• HOME
  • News
  • 映画
  • 「俳優の人もそうでない人も共感できるところがある作品」映画『死体の人』公開記念舞台挨拶
死体の人

「俳優の人もそうでない人も共感できるところがある作品」映画『死体の人』公開記念舞台挨拶

2023年3月18日(金)、渋谷シネクイントにて、映画『死体の人』公開記念舞台挨拶が行われ、奥野瑛太、唐田えりか、楽駆、草苅勲監督が登壇。昨日公開初日を迎えたことやこの作品の込めた想いを、撮影のことを振り返りつつそれぞれ語った。

演じることにかける想いは人一倍強いものの、<死体役>ばかりの売れない役者の不器用な生き方を通して理想と現実の折り合いをつけることの難しさを、そして<生きることと死ぬこと>という普遍的なテーマを草苅監督自身の俳優経験を活かして絶妙なバランスのユーモアとペーソスで描いたハートフルな人間ドラマとなっている。

舞台挨拶レポート

死体の人

楽駆/唐田えりか/奥野瑛太/草苅勲監督

■初めて劇場のスクリーンで観て感慨深い想い

草苅勲監督
昨日公開されて、たくさんのお客さんが来てくれまして、自分の映画がこのような劇場で上映していただけるなんて感無量です。感無量って今まで感じたことはなかったんですけど、これこそが感無量かなと思っています。ありがとうございます。

死体の人

草苅勲監督

-昨日から公開されまして、草刈監督はここでトークされましたが、奥野さんも劇場でご覧になっていたんですよね?

奥野瑛太(吉田広志 [死体の人] 役)
僕はエンドロールに歌が入っているバージョンをまだ観てなかったので、劇場に観ることにしたら監督がトークをしていて。

死体の人

奥野瑛太

草苅勲監督
僕ひとりで心細かったので、(奥野さんは)ヤバイを思ってくれたんですよね。すぐに(ステージに)来てくれました。
『RRR アールアールアール』の方を観たかったんでしょうけど、間違ったスクリーンに入ったのかなって(笑)

-奥野さん、劇場でご覧になった感想は?

奥野瑛太
この作品は草苅監督を自分が演じているということもあって、客観的には観れていないんですが、でも、初めてスクリーンで観て、そして公開初日ということで、やっと自分の手から離れてお客さんに届ける時が来たんだなって改めて思い感慨深くなりました。

■監督の目の前で監督を演じることの難しさ

-奥野さんが、「草苅監督と“広志”は被るところがある」とインタビューでもおっしゃってますが、主人公が死体役ばかりという設定は、15年以上前から監督が構想されていたんですよね?

草苅勲監督
僕が役者をやっていたという経験があって、そこでもがいていたことを描こうと思ったんですけど、それだけだと寂しいなって思って、その中に生きることだったり死ぬことだったりをテーマとして、売れない役者じゃなくて[死体役]ばっかりになっちゃったという設定にしたら面白いかなって。
その方がテーマに近づくし、“生きること”というのが入ってくるとより面白くなるんじゃないかなと思って作りました。

-映画ファンならスクリーンに奥野さんが登場すると、ガッツポーズするぐらい奥野さんを待ち望んでいる強烈な個性を発揮している、その奥野さんをこの映画では全編にわたって楽しめます。この死体の役ばかりの“広志”を演じられてみていかがでしたか?

奥野瑛太
監督に会う前に初めて台本を読んだんですが、まだ会ったことのない草苅さんの性格とか顔がずっと頭に浮かぶような感じでした。
たぶんこの人って明るくてユーモアがあって、とても前向きな人なんだなとも同時に思いました。
なので、“吉田広志”って草苅さんだよなって思うと、草苅さんの前で僕が草苅さんを演じるのはイヤだなっていう気持ちもいっぱいで、現場でも草苅さんを見ながらどうやったら草苅さんっぽくなるかなぁってずっと考えながらやってました。

-一度監督自身にも演じてもらったことがあったんですよね?

