【インタビュー&撮り下ろしフォト】海外の映画祭に私も行くしかない!注目の俳優・上原実矩&佐野弘樹
23歳のAD(アシスタントディレクター)の葛藤を描く映画『この街と私』(3/4公開)で主演を務めた上原実矩とその恋人役・佐野弘樹。俳優として注目を集める2人に、本作の見どころと共に、自身の俳優としての想いを聞いた。
本作は、バラエティ番組を作るために制作会社に入社したのに、深夜に街の良さを紹介する番組「この街と私」を担当している23歳のAD(美希/演・上原実矩)の葛藤を描く成長物語。監督・脚本・編集を務めた永井和男の実話を元にしている。
上原実矩(うえはら みく)は、第22回TAMA NEW WAVEコンペティションでベスト女優賞を受賞、佐野弘樹(さの ひろき)は、本作が準グランプリを受賞した第5回賢島映画祭で助演男優賞を受賞している。
上原実矩×佐野弘樹 インタビュー&撮り下ろしフォト
■監督自身の経験をベースにした物語
-メインキャストはすべてオーディションだと伺ってますが、オーディションを受けられたきっかけは?
上原実矩(うえはら みく/主人公・村田美希 役)
監督が私が出演している他の作品を観てくださっていて、オーディションのお誘いを受けました。
佐野弘樹(さの ひろき/美希の彼氏・北島翔也 役)
僕は、助監督の磯部鉄平さんの監督作品に出演している時に紹介してもらいました。
-お二人のそれぞれのキャラクターの紹介と、役作りとして取り組んだことを教えてください。
上原実矩
美希は、憧れの世界に入ってみたものの、自分が思っているようにはうまくいかなくて、憧れと現実のギャップにモヤモヤしている子。
でも、諦めているわけではなく、自分のやりたいことに強い意志はある子です。
ADをやっている子ですが、永井監督ご自身の経験に基づいた脚本になっているので、役作りというよりは、ADとは?というところから監督とお話しながら進めました。
佐野弘樹
翔也は「美希のヒモです」というところからスタートしました(笑)
美希がなんでこんなヒモ男と一緒にいてくれるのかという設定は明確にはなってませんが、彼女からさんざん文句を言われつつも、翔也は彼女に(翔也にしかできない)アドバイスをしたり、それが美希にとっての心の拠り所になっている側面もあります。
ですので、演じる上で意識したのは、どれだけ美希のことを想っていられるかという点です。あとは、衣裳さんとヘアメイクさんが「ヒモ」っぽくしてくれたので。髪の毛がグシャグシャだったりスウェットを着ていたり(笑)
-劇中、翔也が読んでいるコミック「インベスターZ」にはなにか意味はありますか?
佐野弘樹
このマンガは投資をテーマにした作品で、その中で“損切り”というワードが出てくるのですが、それが2人の会話でのセリフにも繋がっています。
-なるほど。一方、美希はなんでそんなヒモのような男と一緒にいるのでしょうか?
上原実矩
改めて聞かれるとなんででしょうね。毎日疲れて帰宅しているのもあって、いろいろ文句を翔也に言っちゃうんですけど、いてくれないと寂しいのかもしれないし、忙しすぎて別れるということまで考えられていないのかもしれません。
■映画制作の現場は・・・
-上原さんはAD役を演じてみて、ADという仕事について感じたことはありますか?昨今、“AD”という言葉のイメージが悪いから他の言葉に変えるという動きが業界であったりしますが。
上原実矩
呼称を変えたところでとは思いますが、ただ、どんな仕事でも始めたての頃は大変じゃないですか。そういうところはADだからっていうよりは、社会人の新人として、理想と現実のズレはあるでしょうし、下積みの側面はあると思います。それで、寝る時間は少なくなったり、何をしていても最後になることも多くて、それがストレスになったり。
この作品でも、「早く帰れよ」と言っておきながら、先に帰っちゃう上司が描かれていて、この作品をご覧になった元ADの方は「あるあるだった」という話をされていました。
-映画の制作現場の忙しさというのはいかがですか?
上原実矩
現場によりますし、監督にもよります。どの仕事も一緒かもしれませんが、誰の下についているか、どういう現場にいるのか、そして自分の経験値も関係すると思います。
-永井組の現場はいかがでしたか?
