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再会の奈良

中国・台湾・香港・日本が手を携えて。分断化する今の世界への河瀨監督の思い。日中合作映画『再会の奈良』Q&A

2020年11月1日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、第33回東京国際映画祭の「なら国際映画祭2020」特別上映として、日中合作映画『再会の奈良』が上映され、エグゼクティブプロデューサーの河瀬直美、出演の國村隼がQ&A(ティーチイン)に登壇した。

本作は、第二次世界大戦時に、「開拓団」として満州へ移住した日本人が、敗戦後、約3000人が中国残留孤児として中国人家庭に引き取られ、1972年の日中国交正常化を機に、彼ら中国残留孤児の日本帰国が始まったことを背景にしている。
かつて戦争で戦った二国には、想いを共有した歴史があり、そして、新しい時代に向けて、戦争を経験した最後の世代が健在の今、過酷な時代に日本と中国の二国間に生まれた真の家族愛が描かれる。

本作の企画は、奈良を舞台にした映画を撮影、それを世界に発信するというなら国際映画祭プロジェクトの「NARAtive(ナラティブ)」が出発点。
映画監督の河瀨直美がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、新進気鋭中国人ポンフェイ監督の元、台湾の撮影監督、そして香港、中国の各映画祭によるサポートなど、今の分断傾向にある世界情勢に対して、救いの光とも言える国・地域を超えての取り組みが実現した。

主演は、國村隼で、人探しを手伝う日本人男性役を演じる。日本へ帰国させた中国残留孤児の娘を探す老女を中国を代表する女優ウー・ヤンシュー、孫娘のような女性を中国で注目の若手女優イン・ズーが演じる。
映画の鍵を握る男性として永瀬正敏も友情出演。劇団EXILEから秋山真太郎をはじめ、撮影の舞台となった奈良県御所市からもオーディションを経て地元住民がキャストとして出演している。

この日行われたQ&Aの最後のフォトセッションでは、登壇者の一人である河瀨氏からの“逆フォトセッション”の一幕も。それは、コロナ禍により来日が実現しなかったポンフェイ監督に、「お客さんがこれだけ来ているよ」ということを写真に撮り送りたいという河瀨氏の思いから。
客席に了解を得た上で、彼女自身のスマホで客席を撮りつつ、同時にマスコミに対しても「フラッシュが焚かれている雰囲気を撮りたいので、もっと撮って(光らせて)!」と要望した。

Q&Aレポート

再会の奈良

國村隼/河瀨直美

■本作の企画のきっかけ

河瀨直美
(来日できなかった)ポンフェイ監督、エグゼクティブプロデューサーのジャ・ジャンクーに代わって、お礼を申し上げます。感無量です。なぜなら、日中の歴史はすべてが良かったわけではなく、この映画でも描かれているような歴史的背景があり、コミュニケーションが取れないということがたくさんありました。その中で若いポンフェイ監督が、日中の交流、友好を目指して作ったのは素晴らしいことです。

河瀨直美

河瀨直美

-この作品の企画は、「なら国際映画祭」の“NARAtive(ナラティブ)”から始まったと伺っています。映画を撮るまでの経緯について教えて下さい。

河瀨直美
都市部にばかり日本の良さを世界にアピールするのではなくて、奈良で生まれ育った私が奈良の良さ、地方にある宝物を再発見する取り組みとしてこのプロジェクトを立ち上げました。
それに、國村隼さんのような日本の一流の俳優さんをお招きして、海外の監督の目線で、日本で、奈良で映画を撮るというプロジェクのひとつです。

-河瀨さんは今回はエグゼクティブプロデューサーということですが、具体的にどのように作品に関わられましたか?

