能年玲奈から“のん”になる時、自分の持っているもが死なないようにと。第16回 伊丹十三賞 贈呈式&質疑応答
2024年9月6日、国際文化会館(東京都港区)で、「第16回 伊丹十三賞 贈呈式」が行われ、受賞者の のん が登壇した。また、「あまちゃん」で共演し、伊丹十三記念館館長・宮本信子より、お祝いのビデオメッセージが届けられたほか、贈呈式後はメディアとの質疑応答もあった。
贈呈式&質疑応答 レポート
■トークノーカット動画レポート
■ダイジェストフォトレポート
冒頭、司会を務める、公益財団法人ITM伊丹記念財団 理事長 玉置泰氏から今回の受賞理由の紹介があった。
― のん 授賞理由―俳優、ミュージシャン、映画監督、アーティスト……困難を乗りこえ自由な表現に挑み続ける創作活動にたいして。伊丹十三賞選考委員会
▼能年玲奈さん!
次に、選考委員を代表して、平松洋子(選考委員)が祝辞を述べた。平松は冒頭から、のんの旧芸名で本名でもある“能年玲奈”で呼びかける。
「能年玲奈さん、この度は賞を受けてくださってありがとうございます。宮本信子さんはじめ選考委員、そしてこの賞に関わったすべての方たちが、もう本当に大喜びしてとても嬉しかったです。」
2013年、NHKテレビ小説「あまちゃん」をリアルタイムで全話視聴したことが自慢と話した後、「それから10年経った今も能年さんの輝きは変わらないのは、その10年の間に起きたいろんなことを考えるに奇跡のようなことだなと思っています。」と続けた。
そして、今回の選考にあたって、初めて能年玲奈(のん)と伊丹十三を重ね合わせて考えることができたとし、それは伊丹十三が若い頃からクリエイターとしての才能を発揮し、後に映画監督にもなったことが、能年の俳優、アーティスト活動と重なるからだとした。また、自分が表現したいことを実現するために、目の前の困難を恐れないところや、それまでの業界の常識を打ち破る姿も重なると述べた。
「一人の表現者として、伊丹十三という人と能年玲奈さんの存在がこんなにも重なるんだということは私自身にとっても大きな発見でした。」
▼伊丹十三さんと重なるところがあると言っていただけて本当嬉しい
次に受賞者スピーチとしてのんは次のように語った。
のん
こんにちは、のんです。この度は本当に素晴らしい賞をいただき、心から嬉しい気持ちでいっぱいです。私は無我夢中で自分の想いを貫き通すぞと言う気持ちで活動してきたんですけど、私は自信がある方だと自負してるし、怖いもの知らずでもあると思うんですけど、どれだけ自信があっても、どれだけ褒めてもらえても、自分の表現に対して疑い続ける、そういう気持ちはどこかにあありました。なので、ふと、(この表現は)どうだったんだって、地の底まで落ちてが悩んじゃうことがあるんですが、そうやって立ち止まってしまった時に、これでいいんだ、自分のやりたいことを貫き通すんだって、背中を押してもらえる、支えになる特別な賞をいただいたなと感じています。
のん
そして(平松さんから)伊丹十三さんと重なるところがあるんだって言っていただけたのが本当にもう嬉しすぎて、今大興奮です。伊丹十三さんは様々な顔を持っていて、どの面でももう唯一無二の表現を突き詰めた方だと思うんですが、私もそのように自分の表現を突き詰めていけるようになれたらなと思います。
何かもし今願い事が叶うなら、リアルタイムで伊丹十三体験をしたかったなって切に思ってます。この度は本当にこのような素敵な賞をいただきありがとうございます。
これからもこの賞に恥じぬよう精進していきたいと思います。ありがとうございました。
▼宮本信子「長い長い、苦しい時間、道があって、よく耐えて頑張った」
そして、俳優で、伊丹十三記念館館長も務める宮本信子からのビデオメッセージが上映された。
宮本信子メッセージ
のんさん、のんちゃん。伊丹十三賞受賞おめでとうございます。
選ばれたって聞きましてね、何かすごく私、しみじみとしてしまいました。でも授賞式に出席できなくて本当に残念で仕方がありません。
のんちゃんとは、NHKの「あまちゃん」の制作発表の時に初めて会いましたね。無口でシャイで、本当にこの子大丈夫かしら?って私は思ったんです。
それで、この子を何としてでも守らなくては、支えなくてはって、そう思いました。そう決めました。
それから、長い長い、苦しい時間、道があって、よく耐えて頑張ったなって思うんです。でもそのことをバネにして、ほんとに強く大きく成長しましたね。
私は本当にこんな素敵なことはないと思っています。これからも身体を大切にしてね。
それからもっともっと活躍して大きく羽ばたいてください。私はずっと見守っています。のんちゃん、改めましておめでとうございました。
“のん”になる時に自分の持ってるものが死なないようにしたいと思った【質疑応答】
贈呈式後、各メディアとの質疑応答があった。
‐今回の受賞理由が、自由な表現に挑み続ける創作活動に対してということで、先程喜びのコメントをいただきましたが、今回の受賞の第1報を聞いた時の率直な感想をお聞かせください。
のん
思いもしないことだったので、本当にびっくりして、本当に?って何度も聞き返しました。そして真実だって分かった時はもう大興奮で、もう眠れないっていうくらい興奮しました。
‐宮本信子さんとは「あまちゃん」で共演されましたけど、その方の縁の方の賞を受賞されたっていうことについてはいかがですか?
