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兼重淳監督

【兼重淳監督インタビュー】中条あやみ史上最高の演技の『水上のフライト』は、是枝監督『万引き家族』へのアンサームービー

中条あやみがカヌーの難演技に挑む映画『水上のフライト』(11/13公開)。兼重淳監督は、誰もやったことがない中条あやみの新たな側面を見せたいと台本を書いたという本作は、長年師事した是枝裕和監督『万引き家族』へのアンサームービーでもあるという。その思いについて話を伺った。

本作は、大ヒット作の脚本を手掛ける土橋章宏が実在するパラカヌー日本代表選手との交流を通じ作り上げたオリジナルストーリー。
事故により陸上競技でのオリンピック出場を断念せざるを得なくなった主人公・遥を中条あやみ、遥を裏方で支える仲間・颯太役を杉野遥亮が演じる。その遥の母・郁子役に大塚寧々、父親代わりに厳しく熱く導いていくコーチの宮本役を小澤征悦が担う。
観る者の心の奥底に届く、一人の女性の成長を描くヒューマンドラマとなっている。

兼重淳監督インタビュー

兼重淳監督

兼重淳監督

■未来を感じられる作品を作り続けていきたい

-土橋章宏さんの脚本をご覧になった時の印象を教えて下さい。

兼重淳監督
素直にやりたいと思いました。もともとスポーツものをやりたかったし、今までと切り口が違うのも感じたからです。そして、延期となりましたが、パラリンピック開催に合わせて映画を公開することはやる意味も意義もあると思いました。
土橋さんと一緒にお仕事ができることも嬉しかったし、プロデューサーがやろうとしているテーマにも共感することが多かったので、それで是非と思いました。

-パラスポーツ作品にこだわってというわけではない?

兼重淳監督
そうですね。これまで、野球とかサッカーとかいろいろなものをやってきましたけど、ドキュメンタリー、ノンフィクション作品にはどこか勝てないじゃないですか。なので、どういうものだったらできるかなと思ったんですけど、やっぱりスポーツ根性ものって元気がでるので、そういう意味でもスポーツものをやってみたかったんです。
日頃から、どこか未来を感じたり、観てくださった方の背中を押せるような作品を作り続けていきたいと思っているんです。だからパラスポーツ作品って、更にいいんじゃないかなって思いました。

-土橋さんの脚本を映画化するにあたって、土橋さんと話されたことがあればお聞かせ下さい。

兼重淳監督
キャラクター付けはいろいろ相談しました。たとえば、藤堂遥(中条あやみ)の“強い”っていう部分は、何が強いのか?という点。宮本浩(小澤征悦)は、熱血っていうより、愛溢れる人なので、人前では暗かったり、悩んでいるところをなるべく見せないっていう意味での明るさがある点。宮本のその明るさの裏側には、親友を失った哀しみ、その親友の娘である遥を父親代わりに応援してきたのに、遥が直面する絶望にどう応じるかという悩みがある。
遥は、陸上競技でオリンピックに行けるほどまでの選手に成長したのに事故で行けなくなりますが、進む道を見失った遥をどう社会復帰させるかということを宮本は真剣に悩むんです。
そして、加賀颯太(杉野遥亮)が抱えている影の部分があるからこそ、あのように口数が少なくても、寄り添って重要なことだけをちゃんと言える。
このようなキャラクター付けに関しては土橋さんといろいろ話しました。

-作品の構成に独特のオリジナル性を感じました。いわゆる主人公が夢破れた時の絶望ポイントの見せ方に。

兼重淳監督
その点については、僕というよりはプロデューサーの方々ですね。事故で落ち込むっていうのはよくあるから、そうじゃなくて、それによって(陸上競技でオリンピック出場という)夢をすげ替えられてしまった瞬間に落ち込みのピークが来る。それまでは事故に遭っても大丈夫だからって気丈に振る舞ってた主人公が、パラカヌーの話が出た瞬間に一番落ち込むようにしようねって。

兼重淳監督

■中条あやみは本気でやれば五輪にも出られる?

-競技用カヌーとレジャーカヌー、それぞれの違いはどういうところにあるのでしょうか?

