伊藤沙莉×恒松祐里がセックスワーカーを演じた映画『タイトル、拒絶』劇場公開記念舞台挨拶
11月14日、都内にて、映画『タイトル、拒絶』の劇場公開記念舞台挨拶が行われ、伊藤沙莉、恒松祐里、山田佳奈監督が登壇し、満席となった客席を見て、喜びを語った。(動画&フォト)
本作は、2019年の第32回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門選出作品。舞台演出家、脚本家として活躍する山田佳奈監督自身により 2013年に初演された同名舞台の映画化で、長編初監督作品となる。それぞれが抱える事情に抗いながらも力強く生きようと進むセックスワーカーの女たちの姿を描く。
伊藤沙莉は、主人公・カノウ役。カノウは、体験入店で店に来たものの、いざ行為の段階になって怖気づいてホテルの外に助けを求めて逃げ出した女。
恒松祐里は、心に闇を抱えつつも人前では常に笑顔で振る舞うデリヘル嬢・マヒル役。
本作では、カノウのようにスポットライトを浴びない人間を“タヌキ”、マヒルのように一見チヤホヤされるが本心を隠した人間を“ウサギ”と表現している。
舞台挨拶レポート
■満席となった劇場
伊藤沙莉(カノウ 役)
こんなに(お客さんが)ぎっしりいると、ちょっとぐっと来るものがありますね。
本当にありがたいです。2年ほど前に撮った映画ですが、それ以降、いろんな大変なことがありまして、やっと皆さんの元に届けられるようになったということで、皆さんとこういう形でお会いできて本当に嬉しいです。
恒松祐里(マヒル 役)
一時は舞台挨拶ができるかどうかわからない状況で、皆さんと空気を共有できないのかなって心配してたんですが、無事、今日を迎えられてとても嬉しいです。
山田佳奈監督
公開2日目の今日、これだけのお客さんに御覧いただけるという幸せを、今この場で噛み締めております。
-山田監督、長編映画デビュー作の公開ということで改めておめでとうございます。
山田佳奈監督
ありがとうございます。本当にお恥ずかしい話で、昨日の公開初日を迎えるまで目眩がする状態でした(笑)
お客様に観ていただいて初めて映画って完成するんだなって、実感を実感を伴って、今、この場にこの二人といれることが幸せです。
そして何よりも俳優さんに、皆さんが素敵だって言っていただけるのが、本当に監督冥利に尽きることだなと噛み締めております。
-山田監督は、昨日も映画館に行かれたんですよね?
山田佳奈監督
はい。やっぱりものすごい緊張しておりましたので、昨日、一番最初に上映される映画館を自分で調べて行きました。その時もお客さんがいっぱいで、すごく嬉しい気持ちでした。
■伊藤沙莉&恒松祐里「山田監督大好き!」
-伊藤さん、恒松さん、山田監督との思い出を教えて下さい。
恒松祐里
(映画業界は)男性監督が多いので、男性と仕事することの方が多いんですが、山田さんは今回初めてだったんですけど、女性監督ということで、今回の作品もテーマに対する共通理解が心の中でありました。
だからこその相談もしやすかったですし、すごく心強かったです。
伊藤沙莉
(山田)佳奈さんの演出は、はてなを浮かべたまま立ってなくていいってのは、本当にストレスがなくてですね、この行動に至るには、どういう感情の流れだったらこういう風になるのかとか、どうやったらここまでの怒りのピークに入ったのかみたいなところを、すごく丁寧に寄り添って一緒に作り上げてくださったので、本当に心強かったです。
そして何より本当に優しくて面白い方なんです。
恒松祐里
最高ですね。ほんと最高!大好き!
伊藤沙莉
ね!やっぱり女の子いっぱいいるから、ちょっと女子高みたいな感じになるんですけど、そこにも一緒にふざけてくれたりとかして。
なので、全体的に寄り添っていただいたっていう印象です。
山田佳奈監督
初長編映画のディレクション作品として、俳優の方々がこのように言ってくださるのは、私の方向性の自信にもなりますし、本当にありがたいです。ありがと!
