稽古中も稲垣吾郎の“好き”が全開&真飛聖の圧巻の芝居!『多重露光』舞台挨拶&公開舞台稽古
2023年10月6日、日本青年館ホールにて、『多重露光』舞台挨拶&公開舞台稽古が行われた。舞台挨拶には、主演の稲垣吾郎、真飛聖、相島一之、眞鍋卓嗣(演出)が登壇して、稽古中の様子や本作の魅力について語った。
本作は、モボ・モガプロデュース最新作、稲垣吾郎主演、いまもっとも期待されている劇作家、横山拓也による書き下ろし。タイトルにある「多重露光」とは、1コマの中に複数の画像を重ね写し込むことを意味する。すなわち、フィルムカメラ等でフィルム巻き上げをしないまま、被写体変えて、2回シャッターを切ることで、2つの画像が重なり合う状態。
物語では、登場人物の想いや感情、たとえば、愛おしさ、憧れ、狂おしさ、恨み…が重なり合う。
公開舞台稽古フォトレポート
主人公・“山田純九郎/やまだすみくろう”は、顔も知らない戦場カメラマンだった父と、その父を帰りを待つ母から引き継ぐ形で山田写真館の2代目店主に。ただ、自分が撮りたいものが見つからないまま、日々の写真撮影の仕事に、なかなか真剣に取り組むことができず、どこか心が虚ろな状態。
ステージは、その山田写真館の部屋のセットのみで、転換は無い(一部プロジェクションマッピングの例外あり)。その山田写真館に訪れるさまざまな登場人物と“純九郎”の関わり合いで物語が進行し、時には、同じ部屋での過去の描写も。
本人もフィルムカメラが大好きだという稲垣吾郎にとって、まさに当たり役とも言える本作。脚本の横山拓也もカメラ好きということで、劇中、貴重な名機の実物がいくつも登場するので、是非、舞台で確かめてほしい(Mamiya RB67など、カメラマニアも必見!)。
そして、真飛聖の圧巻の芝居も見どころだ。終盤、真飛演じる“麗華”の感情が究極に高ぶるシーンでは、実際にこぼれ落ちるほどの涙を流し(スチール撮影しているカメラのファインダー越しでは、その涙はハッキリを見えた)、観客は、これが舞台だということを忘れるほどのリアルさに圧倒される。(下記の写真を拡大表示してみてください。頬から顎まで伝っている涙が分かりますでしょうか?
なお、“純九郎”をはじめ、各登場人物の名前は、カメラメーカーや、レンズメーカーなどの名前をもじっている(一部、以下の会見レポートでも触れている)。
■公開舞台稽古フォトギャラリー
[写真:三平准太郎]
会見ノーカットレポート
‐初めて眞鍋さんの演出を受けていかがでしたか?
稲垣吾郎(山田純九郎/やまだずみくろう 役)
(両隣を見て)いかがでしたでしょうか?
相島一之(山田建武郎/やまだたむろう 役)
(稲垣を見て)いかがでしたでしょうか!?
真飛聖(菱森麗華/ひしもりれいか 役)
(稲垣を見て)いかがでしたでしょうか!?
稲垣吾郎
えっと、じゃぁ、僕から。
俳優さんに寄り添ってくれて、優しい方です。
相島一之
厳しくないよね。
稲垣吾郎
怒った顔を見たことないです。
ほんとに穏やかな現場で、みんなでディスカッションしながら進めました。
あと、ワークショップみたいなものを開いたんですが、僕は初めての経験でした。皆さんは演劇もよくされるから、ご経験あるでしょうけど。
相島一之
(ワークショップは)よくやります。
(キャスト同士が)コミュニケーションして、距離を近くするために、エチュード(即興芝居)なんかをして。吾郎さんはどうでした?
稲垣吾郎
ちょっと恥ずかしかった(笑)
お客さんもいないのに、誰に向けてやってるのかなって。でもそれは仲間に向けてということで。
なんか、大縄跳びのパントマイムをしたり。
相島一之
パントマイムで大縄跳びしたんですよ。
ほんとだったら、縄があるんですけれど、無いけどやっているかのように。
稲垣吾郎
あと、連想ゲームとか。そういう稽古場でワークショップというのは、僕はあんまり経験が無かったので、とても楽しかったです。
真飛さんはどうでしたか?
