円井わん

【女優・円井わんインタビュー】「駆け出しの私に分け隔てなく接してくれるムロツヨシさんがお手本。」

Netflix「全裸監督」、MBS「映像研には手を出すな!」などのドラマや、『タイトル、拒絶』(11/13公開、主演・伊藤沙莉)や、『コントラ』(2021年春公開予定)では主演も務める、女優・円井わん。ムロツヨシをお手本にやりたいことが見えてきたという彼女に、自身のこと、最新出演作のことについて話を伺った。

円井わんインタビュー

円井わん

円井わん

■役者がやりたくて東京へ

-偶然の出会いをきっかけに、『獣道』(2017/伊藤沙莉・須賀健太W主演)で、映画初出演が決まったとのことですが、その経緯を教えて下さい。

円井わん
役者がやりたいから東京に来てみました。でも東京には知り合いがまったくいなくて、伝手がない状態でした。
そこでまずはバイトをしなければいけないなと考えて、求人サイトを探していたら、“映画好きが集まるバー”という文字が目に止まって、「これは…」と思って応募したら受かって、その店で働くことになりました。
その店にはオーナーとチーママがいて、そのママが女優をされていて、その人が『獣道』に出演するということで、一度、内田英治監督の『下衆の愛』(2016)を一緒に観に来てと誘われて、内田監督にお会いすることができたんです。
その時に役者をやりたいことを内田監督に話をしたら、その1ヶ月後に、映画の撮影現場にいました(笑)

円井わん

-オーディションはあったんですか?

円井わん
オーディションは無かったです。
実際には、内田監督というよりも、助監督の杉田さんから「出演者の枠が一枠空いているよ」というのをうかがいました。

-まったくの偶然なんですね。大阪時代は、演劇などはされていたんですか?

円井わん
大阪時代は、なにもやっていなくて、ただ高校の“表現教育科”というクラスだったので、授業の中に演技とかダンスとか楽器演奏が含まれてはいました。けれども、私としては演技したいはずなのに、女優を一番やりたいと言っているのに、なぜか恥ずかしくて、自分でも「こいつ、雑魚だな」って思うようなタイプの人間でした。
楽器やダンスは真面目に取り組んでいたんですけど、シェイクスピアの『夏の夜の夢』の朗読をしたくらいで、演技に真面目に取り組んでいなくて、本当に雑魚でした。

-女優を目ざすようになったのはいつからですか?

円井わん
幼いころ、気づいたらその気持ちがありました。それ以来、他の職業を考えたことが本当にないんです。進学する気も、就職する気もなく、親にはすごく反対されたんですけど。「私には、これしかなくね?」っていう感じで「他になることは考えたことがないんだよなぁ」ってやってました。

-プロフィールを拝見すると、特技としてドラムが書かれていますが、いつから始められたのでしょうか?。

円井わん
高校一年生からです。ドラムは楽しかったです。その反面、弦楽器がまるでできませんでした。今は、作詞することが好きですね。

円井わん

■“円井わん”命名エピソード

-“円井わん”という名前は、事務所が決まった時にいただいたそうですが?由来や意味は?

円井わん
前の事務所で一緒だった俳優さんが、私を柴犬に似ているって話していまして、“柴田”とか、“柴ちゃん”って、呼ばれていたんです。
その当時、今のマネージャー含め皆でご飯を食べに行った時に、「私、芸名で活動したいんですよね~」って言ったら、ある俳優さんが、「犬だから、“わん”でいいんじゃない?」それに、「“わん”って、色々と掛けられるね」って。
「ナンバーワン」とか「オンリーワン」とかかけられるし、それがいいんじゃないっていうことで“わん”になりました。
“円井”は、まるい器とかお椀みたいなことを表していて、器の大きさとか、許容のある人といった話をしました。
始まりは犬なんですけどね(笑)

円井わん

■ムロツヨシさんを手本に、やりたいことが見えてきた

-数年前のブログに、「やりたいことがみえてきて、その手本がムロツヨシさんです」って書かれているんですが、この背景にはどんなものがあるんですか?

