「ひとつひとつ奇跡のような瞬間が集まっている」東出昌大×奈緒 映画『草の響き』公開記念舞台挨拶
2021年10月8日、ヒューマントラストシネマ渋谷にて、映画『草の響き』公開記念舞台挨拶が行われ、東出昌大、奈緒、斎藤久志監督が登壇した。
本作は、佐藤泰志の小説、五度目の映画化として、数々の映画賞を受賞し話題を呼んだ『きみの鳥はうたえる』(18)に続き、函館の映画館シネマアイリス代表・菅原和博によるプロデュースのもと製作。
東出昌大を主演にむかえ、『空の瞳とカタツムリ』(19)『なにもこわいことはない』(13)の斎藤久志監督がメガホンをとり、2020年に佐藤泰志の没後30年企画作品として製作がスタートし、10月 8(金)より公開となった。
舞台挨拶レポート
佐藤泰志原作の5度目の映画化作品に出演することになったお持ちを聞かれた東出昌大は、「原作では僕の演じた和雄は、独身の設定ですが、脚本には妻がいて妊娠している。それが大きな違いですが、その脚本が素晴らしかったです」と出演の理由を語った。
続けて、撮影ロケ地となった函館の街の印象を問われると「空が広くて、路面電車が走っていて、少し寂し気なところもある一方、西日の柔らかい光が心に残っています」と語った。
また、原作には登場しない妻・純子の役作りについて問われた奈緒は、「監督には(いわゆる)お芝居をしないでくれとずっと言われていたので、初日からその壁にはぶつかりましたし、純子として(東京を離れて夫と共に)函館にいるっていうことはどういうことなんだろうと撮影中もずっと模索し続けて手探りで過ごした記憶があります」と語った。
更には、役作りの為に、撮影前に一人で函館に行ったというエピソードを披露。
「タクシーで、色々と函館をまわったのですが、運転手が偶然にも斎藤監督と同じサイトウさんでご縁を感じました(笑)九州出身の私からすると、北海道の海は印象が全然違いました。一種の神々しさと恐ろしさのようなものを感じて、函館は、人がすごく優しい反面、独りでいる時のさみしさは非常につらいかもしれない。そんな風に純子は函館で過ごしていたのかもしれないと思ったりしました」と述べた。
また大東駿介演じる和雄の親友、研ニと三人で過ごすシーンについての質問に、斎藤監督は「あるシーンについて、別の撮影をしている時に、撮影が無い東出さん、奈緒さん、大東さんの三人が集まって俳優たちだけで本読みをやっているのを美術部の人から聞いたりした。函館に合宿しての撮影だったので、ずっと一緒にいる時間があったことは大きかったのでは」と明かした。
東出は、「監督から言われていた芝居をせず、なるべくナチュラルにカメラの前にいるということを俳優たちはみんな意識していたのではないかと思います」。
奈緒は、「和雄という役を理解したい私の気持ちと、純子が夫を理解したいという気持ちがリンクしていくなかで、友人役の大東さんがいてくれることで、色々な気持ちに気付くことができました」と語った。
■最後にメッセージ
斎藤監督
この映画にももちろん、テーマがあり、物語はありますが、映画はどれだけではできてないと思っています。例えば走っている和雄の後ろに風景があり風が吹いている。それらが映画を作っているのだと思っています。
どうかこの映画に映っている函館の街を5.1CHサラウンドで体感しながら観て欲しい。
奈緒
私自身、この時にしか撮れなかったもの、それは函館の景色もそうですし、ひとつひとつ奇跡のような瞬間が集まっている映画だと思っています。みなさんの大切な五感でこの映画を受け取って下さったら嬉しいです。
東出昌大
考えるより感じた方がこの映画は深く受け止められるのではないかと思います。きっといい映画です。いわゆる名シーンみたいなものを力を入れて撮っているみたいなタイプの映画ではありません。
緩い大河のような、ずっと続いていく日常を定点カメラで捉えたような映画です。だからこその魅力がこの映画にはあります。それぞれが思った大切なものを持ち帰って頂ければ幸いです。
映画『草の響き』
STORY
心に失調をきたし、妻とふたりで故郷函館へ戻ってきた和雄。病院の精神科を訪れた彼は、医師に勧められるまま、治
療のため街を走り始める。雨の日も、真夏の日も、ひたすら同じ道を走り、記録をつける。そのくりかえしのなかで、和雄の心はやが
て平穏を見出していく。そんななか、彼は路上で出会った若者たちとふしぎな交流を持ち始めるが—。
出演:東出昌大 奈緒 大東駿介 Kaya 林裕太 三根有葵 利重剛 クノ真季子/室井滋
監督:斎藤久志
原作:佐藤泰志「草の響き」(「きみの鳥はうたえる」所収/河出文庫刊)
脚本:加瀬仁美
撮影:石井勲 美術:原田恭明 照明:大坂章夫 録音:矢野正人
音楽:佐藤洋介 ピアノ:村山☆潤 音楽制作:オフィスオーガスタ
助監督:齊藤 勇起 装飾:森公美 衣装:小里幸子 白石妙子 ヘアメイク:風間啓子
編集:岡田久美 音響効果:伊藤瑞樹 制作担当:中島正志
プロデューサー:鈴木ゆたか プロダクション協力:リクリ
協力:函館市 特別協力:佐藤喜美子 河出書房新社
題字:佐藤泰志
アソシエイトプロデューサー:寺尾修一
製作:有限会社アイリス
企画・製作・プロデュース:菅原和博
宣伝:ブライトホース・フィルム
配給:コピアポア・フィルム 函館シネマアイリス
© 2021 HAKODATE CINEMA IRIS
2021年/116分/ビスタ/カラー/5.1ch
公式サイト:www.kusanohibiki.com
10月8日(金)より新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町/渋谷ほか全国順次公開!
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