河瀨直美
「なら国際映画祭」のコンペティション部門でゴールデンSHIKA賞というグランプリと、観客賞を受賞した人、そして学生部門で、ゴールデンKOJIKA賞と観客賞を受賞した、合わせて4名にシノプシス(あらすじ)を出してもらいます。そこからプロジェクトとして我々が選出して、監督など撮影スタッフを決めていきました。映画祭の翌年には撮影、ポスプロは本国でやってもらい、日本とやりとりしながら完成していく流れです。

河瀨直美

■ありえない座組が実現した

河瀨直美
もうひとつ重要なことは、本作では通常ではありえない座組(作品製作に携わる関係各位)となりました。
ひとつは、海外の若い監督が日本の地方都市の田舎に行って映画を撮ったということです。なぜなら地方都市の田舎にとっては、映画撮影というのは初めてなので、間に入った人、団体とのコミュニケーション次第でリスクがとても大きくなるからです。それを、「なら国際映画祭」のスタッフが、自分たちの住む奈良を映画の舞台として昇華できるように関わることができました。
そしてもうひとつは、本作は、中国残留孤児日本人というセンシティブな内容ですが、監督は中国から。撮影監督は台湾の方。そして撮影場所が日本。また、香港、中国それぞれの映画祭が、脚本の段階から映画化のサポートする形となったことです。
私は、日本と中国の関係性みならず、日本と韓国の関係性だったりとか、中国で言うと、香港や台湾との関係性だったりとか、そういうアジアの中での歴史上の繊細な部分を次の世代が、ある意味“文化”で繋いでいこうとする形には、とても意味があると思っています。

■ポンフェイ監督の温かい雰囲気が映像にも表れている

-國村さんは、ポンフェイ監督とご一緒されていかがでしたか?

國村隼
この作品を観ていただいた方は感じられると思いますが、温かい感じの映像。それは監督の人柄が表れていると思います。
撮影している時の彼の雰囲気もまさにこの映画の雰囲気のとおりです。
そして、演出については、「こういう形で撮りたい。それはどうしたらできるでしょうね」という話し方をされるので、僕は僕で提案することもありましたが、監督の中で撮りたいものははっきりされているのは感じてやりやすかったです。
ただ、ひとつのことに固執するのではなく、現場で起きるハプニングのようなものもうまく取り入れられる方でもありました。

國村隼

國村隼

■最後にメッセージ

河瀨直美
コロナ禍にあって、この作品は世界を旅できておりません。作品が完成して皆さんの元に届くまでに非常に時間がかかる今の状況だと思っています。
でも、ポンフェイ監督がこだわって、俳優の皆さんを3回も歩かせながら撮った最後の10分間のシーン。その歩き続けた先の道というものは、おそらく私たちが作っていく未来なんじゃないかなと思います。分断がたくさん起きているこの地球を繋げていくのは、ポンフェイ監督はじめ、私たち自身なんじゃないかなと思っています。皆さんもこの映画を観てそのような気持ちになっていただけたら嬉しいです。

國村隼
皆さんがこの映画をどのように受け止めてくださるのか不安でしたが、今日のこのQ&Aを一緒に過ごさせてもらって、皆さんがこの映画を温かく受け取ってくださったことが感じられてホッとしております。もっと多くの、世界中の方がこの映画を観ていただけたらなと思います。ありがとうございました。

再会の奈良

[写真:Ichigen Kaneda/記事:Jun Sakurakoji]


なお、河瀨直美監督最新作『朝が来る』(公開中)は、2020年カンヌ国際映画祭正式作品に選出されたほか、第93回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の“日本代表作品”に決定している。

日中合作映画『再会の奈良』

あらすじ
中国人の老女が日本に住む孫娘のような存在のシャオザーを訪れ来日するところから物語は始まる。
老女には日本に帰した中国残留孤児の養女、麗華がいるが、ここ数年連絡が途絶えている。
心配で堪らず老女は麗華を探しに来日したもののシャオザーと二人でなかなか上手く手掛かしの旅は思わぬ展開を始める。麗華探しに手をかす一雄はシャオザーに自身の娘の面影を重ね、麗華を想う老女、その老女を想うシャオザー、この3人の不器用な旅は思わぬ終着点へと誘われていく。

出演:國村隼 永瀬正敏 ウー・ヤンシュー イン・ズー 秋山真太郎
監督:ポンフェイ


<第33回東京国際映画祭>
■開催期間:2020年10月31日(土)~11月9日(月)
■会場:六本木ヒルズ、EX シアター六本木、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、東京国際フォーラム ほか
■公式サイト:https://2020.tiff-jp.net/

 

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