
倍賞千恵子「山田監督の元、さくら役を長く演じてきて」木村拓哉は「良き理解者」の観客に感謝。映画『TOKYOタクシー』完成披露試写会【詳細】レポート
2025年10月20日、山田洋次監督の最新作『TOKYOタクシー』完成披露試写会が、丸の内ピカデリーにて開催され、主演の倍賞千恵子、木村拓哉をはじめ、迫田孝也、優香、中島瑠菜、山田洋次監督が登壇した。
この舞台挨拶は、同日のお昼に東京タワーで行われたタクシーセレモニーに続くもの。
人生の終活に向かう85歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)と、さえないタクシー運転手・宇佐美浩二(木村拓哉)のたった1日の旅を描いた珠玉のヒューマンドラマを鑑賞した直後の観客を前に、登壇者たちは作品への熱い想いを語った。
舞台挨拶【詳細】レポート
倍賞千恵子(高野すみれ 役)
こんなにたくさんの皆さんに今日見ていただいて、本当にありがとうございます。映画を見終えた皆さんの後で、こうしてご挨拶をさせていただくのは初めてなんです。今、すごくドキドキしています。
何か色々な思いを抱いて劇場から出ていく時に、もし誰かと目が合ったら、ちょっとハイタッチをしていただけると、私は幸せかなと思います。どうぞよろしくお願いします。
木村拓哉(宇佐美浩二 役)
皆さん、今日はこの作品に皆さんの時間を割いていただき、本当にありがとうございました。皆さんが作品を受け取ってくれて、本当に嬉しいです。
この作品は、ものすごいアクションや事件といった過激なシーンがあるものではなく、本当に皆さんのそばに実在していそうな空気感を感じていただけたのではないかと思っています。
愛してくださっている自分の周りの方たちに、改めて愛情の確認だったり、愛してくれていることへの感謝だったり、あるいは愛することの幸せをきっと感じていただけたのではないでしょうか。ぜひ何度も乗車(鑑賞)していただければと思います。
迫田孝也(小川毅 役)
皆さん、今日は見ていただいて本当にありがとうございます。あのような結果になってしまったこと(※劇中の小川の行動)について、ごめんなさい。
愛するあまり、結果的にああいうことになってしまったんですけれども。私はこの映画を見た時、すみれさん(倍賞)は本当に素晴らしい女性だなと思いました。
絶対目を背けちゃいけないと思っていた、あの油をかけるシーン(※小川がすみれを傷つけるシーン)ですが、結局目を背けてしまいました。
もう一度見て、目を背けないようにしたいと思います。今日はよろしくお願いします。
優香(宇佐美薫 役)
皆さんの見終えた顔を見て、本当にすごくいい時間だったんだなというのが分かります。
私も映画を見て、この作品に参加できて本当に感謝していますし、幸せな時間をいただけたなと思っています。本当に多くの方に見てほしい映画なので、皆さんぜひ何回も見てほしいなと思います。
中島瑠菜(宇佐美奈菜 役)
皆さんにこうやって(作品が)届いているのを見ると、すごく嬉しい気持ちになっています。短い時間ではありますが、皆さんとこの時間を共有できることとても嬉しく思います。本日はよろしくお願いします。
山田洋次監督
映画を見終わった後に、こうして皆さんの前に出てくるのは、何でしょうね、まるで判決を受けるような気分です。皆さんが「ああ、良かったな」と思ってくださっていれば、こんな嬉しいことはありません。本当にありがとうございました。
作品への想いとエピソード
‐撮影時を振り返って、また、鑑賞後の観客を目の前にして、改めて今の心境はいかがですか?
倍賞千恵子
上映後に皆さんの前で話すのは初めてなので、正直逃げ出したくなるくらいなのですが、勇気を出して出てきました。先ほどの拍手を聞いて嬉しく思っています。
私は山田さんの作品で『男はつらいよ』のさくら役として長く出演させていただきましたが、今回は「すみれ」という名前で、映画の中でマニキュアを塗ったり、素晴らしいダイヤモンドのイヤリングやネックレスをしたり、高いバッグを持ったりする役は初めてでした。最初は大変戸惑いました。
今日もこのネイルをわざわざやってきたのですが、撮影中、マニキュアを直してもらっていると、木村君がスマートフォンで明かりをつけて手元を照らして助けてくれたんです。
この作品は、私にとって生涯忘れられない作品だと思っています。ご覧になった皆さんが、一言でも誰かに「映画を見てごらん」と言ってくださり、一人でも多くの方に見ていただけたら嬉しいです。
‐見終わった後の会場の空気感について、木村さんはいかがですか?
