伊礼姫奈「推し武道のクランクアップの日にオーディションを受けました」映画『シンデレラガール』初日舞台挨拶
2023年11月18日、新宿K’s cinemaにて、映画『シンデレラガール』初日舞台挨拶が行われ、伊礼姫奈、辻千恵、太田将熙、緒方貴臣監督が登壇。構想の最初から10年を経て、公開を迎えた本作について、キャスト、監督それぞれが想いや撮影中エピソードなどを明かした。なお、MCは、本作のプロデューサー・榎本桜が務めた。
本作は、緒方貴臣監督(『子宮に沈める』、『飢えたライオン』)が、伊礼姫奈(「推しが武道館いってくれたら死ぬ」)、筒井真理子(『淵に立つ』、『よこがお』、『波紋』)らを迎え、「義足は障がいの象徴」とネガティブに捉えていた主人公の義足のモデルやそのマネージャーが、ポジティブに捉えられるようになるまでの心の変化を描く。
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画レポート
■テキストダイジェストレポート
初日、2日目と満席スタートとなっている本作は、”義足は障がいの象徴”とネガティブに捉えていた主人公やそのマネージャーが、ポジティブに捉えられるようになるまでの心の変化を描いている。
『シンデレラガール』というタイトルにした理由について監督は、「『シンデレラガール』は、魔法だったり、白馬の王子様だったり、他力本願な前時代的な女性像が描かれがちだなという思いがありまして、現代的にアップデートしたシンデレラを描きたいと思いました」と話した。
続けて監督は、前作『飢えたライオン』で筒井真理子さんとご一緒して役者さんの力を学んだことから、本作では2000人規模のオーディションを開催した。「筒井真理子さん以外、ほぼほぼオーディションで決めています。皆さんの力を借りて、僕の想像を超えるものが作れたかなと思います。」と手応えを話した。
音羽役を演じた伊礼姫奈のキャスティング理由については、「映画とは、撮影と編集の嘘だと考えていて、その中で、元々持っているものが画面に滲み出ると思っています。そういうものがオーディション時に感じられたのと彼女が幼い頃から芸能活動をされてい(て、学校を休む必要があったという経験があ)るというのが、入退院を繰り返す音羽とリンクするところがありました。」と明かした。
伊礼は、「『推しが武道館いってくれたら死ぬ』という作品で岡山でロケをしていて、クランクアップの日にそのまま新幹線で、キャリーケースと台本を抱えながら行きました。」とオーディションの思い出を語った。伊礼は、別の作品でもオーディションを勝ち抜いており、「(オーディションに)強いと言うと恥ずかしいんですけれど、気持ちは強く頑張っています。」と笑顔で話した。
義足モデル役について聞かれた伊礼は、「もちろん他の作品も準備はするんですけれど、簡単には演じられないなと思って、実際に義足の方にお話を聞いたりして、違った角度で準備をしました。演じるにあたってすごく身構えていたんですけれど、義足の方に会ったら、実際私たちと同じように生活している姿を見て、勝手に抱いていた義足のイメージと違い、負担が減りました。」と語った。
主人公のマネージャー・唯は、監督の分身とも言える役とのこと。
監督は、「この映画の企画は7〜8年前に生まれたものなんですけれど、そのきっかけはSNSでたまたま見つけた義足の女性が歩いている写真なんです。かっこいいと思ったのと同時に、義足や車椅子がおしゃれと縁遠いものだという決めつけを自分の中で持っているということに気づいたんです。僕が思っていた偏見を持っている人物としてこのマネージャーを設定しました」と説明した。
マネージャー・唯役を辻にお願いした理由について監督は、「元々は看護師役でオーディションに来ていただいたんですが、看護師役にも合うと思うんですけれど、それって普通だなと思って。決して善人だけじゃない役をやってもらったら面白いのではないかと思いました。」と話した。
辻は、12月8日公開のドキュメンタリー『私が私である場所』で、本作のオーディションを受けた際の映像も紹介されているが、「(看護師の)桜役のつもりでオーディションに行って、『できなかった』と思いながら帰ったんです。きっとダメなんだろうなと思って帰ったら、『唯役で決まりました』と連絡が来て。分身と聞いて、すごく責任ある役だなと思ってインしたのを覚えています。」と話した。
太田将熙が演じた医師・重樹役は、主人公の王子様的存在。
