シネマ・ロサ

【インタビュー】映画作りを目指す人へ。そしてそれを応援する人へ。「新人監督特集Vol.4」

シネマ・ロサ

新人監督特集Vol.4の監督&キャストのみなさん

7月20日(土)から、池袋シネマ・ロサにて、「新人監督特集Vol.4」という特集上映が行われている。今注目の監督とその作品を集めたもので、4週間に渡って、週替わりで4プログラム(5監督8作品)を上映する。
この特集上映の開始直前の18日に、監督およびキャストの皆さんに集まっていただき、今回の上映の経緯や、監督としての映画作品への取り組みなどについて語ってもらった。そこから浮かび上がってきたのは、映画作りに励み、また、それを応援する人々との繋がりだった。

「新人監督特集」の企画・編成の仕掛け人

今回の特集上映が決定するまでの経緯について伺うと、どの監督にも共通しているのは、ブラントン フィルムズ勝村氏の存在。
大学の卒業映画祭、日本芸術センターの映像グランプリの審査上映、はままつ映画祭、うえだ城下町映画祭といった様々な映画祭・上映会などで勝村氏に声をかけてもらったのがきっかけだという。
ごとう監督は『約束の時間』の初上映時に、観客がなかなか入らずに落胆しているときに、勝村氏から声をかけられ、後日、連絡をとった際に、『約束の時間』と『キスは命がけ!』の同時上映を提案され、今回の特集上映に至った。
伊藤監督は、はままつ映画祭で、勝村氏と知り合いの出演者に紹介されて今回の上映につながり、木場監督は、2年前のうえだ城下町映画祭であった勝村氏に『つむぎのラジオ』を再度売り込んで、上映が決まった。「ダメもとで、映画を売り込みにいったら、意外とスムーズに上映を決めてくれました。」と木場監督は語った。

監督自身が撮りたい映画を撮る。

どの作品も予算が限られている中ではあるが、監督自身が撮りたいものを、また作品によってはキャストがスタッフも兼ねての手作りで完成させている。
また、作品の評価はさまざまであっても、ふとしたチャンスで今回の企画特集での上映のチャンスを掴んだ作品もある。
監督の皆さんは、次のように作品製作の経緯や企画上映への思いについて語った。

平井諒監督/『もう走りたくない』
本作の撮影時は学生で、卒業制作として16mmフィルムで撮影しました。
卒業したら、もうフィルムで映画を撮ることはないし、仮に撮れたとしても、ロードムービーでフィルムを選択することはできないだろうという思いから、ここでフィルムで撮っておこうと思いました。
大学の先生の講評はあまりよくなくて、たぶん、どこの映画祭にもひっかからないんだろうなとすごいへこんでいたので、勝村さんと出会い、今回の企画上映が決まった時は本当に嬉しかったです。
たくさんのお客さんが来てくれたらなと思います。

平井諒監督

平井諒監督

Toshi(BANQUET)

Toshi(BANQUET)「監督の指示の5倍は頑張った(笑) 自転車はサドルが痛いし撮影中はずっと雨で川は濁流で、けっこう死ぬ覚悟でした(笑)」

五月女歩美

五月女歩美「自転車で走るということを通して、人生って何のために走るのかをゆるく見せている作品」

ごとうたつや監督/『約束の時間』『キスは命がけ!』
映画づくりに関わる人や役者さんの知り合いもいない中、芸能事務所の若手のマネージャーさんとの会話で、映画作りを始めることができました。撮りたい役者さん・事務所に声をかけるとオファーを受けていただき、メインキャストを決めていく中で、出演者の提案や紹介などもありました。
たくさんの人が本作を観てほしいし、せっかく出演していただいたキャストの皆さんにも「よかったね」って言ってもらえるような上映になったらいいなと思います。