木村拓哉
皆さんが作品を鑑賞してくださった後なので、皆さんが良き理解者に見えるというか、感謝しかありません。
皆さんがどこで生まれてどう育ってきたか、言葉を交わす前は分からなくても、目線で感じ合うことはできます。皆さんがこの作品の「いい理解者」になってくださったんだな、という思いでいっぱいです。
‐倍賞さんは山田監督の作品に70作目(山田監督としては通算71作目)の出演、木村さんは19年ぶりの山田組参加となりました。倍賞さんにとって「山田組」はどのような場所ですか?
倍賞千恵子
山田組に出ると、自分が全然勉強していなかったということが、とてもよく分かります。
山田さんの作品の多くに出演させていただいていますが、私にとっては「人間としての学校」だと思っています。それはお芝居の技術的な学校というわけではなく、人間としてどう生きていくかということを、演じながら常に考える場所なんです。
木村拓哉
倍賞さんと同じ意見ですが、山田監督は監督という立場にいるだけでなく、撮影現場の「豊かさ」を教えてくださる方です。
各部署、各セクションが「やっていて嬉しい」と感じられるような、とても豊かな場所です。
‐今作の撮影で印象的なエピソードはありますか?(特に技術や監督の姿勢について)
木村拓哉
タクシーの走行シーンについてですが、見てくださった皆さんにお伝えすると、私がすみれさんを乗せて町を走っているシーンは、あれは1回も(実際に公道を)走ってないんですよ。全てスタジオで撮影させていただきました。
今のテクノロジーのすごさをすごく感じましたが、そのテクノロジーに囲まれている中でも、監督は「テクノロジーが先行するのではなく、あくまでも人が先行する」という姿勢でした。人間として大切なことは何か、ということに焦点を当てた現場でした。
‐山田監督、先行試写をご覧になった方々から熱い感想が届いていると思いますが、いかがですか?
山田洋次監督
怖いから、あまり(感想は)聞いてないですよ、僕は。
もちろん感想を伝えてくださる方もいますが、お世辞じゃないかと疑っていますから (笑)
‐監督から見て、主演のお二人の演技はいかがでしたか?
山田洋次監督
映画を作るという仕事は、言葉では説明できないほどとても複雑なものです。
主演・助演の俳優さん、そして約40人から50人のスタッフが一緒になって、ああだこうだ言いながら作り上げていくのが映画です。
これは他の芸術にはない、一緒に仕事をしていることの楽しさですね。
辛いこともありますが、それを乗り越えて、「楽しかったな」という思いをスタッフ・俳優全員が抱いてクランクアップできる状態が、私にとっての理想です。今回も皆と一緒にいて楽しかったと心から思っています。
‐迫田さんは、すみれの人生を乱すダークな面を持つ小川毅という役を演じる上で、どんなことを意識されましたか?
迫田孝也
小川はすみれのことが大好きで大好きで、その結果、あのような行動や言動に出てしまいました。
すみれを傷つけてしまう行動や雰囲気は、「あなたのことが好きだからだ」という理由を、全て忘れないようにしようと心がけて演じました。
山田監督からは「もっと二枚目なんだ」「色気を出してくれ」と求められたのが一番大変でした。私は今まで色気を出したことがなかったので、どうしたらいいか周りに聞く人もいない中、何パターンか試した結果、一つだけ「これなら近いかな」という手応えを感じ、それを頼りに演じました。
山田洋次監督
彼(小川)はかなり異常な人間ですが、それは彼だけが違う種類の人間だということではないんです。彼における異常性は、私たち皆のどこかに潜んでいるものが異様に膨らんでいるだけなんです。
その意味では、私たちは彼を「かわいそうな人間だ」と思わなければいけないですね。
木村拓哉
(迫田の演技について)団地で暮らしていた頃の、家の中での表情と、隣人に会う時の表情の使い分けなど、重い過去パートに参加できていない私や優香さんは、初めて完成した映画を見た時、ショックが大きかったですね。
‐優香さんは、浩司の妻・薫を演じられました。ご自身の役柄について、改めてどう思われますか?
優香
薫は全面的にチャーミングな女性です。家族を愛しており、娘のために、何とかして家計のことを解決しようと必死に働きながら考えているんです。
旦那さん(木村拓哉演じる宇佐美浩二)とのシーンは怒っていることが多いのですが、夫婦の愛を感じる部分も大切にしました。
すみれさんが買ってくれたシュークリームのクリームが(浩二の顔に)ついているシーンは、とても可愛かったです。あれは7回撮り直しました。なかなかうまくつかなくて(笑)
木村拓哉
(優香の発言を受け)薫は、夜勤明けで昼間に寝たい夫のために、自分が使った後のアイマスクを置いておくんです。旦那が寝るときにそれを目元に載せれば、彼女の匂いだったり、ぬくもりだったりを感じて安心できるだろうと思って、私が提案しました。こういう設定をすごく考えていましたね。
‐中島さんは初めての山田組で、特に大変だったシーンや印象に残っている演出はありますか?
中島瑠菜
全部のシーンが難しかったですが、その中で印象的だったのは、山田監督から「可愛らしく」という演出をいただいたことです。
オーディションの段階から、お父さん(浩二)に「ちゃんと可愛らしく、守ってあげたい」と思ってもらえるような女の子にならなきゃ、というのがずっと課題でした。
私の声が元々低めだったので、撮影現場でも何度もご指導いただき、呼吸のところから一から教えていただきました。
山田洋次監督
「可愛らしく」なんて、私は言っていないですよ(笑)それは演出家が言ってはいけないことですね。ただ、可愛くなるために具体的に色々と指導したでしょう。例えば、お父さんと進学の話をして、シャワーを浴びて戻ってくる時の感じなど、すごくキュートでしたよ。
クロージングメッセージ
山田洋次監督
ご覧になった後なので、言葉を選びますが、この映画の運転手さん(浩二)は、懸命に家庭を支えて、ローンやタクシーの事業のための借金、そして今度は娘さんの学費と、次々に問題に頭を悩ませています。
東京の郊外に小さな家を建てて懸命に暮らしている、民衆というか、庶民の一人です。
私は、こうした人々が日本人の大きな部分を占めており、健全な形だと思っています。物価が安くなり、収入が上がって、そうした人たち全体が幸せになるような国であってほしい。
この運転手さんに、心からのエールを送るつもりで、この映画を作りました。どうぞ皆さん、この映画を気に入っていただけたら、まだ見ていない色々な方に「見てごらん」と伝えていただければ、とても嬉しいと思います。今日は本当にありがとうございました。
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[記事:三平准太郎/写真:山田健史]
映画『TOKYOタクシー』
《INTRODUCTION》
山田洋次監督の91本目となる最新作『TOKYOタクシー』が、2025年11月21日(金)より公開いたします。
長きにわたり日本映画界で活躍し続け山田監督作品には欠かせない名女優・倍賞千恵子、そして『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉の豪華共演が実現、さらに蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、イ・ジュニョン、笹野高史などの豪華実力派俳優が揃いました。
《STORY》
毎日休みなく働いているタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。娘の入学金や車検代、家の更新料など次々にのしかかる現実に、頭を悩ませていた。
そんなある日、浩二のもとに85歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送るという依頼が舞い込む。
最初は互いに無愛想だった二人だが、次第に心を許し始めたすみれは「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがあるの」と浩二に寄り道を依頼する。
東京のさまざまな場所を巡りながら、すみれは自らの壮絶な過去を語り始める。たった1日の旅が、やがて二人の心を、そして人生を大きく動かしていくことになる―
- メインカット
- 場面写真1(浩二、すみれ)
- 場面写真2
- 場面写真3
- 場面写真4
- 場面写真5(小川、すみれ)
- 場面写真6(奈菜、薫)
- 場面写真7(すみれ、信子)
- 場面写真8(すみれ、キム・ヨンギ)
- 場面写真9(浩二、すみれ)
- 場面写真10
- 場面写真11(すみれ)
- 場面写真12(すみれ、誠一郎)
- 場面写真(すみれ)
- 場面写真(浩二)
- 場面写真(小川、すみれ)
- 場面写真(小川)
- ティザービジュアル(横)
出演:倍賞千恵子 木村拓哉
蒼井優 迫田孝也 優香 中島瑠菜
神野三鈴 イ・ジュニョン マキタスポーツ 北山雅康 木村優来 小林稔侍 笹野高史
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 朝原雄三
原作:映画「パリタクシー」(監督 クリスチャン・カリオン)
配給:松竹
©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/tokyotaxi-movie/
公式X:https://x.com/tokyotaxi_movie
予告編
2025年11月21日(金)全国ロードショー
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