中井友望

【インタビュー】中井友望「役と共に私自身も救われた気持ちになりました。」映画『炎上する君』

2023年8月4日より公開中の映画『炎上する君』は、西加奈子の傑作短編小説をふくだももこ監督が、うらじぬの×ファーストサマーウイカで映画化。物語の重要な役で出演する中井友望(なかいとも)に、本作出演エピソードを聞いた。

『炎上する君』は、何度も現実に絶望する二人の女性、梨田(うらじぬの)と浜中(ファーストサマーウイカ)が、世にも奇っ怪な「炎上する男」を探すシスターフッドムービー。
中井友望が演じるトモは、ラストシーンでも登場するが、そのシーンは実は撮影初日で、ふくだ監督がうらじぬのだけに仕掛けた「君は何も悪くない!」というセリフ受けた中井の芝居に、ふくだ監督は号泣するほど感動したという撮影エピソードがある。

中井友望 インタビュー&撮り下ろしフォト

■うらじぬのさんとファーストサマーウイカさんは、梨田と浜中そのものだった

-「うらじぬのさんが私の目の前に立った時、『ああ、だから私は映画に出たかったんだ』とコメントされていますが、ファーストサマーウイカさん含めて、このお二人との共演で感じられたことを改めて教えてください。

中井友望(トモ 役)
2日間の撮影でしたが、うらじさん演じる梨田とファーストサマーウイカさん演じる浜中に救われるという役なのもあって、私の目の前にお二人が立って目が合った瞬間、とても大きなエネルギーを感じて、心が揺れたと同時に安心もしました。
この映画の撮影より以前から、西加奈子さんの原作を読んで好きだったんですが、梨田と浜中そのものが目の前にいるという佇まいを感じたからです。

中井友望

中井友望

-原作も読まれていたんですね。

中井友望
はい。この原作を映画化すると最初に聞いた時に、梨田と浜中を実写でできるの?って想像がつかなかったんですけれど、撮影初日にお二人にお会いした瞬間に、「あっ!梨田と浜中だ!」って思いました。

-なるほど。原作を読まれていたからこその実感というわけですね。

中井友望
はい。

炎上する君

浜中(ファーストサマーウイカ)/梨田(うらじぬの)©LesPros entertainment

■ふくだももこ監督は“梨田”?

-今回、役名が“トモ”というのもあって、ついつい中井友望さんのイメージと重ねて観てしまったんですが、ご自身はどういうキャラクターだと捉えて演じられましたか?

中井友望
キャラクターというのはぜんぜん考えなくて、自然に演じました(笑)

炎上する君

トモ(中井友望)©LesPros entertainment

-ふくだももこ監督は現場でも熱いお方だと聞いていますが、どんな印象をお持ちですか?

中井友望
最初にお会いしたときから熱くてまっすぐな方だという印象があって「この人好きだ!」って感じました。それからずっとふくださんの作品に関わりたいなって思っていて、今回でご一緒するのは3回目になりました。
現場では、熱いし正直だし、人のことを愛を持って想うことができるし、それが現場全体の空気に影響していました。
ちなみに、実は西加奈子さんのことを教えてくださったのもふくだ監督なんです。それから西さんの本がすごく好きになったので、今回、ふくだ監督で西さん原作の作品に、さらに“トモ”役で出演させていただくことが決まったときは、ほんとうに夢みたいに嬉しかったです。

-西加奈子さんの本を紹介してもらったときは、まだ『炎上する君』の映画化が決まる前?

中井友望
3~4年ぐらい前のことで、映画化が決まる前です。

中井友望

-本作では、ふくだ監督からはどういう演出がありましたか?