奥野瑛太
そうです。草苅さんが持っている物事に対する優しい目線とか、温かい視点というのが、僕にはちょっと足りないなって思った瞬間があって、なので、「ちょっと草苅さん、やってもらえます?」ってお願いしました。そうして、現場で草苅さんと唐田さんがお芝居しているのを見ていました(笑)
最初監督は「僕は下手だからイヤだよ」って言いつつ、けっきょくやってくれたんですが、そうすると僕がやっていたような表面的なことだけじゃなくて、内側をちゃんと見て、そこを汲み取って役につなげていくというところはすごいなって思いました。

死体の人

奥野瑛太

■唐田「私は頑固なところがある」

-唐田さんは加奈という役にはどのようにアプローチされましたか?

唐田えりか(デリヘル嬢・加奈 役)
自分と似たところを大きくしていこうという観点で、奥野さんと監督と一緒になってキャラクターを作っていってくださった感じです。
現場でたくさんリハーサルをして試行錯誤しながら。

死体の人

唐田えりか

-加奈との共通点とはたとえば?

唐田えりか
私はけっこう頑固なところがあったりとか、一度決めたらそれをやり遂げたいというところがあるので、加奈が妊娠してからの強さがでていくところを意識して演じました。

死体の人

唐田えりか

-楽駆さんが演じた翔太はかなりスレた役でしたがどのように演じましたか?

楽駆(翔太 役)
いわゆる“クズ”な翔太ということで、翔太自身のことというよりは、加奈が強さを身につけるために自分はどうすればいいかと考えたら、とことん追い込めたらなっていうことを思いました。

死体の人

楽駆

-唐田さんも楽駆さんも、ルックで言うと髪の毛が印象的でキャラクターの生き様が表れていましたが、そういった外側はどうやって作られましたか?

唐田えりか
衣裳合わせのときに監督と相談しながらピンクに決めました。

楽駆
僕も監督と話して決めました。

草苅勲監督
加奈と翔太のバランスを考えて決めました。

死体の人

楽駆/唐田えりか

■キャラクターの部屋に寝泊まりして役づくり

-唐田さんと奥野さんは役づくりの一貫であの部屋に泊まられたとか?

奥野瑛太
そうです。役づくりというカッコいいものではなくて、家で台本読めないし、喫茶店やカラオケ店だとお金がかかるので(笑)
美術の松田さんが素晴らしいセットを作ってくださったことと、僕が小劇場をやっていたときに住んでいた部屋の雰囲気にも似ていたのもあります。
本当のアパートの内装をあのようにしてくださているんですが、住めるよって言ってくださったので、大声出しても怒られないし、お金の節約にもなるので、泊まらさせていただきました。住心地もとても良かったです。

死体の人

奥野瑛太

唐田えりか
私は役の部屋に泊まるということは初めてだったんですけど、先に奥野さんが泊まられているということをスタッフさんから聞いて、そういう役づくりをしたことはないなって思って、やってみたいと思ったんです。学ばせていただきました。

奥野瑛太
あ、(役づくりじゃないので)それは勘違いです(笑)

唐田えりか
(笑)

死体の人

唐田えりか/奥野瑛太

-唐田さんは住心地はいかがでしたか?

唐田えりか
実際にこういう部屋で過ごしていたら加奈が不安な気持ちにもなるだろうなと実感しながら生活していました。

死体の人

唐田えりか

■思っていた以上に3人は良い芝居をしてくれた

-奥野さんと楽駆さんは直接の共演シーンは限られていますが、壮絶なシーンでもありました。あのテンションはどのように作られていったのでしょうか?

奥野瑛太
僕は、すごく高ぶったテンションを抑えながら一生懸命死んでました。

楽駆
ずっと寝ている奥野さんがいらっしゃいました。刺すナイフは、(刃先が)出たり戻ったりするんですけど、戻って出たときの‘カシャッ’っていう音がけっこう大きくて、それは演じながら笑ってしまうところはありました(笑)

-このクライマックスはこの作品を構想されていたときからあったのでしょうか?

