【俳優インタビュー】髙橋雄祐×眞嶋優、それぞれの素顔。
8月22日、池袋シネマ・ロサにて行われた映画『あらののはて』のトークイベントに登壇した髙橋雄祐、眞嶋優に、イベント前に直撃インタビュー。本作への思いと共に、俳優として、そして一個人としての思いを伺った。(撮り下ろしフォト)
しゅはまはるみや長谷川朋史監督らよって結成された自主映画制作ユニット「ルネシネマ」第2弾として企画され、2020年1月に2日間で撮影された本作。門真国際映画祭2020で最優秀作品賞含む三冠を達成するなど、いくつもの映画祭での受賞を果たし、8月21日より満を持して劇場公開となった。
8年前の教室でのできごと以来、絶頂感を得られない主人公・風子を舞木ひと美、その風子が8年間忘れられない同級生・荒野を髙橋雄祐。そして、現代パートで荒野と同棲しているマリアを眞嶋優が演じる。
髙橋雄祐×眞嶋優 インタビュー
■大勢のお客さんと上映初日を迎えることができた
-本作は2日間で撮りきったということですが、撮影時で印象に残っていることはありますか?ワンカット長回しといった撮影手法が使われていたそうですが。
髙橋雄祐
長回しのシーンが多く、お芝居も同じことを繰り返しやらなくていいので、のびのびできました。
-眞嶋さんはいかがですか?
眞嶋優
荒野とマリアの部屋の前にいる風子とのインターフォン越しの会話も、長回しでカットせずにずっとカメラがまわっていたのですが、本編でインターフォンがプチっと切れるのは、偶然のタイミングでした。その場で「あっ(切れた)」と言っているのも、私のリアルな反応です。
-撮影から今回の劇場上映までの約1年半の間に、映画祭への出品や受賞などがあったわけですが、この間にコロナウイルス流行の問題などが今なおありますが、あらためて、今回劇場上映にたどり着いた気持ちをきかせてください。
眞嶋優
撮影中はコロナなんて言葉も知らないぐらいの流行前の時期でした。それが今となっては一変した世界になって。
その間もその映画祭などでの上映がありましたが、オンラインでの開催だったり、地方にも行けなかったりしたんですけど、やっとシネマ・ロサさんで上映されることになり、劇場で皆さんに見ていただける機会ができて嬉しく思っています。
髙橋雄祐
シネマ・ロサでは、大勢のお客さんと上映初日を迎えることができました。感動しました。すごく嬉しかったです。
-お客さんの反応を生で感じるのは昨日が初めてだったんですか?
髙橋雄祐
そうです。いろいろな映画祭の審査員の方のコメントはいただいていたのですが、一般のお客様の生の声は昨日が初めてでした。
-眞嶋さんは、マリアというシュートボクシングをしている女性の役を演じられたわけですが、スポーツをされているところに共通点があったと思いますが、役を演じるにあたっての取り組みですとか、ご自身と似ているところ、似ていないところなどを聞かせてください。
眞嶋優
マリアのセリフ自体も言葉遣いも男っぽかったり、粗野な部分が多かったので、格好もそうですけど、女性らしさっていう部分は割と削ってということは意識していました。立ち方だったり、ガムを噛んでるっていうことだったり、ソファーに座っている姿勢について意識していました。
似ているところは、私は5歳ぐらいの頃から「落ち着いてるね」って言われて育ったので、マリアも常に冷静で飄々としてるところが私と似ていると思います。
8年経った後に突然現れる風子を無視したりとか、怒鳴りつけたりとか、そういうことをせずに受け入れられる心の広さというか、風子を受け入れることは、私にはできないなって思いました。
-風子以外だと、高校時代のパートと8年後の両方に登場するのは髙橋さん演じるアランだけだと思うのですが、どういったキャラクターだと捉えて演じましたか?
髙橋雄祐
事前に長谷川監督からは「不思議ちゃんだよ」っていう演出があったので、そう捉えて演じました。
-アランの高校時代と8年後を演じるにあたって変えた部分はありますか?
髙橋雄祐
基本的には、8年では変わらないだろうと思ったのですが、“不思議”ということを自分なりに掘り下げていった時に、普通の人だったら、大人になって社会を経験するにつれて、落ち着きが出てきたり大人びていくと思うんですけど、逆に、ちょっと子どもっぽい喋り方になったら面白いかなと思って、ちょっとだけ、さりげなく変化を加えています。
-作品の中で風子がノートにアラン(荒野)の名前を書くじゃないですか、。お二人は学生時代に好きな人の名前を書いたことはありますか?