円井わん
ムロさんは、大人気の俳優さんですが、分け隔てのないところが素晴らしいなって思うんです。ペーペーの私でもちゃんと役者として見てくださって、たくさんの大物俳優さんがいる中で、私が「どうしたらいいんだろう」ってもじもじしていた時に声をかけてくれたりとか、打ち上げの時にも、「(役者として)どう生きたいの?」と話かけていただいた上に、私が話したことを肯定もしてくれる方でした。「わん、そのままでいいんだよ」って。

また、スタッフさんもいっぱいいる中でカラオケに行ったんですけど、ムロさんが、「わん、歌え!」って言ってくれました。それで1曲だけ歌ったら、「円井わんです!これが、円井わんです!」って、みんなに紹介してくれて、「ワーっ、すごいいい人だぁ」ってとても感動しました。
ムロさんって、(伊藤)沙莉ちゃんとも仲がいいから、「沙莉ちゃんと3人で飲みに行こうね」って、「泣いちゃう~」ってくらいに嬉しかったです。本当に。恐縮です(笑)

円井わん

-ムロさんの話に続いて、好きな女優さんに、 内田慈(うちだちか)さんをあげられていましたね。

円井わん
内田慈さんは、彼女のお芝居がシンプルに好きなんです。
彼女の芝居がシンプルに大好きなのと、人柄もすごい良くて、腰が曲がるよって心配になるくらい腰が低くて、大好きです。

-わんさんには、俳優業にとどまらず、完全リモート制作連続ドラマ『コウキの雨鳴き-About Kouki-』の制作をされたり、マルチな才能を感じますが、今後、どういったことをしていきたいですか?

円井わん
役者としては、海外でやっていきたいです。その願望はすごく強くて、英語の勉強をやっています。
『コウキの雨鳴き-About Kouki-』を始めて楽しかったから、企画することが好きなんだって気づいて、今また別の企画をやっています。プロデュースとかキャスティングにも関心があって、そういうこともやりたいなって思います。

円井わん

■円井わん×インド出身アンシュル監督 主演映画『コントラ』

-主演された映画『コントラ』について伺います。わんさんが演じた主人公の“ソラ”という女性は、監督がわんさん自身をイメージした女性だと伺ってますが、撮影にあたって監督の演出はどういうものでしたか?

[解説] 映画『コントラ(原題:KONTORA)』(2021年春公開予定)は、第14回『JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ~』で、故・大林宣彦監督の名を冠した「大林賞」受賞作品。第二次世界大戦時に記された祖父の日記を辿って、ソラ(円井わん)は不可思議な宝の探索を始めるところから物語が始まる。
インド出身のアンシュル・チョウハン監督は、陸軍士官学校で訓練を受けた経験を持ち、日本でアニメーターを経た後、実写映画を作るようになった。

円井わん
アンシュル監督からは、わんさん自身そのままでいいと言われました。
「あて書きだから、台本も2,3回読んでもう見ないで捨てていい」という感じで、私も言われた通りに台本はあまり見なくて、次に、どのシーンをやるから、こういう感じかも、「じゃあもうセリフ覚えないよ」って言って、流れだけ捉えておくような感じでした。

-感情がとても素直に出ている印象を受けました。

円井わん
そうなんです。最初、撮影一日目はアンシュル監督として全然納得がいかなかったみたいで、「なんかもっとこう、ないのか!」という感じに言われて、「こいつ、ムカツク!」みたいになりました。
そこから私と監督の良い意味での喧嘩が始まって、それが、「ヤバイ!」というものではなく、良い塩梅のお互いのモチベーションになって、「じゃぁ、こうしてみようか」、「だから次はこうしてみようか」のようなディスカッションをしてくれる人でした。
夜終わってから、再度ディスカッションして、朝始まる前にまたディスカッションしてっていう感じだったので凄いやりやすかったし、「こんなに、監督に言っていいんだ」と思わせてくれた監督でした。

-『コントラ』には、戦時中の話、武器の話、歴史やその背景に至るまで描かれていて、監督はよく調査されているなと感じました。撮影地である岐阜の土地だったりとか、劇中に出てくる土浦航空隊の話だったりとか。

円井わん
監督は、分厚い日本の歴史書を持っていました。
日本人は歴史を知らなさすぎるといっていて、もっと自分たちの歴史を調べるべきだと、ずって話していて、私にも戦争の話をしてくれました。
祖父の年代の人って、実際に戦争に出てるじゃないですか。戦争に私の祖父も出てるから、お互いアンシュル監督のおじいちゃんとか、お父さんとか兄弟もだけど、「私達のおじいちゃん世代の人たちを弔うって意味でこの映画を作っていこうね」っていう感じです。

円井わん

-エンドロールにも、祖父の時代の方々への感謝の言葉が出てきますものね。

円井わん
それによって、弔いの気持ちが一層高まった感じです。

-“ソラ”という女性に関して、こういう女性だっていう説明はありましたか?

