【インタビュー】伊藤沙莉、改めて「虎に翼」主演としての2024年を振り返る
NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公・猪爪寅子役で注目を集めた俳優、伊藤沙莉。今年の活躍を讃える「THE ONES TO WATCH 2024」を受賞した彼女に、改めて「虎に翼」の撮影を振り返ってもらった。
伊藤沙莉 インタビュー&撮り下ろしフォト
‐「THE ONES TO WATCH 2024」受賞のお気持ちをお聞かせください。
伊藤沙莉
とてもありがたいことですし、受賞のお知らせをいただいた時は何が何だかさっぱり分からなかったんですが、受賞理由を伺うと、自分が1年を通して向き合ってきた役と、その全てを絡めた作品に対する評価でもあるなと思ったので、じわじわと実感するようになり、とても嬉しいなと思いました。
‐その連続テレビ小説「虎に翼」では、シリアスなテーマでもありながら、伊藤さん含むキャストの皆さんはコミカルなお芝居もされていてい、そこが魅力だと感じていましたが、演じるうえでのバランスはどのような心がけをされていましたか?
伊藤沙莉
ユーモアもある作品だと思いますが、男尊女卑がまだ根強くある時代背景もあり、納得がいかないこともある中、一人の女性が日本初の女性弁護士になって、法曹界をどんどん切り開いていくというお話だったので、シリアスとコメディーを分けるというよりは、一人の人物からどんどんと派生して起きることだから、演じ分けたり何かを切り替えるという意識はあまりなかったです。描かれてることが面白かったり、シリアスだったり、胸を打つことだったり、いろんなものが相まっていて、それってとても人生としてリアルだなと思うので、そういうところを丁寧にみんなで作っていきました。
‐俳優としてキャラクターを演じるという大前提がありつつも、一人の女性として気持ちが入ることはありましたか?
伊藤沙莉
それはなかったですね。明確な意思と答えをしっかり持ち、それを出す人物の役だったので、私が変にそこに賛同したり混ざったりするとブレると思い、自分はどちらかというと「あぁ、確かにな」とか思う時はあっても、それは視聴者さんに近い目線に似ていて、台本を読んだ時の読み物として面白いな、そういう意見もあるんだとか、一つの壁(物語)の外にいる状態で居ようっていうのは常に思っていました。
‐逆に、伊藤さんが寅子に影響されることはありましたか?
伊藤沙莉
それはすごくありました。ずっと考え続けてしまうところ。これはこうだなって自分がふと思ったことに対して、「でも見方を変えたら、この人にはこの人の正義があって、この人の言い分はこうなんだ、じゃあ私が考えてるこれって正解じゃないってこと?」というような、グルグルグルグルしちゃうところは、寅子から影響を受けたのかもしれません。
‐思考法まで変わったということでしょうか?
伊藤沙莉
そうですね、ちょっと寄り道するようになったという感じですね。ガラリと考え方が変わったというよりは、ちょっと「本当に?」と自分に対して疑いの目を向けるようになりました。
‐尾崎裕和(「虎に翼」制作統括)さんのインタビューで、「伊藤さんのすごいところは、撮影が大変な中でもずっと変わらないところ」とおっしゃっていましたが、朝ドラヒロインとして長期間居続ける上で、心がけられたことはなんでしょうか?
伊藤沙莉
なんだろう。でも本当に楽しかったんですよ。1年という撮影期間の中、必ずしも順撮りじゃないこともあって、そういう時は、監督からの状況説明と演出のご協力もあり、自分で頭を使って組み立てていくという苦労はありましたけど、やっぱり監督、プロデューサー、スタッフ、キャスト、それぞれのマネージャーさんたち含め、みなさん本当にいい人たちで、そういうことに恵まれていたことが全てでした。私の力とか、私が心がけてどうのというよりは、本当に環境に恵まれていたおかげだったと思います。
脚本が面白いっていうことも恵みの一つですし、ひとつひとつのシーンで、みんなが意欲的に意見を出し合っていたということも大きいですし、プロの意識を常に持ったお芝居が好きな人たちがいて、そして楽しくしたいという想いを持った人たちが多かったんです。
その環境にいたっていうことがすべてだったなと思います。全体が明るくて、常に笑いが絶えない現場でした。
その上で、物語のテーマとして、しっかり締まるとこ締まる。そのけじめのつけ方の皆のテンション感に一体感があったんだと思います。
‐以前の「虎に翼」の伊藤さんのインタビューで、梛川善郎(なぎかわよしろう)監督から「今の沙莉さん、“恋愛マスター”みたいになっているけど、寅子は恋愛したことがないからね」という演出を受けたとありました。これにちなんでの質問ですが、寅子ではなく、伊藤さんご本人から見て、佐田優三(演:仲野太賀)と星航一(演:岡田将生)とどちらがタイプでしょうか?
伊藤沙莉
これはすごく難しいですね(笑)。でも、ある種真逆の二人でもあると思うんです。優三さんとは、欠点や弱さみたいなところを知る前に死別してしまったので、亡くなった方に勝てるわけがないかもと、私やスタッフさんの間の話ではまとまりました(笑)
もう二度と会えなくなった人と、今、生活を共にしている人とでは比べられないから。
でもやっぱり、どちらも素敵な男性だし、どちらも愛してます。はい(笑)
‐以前、『ホテルローヤル』(2020年)でインタビューさせていただいたとき、「これが最後の女子高生の制服姿です」とおっしゃっていました。ただ、「虎に翼」でも制服姿がありましたがいかがでしたか?
伊藤沙莉
もう最後って言わないでおこうと思いました。また着るかもしれないって思って(笑)
前に、宮崎美子さんとご一緒した時に、宮崎さんが制服を着ていらっしゃって、それがとてもよくお似合いで、だから機会があれば着るものなんだって思ったら、寅子が最後の制服とも思わなくなって、もう学生服に対して悟りを開いた状態になりました(笑)
‐とても似合っていました。
伊藤沙莉
ありがとうございます!(笑)
伊藤沙莉(いとうさいり)プロフィール
1994年、千葉県出身。生まれ持った芝居のセンスと確かな演技力でシリアスな役からコメディまで幅広い役柄をこなす実力派として、ドラマや映画、舞台などで活躍。
ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、ブルーリボン賞助演女優賞、山路ふみ子女優賞、文化庁芸術祭放送個人賞、橋田賞新人賞ほか受賞歴多数。
近年の主な出演作に映画『ちょっと思い出しただけ』、『すずめの戸締まり』(声の出演)、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、ドラマ「ミステリと言う勿れ」、「拾われた男」、「ももさんと7人のパパゲーノ」、「シッコウ!!~犬と私と執行官~」など。2024年度前期NHK連続テレビ小説「虎に翼」で主人公の佐田寅子を演じた。
12月31日放送の『第75回NHK紅白歌合戦』では司会を務める。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[インタビュー:安田寧子/写真:三平准太郎]
<『VOGUE JAPAN』主催「THE ONES TO WATCH 2024」について>
コンデナスト・ジャパンが刊行する世界で最も影響力のあるファッション誌『VOGUE JAPAN』は、その年を彩った才能あふれる表現者や目覚ましい活躍を見せたニューカマー、キャリアにおける大きな転機・飛躍をむかえた方など多ジャンルで活躍するアイコニックな人々を讃える特集「THE ONES TO WATCH」を例年発表している。
2024年は綾野剛、磯村勇斗、伊藤沙莉、江村美咲、小田凱人、河合優実、角野隼斗、Travis Japan、ハローキティ、BABYMONSTER、ゆりやんレトリィバァの受賞が決定した。
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