映画『Love song』

【インタビュー】増田有華「芸能界を辞めてもいいかなって思ったことも。」

横浜を舞台にハードボイルドかつエモーショナルな恋愛映画『Love song』(10/20公開)で主演を務める増田有華。演じた役がAKB48時代の自分に似ていると語る彼女に、本作への取り組みや、芸能人としての分岐点になったきっかけなどについて話を聞いた。

売れないシンガー・花(増田有華)を売り出そうと、花のマネージャー兼恋人の猛はヤクザの覚せい剤を横流ししようとする。
しかし所業はすぐにばれて、暴力団員の久住(山口大地)によって無残に殺害される。猛からの最後の電話で隠した薬のありかを知らされた花は薬をカバンに入れその場を去ると、猛を撃った久住に復讐を誓う。
そんな中、花は幼なじみで、かつて一緒に夢を追っていた誠(木口健太)と7年ぶりに再会する。花の久住への復讐劇に誠も巻き込まれていき…。

増田有華 インタビュー&撮り下ろしフォト

■“花”は、17、8歳の頃の自分に似ている

‐主演として本作に出演することになったきっかけは?

増田有華(ヒロイン・花 役)
劇中で歌唱シーンがあるということでマネージャーさんから紹介があって、オーディションを受けたのがきっかけです。
オーディションと言っても、担当の方とお話をするだけだったんですが、脚本を読んだときに、自分に似たキャラクター性を感じたので、横丁とかお酒をよく飲みに行くとかプライベートなことや、お芝居への取り組み方など、自分のありのままのことをお話ししたんです。特に手応えはなく、その日は、近くの居酒屋で飲んで帰りました。
そうしたら、後日、オーディションに受かったとの連絡が来て、私の何の話しが響いたのかな?って思いました(笑)
でも、王道ではある物語ですけれど、歌も歌えるということで決まったときは嬉しかったです。

映画『Love song』

増田有華

‐脚本を読んだ全体の印象をお聞かせください。

増田有華
ナイフ、銃、薬物とけっこう危うい世界に踏み込んだ物語だなと感じましたけれど、“花”含めて他の登場人物たちは、いたって真面目で、ただひたむきに愛を求めて生きている人たちが、見え方としてはとても不器用に見えるお話しだなとも思いました。
“花”も不器用で、そしてとても気が強く見えますけど、誰よりも純粋で純真で、まっすぐな女の子だなという印象を持ちました。

‐そういう中で“花”がご自身と似ているなというのはどういう点ですか?

増田有華
嘘がつけなくて、自分がこうだと思ったことは曲げないところです。木口さん演じる“誠”に何度も止められるんですけれど、「うるせぇ!」って飛び出していくところとかも私に似ているなって思います。
もうひとつは、“歌に救われる”という点です。歌が好きで、歌を通じて自分を表現するところも、ほぼ自分という感覚を持ちました。

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花(増田有華) ©2023「ラブソング」製作委員会

‐そういう“花”のキャラクターはどのように出来上がっていったと考えていますか?

増田有華
“花”のことは、0歳のときからの生い立ちや家族構成、人との出会いを考えてノートに記してみたんですが、たぶん、幼い頃から変わっていない。そして、周りの人たちから助けられて育ってきたという、ある意味末っ子気質を持った子かなとは思いました。

‐そのノートを是非見てみたいですね。

増田有華
恥ずかしくて誰にも見せられないです!燃やしてしまいたいです(笑)

‐お話を伺っていると、役作りというよりは、自分自身のありのままを表現されたということですね。

増田有華
そうですね。まぁ、最近は私も大人になってきましたが、昔は尖りまくってて、レディ・ガガの全身トゲの衣裳を着てるかのように現場に入ってきたと言われることもありました。AKB48のときは特に、大所帯だったので、自分を守るために刺々しくいたんですけれど、17、18歳頃の私はとても“花”に似ていたので、役作りというよりは、昔の自分を思い返すという感覚でした。

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■奇奇怪怪斬新な現場

‐“奇奇怪怪斬新な現場でした”とコメントされていますが、具体的にどんな現場だったのでしょうか?