監督は、「この映画は『シンデレラ』をベースにしているので、重樹は白馬の王子様で、音羽を幸せに導く存在として映画の中で登場するんですけれど、太田さんはビジュアル的には申し分ないですが、オーディションにはかっこいい人はいっぱいいたんです。けど、演技って、演技力だけじゃなく、その人の内面的な魅力が大切なです。雑談をさせていただいた時に、この企画に対する思いが、嘘偽りなく伝わってきたんです。この人と一緒に映画を撮りたいと思いました。」と起用理由を話した。
太田は、シンデレラの王子様的立ち位置と言われ、「本当に恥ずかしい」と照れつつ、「僕は王子様という役どころだなというのは全体を通して思うんですけれど、重樹は自分を王子様と思って存在していなく、24歳医者というのがでかいと思うんです。24歳ということは、医師の国家試験を最速で受かった優秀な人物だと思ったので、普段の自分より落ち着きがあるのかなと考えて準備しました。」と話した。
続けて太田は、「オーディションで、プロデューサーの榎本さんが『どういう映画にしたいですか?』と言った時に、『いい映画にしたいです』と、事務所に入って1ヶ月の人が言うみたいな発言をしてしまって…」と話すと、MCを務めた榎本は、「その素直さが監督に届いたのではないかと思います。」とフォローした。
伊礼と辻は劇中で仕事が決まった時の『マネージャーと抱き合う』という台本のト書きに違和感を感じて、リアルな動作に変えてもらったとのこと。
伊礼が、「実際に抱き合ってみた時に、『抱き合わないよね』ってなって。」と言うと、辻も、「『伊礼さんってご自分のマネージャーさんと抱き合ったことありますか?』と質問したら、『ないです』となって。伊礼さんのマネージャーさんは男性なのでもちろんなくて、私のマネージャーさんは女性なんですけれど、女性でもなくて。あまり触れないよねってなって、別のやり方に変えました。」と裏話を披露。伊礼は、本作の主演が決まったときは、「LINEが来て、スタンプですごく喜んでくださって、私も『よかったです。頑張ります』と返しました」とリアルなエピソードを披露し、観客の笑いを誘った。
辻は、実際の義足モデルのマネージャーさんに取材しようと思った際に監督に止められたそう。
「今まで自分が準備してきた方法って、たとえば現地に行ってみるとか会ってみるという手段を取っていたので、当たり前のように自分のマネージャーさんに『会いたいです』と言ったら、『監督からNGが出ました』と言われました。確かに、それって正解を知りに行っているようなものだなと思って。その道のりを自分で噛み砕いてお芝居として生かすべきだと改めて気付けました。」と止めた監督に感謝の意を述べた。
監督は、「この映画自体もあまり説明をしないような映画になっています。現代って、なんでも調べれば答えは出るような時代で。時間が限られているのもあって、すぐ答えを見つけに行ってしまう。でも、自分で考えるのが大事なんですよね。調べたくなるのはわかるんですが、取材すると取材した人に寄ってしまうから、辻さんの考える唯をやって欲しかったんです。」と真意を説明した。
最後のメッセージとして監督は、「障がい者が題材になっていますが、『美』が主題になっています。音羽とマネージャー二人の心の変化が美しさにどのように変化していくかをみていただければ嬉しいです。」
太田は、「空白というかソリッドというか、描きすぎていないことを大事にしている映画だと思うので、見てくださった方がどういう気持ちで帰るのか楽しみです。義足のモデルのお話ではあるんですけれど、それだけではない部分を見つめてもらえればと思います。」
辻は、「音羽を一番近くで見れて、マネージャーとしてもそうですし、自分個人としても気づけることがあるような、幸せな期間でした。いろんな方がいろんなことを感じていただければ幸せです。」
伊礼は「私の解釈と監督の考えが違うように、見てくださる方によっていろんな捉え方があります。自分を見つめ直すきっかけにもなるし、もらえるパワーもすごく大きくて、他の作品とは違った感覚で楽しんでいただけるのではないかと思います。感想もちゃんと見るので、たくさん(SNSに)載せてもらえればと思います。何回見ても面白い作品ですので、ぜひ何回も見てください。」と話した。
■フォトギャラリー
[写真・動画:三平准太郎]
関連記事
映画『シンデレラガール』
《INTRODUCTION》
