
河瀨直美監督、数年ぶりの舞台挨拶で改めてキャストらが明かす“恐怖の河瀨組”の真実。映画『たしかにあった幻』完成披露上映会
2026年1月22日、テアトル新宿にて開催された映画『たしかにあった幻』完成披露上映会。河瀨直美監督をはじめ、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏という、監督が信頼を寄せる「河瀨組」の常連キャストが登壇した。(動画&フォト)
舞台挨拶【詳細】レポート
■トークノーカット動画レポート
■フォトレポート
‐ まずは、病院へお弁当を届ける恵(めぐみ)を演じられた尾野真千子さん、一言お願いいたします。
尾野真千子(息子を亡くしためぐみ 役)
こんばんは。お弁当を届けている恵を演じました。出演時間は少し短いですが、自分としてはやりきったと思っています。どうぞお楽しみください。今日はよろしくお願いします。
‐ 続きまして、恵と一緒にお弁当屋を営む亮二(りょうじ)を演じられた北村一輝さん、お願いします。
北村一輝(元捜査一課刑事・現在弁当屋 亮二 役)
皆さん、北村です。お弁当屋を手伝っているという感じの役どころです。僕も少ししか出ていませんが、よろしくお願いいたします。
河瀨直美監督
2人、おんなじこと言うてるで(笑)
‐ そして、心臓移植のドナーとなる少年の父親を演じられた永瀬正敏さん、お願いします。
永瀬正敏(ドナーとなる少年の父親 役)
永瀬です。ありがとうございます。僕は(北村さんたちと違って)お弁当は売っていません(笑)。皆さんがおっしゃるよりもさらに短い出番かもしれませんが(笑)、楽しんでいってください。
‐ 最後に、本作のメガホンをとられた河瀨直美監督、お願いします。
河瀨直美監督
こうして舞台挨拶ができるのは、おそらく6年ぶりぐらいです。コロナ禍やオリンピックなど色々あり、舞台に立つことができませんでした。映画をコツコツと作り、初日に皆さんにお披露目できる日は、私にとって唯一無二の日です。今日はいつも支えてくれているメンバーと一緒に立てて、本当に感無量です。
ロカルノから日本初上映へ
‐ 昨年のロカルノ国際映画祭でのワールドプレミアを経て、ついに日本でのお披露目を迎えました。今の率直なお気持ちをお聞かせください。
河瀨直美監督
ようやく、やっとだなという気持ちです。「もう劇映画を撮らないんじゃないか」と思われていた節もあったかもしれませんが、自分としては全速力で映画に向き合ってきた日々でした。ロカルノでは、シネフィルの皆さんが「直美が帰ってきてくれた」という愛を持って、割れんばかりの拍手で迎えてくれました。今日、皆さんに観ていただくこの「日本限定バージョン」をお披露目できて本当に嬉しいです。
久しぶりの「河瀨組」への参加
‐ 尾野さんはデビュー作『萌の朱雀』以来、久々の河瀨組ですね。いかがでしたか?
河瀨直美監督
何回かオファーしたんですけど、大女優になってしまってスケジュールが合わなかったんですよ(笑)
尾野真千子
ある時、監督から直接連絡があって「真千子さ、主役以外もやるの?」と言われたんです。「やるし!」と答えて出演が決まったのですが、決まった瞬間から「恐怖の日々」が始まることを知っているだけに、何を準備すればいいのかと色々考えました。でも、河瀨組では普通の役作りは通じない。結局「身一つで行くしかない、それが正解だ」と思って挑みました。
河瀨直美監督
彼女のシーンは、撮影が始まって数日経った頃でしたが、100点超えでした。「あ、出たな」という、河瀨組の最も強い部分が出たシーンになっています。
徹底したリアリティの追求
‐ 北村さんは長編の河瀨組は初めてですが、現場はどうでしたか?
北村一輝
噂には聞いていましたが、身をもって経験して「ひどいな(過酷だな)」と(笑)
でもそれは「本物を撮ろうとしているから」だと理解できました。普通、映画では現場に行ってお弁当屋の芝居をしますが、河瀨組は違います。数日前から実際のお弁当屋に潜入し、リアルな人たちと話し、役のモデルになった方にも会いました。
‐ 元刑事という役柄についても深く掘り下げられたのでしょうか?
北村一輝
はい。刑事として、そして人間としてどう生きてきたかを深く聞き、現場に入りました。病室で何年も子供の回復を待つ親御さんの現実を目の当たりにし、「上っ面で演じても通じない」と痛感しました。今回はお芝居を見せるというより、この映画が伝えたい現実を届ける一人になれたらという思いで、感じるままに演じました。
撮影中の感情と日本バージョンの秘密
‐ 撮影中、北村さんが予定にないところで涙を流されたというお話もありました。
北村一輝
病院での協力者の皆さんとお話しする中で、言葉では言い表せないほどの大変さを感じたんです。芝居ではない感情が出てしまいました。
‐ 永瀬さんは、今回の参加で特に印象に残っていることはありますか?
永瀬正敏
また河瀨組の日々が始まったな、という感覚でした。撮影自体は非常に短かったですが、監督は映画に出てこないシーン、つまり役の「前後」の時間もちゃんと積み込ませてくれます。今回も身が引き締まる思いでした。
‐ 実は、今日上映されるバージョンは、キャストの皆さんもまだ観ていないものだとか?