円井わん
特に説明はなかったです。あなた自身、そのままでいいという話でした。監督と話したのは、ソラに母親がいるのか、いないのかという話くらいですね。

円井わん

■11/13公開 映画『タイトル、拒絶』出演について

タイトル、拒絶

『タイトル、拒絶』メインカット/伊藤沙莉 ©DirectorsBox

-『タイトル、拒絶』でセックスワーカーの女性“カナ”を演じられる上で取り組まれたことについて教えてください。

円井わん
まず、舞台となる話の街の雰囲気感じるために、歌舞伎町や鶯谷に行ってみました。そして、この作品を舞台版から取り組まれていた山田佳奈監督にもたくさんお話を聞きました。つけ爪に関して調べたりもしました。つけ爪をしているとお客さんが喜ぶ話とか。そんな話をきいたから、つけ爪をしてみようとか。
セックスワーカーの話ですが、ネガティブにはなりませんでした。みんなそこでちゃんと生きてる人たちで、私たちの俳優業の仕事をしている人とか、OLの人と変わらない人たちだから、なんかそれって別に特別なことではないかもしれないよねって。

円井わん

カナ(円井わん) ©DirectorsBox

-山田組の撮影現場はいかがでしたか?

円井わん
出演者のほとんどが女優さんということもあり、女子会をしているノリで、役作りの話とか映画の話をしている感じだったので、すごい楽しかったです。
日常会話的な感じで、「あぁ、わかるー!」って言いながらも、きちんと話を聞けるし、意見を言い合うことができて、すごい斬新な方たちだなって思いました。普通は、結構真面目に話す方が多いと思うんですけど、ゲラゲラ笑いながら、「それ、ヤバイよね!」と言って、そんな会話自体が、作品の雰囲気に合っていましたね。

円井わん

-共演者の方々との会話で印象に残っていることはありますか?恒松祐里さんとは猫好きという共通点だったりとか、伊藤沙莉さんなど、先ほど話の出た映画『獣道』をはじめとして、『全裸監督』(Netflix)や「Iターン(TV東京系列)で共演されていますが。

円井わん
沙莉ちゃんとのつながりは面白いですね。沙莉ちゃんが、『下衆の愛』 (2016/内田英治監督)の舞台挨拶に登壇されていた当時、私はまだ観る側で。沙莉ちゃんは、私にとってずっとテレビで見ていた人だったから、楽屋挨拶でお会いできたことがすごく嬉しくて、「いつか共演できたら嬉しいです!」って言ってたんです。
その後、『獣道』で、ちょっとのシーンですが、宗教団体の友だち役で実際に共演できることになって、「あぁ、共演できて嬉しかったです。また共演できるようにもっと頑張ります。」と伝えて。そうしたら、また、『タイトル、拒絶』で、再共演することになって、「ええっ!」って思いました。
でも、『タイトル、拒絶』の共演者の方は、ほんとにみんなのことを話したいんですけど、キリがないんですよね。みんなみんな大好きなんです。

-先日、恒松祐里さんにインタビューさせていただいた時にも「共演者の全員が印象深くて、誰か一人を選べない」と、おっしゃってました。

円井わん
そう、誰か一人を選ぶのが難しいんですよね。みんな仲が良くて、ちゃんと1人1人と話すし、いい人たちばっかりなんです。それが作品の空気感にも表れていると思います。

-森田想さんが、佐津川愛美さんとの深夜の撮影現場で3人でずっと笑っていたという話も伺いました。

円井わん
めっちゃしんどかったですね、その深夜の爆笑のシーン。笑うって実は一番しんどいんです。なので、どうやってゲラゲラ笑えるかって、森田想と私とで試行錯誤していたんですけど、佐津川さんが「もうこれは笑い尽くした。次なんか違う笑えるやつ探そう」って私たちを引っ張ってくださいました。でも、それでももう笑えない、どうしようってなって。でも山田監督は、「もっと!もっと!笑って!」っていうから、言われるごとに「しんどい、しんどい」って思いました(笑)
でも、なんだろうな…やっぱりみんな好き(笑)