■内田英治監督(『ミッドナイトスワン』)の言葉で映画作りの大事な部分を育てられた
-本作の映画化は、プロデューサーを務められた内田英治監督の力添えで前に進んでいったと聞いています。
山田佳奈監督
はい。今、大ヒット中の『ミッドナイトスワン』の内田監督が、日本の映画を育てる上では若手をもっと育てていかなくてはいけないという素晴らしい考え方のもと、私を引っ張り上げてくださった中での撮影に挑む形になりました。
その内田監督がおっしゃってたのが、シネコン系の映画ではないですし、インディーズで自身の初長編ということであれば、一番自分が実験的であり、自分の特徴だったり押し出した方がいいよっていう言葉。そして、映画を作っていく上で、日本国内とどまらず、海外に目を向ける。それは肌の色だったりとか、考え方や宗教が違う人たちにどう映画が届くのかっていう、アイデンティティの違いを楽しむことをどう考えていくのかということを話してくださいました。
内田監督には、今後、自分が映画作りをしていく上で大事な部分、基礎の部分をすごく育てていただいた気持ちです。感謝しています。
■刺激的な脚本を読んだ時の感想
-伊藤さん、恒松さんはこの刺激的な作品の脚本を読まれてどういう感想を持たれましたか?
伊藤沙莉
シンプルにめちゃくちゃ面白いと思いましたし、かっこいいなって思いました。いろんなことがカノウの独白に詰まってたりもするので、そこがすごくやりたいっていう気持ちが一気にわいてきました。絶対に携わりたい作品だと思いました。
恒松祐里
女性の登場人物が多いんですけど、みんなそれぞれに物語があって、まずそこがすごく素敵だなと思いました。
そして、私が演じたマヒルは、すごく痛みを抱えてながらも頑張って生きている、無理して生きてる役どころなんですが、それを私が女性として生まれて、この役を演じる責任とか、でもそれをオファーしてくださったってことは、それをできると信じてくださったところが、すごく嬉しかったです。
この役を演じたことで、いうのもできるんだって自信にもなりました。
あとは、私のお芝居、沙莉ちゃんのお芝居、みんなの芝居で、誰かを勇気づけたり、誰かの心に触れられたらいいなって思います。
■伊藤「般若さんに本当に殺されると思いました」
-お二人にとってここが印象に残っているというシーンはありますか?
伊藤沙莉
般若さんに本当に殺されると思いました(笑)ブン殴られたので(笑)
カットがかかったらもちろん笑ってたんですけど、スタートがかかると怒りが沸点まで達して、そのコントラストが面白かったです。
恒松祐里
そのシーンで、最後皆さんが乱闘しているところに、私がのっそりと出てくるんですけど、その時が私の感情のピークで、そこで自分では、やったことのないぐらい気持ち悪い笑い方ができたんです。
私の役って痛みを伴えば伴うほど笑う役だったんですけど、その痛みの限界値、沸点がおかしなことになっちゃって、そこまで行った時に人って、こんな気持ち悪い笑い方になるんだっていうのが自分の中で発見でした。片岡礼子さん(シホ役)にも、「今の笑い方、すごい気持ち悪かった。カエルみたいな笑い方。」って言われて。
その笑い方を自分で出来たっていうのは、監督のおかげでもありますし、脚本のおかげでもありますし、新たな発見でした。
■山田監督から見た、伊藤沙莉&恒松祐里の魅力
-監督は俳優としてこの2人の魅力はなんだと思いますか?
山田佳奈監督
二人とも全く個性が違いますね。
撮影中印象に残っていることで言うと、沙莉ちゃんは細くずっと踊っているところだったりとか。なんか謎のパラパラをずっとやってて。たぶん緊張をほぐしているんだと思うけど。
恒ちゃんは、その沸点が上がるシーンの時に、すごい難しい顔して寄ってくるんですね。「監督、ここってこの感じで合ってますか?ここってどうなんですか?」って聞いてくるので、こうだと思うって答えたら、「あ、落ちました!」って言って、すうっっていなくなるんです。まさにネコなんですけども。
沙莉ちゃんはフラットにこの場所にいようという状態。自身が演技されてた時にバランスを考えて、「今の繋がりますか?」と、すごく真摯に私に寄り添ってくれた感じでした。
恒ちゃんの寄り添い方は、役に対してしっかり向き合おうっていう姿勢。
お二人とも本当に作品に真正面から向かい合ってくれてたんですけども、やっぱりそれぞれ個性が違うので、そこは一緒にやってて楽しかったですね。
角度が違うところから同じ作品を作っていっていて、ぶ厚くなっていく感覚を撮影中に感じていました。
■ウサギ=恒松祐里 × タヌキ=伊藤沙莉
-伊藤さんと恒松祐里さんは、役どころとしては、ウサギとタヌキと喩えられて描かれていますが、共演されてみたいかがでしたか?
