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アジアの天使

池松壮亮「オダギリジョーのせいで嘘つきになった」映画『アジアの天使』公開記念舞台挨拶

2021年7月3日、テアトル新宿にて、映画『アジアの天使』公開記念舞台挨拶が行われ、池松壮亮、オダギリジョー、石井裕也監督が登壇した。韓国と日本、さまざまな国民感情がある中、言葉や国籍や価値観を超えた両国のスタッフが集まって作り上げた本作についての思いを語った。

本作は、石井監督がオール韓国ロケで挑んだ意欲作。優しさと力強さが調和した人間ドラマであり、誰も見たことのない「アジアの家族映画」が完成した。
主演は、石井監督と数々の作品でタッグを組み、ここ1年は、海外作品に参加している池松壮亮。ふたりにとって本作が韓国初進出となる。そして池松の兄役には韓国映画界との縁も深いオダギリジョー。日本映画を牽引する、ふたりの本格的な競演は本作が初となる。

舞台挨拶レポート

■トークノーカット動画

■固定観点や常識というものにいつも引っかかる

アジアの天使

石井裕也監督/池松壮亮/オダギリジョー

-本作は企画の段階から完成までこぎつけるのに大変な困難もあったかと思います。ついに日本公開を迎えたという今のお気持ちを改めてお願いします。

石井裕也監督
過去最大級に大変だった作品で、トラブルも毎日のようにありました。でも、それを乗り越えるたびに優しくなれたっていうか、自分が今まで持ってたくだらない執着をどんどんと捨てられて、とても清々しい気分になっていきました。
今日、無事に公開できてとても嬉しい気分なんですけど、天使役の芹澤興人さんが、今日はまさかのスケジュールNGってことで。アジアの天使って言ってるのに来ないなんて、ちょっと説教ですね(笑)

アジアの天使

石井裕也監督

-池松さんは、2017年の企画段階から監督からお話を聞いていて、ロケハンから関われたと聞きました。

池松壮亮(青木剛 役)
何か別に特別なことをやったつもりはないですけど、早い段階から石井さんに共有してもらったっていうことも一つありますし、僕が脚本を気に入ったもので、とにかくこの物語を今すぐ語らなきゃいけないんだっていう気持ちになりました。
そういった中で、自分がこの映画のためにやれることは全部やりたいなと思ってはいました。韓国のロケハンは、監督らについて1週間ほど周ったくらいです。

アジアの天使

池松壮亮

-石井監督は半年くらいロケハンされたそうですが?

石井裕也監督
はい。でも、最終的にはコロナでどんどんキャンセルされていっちゃったんですよね。その一番難しい時に、池松さんも一緒でした。

-そういうお二人の活動は、オダギリさんのところにも漏れ伝わってきてたんですよね?オファーが来た時はどんなお気持ちでしたか?

オダギリジョー(青木透 役)
そうですね。漏れ伝ってきてまして、面白そうな企画だなと思っていたんです。
そしてある時オファーをいただいて、脚本も読ませて頂いてとても面白くて。
何より、石井さんとテレビドラマの「おかしの家」(2015年TBS系)っていうのをやった時に、同じように天使が出てくるエピソードがあって、それが大好きだったので、また天使モノがやれるっていう嬉しさが勝ってましたね。

アジアの天使

オダギリジョー

-そこからの繋がりを実は私も感じていたんですが、“人間を噛む天使”という発想はどこから?

石井裕也監督
ゾンビはなぜ噛むのかっていう事に疑いを持たないのは、なぜなのかってことなんですね。
それも勝手に決めたルールで、そこに対する疑いはまったく持たないのに、天使が人を噛むことには疑いを持つっていう、この固定観念と価値観に、なんかいろんな問題が入ってるんじゃないかなと思ったのがきっかけですね。

オダギリジョー
僕も固定観点や常識というものに、いつも引っかかっちゃうんですよ。
当たり前とされている物がすごく嫌いで、だから多分そういうところに、これは面白いと思ったんでしょうね。

アジアの天使

-日本に暮らしていると、日本の中のルールですとかしきたりにどうしても縛られていく傾向に自分自身もあるなと感じるんですが、韓国という異国に行くことで、一回その枠組みから自分が解放される面もあるのかなと思いました。撮影が昨年の2~3月ということで、日本ではコロナウイルスパンデミックの直前。撮影後、帰国してから石井監督は隔離の期間があったんですよね?

石井裕也監督
はい。顰蹙買いたくないんですけど、今は何を言ってもすぐ叩かれる世の中なので。結論から言うと、池松くんと一緒に隔離したんです。もうひとり、スチール担当の大学時代からの友人と3人で。
撮影前、コロナになる前から、韓国でも同じシェアハウスで僕たちは住んでいました。
なので、もはやもう一心同体っていうか、一蓮托生、みんな家族のようになっていたので、最後、日本に帰ってきてからの隔離も一緒の方が寂しくないし、いいんじゃないかってことで、郊外に一軒家を借りて。庭がすごい大きかったので、池松くんはずっとサッカーやって遊んでましたけどね。

-池松さん、韓国の撮影から帰国後の隔離生活まで振り返っていかがですか?

