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映画『チルド』

【インタビュー】日常が狂い出すコンビニの恐怖。唐田えりかが体感した、瑞々しき岩崎組のエネルギーと物作りの楽しさ。映画『チルド』

ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した映画『チルド』。本作で、淡々としたコンビニの均衡を崩す新人・小河を演じた唐田えりかにインタビューを実施。脚本への「興奮」や役柄とのリンク、染谷将太・西村まさ彦ら豪華共演陣との撮影秘話をたっぷりと伺った。(読者プレゼントあり)

映画『チルド』は、新鋭・岩崎裕介監督がコンビニを舞台に描く「社会批評的ホラー」だ。 東京の片隅にあるコンビニで、副店長の堺(染谷将太)が繰り返すルーティンな日常は、新人アルバイト・小河(唐田えりか)の登場により静かに崩れ始め、オーナー(西村まさ彦)の支配下で店は極限の空間へと変容していく。
第76回ベルリン国際映画祭では「歪んだ現実を映す鏡」と評され、国際映画批評家連盟賞を受賞。 誰もが知る日常に潜む不穏さと滑稽さを鋭く描き出した一作だ。

唐田えりか インタビュー&撮り下ろしフォト

■脚本への「興奮」と岩崎組の瑞々しいエネルギーの中で実感した物作りの楽しさ

‐ まず、この『チルド』への出演が決まって、台本を最初に読んだ時の感想や印象を教えてください。

唐田えりか(小河 役)
シンプルにとても面白いなって思いました。今まで出会ったことがないジャンルというか物語の進み方で、次々と予想していなかったことが起こっていく面白さと、その奇妙な出来事が相まって、本当にすごく好きな脚本でした。「絶対やりたい」と思った作品です。

映画『チルド』

唐田えりか

‐ 本作の情報が解禁となったニュースで「脚本を読んだときに良いことが起こる予感がした」とコメントされていましたが、完成作を観てその予感はどう結実しましたか?

唐田えりか
初号試写を観た時、面白すぎて笑っちゃいました。今は「ホラー」というジャンルで括られていますが、その中に「そう来たか!」という滑稽さも描かれているんです。
結果としてベルリン国際映画祭で賞もいただけて、脚本や現場の段階で感じていたことは間違いなかったんだな、と改めて思いました。

‐ 「物作りの楽しさを改めて教えてくれた」というコメントもありましたが、どんな瞬間にそう感じましたか?

唐田えりか
岩崎さんを含め、スタッフさんも若いチームだったので、「同じ世代で面白いものを作っていこう」というエネルギーが溢れていました。その瑞々しいエネルギーの中にいるだけで、ずっとワクワクしていました。

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■「目にも意思を持つ」小河役へのアプローチと、コンビニという日常空間への共感

‐ 「演じる」ということを視野に入れた時、「面白そう」という感覚でしたか? それとも「難しいぞ」という捉え方でしたか?

唐田えりか
今回の小河という役は、普段の自分と心情がリンクする部分が多かったんです。だから「リンクする部分を大きくしていったら大丈夫なんじゃないかな」という安心感がありつつ、あとは「現場で何を言われるんだろう」というドキドキやワクワクが交わっていった感覚があります。

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小河(演:唐田えりか) ©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

‐ 演じられた小河は、コンビニの淡々とした均衡を崩すような存在だと思います。演じる上で特に意識したことはありますか?

唐田えりか
脚本を読んだ段階で、小河というキャラクターが唯一、「ちゃんと生きていて、意思があるキャラクター」だなと思ったんです。そこが自分の表現でも現れたらいいなと考えていました。
オーナーの話を聞いている時や発言するまでの間でも、「目だけでもこの人はちゃんと意思を持っている」「目が生きている人として映ればいいな」というのは意識していました。
そして、どの作品でもそうですが、なるべく脚本を読み込んで、自分とリンクしている部分はどこかを分析しました。今回も同じように準備した気がします。

‐ リンクする部分を分析されて、具体的にどのようなところに共通点を感じましたか?

唐田えりか
私も思ったことはちゃんと言葉にして伝えるタイプなので、そういう部分ですね。小河の言葉はただのわがままではなく、コンビニという職場を広い視点で見た上での「発言しなきゃいけない」という使命感からくるモノだと思うんです。「言葉にしないと動いていかないことがある」というのは私も普段から大事にしていることなので、そこがリンクしたかなと思います。

‐ その小河の発信によって、均衡が崩れていくわけですね。舞台となるコンビニのリアル感については、演じる上でどう捉えていましたか?

