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映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

杉咲花が語る「想像できなかったところに到達したシーン」とは?映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

杉咲花主演、戸田彬弘監督による映画『市子』が第28回釜山国際映画祭のコンペティション部門のひとつであるジソク部門に正式出品された本作の公式上映が、10月5日(木)に映画の殿堂(釜山シネマセンター)にて行われ、杉咲花、若葉竜也、戸田彬弘監督の3人が登壇した。

昨日10月4日に行われたオープニングのレッドカーペットとセレモニーに参加した杉咲と若葉は、本日のワールドプレミア上映について「(お客さんと)一緒に見るのも滅多にない経験ですし、終わった後Q&Aもあるので緊張しますが楽しめたら。」(杉咲)、「これが一番緊張するかもしれません。初めての感触なので、海外の方にどう受け入れられるか興味があります」(若葉)と語っていた。
すでに国内でも「世界に届けたい名作」「全てが〈別格〉」などマスコミから絶賛の声が続々と上がり話題となっている本作は、第36回東京国際映画祭ではNippon Cinema Now部門にも正式出品が決まっており、この釜山国際映画祭での上映がワールドプレミア上映となった。

上映前の舞台挨拶では、「偉大な映画祭にお招きいただき光栄に思っています。今日が世界初上映と言うことで、どのように伝わるか緊張します。」と戸田監督がまずは挨拶。
本作の主演を務めた杉咲は「アンニョンハセヨ。杉咲花です。自分にとって特別な映画が、ようやく皆さんに見ていただけることができてうれしいです。一緒に見られる機会はなかなかないので緊張するんですけど、楽しみたいと思います。」と韓国語を交えた挨拶で会場を沸かせ、若葉も「映画祭はもちろん楽しませてもらっているんですけど、一人の人間としてこの国と釜山という街を楽しんでいます。今夜も楽しい時間を作っていきたいと思いますので皆さん共有してください。」と続き、韓国での上映に対する喜びを伝えた。

映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

戸田監督/杉咲花/若葉竜也

本編の上映が終わると、拍手が沸き起こり、観客と一緒に鑑賞をしていた戸田監督、杉咲、若葉が、映画祭の醍醐味でもあるQ&Aを行うため舞台に再び登壇。満席の劇場で鑑賞した観客からの質問を受け始めた。

最初の質問で「この作品に携わることになったきっかけ」を聞かれると、原作となる舞台も執筆している戸田監督は「この物語自体が、もともとは舞台の脚本で、それを映画化するという話になり、主演・市子を誰に託すかを考えながら脚本を書いていました。自分としては杉咲花さんにやっていただきたいという思いが強く、お手紙を書かせていただきました。」と裏話を披露。

「監督からいただいたお手紙がすごく記憶に残っていて、自分の監督人生において分岐点となる作品だと思っていると言われ、この作品に懸ける並々ならぬ想いを感じました。そして、自分が市子という役を演じられる機会を与えられたことについても深く感動し、震える想いでオファーをお受けしました。」と杉咲がエピソードを語ると、「僕には(監督からの)手紙はなかったんですけど(笑)、この台本をもらったときに、自分以外の俳優が長谷川という役をやっているのをあまり想像したくないなという想いになりました。そういうことは普段感じることがないので、すごく特別な作品だったんだと思います。」と若葉が回答。

映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

杉咲花

さらに多数の手があがり、熱心な質問が続く。
「映画を撮影するときに、感情的な部分で消耗することが多かったと思うのですが、実際はどうでしたか?」という質問に杉咲は少し考え込み、一言一言を噛みしめるように「市子として、カメラの前に立つときに、満ち足りていない感覚を持つことが必要な気がしていて、その気持ちに向き合うことに集中していました。」と役に入り込んでいた様子を語る。
さらに若葉は、「僕は、市子の人生をお客さんと一緒に見ていくという立場なので、その事実を知った時のリアクションは、本当に新鮮なものじゃないといけないと思っていました。台本を読み込んだり、ここで意図的にこういう声を出そうとか、涙を流そうとかではなく、その時に自分がどんな気持ちになるんだろうということを楽しんで演じました。なので、初めてこの映画を見たときは、自分の想像とは違う表情をしている自分自身を見ることができ、戸田監督に感謝しています。」と答え、この回答に俳優2人の作品に懸ける想いが込められる。

映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

若葉竜也

また、上映後ならではの「自分たちが作ったこの映画で、好きなシーン、印象深いシーンを教えてください。」と問われると、戸田監督はネタバレともなるであろうシーンをあげ「この作品は、セリフがないシーンがたくさんあるのですが、中でも、台詞がまったくないこのシーンは杉咲さんのお芝居ひとつにお任せしていて、6分ほどの長尺のシーンを俳優さんのお芝居ひとつに任せて撮っていくといことが非常に楽しくもありました。映画の中で重要なシーンのひとつなので印象に残っています。」とコメント。
若葉は「あんなに頑張った北くん(森永悠希)に「いらない」とはっきりと告げる市子のシーン。ただ、あのシーンが好きです。市子のヒーローになるんだと意気込んでいた北くんに、『もう過去の人には会いたくない、なぜならケーキ屋をやるから』と言うシーンは…、僕は何度見ても笑ってしまいます。」と、笑いをこらえながら回答し、客席でもシーンを思い出してか、笑い声が。
杉咲は「私は婚姻届けを長谷川君から受け取るシーンは特に印象に残っています。若葉くんとは、今回で3回目の共演になるのですが、自分がどういう風に現場にいたいとか、どう表現したいということよりも、第一に相手のために現場に立ってくださる方で、目を見つめていたら、自分が想像していたものからどんどんはみ出しいき、想像もできなかったところに到達できたシーンになった気がしていて、若葉君には、本当に感謝しています。」と答えた。

最後は笑顔で写真撮影。「海外の方にどのように作品を受け取ってもらえるか」に緊張をしていた杉咲、若葉、戸田監督の3人だったが、映画の本質に深く切り込んでくるような質問も多数あり、作品のエネルギーと観客の作品への熱量が合わさり、登壇者3人にとっても観客にとっても、忘れられないワールドプレミア上映になったことだろう。
なお、釜山国際映画祭の受賞結果の発表は、10月13日(金)に予定している。ぜひ『市子』の動向に注目してほしい。

映画『市子』釜山国際映画祭上映後Q&A

杉咲花/若葉竜也/戸田監督

■釜山国際映画祭コンペティション ジソク部門とは?
キム・ジソク賞は、2017年に設立され、昨年から正式なコンペティションとなった釜山国際映画祭を代表する部門のひとつ。
新人監督を対象としたニューカレンツ部門と並ぶコンペティション部門で、今年は本作を含む10本の作品がキム・ジソク賞を競う。これまで同賞へ出品された日本映画には、杉咲も出演している『楽園』(19/瀬々敬久監督)や受賞を果たした『羊の木』(18/吉田大八監督)がある。

映画『市子』

《INTRODUCTION》
本作は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した舞台「川辺市⼦のために」が原作。観客から熱い支持を受け2度再演された⼈気の舞台が映画化となりました。また本作は、来月4日から開催される第28回釜山国際映画祭のコンペティション部門のひとつ、ジソク部門に正式出品が決定、ワールドプレミア上映を予定しています。

痛ましいほどの過酷な家庭環境で育ちながらも「生き抜くこと」を諦めなかった川辺市子を演じるのは杉咲 花。抗えない境遇に翻弄された彼女の壮絶な半生を、凄まじい熱量で体現。これまでも演技力に定評があった杉咲だが、その期待を遥かに超え、鑑賞したマスコミ関係者を圧倒。「女優としての本領発揮」「本作が代表作となるのは間違いない」と言わしめるほど圧巻の演技を披露、芝居を超えて役を生き抜く姿がスクリーンに映し出される。
市子が3年間一緒に暮らしていた恋人の長谷川を演じるのは、若葉竜也。この重厚な物語の軸を担う長谷川が、市子の真の姿を知る過程で揺れ動く感情の変化を繊細に演じ切る。さらには、森永悠希、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり、倉 悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳が名を連ね、彼女の知られざる人物像や過去を第三者の目線からも描き出していく。

《STORY》
川辺市子(杉咲花)は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に、忽然と姿を消す。途方に暮れる長谷川の元に訪れたのは、市子を探しているという刑事・後藤(宇野祥平)。後藤は、長谷川の目の前に市子の写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか。」と尋ねる。市子の行方を追って、昔の友人や幼馴染、高校時代の同級生…と、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていく長谷川は、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。
そんな中、長谷川は市子が置いていったカバンの底から一枚の写真を発見し、その裏に書かれた住所を訪ねることに。捜索を続けるうちに長谷川は、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を知ることになる。

出演:杉咲 花 若葉竜也 森永悠希 倉 悠貴 中田青渚 石川瑠華 大浦千佳 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり
監督:戸田彬弘
原作:戯曲「川辺市子のために」(戸田彬弘)
脚本:上村奈帆 戸田彬弘
音楽:茂野雅道
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 映画「市子」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/ichiko-movie/
公式Twitter:@movie_ichiko

特報映像

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2023年12月8日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

市子

ティザービジュアル

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