大阪2児放置死事件を基にした『子宮に沈める』(13)、フェイクニュースによって自殺に追い込まれる少女とメディアの過熱報道による現代社会の歪みを描いた『飢えたライオン』(17)。誰もが被害者にも加害者にもなりうる世界を容赦なく描き、問題作を発表し続けてきた緒方貴臣監督が、最新作『シンデレラガール』では、進行性筋ジストロフィー(PMD)と診断されたモデルでもある森山風歩らの監修の元、「義足は障がいの象徴」とネガティブに捉えていた主人公の義足のモデルやそのマネージャーが、ポジティブに捉えられるようになるまでの心の変化を描く。
シンデレラコンプレックス(Cinderella complex)とは、男性に高い理想を追い求め続ける、女性の潜在意識にある「依存的願望」を指摘したシンドロームの名称。本作『シンデレラガール』は、「魔法」や「白馬の王子様」に依存した他力本願な、前時代的女性像である「シンデレラ」へのアンチテーゼとなる作品である。
主演は「推しが武道館いってくれたら死ぬ」では主人公の推しを演じ、JTB「いよいよ海外旅行はじまる」などCMでも活躍中の伊礼姫奈。演技力の高さと圧倒的な存在感で、今後ブレイクすること必至である。主人公・音羽の人生に大きな影響を与えるファッションデザイナー・五十嵐役で、『淵に立つ』、『よこがお』、『波紋』主演の国内外から圧倒的な支持を得る筒井真理子が参加し、作品の世界観により厚みを持たせている。
マネージャー・唯役で、主演映画『たまつきの夢』がTAMA NEW WAVE2022の「ある視点」部門に正式出品された辻千恵、看護師・桜役で、「個人差あります」の泉マリン、医師の内藤役で、純猥談 短編映画第3作『私もただの女の子なんだ』主演の太田将熙、母・多佳子役でベテランの輝有子が出演するほか、一緒にTikTok動画などを撮影する音羽の仲良しグループのメンバー役に、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』の佐月絵美、自身フォロワー210万人超えの三原羽衣、ABEMAの恋愛リアリティー番組「今日好きになりました。小夏編」の田口音羽が集結した。
撮影監督は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞の『淵に立つ』や『よこがお』の根岸憲一。『飢えたライオン』でもタッグを組んだ緒方監督が、根岸による撮影の繊細な機微を求め、再タッグが実現した。
《STORY》
12歳の時に病気で片脚を切断した音羽。その後も入退院を繰り返し、中学校の卒業式にも参加できなかった。そんな音羽のために、クラスメイトたちがサプライズの卒業式を病院の屋上でして、その動画がSNSで話題になり、音羽にモデルのオファーが舞い込む。義足の女子高校生モデルという特異性もあり、一時的に注目されるも、その後のモデルとしての仕事は義足を隠したものばかりだった。
一方、マネージャー・唯は、音羽と一緒に義足のファッションブランドで「義足を障がいの象徴でなく、個性として捉えてほしい」という理念を聞き、心を動かされる。義足をもっと押し出していこうと決める二人。やがてファッションショーに出演できるチャンスがやってくるが…
出演:伊礼姫奈
辻千恵 泉マリン 太田将熙 輝有子
佐月絵美 三原羽衣 田口音羽 山本海里 梶刀織
アライジン 小関翔太 イトウハルヒ 中村颯夢 嶋貫妃夏
筒井真理子
監督:緒方貴臣
脚本:脇坂豊、緒方貴臣
音楽:田中マコト、菱野洋平(WALL)
制作:杉山晴香、箱田准一、長谷川穣
義足監修:臼井二美男
グラフィックデザイン:木下デザイン事務所
プロデューサー:榎本桜、緒方貴臣、塩月隆史、杉山晴香、夏原健、森山風歩
製作:paranoidkitchen、リアルメーカーズ、ラフター
配給:ミカタ・エンタテインメント
©2023映画『シンデレラガール』製作委員会
公式サイト:https://cinderella-girl.paranoidkitchen.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/C_G_2023
公式Facebook:https://www.facebook.com/c.g.movie2023/
11月18日(土)より新宿K’s cinemaにて公開中。全国順次公開
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。