兼重淳監督
ぜんぜん違うと思います。自転車でたとえると、補助輪が付いているのと一輪車との違いほど。
小澤征悦さんが初めて競技用カヌー乗った時には、2、3秒でひっくり返ってしまって、数回やってもダメだから「もう乗らない」って。
進んでると倒れにくいんですが、止まっていると倒れやすい。でも、中条さんは止まっていてもひっくり返らないほどに上達されました。スタート位置についてずっと止まってないといけないんですよ。それはすごく大変なことらしいんですけど。

-その上で、中条あやみさんのカヌーに対する取り組みについて教えて下さい。

兼重淳監督
絵コンテを書いている段階では、これは合成、これは吹き替えということを考えていました。
そしてカメラテストで、カヌーに浮き輪を2つ付けて、バーも付けて撮って、それを合成で消すとどうなるかっていうテストもしたんです。
でも、浮き輪自体は合成で消せても、水面に波ができている部分を消すのがすごく難儀で、これはどうしようっていう話になっていたんです。
でも、中条さんは負けず嫌いなのかな。そういう感じには見えないけど、始め、忙しくてカヌーの練習の回数をそんなに取れないって聞いてたのが、彼女の方からやりたいって言ってくださって、練習の回数を増やして、それでどんどん上達されていきました。
僕も彼女の練習に立ち会ったことあるんですが、「これはいけるぞ」って思いましたし、本当に助かりました。
そしてライバル役の冨手麻妙(とみてあみ/朝比奈麗香 役)さんも本当に乗れるようになったのですごかったですね。

-カヌーをコーチングされていた方はどのようにおっしゃってましたか?

兼重淳監督
今から本気でやれば、次のパリ五輪出れるよって言われました。それほど中条さんは上達されたんです。

-中条あやみさんって、運動神経がとても良い方なんだって改めて思いますね。

兼重淳監督
良いですねぇ。それで今もウェイトトレーニングを続けてるんですって。体幹の訓練にもなって、それは立ち姿の美しさにも通じるそうなので。

水上のフライト

場面写真 (C)2020 映画「水上のフライト」製作委員会

■俳優・中条あやみ × 俳優・杉野遥亮

-中条あやみさんは、兼重監督からはどのような俳優さんと捉えられていますか?その上で、本作ではどのような演出をされたのか教えて下さい。

兼重淳監督
本作は中条さんとやりたいなと思ったんですよ。中条さんに合ってるんじゃないかなって思って。
その上で、中条さんがこれまでご出演された映画を一通り観て、悔しいから人がやってないことをやろうと思って台本を書きました(笑)。
頑張る中条さんを見たかったんです。始めはわざと暗い表情ばかりさせて最後に笑顔に。やっぱり笑顔を見た時幸せになりますから。笑顔の映画にしたいなって思って。
ちなみに、遥がベッドの上で動かない足を泣きながら叩くシーンがあります。本作で車椅子指導を担ってくださった本田さんという車椅子バスケットをやっている方がこのシーンを見て「堪らなかった」とおっしゃってくれたんです。「なんで(足が)動かないんだよ!」と、いくら強く叩いても痛みを感じない足が更に辛くて、自分も泣きながら叩いたっていう話を聞きました。

-確かに、本作は、冒頭のツンとした表情から中盤の感情を爆発させるシーン、そしてラストの笑顔と、中条あやみさんのいろんな表情が見られるのも見どころに感じました。

兼重淳監督
ですよね。中条あやみ作品史上、最高だと思っています(笑)
他の監督に怒られそうですけど(笑)

-杉野遥亮さんはいかがですか?

兼重淳監督
杉野くんは、『キセキ -あの日のソビト-』(2017)という作品で、大躍進したんですよ。彼はFINEBOYSの専属モデルとして芸能界に入られましたが、当時はお芝居の経験が全く無かったので。
そして今作で3年ぶりに仕事を一緒にできたのが感慨深くて嬉しかったです。3年ぶりの杉野くんは頼れる俳優に成長していて、なにか質問しても、こうだと思います、こうしたいですっていうのがちゃんと返ってくるようになっていたからです。3年前は、こちらから「こうして」って言ったのをやるのが精一杯だったんですけど。
で、この3年間に彼が出演した映画もひととおり見直させてもらったんですけど、やっぱり他の人がやってないことをやってみようって思いました。
彼が演じる颯太の言葉では説明しないけれども、表情と仕草で伝わる感情表現は、今の彼の実力だったらできるんじゃないかなと思って、彼と話し合いながら、セリフを削っていきました。

-杉野さんのインタビューで、兼重監督に感謝を述べられていますね。当時大学生だった自分を温かく見守ってくださったって。

兼重淳監督
『キセキ』の撮影前、杉野くんと2人で町中華に行って、「この作品をやってみる?」って話したんです。定食を食べながら。彼自身の家族のことや、これからやりたいことを聞いたりしながら。
その彼が今のように成長して。天然なところはあるけれど、頼りがいが出ましたね。
本作で再会した時はの彼の一言目が、「颯太は何をしている人なんですかね?」っていう質問をしてくれたのがすごく嬉しくて。そんな質問をできるようになったと思ってなかったので。

水上のフライト

場面写真 (C)2020 映画「水上のフライト」製作委員会

■是枝裕和監督へのアンサームービーという側面も

-本作は、劇場の音響だとカヌーを漕ぐ“水の音”が心地よかったり、富士山の麓の湖上での美しいシーンなどが印象的ですが、その他、兼重監督がこだわったことがあれば教えて下さい。