池松壮亮
目の前に映画があるわけですから、もうひたすら今日はどうだった、明日はどうだこうだと、無駄も含めた井戸端会議から、互いの顔色を見たり、互いが今感じてることを共有したり、ものすごく良い時間だったんです。
合理的な観点でいくと、こういうものは排除されがちですけど、そういう無駄などうでもいい意見の中から、みんなの輪がぐるぐる回って、いつしか真理に辿り着いたり、何かが結実したりしていった結果がこの映画なんじゃないかなと思ってます。
日本に帰ってきてからの隔離生活中は、編集期間として、監督は1階で編集してましたし、スチールの方はずっとご飯を作ってくれてました。
僕は大してやることなかったんでサッカーをしてました(笑)

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■「オダギリくんのせいで僕の嘘がバレた」

-本作は、食事シーンがあり、ビールもたくさん出てきて、私も最初にこの作品を見た時に帰りにコンビニでビールを買いまして飲みたくなってしまいました。映画の中でも「ビールをください」というセリフが出てきますけれども、これは本作の中でも、二つの国をつなげるのに大きな役割を果たしていたのではないかなと思うんですが、実際に皆さんも向こうではお酒を飲まれてましたか?

池松壮亮
毎晩のように。韓国の方たちはものすごいお酒が好きなので、ほんとに本当に大量のビールを消費したんじゃないかと思います。
キム・ミンジェ(ジョンウ 役)さんがものすごい酒飲みで、僕がどれだけ撮影時間かかろうが、毎晩待ってるんですよ。「壮亮、行こうぜ。一杯おごってやるから」と。
それがさすがにイヤで、次の日も早いし。「そもそも、日本の俳優はすごく真面目だから、撮影の後お酒を飲んだり、次の日撮影がある時にお酒を飲んだりしないんだ。」って、きっぱり言ったんですね。そしたら何日か後にオダギリさんが合流して、毎晩一緒にいってて(笑)僕の嘘がバレて、結局毎晩みんなで行ってました。

アジアの天使

-オダギリさんはそこは乗ったわけですね?

オダギリジョー
あのー、どういう言い訳をするべきか今考えてるんですけど。
まず、ロケ地では家がないので、ホテルに帰るわけじゃないですか。だから、撮影が終わった後、何かしらご飯を食べなきゃいけないんですよね。
そしたらもう飲むでしょうみたいなことになるんでしょうね。
だから、東京で撮影してると、撮影終わったらそのまま帰るから、あんまり共演者の人とコミュニケーションとったりすることがないんです。
でも、逆に海外行ったりとか、地方でロケしたりとかになると、そういう時間もたくさんできて、結果、毎晩飲んじゃうみたいなことになるんですよね。不思議とね。これが真理ですね。

アジアの天使

-石井監督はそこには?

石井裕也監督
そこには参加しないようにしました。俳優チームは俳優チームで行ってもらった方がいいと思って、僕はスタッフの人と飲んでましたね。

-そこはやっぱりビールなんですね?

石井裕也監督
ビールですね。韓国の焼酎がケミカル系の味で、甲類焼酎っていうか、好きな方には申し訳ないんですが、あんまり美味しくないんですよ。
ビールと焼酎を混ぜて一気にどんどん飲んでいくっていうのがあって、韓国のビールもそのために薄くできてるんです。

■人生で経験した奇跡とは?

-本作は、芹澤興人さん演じる天使が登場するという奇跡が起きますが、皆さんにが人生で経験された奇跡がありましたらお聞かせください。

池松壮亮
真面目な話をしておきましょう。
この映画があらゆる困難を経て、あらゆる国と国との関係を越えて、結実したこと、そしてこの日を迎えられたことが大きな奇跡だと、一番近くで目の当たりにしてきた自分は思います。
そこに何があったかって言うと、一人一人の独立した意志と勇気がありました。当時、今もそうですが、(韓国で)日本のことを話すとものすごく叩かれる風潮がありました。
そんな中で、韓国側のスタッフとしてはリスクが大きかったと思いますし、当初参加する予定だった人が抜けてしまったりということを繰り返していたんですけど、最終的には志の高い方々が集まってくれて、「日本の文化の影響を受けたんだよ」「日本の映画が大好きなんだよ」っていう方々が集ってくれて、その方々にはほんとに感謝したいし、この映画に尽力してくれたスタッフ、キャストに心から感謝しています。それが奇跡です。

アジアの天使

-オダギリさんはいかがでしょうか?