ごとうたつや監督

ごとうたつや監督

伊藤智之監督/『悪魔の舞を手に入れし者』(18分)を含むオムニバス形式の短編3本
五反田団という前田司郎さんが率いる劇団のワークショップへ参加したことで、俳優の方々とのつながりができました。
そういったワークショップは、演劇だったり、映画だったり、同じものが好きで人が集まっている点がやりやすい。
映画を撮るうえでも、自身がおもしろいと思うことをおもしろがってくれる人が集まってくれていてやりやすかったです。
今回、自分の作品が映画館で興行として上映されるのは初めてなので、純粋に嬉しく思っています。

伊藤智之監督

伊藤智之監督

大田恵里圭/田中爽一郎

大田恵里圭/田中爽一郎「皆、『横道世之介』という映画作品が好きで一緒に観ている時に、“一緒になにかやりたいね”と話したのがきっかけ。」

木場明義監督/『つむぎのラジオ』
この作品は、頭の中でラジオが聴こえる主人公“つむぎ”が親友を幸せにしようとする物語ですが、映画の題材を探している時に雑誌で見つけた、自分の頭の中にテレビ番組が見える人の話をきっかけにしています。
2年前、うえだ城下町映画祭で、勝村さんに本作を観ていただいていて、その時に売り込んだんです。でもその時は駄目だったんですけど、再度の売り込みで今回の上映が決まりました。

木場明義監督/大田恵里圭

木場明義監督/長谷川葉生「木場監督は役者を大事にしてくれる監督。それが作品の細部に表れていて見どころです。」

なお、インタビュー時は、『練馬ゾンビナイト』の高良嶺監督は不在で、キャストの二人が参加した。

安本依里花

安本依里花「高良監督とは歳が近く、同士という感覚。」

平山輝樹

平山輝樹「『練馬ゾンビナイト』の作品設定は夏ですが、53年ぶりの大雪で雪かきしながらの撮影でした。」

シネマロサは映画を観る人、作る人の聖地

監督・キャスト自身による作品の宣伝活動

池袋シネマ・ロサで恒例となっているものに、レイトショー前後での監督や出演者による映画のビラ・チラシ配りがある。
平井監督は、約2万枚のチラシを上映日までに配りつくし、チラシがなくなってしまったそうだ。
チラシ配りの中では、カメ止め(映画『カメラを止めるな!』)のファンの応援メッセージやツイートが嬉しかったという。
あまり、ビラ配りに参加できなかった『練馬ゾンビナイト』チームは、セット上映となった『もう走りたくない』の平井監督が毎日シネマロサに足を運んでいる姿やファンが作る応援動画を楽しみしていたり、盛り上がっていたそうだ。

『約束の時間』のごとう監督は、池袋シネマ・ロサに来場する方々に感謝の気持ちを次のように述べた。
「ロサのお客さんは、他の劇場のお客さんよりも、圧倒的にビラをもらってくれます。中には、“予告編、面白かったです!絶対、観に行きます!”って言ってくれる人もいて、とても嬉しく感じました。」

『悪魔の舞を手に入れし者』の伊藤監督は、ごとう監督同様、チラシをもらってくれた人が、予告編を見た感想を伝えてくれたり、前売り券を買ったという報告をしてくれた時にすごく励みになったそう。また、自身がビラを配りに行けない時も出演者のみんなが協力してくれた、その行動が嬉しかったという。

『つむぎのラジオ』のキャスト、長谷川葉生さんは映画のチラシに加えて、自身で手描きのイラストを載せた「週刊つむラジ」を配る工夫をしていて、現在までに、Vol.10を超える数を描きあげている。
そういう中、「週刊つむラジ」をコレクションしてくれている人もいるそうで、たくさん集めてくれた人へのプレゼントを考えようかなと語っていた。

ちなみに、ビラ・チラシ配りをする人たちを、「びらくばーる部」と呼んでいる。これは、木場監督が考案したもの(本人談)で、木場監督は次のようにその思いを語った。
「(自主制作映画やインディーズ系映画の)ぼくたちは、予算が限られていて、宣伝にお金がかけられない。宣伝に関して他の人に頼めないので自分たちだけが頼り。寒い季節、レイトショーの後のほとんど人がいない中、寒さにガタガタと震えながらチラシ配りをすることもあった。最近は、チラシ配りをする人も増えてきて、この雰囲気が温かくて本当に良いなと思う。ここから僕らはスタートしていて、やがて卒業していくような思いです。」

作品紹介

「新人監督特集Vol.4」で取り上げられている作品は次の通り。

平井諒監督/『もう走りたくない』(30分)
「自転車で日本海まで走っていったら、格好いいんじゃないか」という単純な考えで走り出した二人の青年の旅路を描いた物語。
平井監督が大学時代の卒業制作として制作した作品。

高良嶺監督/『練馬ゾンビナイト』(52分)
練馬区を舞台に撮影されたゾンビ映画。3人の男子学生がゲームに熱中している最中に、街にはゾンビが発生していた。
同級生だった女の子がバイトをしているコンビニで、生き残るために一緒に戦う4人の運命は。

ごとうたつや監督/『約束の時間』(48分)
3人のサトウと3人のキョウコ。3組の男女が同じカフェで待ち合わせ。ウェイトレスが誤って案内したことからおこる勘違いと騒動。
ごとうたつや監督/『キスは命がけ!』(40分)
彼とのキスにあこがれる女の子と、キスをしたらアレルギーから死の恐れがある彼。お互いがキスするためのに悩みと葛藤、そして努力をするラブコメディ。

伊藤智之監督/『悪魔の舞を手に入れし者』(18分)を含むオムニバス形式の短編3本。
悪魔の舞を手に入れたことによる苦悩と葛藤。
出演している俳優が実際に住んでいた部屋に集まり、俳優たちと一緒に作りあげた3本の作品。

木場明義監督/『つむぎのラジオ』(84分)
頭の中でラジオがきこえる主人公“つむぎ”が親友を幸せにしようとする画策するさまをコミカルな雰囲気で描いた作品。

新人監督特集vol.4

プログラム&スケジュール

1.オフビート青春短編特集 やっぱ走らナイト

7/20(土)~7/26(金)※上映終了
『もう走りたくない』(30分)/平井諒監督
「自転車で日本海まで走っていったら、格好いいんじゃないか」という単純な考えで走り出した二人の青年の旅路を描いた物語。
平井監督が大学時代の卒業制作として制作した作品。

『練馬ゾンビナイト』(52分)/高良嶺監督
練馬区を舞台に撮影されたゾンビ映画。3人の男子学生がゲームに熱中している最中に、街にはゾンビが発生していた。同級生だった女の子がバイトをしているコンビニで、生き残るために一緒に戦う4人の運命は。

2.ごとうたつや短編特集

7/27(土)~8/2(金)
『約束の時間』(48分)
3人のサトウと3人のキョウコ。3組の男女が同じカフェで待ち合わせ。ウェイトレスが誤って案内したことからおこる勘違いと騒動。

『キスは命がけ!』(40分)
彼とのキスにあこがれる女の子と、キスをしたらアレルギーから死の恐れがある彼。お互いがキスするために悩みと葛藤、努力のラブコメディ。

3.伊藤智之短編特集 悪魔の舞を手に入れし者-四畳半三部作-

8/3(土)~8/9(金)
『悪魔の舞を手に入れし者』(18分)他オムニバス形式の短編3本。
悪魔の舞を手に入れたことによる苦悩と葛藤。
出演している俳優が実際に住んでいた部屋に集まり、俳優たちと一緒に作りあげた3本の作品。

4.「つむぎのラジオ」

8/10(土)~8/16(金)
『つむぎのラジオ』(木場明義監督)
頭の中でラジオがきこえる主人公“つむぎ”が親友を幸せにしようとする画策するさまをコミカルな雰囲気で描いた作品。

 

料金など詳細は、公式サイトまで。
http://www.cinemarosa.net/lateshow.htm

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