中井友望
特に無かったです。でも、私は人の話を聞いて反応するのがゆっくりなペースなんですが、居酒屋での会話のシーンでは、「それがいい」って言ってくださいました。

-本人のありのままを肯定してくれるということですね。それはある意味“梨田”と重なる部分もあるかもしれませんね。

中井友望
確かに、そうですね。

中井友望

■日々の小さなことの積み重ねがだんだん心にのしかかってしんどくなっていく

-齊藤広大さん演じる足元が炎上する男とはどういう意味か?というのはこの映画を観る人に委ねられている部分です。ただひとつ言えるのは、さまざまな心えぐられることや理不尽な葛藤を抱えて生きている人たちの象徴でもあり、それは“トモ”も同じ。中井さんご自身は、そういった心えぐられるような経験ってこれまでどういうものがありましたか?

中井友望
私は学生時代、学校があまり楽しくなくて、そのきっかけが人間関係だったんですけれど、学校社会では、悪気なく人の心をえぐるようなことをふざけて言ったりするじゃないですか。で、こちらが真面目に捉えたら「何を真面目に捉えているの?」みたいな、そういうちょっとずつのことが続いて、嫌な気持ちが積み重なっていって、学校生活での人間関係が得意じゃなくなったのかなと思っています。
これだ!という大きな出来事はなくても、そういう日々の小さなことの積み重ねがだんだん心にのしかかってしんどくなっていくんだと思います。

 

-なるほど。そういったことは、この作品に登場する人物そのものでもあるような気がします。その中で、うらじぬのさん演じる“梨田”は、共感してくれて一緒に怒ってくれて、時には手を差し伸べてくれて、ある意味ヒーローのような存在ですが、中井さんにとって、人でも物でもいいんですが、心の癒やしになることはなんでしょう?

中井友望
学生時代、学校に行かなくてずっと家にいたとき、親は働いていていないので、飼っているワンちゃん2匹と一緒に過ごしていたんですが、それが大きな心の支えになっていました。嫌なことがあっても、一方的ですが、ワンちゃんにずっと話してました(笑)

-今はどうでしょう?

中井友望
今はお仕事が楽しくて心の支えになりますし、今回の『炎上する君』でも、“トモ”が救われたと同時に“中井友望”も救われた気持ちになりました。

中井友望

■高円寺は馴染み深い街

-高円寺での撮影はいかがでしたか?

中井友望
高円寺に近いところに住んでいたこともありましたし、お隣の阿佐ヶ谷でアルバイトしていたこともあって、高円寺は私にとって馴染み深い街だったので、感慨深かったです。

-“トモ”が働く「なみのゆ」という銭湯は、“百年後の銭湯を模索する実験浴場”とも言わたりする実在する銭湯ですが、そこには行かれたことはあったんですか?

中井友望
この銭湯をロケ地に選んだのはふくだ監督なんですが、撮影で初めて行きました。ちなみに、劇中にも登場するあの赤い富士山は、日本で3名しかいない銭湯絵師のうち、唯一の女性の田中みずきさんという方が描かれたものだそうです。

中井友望

■レッドカーペットを歩くって…

- 昨年秋の東京国際映画祭で、映画『少女は卒業しない』でレッドカーペットを歩かれましたが、どんな感想を持たれましたか?

中井友望
なんだかあっという間で、フワフワしていたなってことだけを覚えています(笑)
とても光栄なことですし、またなにかの作品で、どこかの映画祭でレッドカーペットを歩けたらなって思います。

中井友望

-「無様でも、もがいても、君はかっこいい。」というキャッチコピーもある本作ですが、最後にこれからご覧になる方へのPRメッセージをお願いします。

中井友望
私の母にこの映画のことを紹介するときに「ちょっとわかりにくいかも」って言ったんですけれど、でも私自身にとってはとてもわかりやすい作品だし、そんな言い方をしない方が良かったなって今は思っていて、いろんな方に観ていただいて、どのように感じたかを是非聞いてみたいですし、そういう話をしたくなる映画だなと思います。

