
長澤まさみ「おーい、髙橋海人!」映画『おーい、応為』公開御礼舞台挨拶
2025年10月23日、TOHOシネマズ 新宿にて、映画『おーい、応為』公開御礼舞台挨拶が行われ、長澤まさみ、永瀬正敏、大森立嗣監督が登壇。
本作は、葛飾北斎の三女・葛飾応為(お栄)の知られざる人生を描いた作品。応為は、茶も針仕事もできない破天荒な女性だったが、その画才は「父をも凌ぐ」と言われ、いつも父である北斎から「おーい!」と呼ばれたことから「応為」の号を授かったとされている。
長澤まさみは、本作が初の時代劇映画主演となり、永瀬正敏演じる北斎と共に、描きかけの絵が散乱したボロボロの長屋で、生涯を絵に捧げる姿が描かれている。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画レポート
■フォトレポート
長澤まさみ(お栄/葛飾応為 役)
皆さんこんにちは。お栄役を演じました長澤まさみです。本日は、映画館の方まで足を運んでいただきありがとうございます。本当にたくさんのお客さんが来てくださっているのを感じられて、とても嬉しいです。今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします。
永瀬正敏(鉄蔵/葛飾北斎 役)
本日はありがとうございます、永瀬です。公開してちょうど1週間くらいが経ちました。もう、ご覧になった方はいらっしゃいますか?(※会場に挙手を促す)ありがとうございます。明日もやってますので、是非明日もお越しください。本日はよろしくお願いします。
大森立嗣監督
公開1週間ほど経ったこの時期に舞台挨拶をさせていただいていますが、これは、この映画が少し調子が良いから挨拶させてもらっているのではないかと勝手に思っています(笑)。初めてご覧になる方もたくさんいらっしゃるようですので、いつも通り少し緊張しますが、皆さんが楽しんで見ていただけるように、この後のトークが少しでも案内のような役割を果たせればと思います。お願いします。
‐公開約1週間が経ちましたが、長澤さんの元に観客からの反響や感想は届いていますか?
長澤まさみ
はい、そうですね。感想が送られてきます。映画を楽しんでくれたという言葉と、やはり応為(お栄)という人物にすごく興味を惹かれた、という感想が多く届いています。
同じように、応為の魅力に気づいたり、もっと彼女のことを知ってみたいというきっかけになったという方もいたり、あとはやはりこの親子の物語にとても感動したという言葉をもらったりして、多くの感想をいただいています。
‐大森監督のところには反響は届いていますか?
大森立嗣監督
ええ、来ています。友人や、大体は映画関係者という、少し厄介な人たちからの感想ですが(笑)
とにかく「永瀬さんと長澤さんがすごい」という声や、あと(渓斎英泉役の髙橋海人)くんについての言葉を多くいただいており、それが僕にとって一番嬉しいことです。
また、「これ傑作だね」といった連絡も何人かから来て、一人でこっそり喜んでいましたね。熱い感想が多いようです。
‐(永瀬へ)公開され、監督と登壇される中で、改めて大森監督が本作を撮る意義のようなところに気づかれたということですが、それはどういった点からだったのですか?
永瀬正敏
気づくのが遅いのですが、初日の舞台挨拶で監督と二人で立っている時にふと気づきました。
大森監督のご家庭には、いわゆる天才芸術家(監督の父・芸舞踏家・俳優:麿赤兒)がいらっしゃいます。僕はごくごく一般の家庭で育ちましたが、監督はそうではない環境で育っている。だからこそ、この作品における親子の思いや、描写の足し算・引き算のバランスが、非常に的確なのではないかと感じました。
‐今、永瀬さんがおっしゃった、芸術家がご家族にいらっしゃる環境について、監督自身ではどうお感じになりますか?