円井わん

アツコ(佐津川愛美)/カナ(円井わん)/キョウコ(森田 想) ©DirectorsBox

-みなさん、「みんなが好き」という言葉に集約されるんですね。共演された皆さんが同じ印象を持つという共有感が、撮影現場の雰囲気の良さを物語っていますね。

円井わん
みんな、仲が良いですね。男性キャストも女性キャストも分け隔てなく、飲みに行ったりもして、私が何か迷惑かけてないかなって、ずっと気にしています。

円井わん

-『タイトル、拒絶』が、11月13日から公開ですが、ご自身が演じられた“カナ”や作品の紹介。映画館に足を運ぶお客様に向けてメッセージをお願いします。

円井わん
私が演じたカナは、一番何も抱えてない子です。ただお金を稼げればいいという感じの子で、楽しいと思ってやってる子でもあり、こういう人もいるんだなみたいな感覚で観てもらえたら嬉しいです。ある意味、観客目線のキャラクターかもしれません。
この作品は、一人一人に焦点をあてていて、感情移入して苦しくなる部分もあるんですけども、そういう時は、カナを見て、一息ついてもらえたらと思います。
山田監督初の長編作品ということもあり、出演者皆が良いものにしたいという一心で映画を作りましたので、作品全体としては、役者ひとりひとりの個性とかパワーが充満しています。それはもうとても良い作品になっていて、面白いです(笑)
是非、『タイトル。拒絶』を映画館で観てください。

円井わん(Wan Marui)プロフィール
1998年1月3日生まれ。大阪府出身。
特技:ドラム(4年) 空手の型(國際松濤館空手道連盟初段) 趣味:ダンス
2016年から女優として活動スタート。TX「Iターン」、Netflix「全裸監督」(明子役)、MBS「映像研には手を出すな!」(パン子役)、『タイトル、拒絶』(カナ役/監督:山田佳奈)、『KONTORA』(主演)など、ドラマ、映画に多数出演のほか、欅坂46、乃木坂46、GADORO、ALAN、KingGnu、ユレニワなどのMVやCMにも出演している。2021年には公開映画待機作が4本ある。

[スタイリスト:石垣陽輔 (Gakky)/インタビュー・写真:金田一元]

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映画『タイトル、拒絶』

新進気鋭の山田佳奈監督による、女たちの本音に寄り添った先鋭的なオリジナル作品。

STORY
雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながら喋くっているオンナたち。
カノウ(伊藤沙莉)は、この店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。オンナたちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がキツイとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。
店で一番人気の嬢・マヒル(恒松祐里)が仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。
みんな賢くて可愛らしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれないのに・・・。」
ある時、若くてモデルのような体型のオンナが入店してきた。彼女が入店したことにより、店の人気嬢は一変していった。その不満は他のオンナたちに火をつけ、店の中での人間関係や、それぞれの人生背景がガタガタと崩れていくのだった・・・。

伊藤沙莉
恒松祐里 佐津川愛美/片岡礼子/でんでん
森田想 円井わん 行平あい佳 野崎智子 大川原歩
モトーラ世理奈 池田大 田中俊介 般若

監督・脚本:山田佳奈
劇中歌:女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
企画:DirectorsBox
制作:Libertas
配給:アークエンタテインメント
製作:DirectorsBox / Libertas / move / ボダパカ
©DirectorsBox
公式サイト:lifeuntitled.info
公式Twitter:@titlekyozetsu

11月13日(金)より シネマカリテ、シネクイント他 全国ロードショー

タイトル、拒絶

映画『コントラ KONTORA』

あらすじ
第二次世界大戦時に記された祖父の日記を辿って、ソラは不可思議な宝の探索を始める。その頃、無言で後ろ歩みをするホームレス男が、彼女の住む街へと迷い込む。もしかしたら彼は、ソラと彼女の父親との凍結された関係を溶かす触媒となり得るのかもしれない。

出演:円井わん
間瀬英正 山田太一 小島聖良 清水拓蔵

撮影監督:マックス・ゴロミドフ
音響:ロブ・メイス 音楽:香田悠真 撮影助手:ピーター・モエン・ジェンセン
プロデューサー:アンシュル・チョウハン 制作総指揮:海老原信顕
コープロデューサー:茂木美那、山田太一
制作:KOWATANDA FILMS
公式Twitter @Kontora_2019

2021年春公開予定

Kontora

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