佐野弘樹
僕はほぼ寝ていただけなんで(笑)
上原さんは大変だったと思います。4日間ずっと登場シーンがありますから。
上原実矩
そうですね。加えて今回は、ギリギリまで脚本に手直しが入ったりして、そういう点ではバタバタしたところがありました。
でも監督はもっとバタバタしていたんだと思います。この作品の助監督の磯部さんも藤村(明世)さんも、ご自身でも監督される方なので、永井監督と3人で急に監督会議が始まったのは見ていて面白かったです。
佐野弘樹
一応、そういうバタバタしたところは俳優部には伝えないような配慮はしてくれてましたが、でも伝わっちゃってましたね(笑)
-永井監督の印象はいかがですか?
上原実矩
ラフな感じの方です。
佐野弘樹
掴みどころがない飄々とした感じもあるんですけど、意外に自分の思ったことはズバズバと言う人でした。
脚本をギリギリまで書き直しているという話しがありましたが、その意図も明確に伝えてくれたので、僕はやりやすかったです。
-劇中、永井監督が助監督を務められた映画『見栄を張る』(藤村明世監督)のポスタービジュアルが貼ってある部屋が登場しますが、この理由についてなにか聞かれてますか?
上原実矩
なんででしょうね(笑)現場でも「あ、貼ってある」って思って。こういうのは永井監督が仕掛けた宝探し的なポイントのひとつなのかもしれません。監督は独特のユーモアがある方なので。
■やる気スイッチが何段階かある
-お二人それぞれについて伺います。役者のお仕事を始められたきっかけは?上原さんはプロフィールを見ると、2010年頃から活動されていますが。
上原実矩
その頃は小学生で、まだ役者という自覚がなく、たまたま撮影の現場に呼んでもらう機会があって楽しんでいた感じでした。それを続けてたら今に至ってます(笑)
当時はセリフもなく、ただ歩いているだけという役だったりもしたのですが、映画の撮影の現場が楽しいなって思って、俳優をやりたいという気持ちが少しずつ芽生えてきました。“芝居とは?”というのはいまだによくわからない点はあるんですけど、ただ楽しかったんです。学校とは別の世界を見れて。
あと、たまに「(俳優って)チヤホヤされるんでしょ?」って言われるんですけど、チヤホヤされたことは一度も無くて(笑)、ただ好きだったんだと思います。
佐野弘樹
へぇ。じゃぁ、親御さんがとかじゃなく、自発的なんだ。
上原実矩
一時期(俳優活動から)離れていた時期もあったんですが、でもやっぱり俳優をやるというスイッチが入ったのは中学2、3年の頃です。そしてまたさらにスイッチが入ったのはほんとに最近だったりします(笑)
私はそういうやる気スイッチが何段階か入るタイミングがありました(笑)
-佐野さんはいかがですか?
佐野弘樹
僕はお芝居とは関係の無い大学の経済学部に通っていて、当時はほんとに夢がありませんでした。
で、就職に一番強いゼミに入ってたんですが、あり得ないことにある日突然そのゼミを辞めさせられたんです。
ゼミの先生が心理学専門の人で、ゼミの生徒は心理学も受けなさいと指示されてたんですが、僕には必要ないと思って受講しなかったことが理由で。
先生に「僕には心理学は必要ありません」って言ったら、「じゃああなたはこのゼミには必要ありません」って。
で、就職は無理だなって思っていた4年生の時に、バイト先のカフェの先輩から「もし興味あるなら演劇をやってみないか?」って急に連絡が来たんです。それがきっかけで演劇をやり始めたら面白くて、そこからですね。2016年頃のことです。
上原実矩
経済学部と心理学はあんまり結びつかないですよね。
佐野弘樹
役者やっていると今は行動心理とか心理学に興味はあるんだけど、その時は無かったんですよ。
-なるほど。その時その時の自分の信念がハッキリされている方なんでしょうか。
佐野弘樹
そうですね。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌いっていう感じです。
■俳優として海外の映画祭に行ってみたい!
-俳優として意識されていることはありますか?
上原実矩
このコロナ禍を通してなんのためにお芝居をするのか?って見つめ直すことがありました。
以前だったら「お芝居をしたい」「お芝居ができれば」とだけ思っていたんですけど、そうではなく、映画・ドラマなど作品として出す意味、それは別に大きな意味は無くてもいいんですけど、娯楽としてちゃんと成立しててちゃんと楽しんでもらえるようなものを作っていきたいという責任感を強く持つようになりました。
-今後の俳優としての抱負はありますか?