オダギリジョー
10年近く前のことですが、下北でタクシーに乗ったんですよ。夜も深かったんですけど、家に帰ろうとしてたら、運転士さんが「お客さん、オダギリジョーって知ってる?」って言ってきたんす。これ、本当の話で。で、(僕が本人だって)バレてない感じだったので「あぁ、聞いたことありますね」って答えたんです。
そしたら、「昨日、(オダギリジョーが)タクシーに乗ってきて、後ろで女とイチャつくんだよ」って。確実に僕じゃないんですよ。なのにオダギリジョーって名乗ったヤツがいるんですよ。これ、酷くないですか?
で、その次の日に僕が同じタクシーに乗るっていう、この奇跡。いや、本当にこれ以上の奇跡を経験したことないかもしれないですね。
まあ、タクシーの運転手さんの話は信じるなっていう話です(笑)

アジアの天使

-石井監督は?

石井裕也監督
池松くんとオダギリさんという日本が誇る天才二人が、韓国という異国の地で、日本語が全く分からない韓国スタッフに見守られながら、芝居をしているのを僕が目撃してるっていうのは、すごく特異な体験でした。なんかものすごいものを見てるっていう気持ちになりました。
しかもその後、「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」(NHK/9/17放送開始)というオダギリさん脚本・演出のドラマに、池松くんが主演になったっていう、この関係が作られたってことも、一つの奇跡だと思いますし、奇跡は奇跡を呼ぶんだなって思いました。

■最後にメッセージ

池松壮亮
まだまだ今度困難な時を過ごしているような感覚がありますけど、映画は心のワクチンだと信じてますし、皆さんの人生をどんどん映画に持ち寄っていただいければ嬉しいと思います。そういう作品が今回できたと思っています。

オダギリジョー
客席をすべて埋めるお客さんを久しぶりに見たのですごく感動的だなと思いますし、外国で撮影できたのも今から思えば奇跡だったのかなと思います。
とても良い映画ができましたので、皆さん、よろしければ広げてください。

石井裕也監督
池松くん演じた青木剛というキャラクターは、全く全く言葉が通じないっていう本作ですが、これは日韓の問題だけじゃなくて、同じ日本語を話すはずの我々が、この国で全く言葉が通じないって事が最近特に多くあるような気がして、話が噛み合わないんですよね。
そういう経験って、皆さんも多いんじゃないかなと思うんですよ。それは家族の中でもそうかもしれないですし、会社の中とか学校とか、政治なんて特にそうですけど、話が噛み合わないってことがすごく多くて、それを“分断”っていう言葉で軽く片付けてもいいんですけど、かなり大きな問題がそこにはあると思ってます。
それをどう乗り越えていくのかっていうことがものすごく重要で、僕たちが生み出したその方法としては、この映画のような、痛みに向き合う、痛みに寄り添うってことじゃないかなと思って。
それは、他者の痛みに思いを馳せることもそうだし、自分の心の中にある痛みに向き合うとこともすごく重要で、そういうことを本当にどうしてもやらなきゃいけないと思って作った映画です。少しでも楽しんでいただければ光栄だと思います。

アジアの天使

アジアの天使

■フォトギャラリー

[写真:金田一元/動画・記事:桜小路順]

映画『アジアの天使』

ストーリー
8歳のひとり息子の学を持つ青木剛(池松壮亮)は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。日本から逃げるように。
「韓国で仕事がある」と兄から告げられていた剛だったが、兄の生活はその日暮らしで貧しく、想像していたものとは違った。ほとんど韓国語も話せない中、怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に。
一方、ソウルでタレント活動を行っているが、市場のステージで誰も聞いていない歌を歌う仕事しかないチェ・ソル(チェ・ヒソ)は、所属事務所の社長と関係を持ちながら、自分の歌を歌えない環境やうまくいかない兄や妹との関係に心を悩ませていた。
しかし、その時彼らはまだ知らない。
事業に失敗した青木と兄、学たちと、資本主義社会に弾かれたソルと兄、妹たち ── どん底に落ちた日本と韓国の2つの家族が共に運命を歩んでいき、奇跡を目の当たりにすることを・・・。

出演:池松壮亮 チェ・ヒソ オダギリジョー キム・ミンジェ キム・イェエン 佐藤凌 / 芹澤興人
脚本・監督:石井裕也
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕
プロデューサー:永井拓郎、パク・ジョンボム、オ・ジユン
撮影監督:キム・ジョンソン 音楽:パク・イニョン
制作プロダクション:RIKIプロジェクト、SECONDWIND FILM
製作:『アジアの天使』フィルムパートナーズ
配給・宣伝:クロックワークス
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会、KOFIC、ソウルフィルムコミッション、カンウォンドフィルムコミッション
(C)2021 The Asian Angel Film Partners

2021年7月2日(金)テアトル新宿ほか全国公開中

アジアの天使

『アジアの天使』メインビジュアルA

メインビジュアルA:池松壮亮演じる主人公・青木剛の背中には天使の羽が・・・。

『アジアの天使』メインビジュアルB

メインビジュアルB:傷ついた日本と韓国の2つの家族が、1台のおんぼろトラックで旅をする。

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