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ウーマン・イン・モーション

俳優・松岡茉優×映画監督・是枝裕和、第一線で活躍するふたりが映画界が直面する課題を語る

2022年10月31日、TOHO シネマズ 六本木ヒルズにて、東京国際映画祭の公式プログラムとして2019年に次ぎ2回目の「ウーマン・イン・モーション」トークイベントが開催され、俳優・松岡茉優と映画監督・是枝裕和が登壇。第一線で活躍するふたりが映画界が直面する課題を語った。

ケリング(グローバル・ラグジュアリー・グループで傘下ブランドにグッチ、サンローラン等)は、2015年よりカンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーを務め、「ウーマン・イン・モーション」は同映画祭の公式プログラムとして欠かせない存在となっている。以降、「ウーマン・イン・モーション」は映画だけでなく、写真、アート、デザイン、ダンス、音楽などにも取り組みの幅を広げている。

「ウーマン・イン・モーション」とは、映画界の表舞台や舞台裏で映画界に貢献する女性に光を当て、男女平等の実現に向けた取り組みの推進活動。また、「ウーマン・イン・モーション」トークは、女性および男性ゲストが、映画業界や芸術全般における女性の貢献を強調する機会となっている。

トークイベントレポート

今年は2018年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールをはじめ、国内外の数々の賞を受賞している映画監督・是枝裕和と、是枝監督の『万引き家族』などに出演し、その演技力が高く評価されている女優・松岡茉優がゲストに登場。来年1月12日配信予定のNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』でも一緒に仕事をした二人。国内外を問わず、活躍する映画人として、大きな拍手を浴びながら登壇した。

ウーマン・イン・モーション

立田敦子(映画評論家)/是枝裕和監督/松岡茉優

■フランス、韓国、日本の映画制作労働環境の相違点

2018年にパルム・ドールを受賞後、フランス、韓国と2作品連続で海外の制作現場を経験した是枝監督は、日本との大きな相違点として、「フランスは原則8時間労働、韓国は週52時間という条件が決まっており、2国とも働き方の環境が整えられていてそこが大きな違い」と挙げ、「自分の撮影現場の環境をどのように変えていくか、というのが課題になった一年だった」と語った。

ウーマン・イン・モーション

是枝裕和監督

俳優として日本映画界で活動している松岡茉優が「日本では今までも2週間や10日ほどで映画を撮影することもあり、短期間で集中できる環境があることは必ずしも悪いことではないのでは?」と疑問を投げると、「文化祭を成し遂げたときのような達成感や仕事以上のつながりが生まれることもある」と認めつつ、「その現場に入ることで、何かを犠牲にしていることもあり、そのことは既に看過できない状況。韓国では適度に休みながら撮影したが、それでも一体感は生まれた。次の世代が働く場所として『そんな大変な職場で働くなんて』と言われない環境を作る責任がある年齢になったと思う」と監督自身の経験をもとに意見を述べた。

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是枝裕和監督/松岡茉優

それに対し松岡もすかさず「年齢を問わず私にも責任を背負わせてください」とコメント。「若い世代がこのような発言をすると、生意気だとか硬いとか言われてしまう。私たちのような同世代の人が発言しても、びっくりされないような世の中になってほしい。まだ意見を言わないほうがベターだと思われる」と語った。

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松岡茉優

■日本映画界におけるパワハラ、セクハラの問題

今の日本映画界におけるパワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどの問題に関して意見を求められると、監督は「声をあげやすいようにする、声をあげた人が不利益を被らないようにするサポートがもっと必要」と主張し、「自分の現場でもリスペクトトレーニングを実施したり、(日本には二人しかいない)インティマシー・コーディネーターに入ってもらい、脚本のなかで感情に負荷のかかるシーンをチェックしてもらう作業からお願いした。どんな目が入ることで、どう現場に作用するか、良い現場になるように検証している」と語った。

ウーマン・イン・モーション

是枝裕和監督

松岡も出演する『万引き家族』の脚本についても当時の撮影において何か改善点があったのかなど、インティマシー・コーディネーターに相談したと明かし、「話を聞くだけでも、女優さんが負荷を感じる点など自分では気づけないことを提案してもらえるので、相談がしやすい」とその役職の重要性を示した。加えて松岡も「心を使う仕事だから気持ちに浮き沈みがあるのは当たり前だと思っていたが、その当たり前も変わっていけるのならばとても喜ばしいこと」と俳優という立場からインティマシー・コーディネーターの今後の活躍に希望を示した。

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松岡茉優

■これからの日本映画界

これからの日本映画界について聞かれると、是枝監督は「働き方改革は進んでいくが、進んでいくが故に作られなくなる映画が出てくる」と危機感を述べ、「このままの状態では、日本映画界は10年続かないだろうと危機感を持った監督が集まり、「action4cinema」を立ち上げた。若手の人材を集めるためにどうするべきか、未来図、危機感を共有して、まずは意識を高めていくという活動をこれからも続けます」と今後の展望を語った。

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是枝裕和監督

松岡は「特に男性が多い役職の女性スタッフは、子どもを持ちたい時など育休制度が備わっておらず、仕事か家庭のどちらかしか選べない人も多い。男女問わず休めて、子供を預けたり育てながらできる現場づくりをしたいと思います」と述べた。

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松岡茉優

また、これからの映画界で女性がより活躍するためには「話し合いができる、お互いに耳を傾けられる映画界であってほしい」とコメント。未来を担う俳優として臆することなく自身の意見を主張した松岡に対し、是枝監督は「若い役者が自分の考えを違和感も含めて話せるようになってきたのは、とても素晴らしいこと。そのことを応援していただきたいし、そのためにはぜひ映画を観に来てほしい。」と変わりつつある日本映画界を応援してもらうべく、観客に語りかけた。

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実際に映画界の第一線で活躍されているふたりの生の声は、映画界の穏やかながらも力強い未来を感じさせ、多くの女性、そして映画人を勇気づける貴重なトークイベントとなり、大盛況のうちに幕を閉じた。

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「ウーマン・イン・モーション」について
ケリングは、カンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーとして、2015年5月に「ウーマン・イン・モーション」を発足させ、映画界の表舞台や舞台裏で映画界に貢献する女性に光を当て、男女平等の実現に向けた取り組みを推進するためのプラットフォームを作りました。このプログラムのトークを通じて、スクリーンの中や映画産業全般における、女性の表現について著名人らが意見を交わす機会を提供しています。また、アワードは、刺激を与える人物や若く才能ある女性に授与されます。「ウーマン・イン・モーション」は発足以来、世界中に展開され、あらゆる文化や芸術分野にまで拡大しています。カンヌでの発足以来、「ウーマン・イン・モーション」は他の芸術の分野でも男女平等の実現を推進すべく、特に写真においてはアルル国際写真フェスティバルとパートナーシップを組んでいます。オフィシャルハッシュタグ#: #WomenInMotion #Kering

ケリングについて
ケリングは、ファッション、レザーグッズ、ジュエリー製品を扱うメゾン、およびケリング アイウエアを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループです。傘下のブランドは、グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ブリオーニ、ブシュロン、ポメラート、ドド、キーリン。戦略の中心にクリエイティビティ(創造性)を掲げるケリングは、サステナブルで責任のある方法により未来のラグジュアリーを築きながら、各ブランドがそれぞれの創造性を自由に表現することを可能にしています。このような信念が「イマジネーションをその先へ」(“Empowering Imagination”)というケリングのシグネチャーに込められています。

■フォトギャラリー

 

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