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映画の新しい楽しみ方の“波”

今、インディーズ映画が熱い

5月初め、池袋シネマ・ロサで、入場を待つ観客による長蛇の列が劇場の外にまで続くという現象が起きていた。同館が注目する若手俳優をピックアップする人気企画「the face」の第2弾、女優・根矢涼香の特集上映が行われていたからだ。
グッズも数多く販売され、ロビーの物販コーナーにも観劇とは別の長蛇の列が出来ており、その様は、音楽アーティストライブ会場とも似た現象といえる。
上映後は、キャスト自身によるサイン会が開催されることもあり、インディーズ映画ならではの製作側とファンとのコミュニケーションも魅力のひとつとなっている。

モラトリアム

池袋シネマ・ロサに並ぶ長蛇の列(映画『モラトリアム』上映後)

テレビにも取り上げられるなど、今、注目が集まりだしている、女優・根矢涼香。
本記事では、5月24日(金)までシネマ・ロサにて上映されていた『モラトリアム 完全版』のトークイベントに、根矢涼香が登壇した時に彼女が語った「演技への取り組み」についての言葉を紹介する。インディーズ映画って?という読者にも、根矢の言葉を通して、今なぜ、インディーズ映画が盛り上がりつつあるのかを感じていただければ幸いだ。
なお、このトークイベントには、同作の澤佳一郎監督、そして主演で「the face vol.1」にて特集された俳優・品田誠も登壇した。

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【司会】永野貴将 根矢涼香 品田誠 澤佳一郎監督

根矢涼香の「演じる」ということ

司会の永野氏が『モラトリアム』での品田誠の演技を「役をつくっている感じがしなくて、自然体だと思った。」と語ったのを受けて、根矢涼香は自身の“役作り”について次のように語った。

根矢涼香
私は、舞台から始まっていて、12歳の時にミュージカルに入り、8年間舞台を経験してきました。
その時は、外から見た見栄えを固めることのほうが大事で、こう見せなきゃ、こう伝えなきゃ、という考えで取り組んでました。インディーズ映画の世界に入ってからは、舞台とは違って自然に演じるという壁にぶつかって試行錯誤しました。
今は、役作りをするというよりは、現場に入る前に、監督さんがどういう方なのかっていうのを一番大事にしています。監督が何を見ていて、今まで何を考えてきて、今回、何を伝えたくてやるのか?
もちろん私も台本から読み解くけど、こういうことですよね?って監督に私の解釈を提示をして、それはこういうことなんだよって摺り合わせをして、現場に臨むようにしています。
監督が描いている元々の人物像。それに“私”を通した上で、「こういう行動・発言はどうでしょう?」と、監督と相談しながら一緒に作っていくことが楽しいと感じています。

毎回、実験のよう。

根矢涼香
でも、現場に向かう正解がなんなのかは、まだわかりません。
毎回実験のようで、あの時こうだったから、今回はこうだ!という感じはあります。

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根矢涼香

品田誠
実験という言葉が合いますね。毎回変わるところがあります。

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品田誠

“芝居”は自身と“外”との関わりから昇華していく

根矢涼香
役者を続けていて思うのは、まったく別人になるのは不可能だなって。
舞台に立つ時、役を演じてはいるけれど私だし、お芝居ってある意味、嘘をつくことだけど、本当のことを伝えるのが、自分の役割だなって思ったりします。
例えば、ある役を演じるとなった時、自分に無いものと、自分が持っているものをすり合わせて、自分の中のグラフを伸ばしたり、減らしたり、っていう作業をします。
それは、自分がこれまで見たことや経験したことの中から探し出して手を伸ばすということ。その感覚を鋭くするためには、必要な本を読んだり、人に会ったり、外に向けて、世界との関わり方をその都度変えたりしています。

澤佳一郎監督
根矢さんのお話、なるほど!と思いました。
手塚治虫先生が赤塚不二夫先生に贈ったこんな名言があります。

「君たち、漫画から漫画の勉強するのはやめなさい。いい映画をたくさん観なさい、いい音楽をたくさん聴きなさい、いい小説をたくさん読みなさい。そして、それから自分の世界を作りなさい。」

モラトリアム

澤佳一郎監督

2019年秋は、手島実優をピックアップ

なお、2019年秋には、「the face vol.3」ということで、女優・手島実優(てしまみゆう)がシネマ・ロサにて特集される予定だ。
手島は、『カランコエの花』(2018)、『21世紀の女の子』(2019)などに出演している。1997年10月生まれの21歳。出身地である群馬県前橋市を拠点に活動中の女優。

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(左)根矢涼香 (右)手島実優

[取材・写真:Ichigen Kaneda/構成・記事:Jun Sakurakoji]

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