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【俳優インタビュー】舞木ひと美×成瀬美希「いろんな人の青春時代を象徴している」門真国際映画祭3冠『あらののはて』

2021年8月21日より順次全国公開となる、門真国際映画祭2020で最優秀作品賞『あらののはて』。本作主演の舞木ひと美、共演の成瀬美希に、本作の見どころについて話を伺った。

本作は、池袋シネマ・ロサで記録的な動員を達成したルネシネマ第1弾・映画『かぞくあわせ』の第2弾作品。
これまで、門真国際映画祭2020で最優秀作品賞、優秀助演男優賞、優秀助演女優賞の三冠を達成し、うえだ城下町映画祭・第18回自主映画コンテストでは、審査員特別賞(古廐智之賞)を受賞。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020、日本芸術センター第12回映像グランプリでは入選を果たした。
なお、「ルネシネマ」とは、しゅはまはるみ(『カメラを止めるな!』)、藤田健彦(『イソップの思うツボ』)、長谷川朋史監督の3人が結成した自主映画制作ユニットだ。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて「高校時代の自由奔放でキュートな姿と、8年前の感情をこじらせてしまった現在のイタイ姿の風子の対比がなんとも切ない」と評された主人公・風子役には、女優・ダンサー・振付家とマルチに活躍する舞木ひと美。
風子が出した食べかけのガムを食べるクラスメート・荒野役には井筒和幸監督作品『無頼』や小平哲平監督作品『初めての女』で注目を集める髙橋雄祐。
一途さと冷めた距離感が同居しているそのかわいさを古廐智之監督に評価された、8年後、荒野と同棲しているマリア役に眞嶋優。
荒野が食べかけのガムを食べたのを見て嫉妬に狂う同級生・前田役に成瀬美希。
荒野に会うよう風子の背中を押す絵画教室の先生役でしゅはまはるみ、風子たちの担任の先生役で藤田健彦が、絵画教室の印象的な役所で、小劇場界のレジェンドである、劇団「動物電気」の政岡泰志や小林けんいちが脇を固めている。

舞木ひと美×成瀬美希 インタビュー

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舞木ひと美/成瀬美希

■いろんな人の青春時代を象徴している。

-最初に脚本を読んだ時の印象を教えて下さい。

舞木ひと美(野々宮風子 役/主演・プロデューサー)
私は、本作ではプロデューサーでもあるので、脚本ができる前の段階のプロットから見ていました。そのプロットの段階で詳細まで書かれていて、それは脚本になってもそのままで、長谷川さん(監督・脚本)がやりたいことが一貫されているなと思いました。

-そのプロットをご覧になった時に、長谷川監督がやりたいことについてどういう印象を持ちましたか?

舞木ひと美
自分の青春時代もそうですけど、いろんな人の青春時代を象徴して、自分の過去を振り返る時間、懐かしい気持ちになる映画にしたいんだなと感じました。

-成瀬さんはいかがですか?

成瀬美希(前田 役)
もともと舞木さんのことを知っていたこともあり、舞木さんにあて書きされたという風子のセリフが、舞木さん自身も言いそうだなと思いましたし、舞木さんにしかできないキャラクターだなと感じました。
私が演じる前田が風子とケンカするシーンは、撮影当日までどうなるのかイメージがつきませんでしたね。

舞木ひと美
ケンカのシーンは撮影当日に2人で段取りを話し合って演じましたね。

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舞木ひと美/成瀬美希

■“あらののはて”

-冒頭の教室での授業中のシーンで、風子が一つ前のアランくん(髙橋雄祐演じる大谷荒野の俗称)のイスの背もたれに“No Hate”とマジックで落書きします。これは本作タイトルの『あらの“のはて”』にかけたものでしょうか?

舞木ひと美
撮影時私は知らなかったんですが、後から監督にそう聞きました。

-なるほど。風子がアランくんに好意を寄せていて“嫌いじゃないよ”と書くことで間接的に“好き”を表現しているのかなとも思いました。その直後、風子が吐き出したガムをアランくんが口にするシーンもありましたし。このへんは映画を観る人の解釈に委ねられているのかもしれませんね。

舞木ひと美
確かにそうですね。

-ちなみに本作タイトル『あらののはて』の意味は?クリスマス・キャロルのひとつで、キリスト教賛美歌でもある「荒野の果てに」という歌がありますが。

舞木ひと美
そこから来ていると聞いています。
劇中、現代パートで、アランくんが川辺を走っているところでその曲が流れていますね。

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舞木ひと美/成瀬美希

■あて書きされたそれぞれのキャラクター

-風子がアランくんに早朝の学校に呼び出されて学校へ向かうシーンがとても印象的でした。映像的には雲の流れなど、空の描写が美しいこと。そして、道中、風子がさまざまな表情を見せますが、これについて監督からはなにか演出があったのでしょうか?

舞木ひと美
最後に笑顔が溢れるっていう演出だけはついていたんですけど、それ以外は、いろんな感情を考えて演じました。単に寒いなぁって思っての表情だったり、これからアランくんと会うことを想像してドキドキしている表情だったり。ここは好きなシーンの1つです。

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場面写真(舞木ひと美) ©ルネシネマ

-舞木さんは、風子というキャラクターをどう解釈しましたか?

舞木ひと美
風子って、一生結婚しないんだろうなと思っています。もちろん恋愛はするし、人には興味を持っている。興味は持っているんですけど、相手に自分をすり合わせていくのが苦手な人間だと思っています。恋愛していく中では、相手に合わせないといけない部分も出てきますが、そういうのが苦手な子。
この風子って、私にあて書きされてますが、私自身もたぶん結婚できないんだろうなっていうのもあるので、なんかすごいく似ている部分があるなって感じてます(笑)
私、不思議ちゃんって言われることがあって、昨日も眞嶋優ちゃん(マリア役)からも言われました。

-不思議ちゃんってたとえば?

舞木ひと美
美希から言ってもらった方がわかりやすいかな。

成瀬美希
感情の突発性かな。突然明るくなったかと思ったら悲しんでいたり。人間って成長過程で感情のコントロールが緩やかになっていくものですが、それが無いっていうか(笑)

舞木ひと美
(笑)

成瀬美希
どこの国で育ってきたんだろう?っていう印象を受けます。

舞木ひと美
確かに。自己主張をするという点では、同調するよりも自分の意見を伝える文化がある海外のそういう国に共感します。

成瀬美希
留学してたから?

舞木ひと美
確かに、それだ!10歳離れた兄が2人いて、長男はカナダ、次男は韓国を経て今はニューヨーク在住。やっぱり兄妹との会話って濃いじゃないですか。なので考え方とか、海外から見た日本の特徴だとか、そういう話を小さい頃から家族の会話として当たり前のようにしてきたことが影響しているのかもしれません。

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舞木ひと美/成瀬美希

-舞木さん自身も留学されたんですか?

舞木ひと美
2ヶ月だけですけど、お兄ちゃんがいるニューヨークのブロードウェイでダンス留学はしました。

-先ほど、風子は舞木さんのあて書きとおっしゃいましたが、感情をすぐに出すところは前田に近いともおっしゃいましたよね?

舞木ひと美
そうです。だから変なんです(笑)

-成瀬さん出演の経緯は?当初脚本に無かった役だとも伺いましたが。

舞木ひと美
マリア役とアラン役を探している時に、成瀬さんにオーディションに来ていただいたんです。
オーディションに誘ったのは私からなんですが、その時点から成瀬さんにこの作品に出てほしいっていう確信があったんです。でも合う役・合わない役ってあるし、長谷川監督の世界観もありますから。
なので、長谷川さんに「成瀬さんに合う役は無いですかね?」って相談したら、そこから脚本を書き換えて“前田”というキャラクターを追加してくださいました。成瀬さんのオーディションの雰囲気を見て、長谷川監督があて書きしてくれたんです。

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舞木ひと美/成瀬美希

-舞木さんと成瀬さんのとの出会いは?

舞木ひと美
藤井道人監督(第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞受作品『新聞記者』の監督)がされていたワークショップをたまたま見学に行ったら、成瀬さんが参加されていて、しかもその中で群を抜いて上手かったんです。藤井さんも褒められていて。
その時に成瀬さんに話しかけたのが最初の出会いです。その時の印象が残っていたので、本作のオーディションにお声がけしたんです。

-具体的に成瀬さんにはどういう魅力を感じましたか?

舞木ひと美
(当時)24歳という年齢の割に人生経験を感じさせる芝居のオーラがあったからです。

-それを受けての成瀬さんはいかがですか?

成瀬美希
シンプルに嬉しいです。作品をひとつ作るということはとてもエネルギーがいることで、私がいなくても完成されていたはずの作品にそうして呼んでくださるっていうのは、役者としてこれほど嬉しいことはないと思います。
だからこそ、この作品にとっての前田という役はなんなんだろう?って考えて、どうありたいかというより、どう見えているか?ということを意識して演じました。
ただ、私が前田と違う点は、前田のようにストレートにヤキモチを表現できないことです。
たとえば、(好きな人が)他愛もなく他の女性に「おはよう」って連絡しているのを見るとそれだけでヤキモチを焼くんですけど、それをヤメテとは言えない。
アランが風子の吐き出したガムを口に入れましたが、あんなのを実際に目撃したら、私ならショックを受けて3日間くらい寝込んでしまいそう(笑)

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場面写真(藤田健彦、成瀬美希) ©ルネシネマ

-そういう時、舞木さんはどうですか?

舞木ひと美
私はストレートに「ヤダ」って言っちゃいますね。自分が子どもっぽく見られることはわかってますけど。

-そうすると、舞木さん自身は前田に近い?

舞木ひと美
そうです、その点は前田に近いです。あんなに取っ組み合いのケンカはしないですけど(笑)感情を表に出すスピード感は前田に共感できます。

■最後にメッセージ

舞木ひと美
本作は、長回しが多いのがひとつの特徴なんですが、そこをどう捉えていただけるか。自分の青春時代と重ね合わせながら、この作品の世界観にどっぷりと浸かっていただきたいです。

成瀬美希
『あらののはて』は、とても没入感がある映画だなと思います。それはなんでなろうなって思った時に、長回しもそうですが、敢えて逆光で撮影されているシーンがあるからかなと。たとえば声が小さい人に対しては、何を言っているんだろう?って耳をすますじゃないですか。それと同じで、どういう表情をしているんだろう?って、画面に吸い込まれていく感じがします。そこは見どころでもあるので、ぜひ映画館で観ていただきたいと思います。

あらののはて

■プロフィール

舞木ひと美(Hitomi Maki)
1989年9月13日生まれ。宮城県出身。
女優として活動するとともに普段はダンサーとしても活躍している。近年では、映画『ヤクザと家族 The Family』の主題歌「FAMILIA」に振付師として参加。他にも舞台、ドラマ、CM等の振付を数多く手掛けている。

成瀬美希(Miki Naruse)
1994年12月5日生まれ。東京都出身。
2015年夏、パチスロ「リング 終焉ノ刻」でデビュー。舞台「夜を、徘徊。」(2018)に主演するなど、4年間舞台をメインに活動後、映画、CM、MVと演技の幅を広げている。近年は、MOOSIC LAB JOINT 2020→2021 グランプリ受賞作品『POP!』(2021)に出演し、美術も担当している。

あらののはて

舞木ひと美/成瀬美希

[写真・インタビュー:桜小路順]

映画『あらののはて』

さよなら、初恋の成れの果て
あの日以来、絶頂感を得られない風子は、8年ぶりに荒野君を探し出し…

STORY
25歳フリーターの野々宮風子(舞木ひと美)は、高校2年の冬にクラスメートで美術部の大谷荒野(髙橋雄祐)に頼まれ、絵画モデルをした時に感じた理由のわからない絶頂感が今も忘れられない。絶頂の末に失神した風子を見つけた担任教師(藤田健彦)の誤解により荒野は退学となり、以来、風子は荒野と会っていない。
8年の月日が流れた。
あの日以来感じたことがない風子は、友人の珠美(しゅはまはるみ)にそそのかされ、マリア(眞嶋優)と同棲している荒野を訪ね、もう一度自分をモデルに絵を描けと迫るが…

出演:舞木ひと美 髙橋雄祐
眞嶋優 成瀬美希
藤田健彦 しゅはまはるみ
政岡泰志 小林けんいち 山田伊久磨
兼尾洋泰 行永浩信 小谷愛美 才藤えみ 佐藤千青 藤井杏朱夏

監督・脚本:長谷川朋史
プロデューサー:舞木ひと美
製作:ルネサンスデザイニング有限会社 宣伝デザイン:菊池仁・田中雅枝
配給:Cinemago
配給協力:ギグリーボックス/シネマエンジェル
販売元:オデッサ・エンタテイメント
2020年/日本/カラー/16:9/DCP/69分
©ルネシネマ
公式サイト:https://runecinema.com/aranonohate/
Twitter:https://twitter.com/aranonohate
Facebook:https://www.facebook.com/rune.aranonohate

8月21日(土)~9月10日(金)池袋シネマ・ロサにてレイトショー公開
名古屋 シネマスコーレ(近日)、京都みなみ会館(近日)、横浜シネマリン(9/25(土)~)、長野千石劇場(10/8(金)~10/21(木))等全国順次公開

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