兼重淳監督
こだわったところはいっぱいあります。ひとつはシネマスコープ(画面比率が2.39:1で、テレビの16:9より更に横長)に挑戦したことです。
シネスコってバランスが難しかったりするんですね。アップショットを撮った時に両サイドが空くとか、感情が伝わりにくくなるっていうこともあるので。
それでもシネスコにこだわったのは、シネスコならではの表現力を活かしたかったら。それはたとえば、最後の決勝戦でいくつものカヌーが横に並ぶ壮大さを出すためとか。その他にも画角が横に長いことを活かしたシーンを見つけることができると思います。
もうひとつこだわったことがあります。
私はずっと是枝裕和監督に就いてきました。是枝監督は『万引き家族』(2018)で疑似家族が離散していく映画を撮られました。僕は逆に疑似家族が本当の家族になっていくというテーマで書きたいと思いました。ネグレクトにあったり、両親に引き取られなかったりして、心に傷があったりする子どもたち、身体的な障がいを持っている人たち皆が居場所を探して、その居場所を見つけた時に皆が家族になっていく。
そういう意味で、直接的ではないですけど、『水上のフライト』は、是枝監督への僕のアンサームービー。お世話になった方へのお返しでもあります。

水上のフライト

場面写真 (C)2020 映画「水上のフライト」製作委員会

■女優・中条あやみ史上最高の演技が見られる作品になった

-“飛ぶことをあきらめない”とのキャッチコピーもある『水上のフライト』という本作のタイトルについて教えて下さい。

兼重淳監督
これは土橋さんがつけてくれてました。素晴らしいタイトルだなと思いましたね。
このタイトルがあるから、富士山の麓の山中湖のシーンが実現しました。空と雲と湖が一体となって写っていて、まるで空を飛んでいるようなシーン。
あの水面の雰囲気を出すには、太陽の光の反射の関係で早朝の30分間でしか撮れないんですよ。その時間に合わせてみんなでロケしました。

水上のフライト

場面写真 (C)2020 映画「水上のフライト」製作委員会

-最後に作品の見どころ含めてメッセージをお願いします。

兼重淳監督
諦めないヒロインを演じた中条あやみは、女優・中条あやみ史上最高の演技になったと思ってます。杉野の笑顔も最高だった。とにかく俳優の笑顔が最高でした、そんな映画です。

-10月21日の完成報告イベントで、中条あやみさんが本作のパート2で海外ロケ希望とおっしゃってましたね。

兼重淳監督
出演してくれた方がこの作品を好きでいてくれているのは幸せですね。みんなまた会おうって言ってくださるんで。

兼重淳監督

[写真:金田一元/聞き手:安田寧子]

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映画『水上のフライト』

中条あやみがパラカヌーの難演技に挑む!
実在するパラカヌー日本代表選手・瀬立モニカさんとの交流から生まれた奇跡。

INTRODUCTION
本作は、映画『超高速!参勤交代』シリーズ等数多くの大ヒット作の脚本を手掛ける土橋章宏が、実在するパラカヌー日本代表選手・瀬立モニカさんとの交流を通じ、作り上げたオリジナルストーリーだ。土橋が自ら描きたいと熱望し、企画・脚本をTSUTAYA CREATORS’ PROGRAMに応募し、審査員特別賞を受賞して遂に映画化となった。
主人公・遥には、若い女性から絶大な人気を誇る『雪の華』の中条あやみを迎え、遥を裏方で支える仲間・颯太役に『居眠り磐音』などの人気俳優・杉野遥亮、心配しながらも温かいまなざしで包み込む母・郁子役に『アマルフィ 女神の報酬』の大塚寧々、父親代わりに厳しく熱く導いていくコーチの宮本役に『引っ越し大名!』の小澤征悦ら旬な俳優陣が集結。
さらに、『キセキ ―あの日のソビト―』の兼重淳を監督に迎え、豪華なタッグが実現した。観る者の心の奥底に届く、一人の女性の成長を描くヒューマンドラマが誕生した。

場面写真

出演:中条あやみ / 杉野遥亮 高月彩良 冨手麻妙 / 大塚寧々 / 小澤征悦
監督:兼重淳『キセキ ―あの日のソビト―』
企画:土橋章宏  脚本:土橋章宏『超高速!参勤交代』・兼重淳
主題歌:「ひとりで生きていたならば」SUPER BEAVER
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:KADOKAWA 宣伝協力:シンカ
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017 審査員特別賞受賞作品
(C)2020 映画「水上のフライト」製作委員会
公式サイト:suijo-movie.jp/

予告篇

11/13(金)全国公開

水上のフライト

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