恒松祐里
私、ずっと共演したかったんですよ!
伊藤沙莉
ありがとね。こちらこそです。
恒松祐里
なんか会えそうで会えない距離でずっといて。やっと今回巡り会えてすごい嬉しかった。
伊藤沙莉
初めて一緒にお仕事させてもらえたのが『タイトル、拒絶』でほんとに良かったなってすごく思います。
(恒ちゃんは)めちゃくちゃマヒルちゃんじゃないですか。
恒松祐里
(沙莉ちゃんは)めちゃくちゃカノウです。
伊藤沙莉
この作品の後も、違う作品で一緒になった時は、また全然違う顔を見せてくれて、素敵な女優さんだなと思って、すごい刺激を毎回与えてくださるのでとてもいいなって。
恒松祐里
沙莉ちゃんは監督がおっしゃってた通り、ずっとフラットで、でもすごい考えて考えてしてるみたいな感じだなと思って、その感じもすごく勉強になったし、ても沙莉ちゃん、女優としても人間としても好きだなって思いました。
■最後にメッセージ
伊藤沙莉
たくさんの視点が楽しめる映画だと思っております。一人一人がとても輝いている素敵な群像劇です。
今、このご時世だからこそ、幅広く多くの方々の心に何かが刺さったり、響いていただけるんじゃないかなと思っております。
フラットに見ていただいて、フラットにえぐられていただいたらいい映画だと思います。
恒松祐里
『タイトル、拒絶』という不思議なタイトルもそうですし、キャストもすごく濃いキャストが集まっていて、紙面を見るだけで、私だったら絶対観に行きたくなっちゃう、興味をそそられる内容だと思います。
多くのことは今語らず、何を拒絶しているのか、人生のタイトルって何なんだろうとか、このタイトルの意味を、作品を観て、自分の人生と照らし合わせて何かを考えるきっかけになったらいいなって思います。
何がタイトル拒絶なのかを確かめるために、劇場まで来て下さい。
山田佳奈監督
この『タイトル、拒絶』っていう作品を7年前に私は最初に書いたんですけれども、その当時の私は、自身が女性である事っていうのがどうにもこうにも受け入れがたい時期だったんです。でもこの作品を通して一人でも多くの方がシンパシーだったり、共鳴することができたら、自分自身も消化されていっているなぁという気がしております。
そして今回何度も何度も同じことを言っているんですけども、ここにいるこの二人を含めて全俳優が本当に生きた芝居をしてくださっているので、できればSNSとかで感想をお願いします。俳優たち全員チェックしてるそうなので。
俳優がこれだけ感想をチェックしてくれるのは、監督として本当にありがたいし嬉しいことです。賛否両論いろいろある作品だと思うので、いろいろな声を聞かせていただければと思います。
そして公開したばかりですので、お気に召せば、一度ならず、二度三度と劇場でお会いできればと思います。本日はありがとうございます。
[写真・動画・記事:Jun Sakurakoji]
関連記事
映画『タイトル、拒絶』
新進気鋭の山田佳奈監督による、女たちの本音に寄り添った先鋭的なオリジナル作品。
STORY
雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながら喋くっているオンナたち。
カノウ(伊藤沙莉)は、この店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。オンナたちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がキツイとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。
店で一番人気の嬢・マヒル(恒松祐里)が仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。
みんな賢くて可愛らしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれないのに・・・。」
ある時、若くてモデルのような体型のオンナが入店してきた。彼女が入店したことにより、店の人気嬢は一変していった。その不満は他のオンナたちに火をつけ、店の中での人間関係や、それぞれの人生背景がガタガタと崩れていくのだった・・・。
伊藤沙莉
恒松祐里 佐津川愛美/片岡礼子/でんでん
森田想 円井わん 行平あい佳 野崎智子 大川原歩
モトーラ世理奈 池田大 田中俊介 般若
監督・脚本:山田佳奈
劇中歌:女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
企画:DirectorsBox
制作:Libertas
配給:アークエンタテインメント
製作:DirectorsBox / Libertas / move / ボダパカ
©DirectorsBox
公式サイト:lifeuntitled.info
公式Twitter:@titlekyozetsu
11月13日(金)より シネマカリテ、シネクイント他 全国ロードショー
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。