出演 :松林うらら
エグゼクティブプロデューサー: 市橋浩治 小野光輔 大高健志 小泉裕幸
コエグゼクティブプロデューサー: 伊藤清
コプロデューサー : 汐田海平 麻生英輔
アソシエイトプロデューサー : 橋本鉄平 富澤豊
企画:うらら企画
製作:「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ
(和エンタテインメント ENBUゼミナール MOTION GALLRY STUDIO TBSグロウディア)
特別協賛:ブロードマインド株式会社 日本工学院
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
(C)2020 Kamata Prelude Film Partners
2020年 / 日本 / 日本語 / 117分 / カラー&モノクロ / Stereo
公式サイト:kamataprelude.com
公式Twitter:@kamataprelude

2020年9月25日よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森 他全国順次公開予定

蒲田前奏曲

松林うらら プロフィール
1993年生まれ、東京都大田区出身、映画好きの両親の影響で幼少期から映画の世界に魅了される。
18歳でスカウトされモデルとして活動を開始、2012年、『1+1=11』(矢崎仁司監督)で主役に抜擢され映画デビュー。
その後、映画中心に活動し、2017年には『飢えたライオン』(緒方貴臣監督)に主演、東京国際映画祭でワールドプレミアされ、その後、ロッテルダム映画祭など数多くの映画祭で絶賛され、プチョン国際ファンタスティック映画祭では最優秀アジア映画賞にあたるNetpac賞を受賞。
最新作は山戸結希企画プロデュース『21世紀の女の子』の中の山中瑶子監督作品「回転てん子とドリーム母ちゃん」で北浦愛、南果歩などと共演。
本作『蒲田前奏曲』が初プロデュース作。第15回大阪アジアン映画祭では『蒲田前奏曲』がクロージング作品として上映され、コンペティション部門国際審査委員として選出される。

松林うらら

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