増田有華
最初、この物量の作品をわずか4.5日で撮ります!って言われた時は、静かに台本を閉じて紅茶を飲むという、ちょっとヤバイなって思ったんです(笑)
映画の撮影は、普通はテストして、ドライをして、そして本番というように、同じお芝居を何度か重ねるんですが、この作品の現場では、児玉監督がなんせ「はいやるよ!OK!」みたいな感じで、すぐに撮影して終わるので戸惑うこともあって(笑)今まで経験したことがない現場のスピード感で、時には機材の準備が間に合ってなかったりしたことも。
そういった意味で「奇奇怪怪で斬新な現場」とコメントしました。“奇奇怪怪”という単語自体、私は初めて使ったかもしれません(笑)
ただ、もちろん長回しのシーンはしっかりリハーサルしましたし、シーンによって「私はセリフをこうしたいです」「花はこう言わないと思います」と現場で監督に提案したり、いろいろ相談させていただいたので、私が“花”を演じるという意味をより強く感じられました。

映画『Love song』

‐歌のシーンの撮影はどのようにして行われたんですか?

増田有華
1週間前に歌をいただいてから、お風呂で練習していたんですが、歌入れ自体は事前にスタジオでレコーディングするのかなと思っていたんですが、撮影現場での録音でした。なのでこれもまた斬新!って思いました。
映画の録音部さんは、音楽の方ではないし、レコーディングスタジオだったら自分でできる(エコーなどの)調整もできないし、且つ、撮影時間が押している中で歌うというのも初めてでした。でもそれも生っぽくて面白いなって思いました。
で、現場で歌って録音したものに、実際の撮影ではそれに合せて口を動かしているんですが、録音時に調子に乗ってフェイクとかしているんですよ。だからそのフェイクに合わせるのが難しくて、自分に苦しめられるという(笑)
なので、映画をご覧になる方は、歌のシーンは実際に撮影現場で歌ったものと思って聞いていただけたらと思います。

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歌唱シーン ©2023「ラブソング」製作委員会

■木口健太との運命的?な出会い

‐敵役のヤクザ・久住を演じられた山口大地さんとの共演はいかがでしたか?ガンアクションもありましたが。

増田有華
山口さんとは楽屋裏でお会いしたことはあったんですが、共演としては今回が初めてでした。山口さんはとても物腰が柔らかい方で、休憩中はユルい話をしていた記憶があります。
山口さんの首元に銃口をめり込ませるシーンがあるんですが、ちょっとでもウソがあるとダメなので、実際にめり込ませたんですが、めっちゃ首が赤くなってました(笑)
ごめんなさい!って言ったら、「大丈夫ですよ」って言っていただいたんですが、けっこうな力で拳銃をめり込ませちゃったなって反省しました。

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花(増田有華)/久住(山口大地) ©2023「ラブソング」製作委員会

‐そして、共演シーンが多かった“誠”役の木口健太さんとの共演はいかがでしたか?

増田有華
今思い出したんですが、私がこの作品のオーディションを受ける3日くらい前に、木口さんが出演されていて、男優賞も獲られている『おんなのこきらい』(2015/主演・森川葵)という映画を観たんです。そのとき素敵な俳優さんがいるなぁって思ってたんです。
で、オーディションに行ったら、相手役が木口さんで、こんな偶然ってあるんだ!とても驚きました。マネージャーさんにも「この前映画を観て、いい!って思った俳優さんだ!」って言って。ものすごいご縁を感じたので、そのことを撮影中に木口さんに伝えさせていただきました。
木口さんとご一緒できるということも嬉しかったですし、実際現場でも素敵なお芝居をされる方だなって思いましたし、そういうことがあって、心の距離が近くなれて、各シーンのお芝居についても2人で相談しながら進めることができました。

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誠(木口健太)/花(増田有華) ©2023「ラブソング」製作委員会

■芸能界を辞めてもいいかなって思ったことも。

‐本作を通して俳優として成長できたなという点はありますか?

増田有華
どの現場でも毎回、自分で課題を置いて取り組むようにしているんですが、今回は、自分の感じたままにナチュラルに話すということを意識しました。舞台では「声を張れ!」と言われますが、映像作品で声を張りすぎると不自然になりますし、私も過去の映像作品では少し声が張り気味だったなという反省があったので。

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‐ソロ活動されることになって、もうすぐ10年。改めてこの10年を振り返っていかがでしたか?

増田有華
あっという間で、AKB48を卒業したのもつい先日という感覚です。でもAKB48時代は、さっきも話しましたけど、刺々しい雰囲気で現場に入ってましたが、今は、自分を取り繕うこともなく、心を裸にした状態で現場に居れるようになって、人のことも許せるようになったし、そういう点ではかなり大人になったなって思います。

‐8月3日に32歳の誕生日を迎えられましたが、30代になって変わったことはありましたか?