髙橋雄祐
本当に恥ずかしいんですけど、中学生の頃に、ミサンガみたいなものをしていて、その内側に好きな子の名前を書きました。めっちゃ恥ずかしい(笑)
眞嶋優
私は、結婚した後の名前がどうなるかについては考えたことがあります。何がいいかなって。例えば、“早見優”とかを考えたりしていました(笑)
■眞嶋優「フリースタイルフットボールのオリジナル技を考えたい!」
-眞嶋さんは、ご自身のYouTubeチャンネルでのリフティング関連のどの動画を拝見しても素晴らしいですが、サッカーでの得意なポジションはどこでしょうか?
眞嶋優
中学時代は右サイドハーフをやってました。ドリブルで仕掛けたり、サイドから駆け上がってクロスを上げたりとか、時には中にカットインして、ロングシュートを狙うとかそういうタイプです。
-現在フリースタイルフットボールのアンバサダーに就任されてますけど、得意な技は?
眞嶋優
得意な技は、クリッパーストールです。
髙橋雄祐
なんですかそれ?
眞嶋優
どういう技だと想像しますか?
髙橋雄祐
リフティングとかの技ってことですよね。
眞嶋優
足を回したりとかする、クリッパーストールっていう技がありまして、説明するのは難しいんですけれども、見ると一瞬、足をクロスさせるんですね。右足をクロスさせて、右足のインサイドに、一瞬乗って、バネのようにピョーンと伸び上がるかのように見える技なんですよ。
髙橋雄祐
よくわからないんですけど、すごそうです。それは習得した技なんですか?
眞嶋優
はい。それは得意技なので、連続技にしたりとかをしています。
-何かオリジナルの技を、今後考えていきたいですか?
眞嶋優
オリジナル技を考えて名前をつけたいですね。
髙橋雄祐
「マシマー」みたいな。手を使っちゃう技とか、いいじゃないですか。「なに!?その技!」みたいな、手まで使っちゃうみたいな。
眞嶋優
「マシマー」はちょっとださいですね(笑)
-眞嶋さんが感じているフリースタイルフットボールの魅力は?
眞嶋優
ボール一つあれば、どこでもできるものなので、男女も場所も問わず、靴とかボールとかも決まりはないんですよ。
なので普通のスニーカーでやってる人もいるし、サッカーのシューズでやってる人もいるし、ボールの大きさとか本当に自分に合ったもので、やりやすいものでいいので、どんな方でも始めやすいなって思います。プロのフリースタイラーの方でもサッカー経験がない方もたくさんいます。
やべっちスタジアム宿題に挑む #眞嶋優 のFreestyle Football #Shorts(眞嶋優YouTubeチャンネルより)
-高髙橋さんはスポーツの経験は?
髙橋雄祐
僕は高校の時にバスケットボールをしていました。
-真眞嶋さんは、幼い頃からサッカーやられつつ、子役もされてました、そしてお芝居の道を選択されたわけですよね?
眞嶋優
そうです。もともと小学校のときは男の子たちに混じって女1人でサッカーを楽しむ・遊ぶみたいな感じでした。その頃も、芸能活動をしていて、小学校6年生の卒業式のときに「サッカーができる女優さんになりたいです」って、卒業発表したんです。
髙橋雄祐
小学生で?すごいですね。
眞嶋優
中1の時に女子サッカー部に入って、指導者からビシバシ教わるっていう環境が初めてだったんですね。それを経験したときに、サッカーは趣味としてやっていこう、それ以上にお芝居をやりたいと思うようになったんです。
お芝居では、役としていろいろな職業にもなれるから、いつかはサッカーを題材にした作品でサッカー技術の吹き替えなしで自分で全部やれるようになりたいって思いました。
-女優として今後どんな役を演じていきたいですか?
眞嶋優
どんな役でも興味があるので、いろんな役に挑戦していきたいって思っています。医療物だったり刑事物だったりそういうかっこいい女性に憧れがあるので、そういった役を演じてみたいですね。あとアクションも最近始めたので、いつかはかっこよくアクションをできる作品にも携わりたいです。
-サッカー以外で最近ハマっているものはありますか?
眞嶋優
私はチョコレートが好きなんですが、チョコレートの歴史を知りたいと思ってチョコレートの本を買って、今読んでいます。
-髙橋さんは?
髙橋雄祐
姪っ子にハマっています。姉の子が今3歳になるんですけど、コロナ禍の影響で会えないし、新潟の実家にも帰れてないので、会えないんですけど、定期的に家族のグループLINEで写真とか動画があがってきます。毎日、今日の写真はないのかとか催促していて、もうそれが趣味です。
-早く会えるといいですね。
髙橋雄祐
会いたいです。
■好きな作品
-眞嶋さんは、15歳くらいの頃、映画『ヒミズ』のメイキングとかをきっかけに役者という仕事に興味を持ったと聞いてますが、最近気になっている映画やドラマは何かありますか?