上原実矩
最近、海外の3大映画祭に行かれた方のお話を聞く機会があって、その時の話がとても魅力的で、そしてそのお話をされる姿がキラキラしていて、この人をこんなにキラキラさせる場所ってなんなんだろう?って強く惹かれることがありました。
これはもう私も行くしかない、行けるかもしれないという希望を持つようになりました。目ざすだけならタダなので(笑)
で、韓国映画とはちょっと違うんですけど、海外の監督と一緒にやってみたいです。
佐野弘樹
僕はまだまだやれていないことがたくさんあります。映画にしろ、ドラマにしろ、舞台にしろ、CMにしろ、いろんな役があると思いますし、いろんな役者さんがいらっしゃいます。欲を言えば、それら全部を経験してみたいし、多くの方と一緒にお芝居をしたいです。海外含めて、やれることは全部やりたいです。
あとはイライラせずに生きていきたいです。
■最後にメッセージ
-最後に代表して上原さんからこの作品の見どころを含めたメッセージをお願いします。
上原実矩
なにか大きなできごとがあるわけじゃありませんが、日常、見過ごしてしまうことだったり、気づけなかったことをこの作品を通して、改めて自分の中で気づける、そういう映画になっています。そして映画を観たあとは是非葛飾に訪れて観光してもらえればなと思います。
上原実矩(Miku Uehara)プロフィール
1998年11月4日生まれ。東京都出身。
俳優・モデル。映画『君に届け』(10)で俳優デビュー。独特な個性から、『暗殺教室』(15/羽住英一郎監督)、『来る』(18/中島哲也監督)や『青葉家のテーブル』(21/松本壮史監督)など多数の映画やドラマ、大手企業広告に出演。
主演を務めた『ミューズは溺れない』(21/淺雄望監督)では、第22回TAMA NEW WAVEコンペティションでベスト女優賞を受賞。
佐野弘樹(Hiroki Sano)プロフィール
1993年12月8日生まれ。山梨県出身。
学生時代から雑誌のモデルや小劇場での演劇活動をはじめ、その後映像作品に活動の幅を拡げる。
主な出演作品に『佐々木、イン、マイマイン』(21/内山拓也監督)、『FUNNY BUNNY』(21/飯塚健監督)、『浜の朝日のうそつきどもと』(21/タナダユキ監督)、Netflix「FOLLOWERS」(20/蜷川実花監督)、五反田団の公演「新春工場見学会2020」など。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[衣裳:ORANGE GERBERA(上原実矩)/インタビュー・写真:桜小路順]
撮影データ:Nikon Z 6II/SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art (A014)/Godox AD300Pro/Godox AD100Pro ほか
映画『この街と私』
ただ、踏み出すことが怖かった。
実話を元に、自分の希望とは違う仕事で休みなく働く若手ADが一歩成長する姿を描く地域発信型映画
STORY
「あんま、ムリすんなよ」みんなそう言うけど、ムリしないと終わらない
ADをしている23歳の村田美希(上原実矩)は、お笑いの番組が作りたくて制作会社に入ったが、深夜に街の良さを紹介する関東のローカル番組『この街と私』の担当として休みなく働いている。
彼氏の翔也(佐野弘樹)と同棲している部屋には寝に帰っている状況で、彼氏の話もろくに聞けていない。
ある日、お笑いの特番に企画を出したものの、一蹴されてしまった美希だが、『この街と私』の街頭インタビューを初めて一人で任せられる。撮ってきた素材を見たディレクターに、「使えない」と言われた美希は…
出演:上原実矩
佐野弘樹 宮田佳典 伊藤慶徳
LiLiCo 川原克己(天竺鼠) ですよ。 大西ライオン 大溝清人(バッドボーイズ)
監督・脚本・編集:永井和男
制作プロデューサー:源田泰章
プロデューサー:覚野公一/佐藤達朗/内山玲奈
主題歌:Bray me「オリジナルソングのような人生を」
協力:東京都葛飾区
制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
配給:アルミード
2019年/日本/カラー/16:9/43分
©2019地域発信型映画「この街と私」製作委員会
公式サイト:http://konomachitowatashi.com/
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3月4日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
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