中井友望

中井友望(なかいとも)プロフィール
「ミスiD2019」でグランプリを受賞。2020年に「やめるときも、すこやかなるときも」(日本テレビ)でドラマ初出演。
2021年は、映画『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)、『シノノメ色の週末』(穐山茉由監督)、『ずっと独身でいるつもり?』(ふくだももこ監督)と立て続けに出演映画が公開され、2023年は、2月に東京国際映画祭アジアの未来部門出品作品の映画『少女は卒業しない』(中川駿監督)が公開、3月に『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(阪元裕吾監督)が公開、9月に第15回下北沢映画祭コンペティションにノミネートの短編映画「Like That Old Man」の上映、秋には初主演となる映画『サーチライト-遊星散歩-』(平波亘監督)が公開となる。

■撮り下ろしフォトギャラリー

[ヘアメイク:横山雷志郎/スタイリスト:粟野多美子/写真・記事:三平准太郎]

☆衣装クレジット(グリーンの衣装)
ワンピース:¥31900 kotohayokozawa/ON TOKYO SHOWROOM
イヤリング:¥14300 TALPA/SUSU PRESS

(問い合わせ先)
SUSU PRESS:03-6821-7739
ON TOKYO SHOWROOM:03-6427-1640

映画『炎上する君』

《STORY》
高円寺の高架下。アップテンポなダンスチューンに合わせ、おもむろに脇毛を見せながら踊り狂う二人の女性・梨田と浜中。彼女たちは唯一無二の親友である。
高円寺の銭湯「なみのゆ」。梨田と浜中は湯に浸かりながら「50代の男性と14歳の少女の真剣な恋 愛」や「政治家の女性蔑視発言」、「医学部での女性受験者の一律減点」など、炎上が相次ぐ女性への抑圧に日々憤っていた。
ある日、浜中とお笑いライブに出かけた梨田。場内が爆笑に包まれる中、容姿や恋愛経験を揶揄されるお笑い芸人の傷ついた表情を、梨田は見逃さなかった。その帰り道、全身脱毛の告知が書かれたポケットティッシュを手にした梨田はふと思う。「なぜ彼は見た目を変えなければならないのだろう。恋人がいないことがそんなにダメなことなのだろうか。そしてなぜ私は体中の毛を無くさなければならないのだろう」。その日を境に、梨田と浜中は脇毛をたくわえ、ダンスをすることで自分たちを解放するようになる。誰のためでもない自分のために脇毛を生やし、晒す二人。
商店街でのダンスイベントの帰り、梨田と浜中は居酒屋でバンドの打ち上げに遭遇する。メンバーからの無自覚なラベリングに傷つき、店を飛び出した女性トモに、梨田は思わずこう叫ぶのだった。
「君はなにも悪くない」と。
そんな折、浜中が高円寺周辺ばかりに出没する「炎上する男」の噂を聞きつけてきた。噂はどうやら真実実味を帯びており、二人は一度でも男を目にしたいと好奇心を頼りに探し回る。
ぼうぼうと足が燃える男。その男は、一体何者なのだろうか―――。

出演:うらじぬの ファーストサマーウイカ
齊藤広大 中井友望 南久松真奈
大下ヒロト 中山求一郎 當山美智子
大中喜裕 千綿勇平 桜井鉄也 夏 定森安南 山本彩実
影山徹 あやかんぬ 国海伸彦 清水てっぺい 宗綱弟 山田果歩
林周雅 服部大成 坂口彩夏 岡田優 財田ありさ 野田佳代 湊さやか

監督・脚本:ふくだももこ
原作:西加奈子「炎上する君」(角川文庫/KADOKAWA)
劇中歌:ゆっきゅん『DIVA ME』
エンディング曲:ゆっきゅん『NG』
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
エグゼクティブプロデューサー:本間憲
企画・プロデュース:菊地陽介
企画協力:小林順 風間智恵子(株式会社 KADOKAWA)
制作プロダクション:ダブ
製作:レプロエンタテインメント
配給:レプロエンタテインメント
配給協力:インターフィルム
©LesPros entertainment
公式Twitter:https://twitter.com/Enjyo_Movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/you_are_lit_movie/

予告編

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2023年8月4日(金)シネクイントほか全国順次公開

炎上する君

 

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