眞嶋優
脚本家の坂元裕二さんの作品はずっと好きです。何回見ても、セリフを味わえますし、『花束みたいな恋をした』(2021)の脚本は我慢できずに、映画より先にシナリオブックを読んだんです。そうしたらとても良い内容で、そうすると逆に映画として映像で観るのが怖いかなとも思ったり。
でも、映画になったらなったで、私のそんな無駄な心配いらないっていうぐらい本を超えてました。
やっぱり人間が喋る言葉を普段から坂元さんが観察されていたり体験されていたり、アンテナを張ってるからこそ生まれてくる言葉が生生しくて好きです。
-髙橋さんが影響を受けたり、好きな映画、好きな映画はありますか?
髙橋雄祐
好きな映画なんですけど、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『愛情萬歳(あいじょうばんざい)』(1994)という作品です。
-その作品が好きな理由は?
髙橋雄祐
登場人物が本当に愛おしくて、寂しくて、ちょっとどこか可笑しくて、もしかしたら『あらののはて』にも共通するかもしれないですけど、流れてる時間が本当にその空間のリアルに流れている時間が切り取られているような気がして。なんだか、たまらなく好きです。ぜひ見てほしいです。
■「お前はサラリーマンに絶対なれない」
-髙橋さんは、『あらののはて』オフィシャルインタビューで、役作りについて「年齢を剥がす」と表現されており、それについて「その人物になる」ためには、何も考えず何か自分の中で変化があるまでとにかく川辺で寝たりと、理論ではなく力技で年輪を剥がすやり方を試しています。」と答えられています。
また、以前、『透明花火』で当メディアがインタビューさせていただいた時も、「ナンパ師を演じるために実際にたくさんナンパしてみた」と答えられているのに通じるものを感じました。あらためて、髙橋さんが、俳優として“役作り”をする時の取り組み方について、お考えをお聞かせください。
髙橋雄祐
自分の経験したことがない環境や、生い立ちなどは、どれだけ見て聞いて想像しても完全には理解できないこともあるので、少しでも自分に浸透させられるように、実際に試すようにしています。
そこで自分が感じたこと、調べたことから想像で膨らませたもののバランスを取りながら、役を探っていくという方法を試しています。仕草などは、街中で見つけた人からアイディアを膨らませることが多いです。
-あらためて髙橋さんが俳優の道を目指されたきっかけは?
髙橋雄祐
僕は新潟の大学に通っていて、大学3年生の頃に一般企業の就職活動をしていたんですけど、高校時代の大親友に「お前はサラリーマンに絶対なれない。」って言われて、それが決定打でした。
-そこから役者の道へ向かったんですね。
髙橋雄祐
はい。とりあえず上京しました。
■最後にメッセージ
-今後の抱負をお聞かせください。
髙橋雄祐
とにかく一つ一つの作品に誠実に向き合って、情熱を持って、取り組んでいきたいと思っております。
眞嶋優
私も一つ一つの役を、どんな役でも挑戦していきたいって思ってます。そして、英語も好きなので、もっともっと英語を勉強して、いずれは、海を越えて海外の方と一緒に作品を作れるようになりたいです。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[聞き手:金田一元/記事・写真:桜小路順]
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さよなら、初恋の成れの果て
あの日以来、絶頂感を得られない風子は、8年ぶりに荒野君を探し出し…
STORY
25歳フリーターの野々宮風子(舞木ひと美)は、高校2年の冬にクラスメートで美術部の大谷荒野(髙橋雄祐)に頼まれ、絵画モデルをした時に感じた理由のわからない絶頂感が今も忘れられない。絶頂の末に失神した風子を見つけた担任教師(藤田健彦)の誤解により荒野は退学となり、以来、風子は荒野と会っていない。
8年の月日が流れた。
あの日以来感じたことがない風子は、友人の珠美(しゅはまはるみ)にそそのかされ、マリア(眞嶋優)と同棲している荒野を訪ね、もう一度自分をモデルに絵を描けと迫るが…
出演:舞木ひと美 髙橋雄祐
眞嶋優 成瀬美希
藤田健彦 しゅはまはるみ
政岡泰志 小林けんいち 山田伊久磨
兼尾洋泰 行永浩信 小谷愛美 才藤えみ 佐藤千青 藤井杏朱夏
監督・脚本:長谷川朋史
プロデューサー:舞木ひと美
製作:ルネサンスデザイニング有限会社 宣伝デザイン:菊池仁・田中雅枝
配給:Cinemago
配給協力:ギグリーボックス/シネマエンジェル
販売元:オデッサ・エンタテイメント
2020年/日本/カラー/16:9/DCP/69分
©ルネシネマ
公式サイト:https://runecinema.com/aranonohate/
Twitter:https://twitter.com/aranonohate
Facebook:https://www.facebook.com/rune.aranonohate
8月21日(土)~9月10日(金)池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開
名古屋 シネマスコーレ(近日)、京都みなみ会館(近日)、横浜シネマリン(9/25(土)~)、長野千石劇場(10/8(金)~10/21(木))等全国順次公開
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