増田有華
すごく変わりました。20代後半までは、なんにも目標が無いし、何に向かって進んだらいいのかわからないって感じだったんです。27、28歳の頃は芸能界を辞めてもいいかなって思うこともありました。でも、30代になってからは、前向きに芸能活動したいって思えるようになったんです。

‐前向きに頑張ろうって思えたきっかけは何かあったのでしょうか?

増田有華
お芝居を楽しいと思える気持ちが薄れてきている自覚があった中、『全裸監督シーズン2』(2021/Netflix)という大きな作品に出演できて俳優としての自覚が強まったこと、そして、「実は素晴らしい家族ということを知ってほしい」(2022年)という舞台に出演させていただいた体験が特に大きかったです。今までは大きな劇場が多かったんですけれど、その作品はテアトルBONBONという中野にある客席が120ぐらいの小さなところだったんですが、客席との一体感が強いのもあって、やっぱり舞台はごまかしが利かないし、流れを通じてやることを改めて実感できた「お芝居ってとても楽しい!」って思えたんです。

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‐ソロになって、俳優としてご自身で成長を感じられたことは?

増田有華
以前は自信が無いまま現場に入ることもあったんですけれど、『全裸監督シーズン2』のような、山田孝之さんとか、右を向いても左を向いても錚々たる俳優さんがたくさんいらっしゃる作品では、自分の中で確固たる自信を付けて現場に入らないと、他の俳優さんたちに負けちゃうなという感覚があったので、負けないために、100%、120%の準備をしていくという感覚がその頃から自分の中に生まれるという変化がありました。

‐それは今作『Love song』にも活かされている感じでしょうか?

増田有華
そうですね。準備を全部していくという取り組みをするようになりました。

‐ということは、8月20日放送開始のドラマ「●●ちゃん」で連ドラ初主演されますが、このドラマにも?

増田有華
『Love song』あたりから、準備はするけど気張らずにお芝居をしようという感覚になれたので、この後の撮影となったドラマ「●●ちゃん」でもそれは活かされていると感じています。
ほんとに私生活でもお芝居でも力を抜いて自分らしくできるようになった自覚があります。

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■難しいお芝居に挑戦してみたい!

‐改めてお芝居に前向きなれてきたということですが、今後の抱負はありますか?

増田有華
お芝居をもっとやっていきたいです。ミュージカルもやりたいですけれど、今はストレートのお芝居がすごくやりたいです。たとえば、「シェイクスピア」とか、そういう難しいお芝居はこれまでやったことがないので、すごく熟考しないとわからないようなお芝居をして、ノート1冊埋めたいぐらいな感じです。今は、1作品5,6ページぐらいで済んでいるのを、ノート1冊書かなきゃわからないような難しいお芝居に挑戦してみたいです。

映画『Love song』

‐最近ハマっていることは?

増田有華
キムチづくりです!唐辛子、にんにく、りんご、白菜、そして、アミの塩辛を韓国から取り寄せて1からキムチを漬けています。

‐すごいですね。私はやっても、キムチの素に野菜を入れるだけぐらいです。

増田有華
それでもすごいですよ。でも、1からキムチを作ったら楽しいですよ。水の抜き加減や塩の抜き加減でぜんぜん味が変わってきて、りんごとか素材の分量をちょっと変えるだけでも味が変わりますし、子育てしたことないですけれど、子育てのような感じです(笑)

‐最後に映画『Love song』の見どころをお聞かせください。

増田有華
私が演じた“花”も木口さんが演じた“マコ兄(誠)”も不器用なところがあって、その2人が積み重ねていくコミュニケーションと、逃げた先で2人の本音がぶつかり合って、心が溶け合っていくシーンは私もとても好きなので、皆さんにも是非見ていただけたらなと思います。そして、実際に現場で歌った歌のシーンにも是非注目してください。