大森立嗣監督
実は、父(麿赤兒)とのコミュニケーションがちゃんと取れるようになったのは、ここ10年くらいなんですよ。それまでは本当に元父親みたいなもので。
応為もそういう意味では不器用だったりするのですが、もしかしたら僕の何かが彼女(応為)に入っているのかもしれないですね。
(父とは)お互いの作品を見たり見合ったりはするのですが、あまりちゃんと感想を言い合わないという、ちょっとややこしい関係性なんですよ。
‐葛飾応為は、歴史的に残っている作品や記録が非常に少ない人物です。北斎の死後、応為はどんな風に生きていったと、長澤さんご自身で思われますか?
長澤まさみ
ただ、その周りの史実はなくても、周囲の人々の応為の噂話がチラホラあって、まるで都市伝説が伝わるように、「実はこうだったらしいよ」という話が残っています。
私は、彼女はきっと幸せに暮らしていて、自分のやりたいことを細々とやっていたのだろうなと思います。
北斎がいなくなったことで、自分を見失うような人ではないと感じました。誰かに見てもらうことや知られることだけが幸せではない、自分が描き続けることの満足を求めていた人だったのだろうと思います。
‐応為が北斎の死後、どう過ごしていたかについて、永瀬さんのご想像はいかがですか?
永瀬正敏
幸せでいてくれたらいいなと思います。長野県の北斎館にお伺いした時に、今展示されている応為さんの直筆の書状(お手紙)を見せていただいたのですが、それが「これをいただいたお礼状」だったり、絵具の作り方だったりしたんです。
その内容から、絵を描きながら、そして人にちゃんとお礼状を出すような優しさと芯を持ちながら、幸せな日々を過ごしていたんだろうな、と感じました。
‐大森監督は、応為の人生の終盤について、監督の考えはいかがですか?
大森立嗣監督
長澤さんがおっしゃっていたこととすごく似ているのですが、彼女は多分、あんまり人からどう思われるかを気にしない人だったでしょう。
鉄蔵(北斎)がいなくなっても、もちろんあんまり変わらず絵を描き続けた。応為の絵から、当時の女性の寂しさのようなものが溢れている気がするのですが、それは多分、彼女自身の思いや、当時の女性たちに対する思いを乗せて絵を描き続けていたのではないかと思います。
あと、横で90歳まで生きた北斎を見ていたので、天寿を全うするまで本当にしっかり生きたんじゃないかな、と思います。
‐観客から「亡き父との会話や表情を思い出した」「頑固で不器用な父との日々を思い出した」など、親子の関係性についての感想が多く届いています。長澤さんは、この特殊な親子関係が、なぜ現代の観客にも通じるのか、どうお考えですか?
長澤まさみ
親子というのは、教えようと思って教わるわけでもなく、親が教えようと思って子供が教わるわけでもなく、やはり姿を見て教わることがあるのだと思います。
応為が持つ信念の形成には、北斎と暮らした生活の中で親から学んだことがやはりあるのだと感じます。皆さんが自身の親像を重ね合わせて見られるのは、そういった多方面の感じ方が、この親子の関係性には詰まっているからかもしれません。
‐親子関係に対する反響について、永瀬さんはどうお感じですか?
永瀬正敏
僕もプロモーションの時に、女性のライターさんに「私も娘なんですけど、どう接すればいいんでしょう」と聞かれたことがあります。
この映画で見ていただく親子関係は、父(北斎)ではない僕ですが、きっと今の一般の方々にも共感できる、何か通じるものがあるのだと思っています。
‐北斎の学問的な側面に焦点が当たりがちな中で、今回は応為を中心にした物語になっていることについては?
永瀬正敏
今回は、お栄(応為)が物語の真ん中にいます。彼女を中心とした様々な人間関係を、監督がしっかりと物語として成立させているのが、この作品の特徴だと思います。
‐こうした親子の関係性についての感想を受けて、監督の考えはいかがですか?