真飛聖
眞鍋さんって、私たちが演じたことに対して、否定をせずに、必ず肯定してくださり、そのプラスアルファで「更にこういう提案なんですけど」って、お考えを言ってくださるので、自分の中で、間違った方向には行ってないという自信に繋がるんです。あとは、自分で気づいていなかったところなど、道しるべをくださるので、すごくやりやすかったです。
みんなを大きな船に乗せて、眞鍋さんが揺らしてくださっていたような感覚を覚えました。
相島一之
で、気がついたら、世界がぐーっと立ち上がっているんだよね。だから、これは“眞鍋マジック”なんですよ。
稲垣吾郎
相島さんも、(眞鍋さんの演出は)初めて?
相島一之
初めて。もちろん、眞鍋さんのお芝居は何本も拝見していて、すごく面白いし、繊細に作られているんで、どうやって作られているのかなって思ったら、今作のようにほとんどが「あ、いいですね!」って言われているうちに、出来上がってくるから、ちょっとビックリなんだよね。
稲垣吾郎
確かに!!事前にはめられるっていう。
相島一之
(笑)
稲垣吾郎
無理にパズルのピースをはめていくという感じがなくて、自然とそうなっていく。シームレスというか、心地良かったです。
眞鍋卓嗣(演出)
ほんとですか!良かったです。
稲垣吾郎
あとね、これ言っていいのかな?僕と眞鍋さんは地元が同じなんです。
僕は、板橋区高島平出身なんですが、眞鍋さんも幼少期に居られたそうで。
眞鍋卓嗣
はい。小学三年生くらいまでいました。
稲垣吾郎
学年も1つしか違わない、同世代でもあるんです。だから、40年くらい前に僕たちは同じ場所で生活していたんですよ。高島平団地という巨大なマンモス団地なんですけれど。
相島一之
子どもの頃、すれ違ってたかもしれないよね。
稲垣吾郎
そう、小学校は違うんですけれど。学区が第七まであってすごく多かったから。
でもそういう縁が嬉しいなって。親近感を感じられて。
今日はこの話をしたかったんです(笑)
‐眞鍋さんとしては、演出はどうでしたか?
眞鍋卓嗣
とてもやりやすかったです。一緒になっていろいろ考えてくださるし、皆さんの人柄も良くて、チームワークもバッチリなんです。
普段、僕がやっている小さな団体での演劇と同じように、みなさんは作品に向かって、さまざまな提案をしてくれる時間があって、創作現場としてはとてもいいものでした。ほんとに皆さんの力だと思っていて、とてもやりやすかったです。
‐稲垣さんは写真館の二代目という役どころですが、プライベートでもカメラが大好きだそうで、そして脚本を書かれた横山拓也さんもカメラに深いこだわりがあって、お芝居の中にも、数々の貴重なカメラが登場しています。皆さん、カメラにまつわる思い出などありますか?
相島一之
吾郎さんもカメラの専門知識がすごいんですよ。(手にしているカメラを稲垣に向けて)このカメラはいつ頃のものなんですか?
稲垣吾郎
1950年代か1960年代に発売された、ライカ(Leica)のM3です。(今日、取材に来ている)カメラマンの方々もご存知かもしれませんが、伝説のカメラです。
相島一之
ピントの合せ方も独特なんですが、吾郎さんがレクチャーしてくれたんです。
稲垣吾郎
レンジファインダー式といって、今のオートフォーカスのカメラと違って、(フォーカス合せは)マニュアルなんです。
相島一之
(記者席に向かって)レンジファインダーだって!
稲垣吾郎
2つの像が合焦したときにピントが合うんです。
相島一之
合焦だって!
ね、こんな専門的な言葉が、吾郎さんからポロポロ出てくるんですよ!
どれだけカメラが好きなことか。
稲垣吾郎
大好きで。特にこのM3は、(カメラ好きの)みんなが大好きの名機なんです。
あと、製造年代初期のは、シャッターを切ったときのフィルム巻き上げ方式がダブルストロークなんです。
相島一之
皆さん、聞かれました?稽古場がもうこういう状況だったんです。
私は、吾郎さん演じる純九郎(ずみくろう)の父・建武郎(たむろう)役で、2人もカメラマンの役。で、こういう古いカメラが出てきたときに、どうやって使うんだろうねってみんなで話していたときに、こうやって「稲垣吾郎カメラ講座」が始まるんです。これがけっこう面白いんです。
(舞台後方を指して)この舞台は写真館の中ということで、奥には暗室もあります。
稲垣吾郎
そう、これが暗室で、現像して、その隣には引き伸ばし機もあって、ここでプリントできます。
で、実際に、僕の家にも暗室があるんですよ。
相島一之
自宅に暗室があるんですか!?
稲垣吾郎
フィルムカメラが好きすぎて、自宅に暗室を作ってしまいました。僕もいつもこういう赤色灯の光に包まれながら写真現像をして楽しんでいます。
相島一之
(笑)
この物語の主人公の“純九郎(ずみくろう)”そのものですよね!?
稲垣吾郎
そうなんですよね。
(脚本の)横山さんもカメラが大好きで、横山さんのカメラをお借りしたりしてます。
眞鍋さんも、カメラに興味を持たれてましたよね。
眞鍋卓嗣
いやぁ、ライカを見たときにカッコよくて欲しくなりました。
稲垣吾郎
ほんとにカッコいい。ずっしりとして。モノとしての所有感を満たしてくれます。
で、このカメラには「ズミクロン(Summicron/絞り値開放f値が2.0のライカのレンズ)」が付いているんです。
相島一之
ズミクロンの名前から・・・
稲垣&相島
“純九郎(ずみくろう)”!
稲垣吾郎
ダジャレ!(笑)
相島一之
(記者席のスチールカメラマンに向かって)皆さん、「ズミクロン」なんて、ご存知でしたか?
(うなずくカメラマンたち)
相島一之
あっ、ご存知でしたか。すみません!!私、ぜんぜん知らなくて。
稲垣吾郎
(記者席の)カメラマンの皆さんのカメラは、オートフォーカスですが?(瞳AFなどの)AI搭載の。
相島一之
(一人だけ、スマホカメラを向けている記者に向かって)ケータイみたいなので撮っている方もいらっしゃるようで。
稲垣吾郎
あの、ちゃんとしたカメラで撮ってもらっていいですか?(笑)
(会場笑)
稲垣吾郎
でも、今はスマホカメラでも撮れるしね。そういう中、敢えてフィルムカメラの所作というか、わざわざ現像して、1枚の写真にするという良さもあるので。僕はプライベートでそれを楽しんでいます。
今の世の中、写真を撮ったことが無い人はほとんどいないと思うけど、この舞台『多重露光』をご覧になって、カメラで撮る、フィルムカメラで撮るという楽しさに興味を持っていただければと思っています。
‐真飛さんが演じられている役の“麗華/れいか”も、ライカから来ていますからね。
稲垣吾郎
えっ?そうだったの?
真飛聖
今知ったの?ウソでしょ!ウソでしょ!(記者の皆さん)これ、記事の見出しです!
稲垣吾郎
レイカからのライカか。
真飛聖
ライカからのレイカ!
稲垣吾郎
相島さん演じる“建武郎(たむろう)”は、タムロン(=日本のカメラレンズメーカー名)から来ていますよね。
相島一之
そう、タムロン(TAMRON)です(※)。
(※本記事の写真のうち、ソロカット撮影はNikon Z9に、レンズはタムロン製を装着)
稲垣吾郎
キヤノン(木矢野理子/演:橋爪未萠里)もニコン(純九郎の幼馴染・二胡浩之/演:竹井亮介)も出てきます。
(真飛に向かって)でも、ちょっとはカメラに興味を持ってきたでしょ?お家で可愛いワンちゃんが待ってるし。
真飛聖
うん・・・。
私、(カメラで)写真を撮ったことがあるんですけれど、吾郎さんがアングルとかを決めてくださるんですよ。私が下手すぎて。「もうちょっとこうした方がいいよ」って。
なので、まだ私は勉強中です。
稲垣吾郎
でも、ちょっと興味が湧いてきた?
真飛聖
やっぱりちゃんとしたカメラがほしいです!
稲垣吾郎
持ってみますか?(と、ライカM3を真飛に手渡す)
真飛聖
うわっ!重い!!