のん
この賞をいただけるということは、宮本さんも私のの活動を認めてくれたんだっていうことが感じられたので、とても嬉しいです。
以前、宮本さんとお食事した時に、私が長編の脚本を書いて映画撮りたいんですって見せたことがあって。その時に「映画はそんな簡単なもんじゃないんだよ」って喝を入れられたことがあって。だから。宮本さんに認めてもらいたいなっていう気持ちはあったんですけど、そのことがあってから、宮本さんに会う時は、(映画を)作ってる自分をなるべくひた隠しにしてたんですが、私が映画を撮った時に電話をくださったり、今回お褒めいただけて、本当に嬉しいなって思います。
‐先ほどの宮本さんのビデオメッセージの中で、「最初に会った時は大丈夫かなって」と思ったとお話されていましたが、「あまちゃん」の撮影を通して宮本さんから学んだことがあれば教えてください。
のん
そのドラマの制作発表の日にご挨拶させていただいた時に、宮本さんが「私たちが守りますから」って言ってくださって。その時に頑張らなきゃ!って気合いが入りました。そして撮影していく中で、宮本さんは厳しい面もある一方、すごく優しくて甘やかしてくれるところもあったりして、私が本当にシャイでスタジオの前室の端にある着替え場所でこもってたんですけど、その時に「どんどんお籠りしなさい」って言ってくださって、「あっ、お籠りしていいんだ!」って励みになりました。そしてやっぱり宮本さんの演技を間近で見て、こんな演技ができるようになりたいって、俳優として鍛えられました。
‐では、そのときの経験がご自身の成長にも繋がった作品でもあったんですね。
のん
はい、そうです。
‐ちなみに今日お召しの衣装は?
のん
スタイリストの方に用意していただいたものなんですけど、とてもめでたい靴で、鶴の刺繍が入ってます。
‐のんさんは服飾とかデザインにも多彩な才能を披露されていて、伊丹監督も映画だけでなくデザイナーとしてなど、いろいろな才能を発揮されてた方ですが、そういうところが相通ずるということで今回受賞になりました。今後、のんさんが幅広く挑戦していきたいこととかあれば教えてください。
のん
私は、自分のやろうと思ったことをこうやって生きてる中で、いろんな挑戦や表現がもっともっとできるなと思っていて、例えばまた映画を作りたい気持ちもごくあります。
‐先程、平松さんの方からとても熱いメッセージがありました。冒頭から「能年玲奈さん」というお名前で呼びかけがあり、この10年の活動が、伊丹さんの戦ってきた表現というものに重ねられてというお言葉に、のんさんが頷いて聞かれてる姿が印象的だったんですけども、改めてその時に何を感じられていたのか教えてください。
のん
本当に嬉しい気持ちで、喜びでいっぱいでした。「あまちゃん」をずっとリアルタイムで観られてたという方に出会ったのが初めてですごいと思いましたし、そして伊丹十三さんと重なる部分があることが発見でしたって言っていただけたのは本当に嬉しくて。私はまだまだこれからどんどん頑張っていかなければいけないだと思っているんですけれど、本当にいつかそんな風に唯一無二の表現で作っていくことができるように、これからも突き進んでいきたいなっていう気持ちでした。
‐平松さんからも宮本さんからも、「あまちゃん」からの10年にいろんな苦労があって、それでも頑張ってきたから今があるというお話がありましたが、改めてこの10年を振り返っていかがでしょうか?
のん
私が“のん”になる時に大事にしてたことは、やっぱり自分の信じること、自分の持ってるものが死なないようにしたいっていう気持ちがすごく強くて、妥協できなくて今に至っています。
いろんなことがあるけど、それでも面白がってくださる方がいたり、応援してくれる方がいたりして。迷ったり悩んだりする時もあるけど、こんな自分だからこれがやれたとか、こういうことがやりたかったんだって思える表現を作ったり、俳優としてもたくさんあるので、その積み重ねを信じてやってきました。
‐先ほどから「あまちゃん」のお話が出ていますが「あまちゃん」と言えば橋本愛さんとの共演があって、そして、今年の12月公開の堤幸彦監督の映画『私にふさわしいホテル』でも共演されています。その橋本愛さんとの御縁についての想いがあればお聞かせください。
のん
愛ちゃんと今回の映画で3度目の共演になりますが、その度に「この子はちょっと面白いな」って思います(笑)『私にふさわしいホテル』では、今までと全然違った役柄で共演させていただいて、こんな形でもちゃんと演技が楽しめるんだっていう時間を過ごしました。
■フォトギャラリー
[動画・写真・記事:三平准太郎]
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。