唐田えりか
コンビニって小さい頃から当たり前に存在していて、近すぎてあまり意識したことがなかったんです。でも今回舞台として向き合ってみて、改めて「当たり前の便利さを作ってくれてる世界って本当にすごいな」と感じました。24時間営業もそうですし、特に都内だと海外の方も多く働かれていて、意外とやることが多いんですよね。

‐ 小河の「正義感」についてはどう感じていましたか? 廃棄食品を巡る反発などは共感できましたか?

唐田えりか
私はシンプルに「え、捨てちゃうの? 食べちゃダメなの?」と思いましたね。小河が言葉にすることを選んでいる、という性格は自分ともリンクしました。万引きを放っておかないとか、食品を捨てるのはもったいないとか、多くの観客にとって小河の目線が一番近いのではないかなと思います。

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■「生きながら死んでいる」世界観の魅力と、岩崎監督が映し出す日常の歪み

‐ 日常の空間が崩れていく感じについて、作品を俯瞰で見た時の世界観はどう捉えましたか?

唐田えりか
主人公の堺(演:染谷将太)みたいな人って、割といるんじゃないかなって思うんです。「生きているのか死んでいるのかわからない」というキャラクターとコンビニという舞台が、本当にマッチしているなと。マニュアル通りに動く仕事の中で削れていく堺の人物像が、脚本のテーマとしてすごく好きでした。

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場面写真  ©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

‐ 岩崎裕介監督の狙いとして、バックヤードでは人間性があるのに、店に出るとシステマティックで無機質に見えるという描き方があります。店員さんへの見方は変わりましたか?

唐田えりか
西村(まさ彦)さんは「マニュアル的な動きに奇妙さを感じるから、割とセルフレジに行く」とおっしゃっていたんですけど、私は逆なんです。私はなるべく対面がいいなって思っちゃって。機械になることにちょっと寂しさを感じるというか、追いつけていない自分がいて、「このまま機械になっていく世界に慣れていく自分でいいんだっけ」と最近よく考えてしまいます。

‐ 監督からは現場でどのようなアドバイスがありましたか?

唐田えりか
基本的には自由にやらせてくださるのですが、岩崎さんの中に明確に思い描いているものがある時は、ご自身でやって見せてくださることもありました。「撮りたい世界観が決まっている方なんだな」と感じましたし、何より岩崎さんが楽しそうだったのが嬉しくて、こっちも楽しくなりました。出会えて良かった監督の一人です。

‐ 現場に入ってから役の作り方が変わった面はありましたか?

唐田えりか
変わった面もあったかもしれませんが、基本的には自由にやっているところを、岩崎さんが手を叩いて笑いながら見ていた、という感じでしたね。

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■圧倒的な存在感を放つ西村まさ彦、そして「衝撃を受けた」染谷将太との共演

‐ 共演者の西村まさ彦さん、染谷将太さんの印象を教えてください。

唐田えりか
お二方ともずっと作品を拝見していたので、共演できて本当に嬉しかったです。西村さんは、オーナー役にぴったりすぎて……。「淡々とずっと怖い」という演技が凄すぎて、立っているだけでもう奇妙な感じが出ている。その存在感に圧倒されました。でも裏ではめちゃくちゃチャーミングな方で、そのギャップが可愛らしかったです。
染谷さんは、特に終盤で二人で会話するシーンで、お芝居をしながら「この人ものすごく上手いな」と衝撃を受けました。お芝居をしているというより、本当にただただ喋っている感じなんです。染谷さんのお芝居を見ながら、「どうしてこうなるんだろう」と研究したり、勉強させていただく感覚が強かったです。

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オーナー(演:西村まさ彦) ©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

‐ 共演された「令和ロマン」のくるまさんはいかがでしたか?

唐田えりか
くるまさんは元々友人だったのですが、お芝居の現場でご一緒するのは初めてでした。本人すぎるというか、キャラクターがまんま本人で(笑)。でも作品を観た時、やっぱり芸人さんはお芝居が上手いなと思いました。自分の「声」で喋れるし、どうすれば面白くなるかを普段から突き詰めているからこそ、すごく器用だなと感銘を受けました。

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室田(演:くるま)©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)

■「心を使わない社会」への問いかけと、日本らしいコンビニの物語が世界へ。

‐ 本作は「現実を映す鏡」とも評されていますが、本作をご覧になる方にどのような影響を与えると思いますか?