稲垣吾郎
レンズいれたら1kgあるからね。
このカメラ、当時は家宝というか、下手したら家を一軒建てられるぐらいの価値があったから。1960年代でも1台30万円以上したし。
相島一之
このカメラは、この舞台のポスタービジュアルで吾郎さんが持っているのと同じですね。
稲垣吾郎
あれっ?(M3を操作しながら)これ、(フィルム巻き上げが)ダブルストロークだ!さっき、1950年代か60年代かって言ったけど、シングルストロークだったら60年代なんだけど、これはダブルストロークなんだね。
相島一之
そう、(稽古中も)2回(ダブルストローク)やってます。
稲垣吾郎
そうなの?ぜんぜん気づかなかった!!
お上手ですね!
相島一之
いやぁ、そんな(照)
皆さん、見てください、吾郎さんのこの生き生きとした顔!!
こんなにカメラの話で盛り上がる!
真飛聖
ほんとに!饒舌になるから。
稲垣吾郎
いやいや(笑)、ありがとうございます!
‐では最後に吾郎さんからひとことメッセージをお願いします。
稲垣吾郎
皆さん、まだどんな物語なのか、わからないと思いますが、この『多重露光』という作品は、僕が思うには、誰もが抱えている「過去への想い」に優しく寄り添ってくれる物語だと思います。観終わったあとに、改めて家族の大切さとか、そして何より自分を愛することの大切さを感じてもらえる作品になっています。
出演者みんなで、心を込めてお届けしますので、是非、劇場でご覧になってください!
■会見フォトギャラリー
[写真・記事:三平准太郎]
【参考】
カメラをテーマのひとつにした演劇ということもあり、本記事の撮影で使用したカメラ、レンズ、ストロボ情報です。
カメラ:Nikon Z9 × 2台
レンズ:NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、TAMRON SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2、TAMRON SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2
ストロボ(フォトセッションのみ使用):Nikon SB-5000
こういった舞台挨拶や会見取材では、レンズはズームレンズを使います。一方、インタビューなんかでの個別撮影では、原則、単焦点レンズ。また、照明機材も、この舞台「多重露光」のステージ上手(かみて)に配置されているような、大掛かりなものにすることが多いです。
モボ・モガプロデュース『多重露光』(読み:たじゅうろこう)
「生涯かけて撮りたいものを見つけなさい」
親からの漠然とした言いつけに、僕は呪われている。
町の写真館を細々と営むカメラマンに、本当に撮りたい写真なんかあるわけない。
鬱々とした日々の中、突如現れたのは、あの家族写真に写る“お嬢様”だった。
山田純九郎(稲垣吾郎)は、写真館の2代目店主。戦場カメラマンだった父(相島一之)には会ったことがなく、町の写真館の店主として人気のあった母(石橋けい)からは理不尽な期待を背負わされた子供時代。
写真館で育ち、写真に囲まれた人生は、常に写真に苦しめられてきた人生でもあった。
毎年、愛に溢れた家族写真を撮る裕福な同級生の一家があった。45歳になった純九郎の元に、その憧れの一家の“お嬢様”であった麗華(真飛聖)が訪ねてきた。純九郎は、かつて強く求めた家族の愛情に触れられそうな予感をもつ。親の威光、無関心、理不尽な期待、そして、隠し持った家族写真…それらが多重露光の写真のように純九郎の頭の中に常にあって、幸せという未来の焦点がなかなか合わない。幼馴染(竹井亮介)や、取引先の中学校教員(橋爪未萠里)が何かと気にかけてくれるが、純九郎に欠落した愛情が埋まることはなかった。純九郎は、自分の求める愛を、人生の中に収めることができるのだろうか。
出演:稲垣吾郎/真飛聖 杉田雷麟・小澤竜心(ダブルキャスト) 竹井亮介 橋爪未萠里 /石橋けい 相島一之
脚本:横山拓也
演出:眞鍋卓嗣
企画・製作:(株)モボ・モガ
公演日程:2023年10月6日(金)~10月22日(日)
会場:日本青年館ホール
入場料金:S席 ¥12,500/A席 ¥7,500(税込・全席指定)
*未就学児童入場不可 *営利目的の転売禁止
※チケット情報に関しての詳細は、公式ホームページにて(8/7(月)10時公開予定)
公式ホームページ:https://tajuroko.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/tajuroko
ティザー映像
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。