河瀨直美監督
はい。ロカルノで上映した海外版とも、これまでの初号とも違う、世界初上映の「日本バージョン」です。自分が納得いくまで、公開3日前まで編集していました。
北村一輝
僕たちもまだ見ていないので、自分が出ているのか心配です(笑)
フリップトーク:大切にしている「たしかにあった〇〇」
‐ タイトルにちなみ、皆様が大切にしている「たしかにあった〇〇」を発表してください。
北村一輝
「たしかにあった津原さんの言葉」
仕事がなかった若い頃にお世話になった方で、3年前に亡くなられました。「志だけは大きく持て、小さくまとまるな」と励ましてくれたその言葉が、今も僕の胸に刻まれています。
尾野真千子
「たしかにあった台本」
私は撮影が終わった台本やスケジュールを全部取ってあるんです。昔のスケジュールには手書きのコメントがあったりして、それを見返すと当時の喜びが蘇ります。ただ、デビュー作の『萌の朱雀』だけは、当時は台本の読み方もわからず、ペラペラの紙の束だったので、手元にないんですよね(笑)
永瀬正敏
「たしかにあった想い」
僕には心臓の病気で亡くした弟がいます。もし当時(移植などの)縁があれば、今も隣に座っていたかもしれない。亡くなった人は終わりではなく、思いがあればずっと自分の中にいるんだと感じています。デビュー作の監督への思いも同じです。
河瀨直美監督
「たしかにあったフランスロケ」
編集段階で「捨ててしまう(カットする)」ショットはたくさんありますが、その名もなき瞬間、捨てられたものの方にこそ大事な気持ちが宿っていることがあります。日本バージョンには、フランスロケの光景も少しだけ含まれていますので、楽しみにしていてください。
監督からのメッセージ
河瀨直美監督
テアトル新宿で舞台挨拶をするのは初めてですが、ここは30年以上前から映画を愛する人々が集まる潔い映画館です。皆さんの大事な人を思える時間を、この映画と共に持ち帰っていただけたら嬉しいです。
私が映画を始めた頃、会場から永瀬君を見て「いつかあそこ(舞台)に行きたい」と思い、テレビで北村君を見て「絶対に一緒に映画を撮りたい」と思いました。そして真千子とは奈良の吉野でリアルに出会いました。
2026年、映画というものが形を変えていく時代かもしれませんが、私は「諦めない気持ち」を映画に託しました。最後までゆっくりご覧ください。ありがとうございました。
■フォトギャラリー
- 北村一輝/尾野真千子/永瀬正敏/河瀨直美監督
- 北村一輝/尾野真千子/永瀬正敏/河瀨直美監督
- 尾野真千子
- 尾野真千子
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- 尾野真千子/永瀬正敏/河瀨直美監督
- 北村一輝/尾野真千子
- 北村一輝/尾野真千子/永瀬正敏/河瀨直美監督
- 野真千子/永瀬正敏/河瀨直美監督
[動画・写真・記事:三平准太郎]
映画『たしかにあった幻』
《INTRODUCTION》
フランスから来日したコリーは、日本における臓器移植への理解と移植手術の普及に尽力するが、西欧とは異なる死生観や倫理観の壁は厚く、医療現場の体制の改善や意識改革は困難で無力感や所在のなさに苛まれる。
また、プライベートにおいても屋久島で知り合った迅と同棲を始めるが、お互いが使う時間のズレからくるコミュニケーションの問題に心を痛めていた。そんな中、心臓疾患を抱えながら入院していた少女・瞳の病状が急変するが・・・。
「幻」とは実在しないものがあるかのように見えること、あるいは存在自体が疑わしいもの、の意に相当する。それを修飾する言葉として「たしかにあった」という表現は、論理的には成立しない。にもかかわらず、相反するワードを敢えて同義的に並べたタイトルは、二項対立を超えてゆく新しい思想を提案する本作の内容を知らしめている。
また、この映画は、河瀨直美監督にとって6年ぶりとなる劇映画の最新作でもあり、オリジナル脚本としては8年ぶりである。物語を支えるテーマは二つ。
一つは、先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療について。
もう一つは年間約8万人にのぼる日本の行方不明者問題だ。河瀨監督は『あん』(15)で差別と偏見の果てに生きる歓びを人々に与えたハンセン病患者の生き様、『光』(17)で失われゆく視力に翻弄される人生の中で気づかされた新たな愛を獲得したカメラマンの人生、『朝が来る』(00)では特別養子縁組で救われた命の尊さと二人の母の絆など、旧来の常識や血縁とは異なる、他者との関係性の中に存在する「愛」を描いてきた。
「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆき、「生」の意味を問いかける本作は、第78回ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映にて、河瀨監督のマスターピース(傑作)と評された。
- メインカット
出演:ヴィッキー・クリープス 寛一郎
尾野真千子 北村一輝 永瀬正敏
中野翠咲 中村旺士郎 土屋陽翔 吉年羽響
山村憲之介 亀田佳明 光祈 林泰文 中川龍太郎
岡本玲 松尾翠 早織
小島聖 平原テツ 利重剛 中嶋朋子
監督・脚本・編集:河瀨直美
製作:CINÉFRANCE STUDIOS 組画
プロデューサー:DAVID GAUQUIÉ et JULIEN DERIS 河瀨直美
制作プロダクション:CINÉFRANCE STUDIOS 組画
制作協力:カズモ
日本宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ
フランス配給:advitam
インターナショナルセールス:CINÉFRANCE STUDIOS
© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025
公式サイト:https://happinet-phantom.com/maboroshi-movie/
公式X:@maboroshi_film
公式Instagram:@maboroshi_movie
2026年2月6日(金)テアトル新宿ほかロードショー
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