大森立嗣監督
親子の関係を2時間かけて描いているので、そういった反響が出るのは当然でしょう。ただ、この親子の関係を見て改めて感じたのは、本当に大切なことは、あまり言葉にされないのではないかということです。
今は何でも言葉で説明したり、プロパガンダのように主張したりすることが求められがちですが、そうではなく、言葉ではなく、相手との関係性の中で自分で発見していくようなあり方こそが、実はとても豊かな関係性なのではないかと思っています。
‐観客からは、応為のように「自分と向き合って素直に突き進んでいきたい」「私も好きに生きよう」といった、自分自身の幸福や生き方に対する感銘の言葉が多く届いています。長澤さんご自身にとって、生きるために必要なことはどんなことですか?
長澤まさみ
難しい質問ですね。以前、監督と『MOTHER マザー』という、親子の関係性を描いた作品をやりましたが、その時も今回も、家族というのは小さな世界であり、この世界の中で皆が生きているのだと感じます。自分が大切にすべきもの、自分というものが出来上がるのは、やはりその小さな世界からだと思います。
北斎と応為の関係性は、多くを語らなくても、言い合っても、お互いが尊敬し合い、認め合い、称え合って成り立っています。その世界の中で学ぶことはたくさんあり、自分の生き方が作られていくと思うと、幸せはまず身の周りにあるものから得られることが多いのではないかと私は思っています。
‐永瀬さんにとって、生きるために自分に必要だと思うことは何ですか?
永瀬正敏
長澤さんが全部喋ってくれたので(笑)そうですね、やはり自分というものをちゃんと持つことだと思います。
僕は中学生時代からの神様みたいな方々にお会いしたことがあるのですが、皆さん、すごく優しくて良い人なんです。人に優しくできる、いい人であるというのは、やっぱりちゃんと自分があるからだろうなと思います。だから、僕も人に優しくしたいですね。
‐人に認められなくても、自分の信念を突き進んでいけるという応為の姿に観客が共感していますが、監督が生きるために必要なことは何でしょうか?
大森立嗣監督
それはもうまさしくそうなんですよね。一番身近な例でいくと、僕は時間があれば脚本を書いているんです。脚本はお金がかからないからいくらでもやっていられるのですが、もしそれがなかったら何をすればいいのか全く想像もつきません。
脚本を書くということは、頭の中でものすごい勢いで人間に迫ったり、物語を作っていったりする行為です。自分が面白いと感じる中でやるのですが、それが映画になった時には、「これ売れるのかな」といった商業的なことまで考えて、ぐちゃぐちゃになりながら制作しているわけです。
それでも、どうしてもこれをやりたい、もっと人の内面に入り込んでいきたいという思いが、今の僕には必要なのではないかと感じています。
‐本作は、一般的な成長譚や何かを勝ち得ていくようなストーリーとは異なりますが、どのようなメッセージが詰まっているとお考えですか?
大森立嗣監督
まったくその通りです。成長期とか、何かを勝ち得ていく話ではないかもしれない。しかし、その分、本当に生きることに重要なことがいっぱい詰まっているんじゃないか、という風に思っています。
‐長澤さんにとって、この作品はどのような映画になりましたか?
長澤まさみ
応為は北斎のことを心から尊敬していたし、一緒にいられることに幸せを感じていたと思います。
私自身も両親に対してそう感じているので、この二人の姿を見ていると、改めて自分の家族のことを思いました。
この映画は、日々の生活の中に溢れる小さな幸せのようなものに気づかせてもらえる、そんな作品になったと感じています。
‐永瀬さんにとって、この作品はどのような作品になりましたか?
永瀬正敏
僕は自分の出た作品を何度も見返すことはあまりしないのですが、監督が初日に「きっと皆さんのお守りみたいな作品になれば嬉しいです」とおっしゃっていました。
まさに僕にとってこの作品は、きっとお守りのような作品になっていると思います。だから、何度も見返すことになるだろうと思っています。
‐監督にとって、本作はどのような作品になりましたか?