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増田有華(ますだ ゆか)プロフィール
1991年生まれ、大阪府出身。2006年AKB48の2期生としてデビュー、2012年卒業。
宮本亜門演出ミュージカル『ウィズ~オズの魔法使い~』主演ドロシー役で 一躍注目を集め、TVドラマ『リミット』(TX)、『野田ともうします』(NHK E)、朗読劇『私の頭の中の消しゴム7th/10th』、舞台『タンブリングFINAL』、ミュージカル『ファウスト~最後の聖戦~』、映画『呪報2405 ~私が死ぬ理由~』、オフブロードウェイミュージカル『bare』、アイヴィ役、ミュージカル『EDGES』など、多方面で活躍中。2021年のNetflix作品『全裸監督2』では江戸川ローマ役を演じて注目を集めた。

■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎]

■映画劇中歌 『My love…』 デジタルリリース決定

映画オリジナル曲『My love…』をアレンジして、新たにレコーディング。
10/13(金)にマッシュアップレコーズよりデジタルリリースが決まった。
映画とは異なるJAZZYなバラードに仕上がった楽曲はこの秋冬にぴったりな1曲となっている。各種音楽サイトから購入可能。USEN等でも流れる予定。
さらに全国JOYSOUND設置店及びカラオケパセラにて『My love…』カラオケ配信も決定。映画本編映像を一部使ったカラオケ映像もこの度完成した。

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■花と誠。逃走中に交わされるベッドでの愛の告白シーン解禁

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場面写真

主演の増田有華による告知コメントに続き、本編シーンが一部解禁となった。
主人公の花と誠がヤクザに追われ逃走するなか、舞い戻った場所で一夜を過ごすことになった二人。
長年隠してきた思いをついに告白する誠。花は誠の言葉を受けて涙を流すが…。二人の思いが一つになり、花は誠を見上げる。二人の友情はそこから激情の愛へと変わっていき…。

増田有華コメント&本編映像一部解禁

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映画『Love song』

《INTRODUCTION》
横浜を舞台にハードボイルドかつエモーショナルな恋愛映画『Love song』。
監督は石原プロの助監督からキャリアをスタートし、「ショカツの女」(EX) 「警視庁強行犯係樋口顕」(TX)など多くのTVドラマを監督し、映画『いつもより素敵な夜に』(10)『妻の恋人』(12)など大人の恋愛映画を手掛ける児玉宜久だ。
ヒロイン・花を演じるのは元AKB48メンバーの増田有華。AKB卒業後も映画、ドラマ、舞台と女優として精力的に活動中。本作ではシンガーとしてその美しい歌声を披露する一方で、幼なじみと7年ぶりに再会し、愛を交わすなど感情豊かに表現している。
幼なじみ・誠を演じるのは、映画『おんなのこきらい』でMOOSIC LAB2014男優賞を受賞し、『傀儡』(18)や『ずぶぬれて犬ころ』(19)など主演作品も発表され、俳優として着実にステップアップを重ねている俳優・木口健太。敵役のヤクザを演じたのは俳優・山口大地。
舞台での活躍が多いが、ドラマや映画の出演も重ね、2019年には仮面ライダー役での出演を果たす。近年では映画『東京リベンジャーズ』に出演するなど注目の俳優を起用。
またベテラン俳優・本田博太郎、藤吉久美子が脇を固め、物語に重厚感を与える作品に仕上がっている。

《STORY》
売れないシンガー・花を売り出そうと、花のマネージャー・猛はヤクザから覚せい剤をだまし取った。
しかし所業はすぐにばれて、暴力団員の久住によって無残に殺害される。
猛からの最後のコールに隠した薬のありかを知らされる花。
花は鞄に入れた薬を持ち、猛を撃った久住に復讐を誓う。
そんななか花は幼馴染で、かつての恋人・誠と十年ぶりの再会を果たす。
花は誠に鞄の中身を見せて状況を告げ、誠は花をかくまうため自分の部屋に住まわせる。
薬を取り戻せない久住は手下の男たちと共に花を血眼で探し始めた。
危険が迫る中、花と誠は離れていた時間を取り戻すように再び愛を奏で始めるが…。

出演:増田有華 木口健太 山口大地 / 藤吉久美子 本田博太郎
青木一馬 平山 大 牧野裕夢 広瀬彰勇 大川夏凪汰 佐藤真澄 角謙二郎

監督:児玉宜久
脚本:村川康敏 宍戸英紀
制作:レジェンド・ピクチャーズ
配給協力:マグネタイズ
©2023「ラブソング」製作委員会
公式サイト:https://www.legendpictures.co.jp/movie/love-song/
公式X:@Love_song2023

予告編

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2023年10月20日(金)より池袋シネマ・ロサにて公開 ほか全国順次ロードショー

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