草苅勲監督
そうですね。役者の皆さんのベクトルが揃っていて、その中で加奈だけがこの茶番劇に少しアタフタするという、そのバランスだけを僕は見ながら撮りました。思っていた以上に3人は良い芝居をしてくれました。

死体の人

草苅勲監督

■役者の両親あるある

-きたろうさんと烏丸せつこさんの両親が素晴らしかったのですが、息子に出演シーンをVHSに撮りためてダイジェストになっているという。みなさんは実際にそういうご経験はありますか?

奥野瑛太
僕はこの俳優業を始めたいということで上京したときに、親と喧嘩するぐらい反対されたんです。なのでいまだに許してくれていないのかなって思って実家に帰ったら、資料館みたいになっていて、僕自身が出演を覚えていないぐらいのものまでぜんぶ逐一残してあるんです。

-奥野さんはご自身でそれを見ることはあるんですか?

奥野瑛太
いや、将来両親が亡くなったときに俺がこれを処理するのかってことばっかりを考えちゃって、そっちの方が気になっています(笑)

-唐田さん、楽駆さんはありますか?

唐田えりか
私の家族も私が載った雑誌とかを切り抜いてファイルにしてくれていたり、テレビに出ている画面を写真に撮っていたりしてます(笑)

楽駆
奥野さんと被るんですけど、祖母の家に資料館ほどではないですけど、どこから見つけてきたんだという写真がたくさん貼られています。
一方、母の方は、他の役者さんのサインは飾っているんですけど、僕のサインはひとつもないです(笑)

■オマージュを見つけてみてください

-(広志の出演作をまとめた)ダイジェストの中にいろんな作品が出てきますけど、いろんな(実際の)作品のオマージュがあるように感じました。爆笑するところもあって、特に柿ピーとか。

草苅勲監督
柿ピーのくだりは伝わりづらいかもですね。一応あれば、ブラット・ピットの『セブン』でスパゲッティに顔を埋めている巨漢の大食をオマージュしてるんですが、だいぶ違うものになっちゃってるので、分かりづらくなっています(笑)

-奥野さん、(柿ピーが)たくさん付いてましたけど、あんなに付くものなんでしょうか?

奥野瑛太
水をいい感じに付けると、柿ピーがくっつくものなんですね。

死体の人

奥野瑛太

-7:3は意識されたんですか?顔面上で。

奥野瑛太
あれは9:1くらいでしたよ。

草苅勲監督
ピーナッツがくっつかないんですよ。だから敢えてくっつく柿の種を選んでやってました。実は口の中も柿の種でパンパンなんです(笑)

-その他にもオマージュがいくつかありますので、気づいた方はSNSなどに書いていただきたいですよね。

■誰もが一度は考えたことがある死生観がずっと通底してある作品

-最後にこの映画がどんな人に届いてほしいと思っていらっしゃるかメッセージをお願いします。

唐田えりか
私も奥野さんと同じような想いがあるんですけど、頑張っている方の背中をそっと推してくれる映画だと思うので、誰かの救いになる映画になったらいいなって思います。

死体の人

楽駆
僕も同じことを感じています。明日も生きていけると思える映画だと思うので、たくさんの方に観ていただきたいですし、世の中の腑に落ちないことを考えている方にも観ていただきたいです。

死体の人

草苅勲監督
昨日、70歳ぐらいの僕の先輩が観に来てくれて、「きたろうさんが帰り際に“じゃ!”っていうシーンがすごく感動した」って言ってくれまして、人によっては奥野さんが手紙を読んでいるところに刺さる人もいれば、加奈ちゃんが叫んでいるところでグッとくる人もいる。
観る人によって心に届くポイントが違うんじゃないかなと思っていまして、いろんな人に観てもらえたらなと思っています。