大森立嗣監督
私は何本か映画を作らせていただいていますが、人に優しい映画を作ったのは、もしかしたら初めてかもしれないと自分でちょっと思うところがありまして。まだうまく言葉にできない状態ですが、この舞台挨拶を通じて、長澤さんや永瀬さんの優しさに触れ、「優しいってすごくいいことなんだな」と改めて感じています。
困った時や腹立たしい気持ちになった時に、ふと応為とこの二人の親子を思い出そうかなと思っています。
‐それでは、最後にお集まりの皆様、そして今後映画を見てくださる全国の皆様に向けて、一言ずつ挨拶をお願いいたします。
大森立嗣監督
本日は、ありがとうございます。こうやって、長澤さん、永瀬さんと一緒に何回か舞台挨拶をやらせてもらうのは光栄なことです。ただ、今日は(渓斎英泉役の)海人(髙橋海人)がいないのが、ちょっとね、「おーい、カイト」という感じなのですが(笑)、皆さん楽しんでください。今日はありがとうございます。
永瀬正敏
「おーい、カイト」という感じですが(笑)、この物語は二人の大天才である北斎と応為の物語ですが、とても二人の日常をしっかり描いています。
監督がこの作品を制作しようと思われたのはコロナ禍(※脚本自体は随分前にあったが)の状況の中でしたが、あの時期に私たちは日常がどれだけ大事かを身に染みて感じました。
そういう意味で、この二人の日常を是非お楽しみいただければと思います。よろしくお願いします。
長澤まさみ
本日はありがとうございます。映画館でしか味わうことができない時間というものがあると思います。
皆さんの日々の日常の大切な時間ではあると思うのですが、映画館の中で描かれたこの親子の物語の日常を、ぜひ皆さんの日常に取り入れていただけたら嬉しいです。ぜひ映画館の方で見ていただきたいです。
映画『おーい、カイト』・・・あっ、違っ。すみません(笑)、映画『おーい、応為』をぜひ映画館で見ていただきたいです。よろしくお願いします。
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[動画・写真・記事:三平准太郎]
映画『おーい、応為』
《INTRODUCTION》
主演・長澤まさみ共演に永瀬正敏をむかえ、大森立嗣が監督を務めた映画『おーい、応為』が、2025年10月17日(金)に東京テアトル・ヨアケ共同配給にて全国公開。
江戸時代、破天荒な絵師・葛飾北斎と、彼の娘であり弟子でもあった葛飾応為。「父をも凌ぐ」と言われた画才を持ち、北斎の右腕として、そして数少ない女性の絵師として、人生を描きぬいた応為。茶も入れられず、針仕事もできないが、親ゆずりの豪胆さで、男社会を駆け抜けていった先駆的な女性アーティスト・葛飾応為とは。自分の心に正直に、そして自由に生きようとした彼女が、最後にたどり着いた幸せとは——。
監督・脚本を手がけるのは、『日日是好日』『星の子』などで人間の奥行きを繊細に描いてきた大森立嗣。
長澤まさみが、『MOTHER マザー』(’20)以来となる大森監督との再タッグで、初の時代劇に主演、ヒロイン・葛飾応為を熱演。
応為の父・北斎を永瀬正敏、応為の友人で北斎の門下生・善次郎(渓斎英泉)をKing & Princeの髙橋海人、北斎の弟子の絵師・初五郎(魚屋北渓)を大谷亮平が演じている。
《STORY》
北斎の娘、お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。父娘にして師弟。描きかけの絵が散乱したボロボロの長屋で始まった二人暮らしだが、やがて父親譲りの才能を発揮していくお栄は、北斎から「葛飾応為」(いつも「おーい!」と呼ばれることから)という名を授かり、一人の浮世絵師として時代を駆け抜けていく。美人画で名を馳せる絵師であり、お栄のよき理解者でもある善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、そして愛犬のさくらとの日常…。嫁ぎ先を飛び出してから二十余年。北斎と応為の父娘は、長屋の火事と押し寄せる飢饉をきっかけに、北斎が描き続ける境地“富士”へと向かうが…。
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出演:長澤まさみ 髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
監督・脚本:大森立嗣
原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) 杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より「木瓜」「野分」
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025「おーい、応為」製作委員会
公式サイト:https://oioui.com
公式X:https://x.com/oioui_movi
公式Instagram:https://www.instagram.com/oioui.movie
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