唐田えりか
「マニュアル通りに動く」とか「心が通っていないセルフレジ」とか、便利だし仕方がないことかもしれないけれど、「その結果がこれ(物語の結末)だよ」と突きつけられている気がします。「心を使わないっていいんだっけ?」ということが描かれているように感じます。

‐ ベルリン国際映画祭での国際映画批評家連盟賞受賞について、改めてお気持ちを聞かせてください。

唐田えりか
とても嬉しいですし、岩崎さんにおめでとうと伝えたいです。映画は監督のものだと思っているので、岩崎さんの個人的な思いから生まれた作品がこうして評価されて、今後の岩崎さんがますます楽しみになりました。日本らしい雰囲気のコンビニという閉ざされた世界の話が、世界の人に通じているというのは、すごくいいなと思います。

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■自分に戻るリフレッシュの流儀と「幽霊の出ないホラー」の醍醐味

‐ 新しい作品に入る際、気分を変えるためのルーティンはありますか?

唐田えりか
作品に入る前は、数日だけ自分の時間を作ってリフレッシュすることを大事にしています。煮詰まらないように、一回ちゃんと自分に戻ってから、新しい役の色を付けていくように心がけています。

‐ 唐田さんご自身は、普段コンビニをどれくらい利用されますか?

唐田えりか
ほぼ毎日か、2日に1回は行ってますね。よく買うのはホットカフェラテ。現場中は朝におにぎりを買うことも多くて、イクラのおにぎりが好きです。

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‐ 学生時代にマザー牧場でアルバイトをされていたそうですが、コンビニ店員の仕事の難しさをどう感じましたか?

唐田えりか
私はレジがとても苦手でした。「1万10円」とかお預かりすると、ゼロの数がわからなくなっちゃったりして(笑)。だから今の入金レジシステムはすごくいいなと思います。もし自分がバイトするなら、そういうレジのところで働きたいです。

‐ もし自分で「自分のお店」を出すなら、どんなお店がいいですか?

唐田えりか
喫茶店に憧れますね。こだわりのお菓子があって、和菓子が置いてある喫茶店がいいな。コーヒーと和菓子の組み合わせが好きなんです。塩豆大福やみたらし団子、お饅頭、何でも好きです。

‐ 最後に本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

唐田えりか
私は個人的に「幽霊が出ないホラー」が大好きなので、まさに私好みの作品です。キャッチコピーの「生きながら死んでいる」というのがこの映画をよく表しているなと思います。自分でも気づかないうちに心が削れてしまっているような方にこそ、自分を客観的に見られる作品として、ぜひ観てもらいたいです。

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唐田えりか(からた えりか)プロフィール
1997年生まれ。千葉県出身。2015年に俳優デビュー。18年公開の映画『寝ても覚めても』で山路ふみ子映画祭新人女優賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。その他の出演作に映画「朝がくるとむなしくなる」『ナミビアの砂漠』『海辺へ行く道』『恋愛裁判』2026年は『チルド』の他に『恋愛裁判』『モブ子の恋』『Man』などの出演作が公開。テレビドラマ『君が死刑になる前に』『102回目のプロポーズ』『浮浪雲』、Netflix配信ドラマ『グラスハート』などがある。

■唐田えりかさん直筆サイン入りチェキ読者プレゼント

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応募締め切り:2026年8月16日(日)23時59分

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■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎/ヘアメイク:江指明美(mod’s hair)/スタイリスト:丸山 晃]

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《INTRODUCTION》
24時間、灯り続けるコンビニ。
同じ商品、同じ挨拶、同じ作業。
繰り返される日常が、静かに狂い始めるー

東京の片隅にあるコンビニ〈エニーマート倉冨町7丁目店〉。
副店長の堺(染谷将太)は学生時代に働き始めて以来、気づけば20代のほとんどをこの店で過ごしてきた。
レジ打ち。品出し。廃棄処理。スマホゲーム。マッチングアプリ。
ただ同じことを繰り返す毎日。

コンビニというシステムの中で、わずかな乱れも許さず店を支配するオーナー(西村まさ彦)。
しかし新人アルバイト・小河(唐田えりか)が現れたことで、店の均衡は静かに崩れ始める。
やがてその歪みは、静かに、確実に、コンビニを極限の空間へと変容させていく。

出演:染谷将太
唐田えりか
西村まさ彦
くるま 長島竜也
監督・脚本:岩崎裕介
プロデューサー:林健太郎 下條友里 井上淳
企画・プロデュース:NOTHING NEW
制作プロダクション:東北新社
配給:NOTHING NEW
洋題:AnyMart(エニーマート)
©︎『チルド』製作委員会 (NOTHING NEW・東北新社)
公式サイト:https://nothingnew.film/chilled_anymart/
公式X:https://x.com/NOTHINGNEW_FILM

予告映像

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2026年7月17日(金)全国公開

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