奥野瑛太
誰もが一度は考えたことがある死生観がずっと通底してある作品です。なので、俳優業をやられていない方でも共感しながら観ていただけると思います。
そして、昔、小劇場で一緒にやっていた人とか、今も小劇場で一生懸命楽しんでやっている方が観たらどう思われるのかなってことにも興味があります。意見を聞いてみたいです。
昨日、初日を迎えまして、やっとお客様の目に届く形となりました。これから映画が一人歩きして育っていくんだなってことを実感しています。
ぜひ皆さんもこの作品が気に入っていただけましたら、作品に寄り添って一緒に、育てていっていただけるとほんとに嬉しいです。軽い気持ちで『死体の人』を広めてください。ありがとうございました!

死体の人

死体の人

楽駆/唐田えりか/奥野瑛太/草苅勲監督

■フォトギャラリー

[記事・写真:三平准太郎]

■関連動画

YouTube player

映画『死体の人』

INTRODUCTION
次代を担う才能の発掘と育成を目的として2016年にスタートした、“まだ存 在しない映画の予告編”で審査するユニークな映像コンテスト「未完成映画予告編大賞MI-CAN」。
本作『死体の人』(草苅勲監督)は、その派生プロジェクトとして、日本を代表する映画会社のプロデューサーが過去の入選作を審査した敗者復活戦「MI-CAN3.5復活祭」から見事誕生した作品だ。

STORY
生きることが下手です。死んだふりは上手です。
〈死体の人〉による、一世一代の大芝居
役者を志していたものの、気がつくと “死体役”ばかりを演じるようになっていた吉田広志(奥野瑛太)。開いたスケジ ュール帳はさまざまな方法で“死ぬ予定”でいっぱいだ。「厳密にリアリティを追求するなら……」と演じることへの強いこだわりを持つ彼だが、効率を重視する撮影現場では、あくまで物言わぬ“死体”であることを求められる。劇団を主宰していた頃の後輩俳優は要領よくテレビで活躍を果たしているが、彼にはそれができない。死体役には死体役のリアルが彼の中にはあるのだ。ひとりのときでも発泡酒を口にすれば“毒死のシーン”を、浴槽に浸かれば“溺死のシーン”を演じ、常に死に方を探求する日々を送っていた。

そんな〈死体の人〉が、人生を変えられるような運命的な出会いを果たす。ある日、自宅に招いたデリヘル嬢・加奈(唐田えりか)との情事の後、彼は「ベタな質問で恐縮なんだけど……何でいまの仕事をしてるの?」と彼女に問いかける。それはそのまま〈死体の人〉にも跳ね返ってくる質問だった。「けっこう喜んでもらえるし、こんなことくらいでしか人を喜ばせられないから」と答える加奈に対して、「俺なんか誰も喜ばせられないよ……」と自嘲気味に〈死体の人〉は続ける。明るく振る舞う加奈だが、彼女もまた自身の人生に問題を抱えていた。

しかし、ある日唐突に〈死体の人〉の元に、母(烏丸せつこ)が入院するという報せが父(きたろう)から入る。気丈に振る舞う母だが、どうにも病状は良くないらしい。さらにそこに、新たな問題が発生。偶然見つけた妊娠検査薬を何気なく自分で試してみたところ、何と陽性反応が出たのだ。これはいったいどういうことなのだろうか……?

消えゆく命、そして、新たに生まれてくるかもしれない命──。〈死体の人〉こと役者・吉田広志は、一世一代の大芝居に打って出る。

出演:奥野瑛太 唐田えりか
楽駆 田村健太郎 岩瀬亮 /烏丸せつこ きたろう

監督:草苅勲
脚本:草苅勲 渋谷悠
主題歌:「僕らはきっとそれだけでいい」THE イナズマ戦隊(日本クラウン株式会社)
制作協力:CLEO・Y プロダクション
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
配給:ラビットハウス
Ⓒ2022 オフィスクレッシェンド
公式サイト:https://shitainohito.com/

2023年3月17日(金)シネクイント他 全国順次公開

死体の人

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA