オダギリジョー「尾野真千子さんの最高の映画になった」映画『茜色に焼かれる』完成報告会
4月27日、都内にて映画『茜色に焼かれる』完成報告会が行われ、主演・尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、石井裕也監督が登壇し、コロナ禍の中撮影した本作の思いを語った。なおこの日のイベントは、緊急事態宣言により急遽無観客での実施となった。
この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。まさに弱者ほど生きにくいこの現代に翻弄されながらも、正面から立ち向かう一組の母子がいた。この生きにくい世の中で、もがきながらも懸命に生きる親子、不器用ながらも己の信念に従って生きる主人公・良子の姿が、観る者の胸に深く突き刺さる感動作。果たして、彼女が最後まで絶対に手放さなかったものとは?
舞台挨拶レポート
■トークノーカット動画
■今の状況で、特別な映画になった。
オダギリジョー(田中陽一 役)
こういう思ってもみない場所の変更と無観客の舞台挨拶ということで、何が起こるかわからないなと感じる日々です。そういうコロナ禍の社会に対して、石井監督がが思っていることを詰め込んだ作品なのかなと思って、この時代に受け取っていただきたい作品だと強く思っています。
-石井監督へ。撮影時期も昨年の8月。テーマもコロナ禍。今、完成を迎えてのお気持ちは?
石井裕也監督
こういう大変な状況ではありますが、明らかに置き去りにされ、ないがしろにされているのは、人間個人の感情とか心情だと思っています。
ですので、映画監督としては、そこをどうしても描かなきゃいけないなと思って、この映画を作りました。
僕も含めてほとんどの方が、マスクで(表情は)隠されていますけど、心の中がボロボロになっているんじゃないかなと思います。
そういうリアルの状況を前提にして、今の時代にしか描けない愛や希望、そういうものを映画にしたいと思いました。
今日、ご登壇いただいた皆さんと一緒に、本当に良い映画が作れたという自負だけはあります。特別な映画になりました。
■出演の決め手
-そんな社会を生きる女性の愛を鬼気迫る演技で演じた小野さん。今作出演の決め手は?
尾野真千子(田中良子 役)
決め手は、台本を読んで、自分が伝えなきゃって思うことがたくさん詰まっていたからです。
-現場ではどのような気持ちで演じられていましたか?
尾野真千子
精神的に辛い時もありましたけど、でもそうやって自分の気持ちが変化していってるのはすごく楽しい現場だなって思いました。
-小野さんの息子役を演じたのが和田庵さんです。今回はオーディションで見事純平役を射止めたわけなんですけども、そのオーディションの時から撮影にかけてどのような気持ちで臨みましたでしょうか?
和田庵(田中純平 役)
カナダ留学から帰国後、約2年ぶりのオーディションということもあって、すごい緊張していたんですけど、石井監督に初めてお会いした時、とても気さくで話しやすい方だなと思いました。
初めて台本を読んで、セリフが多いですし、プレッシャーや不安な気持ちもあったんですけど、それ以上に選んでいただいて光栄だなという気持ちがありました。
-永瀬さんが思う本作の魅力は?
永瀬正敏(風俗店店長・中村 役)
監督がおっしゃる世の中の理不尽さや、監督の思いが詰まった作品です。この作品に出演できたことを自慢できると思いますし、ご覧になった方は、映画を見たことを自慢できる作品になっていると思います。
-片山さんは演じるにあたってどんな挑戦がありましたか?
片山友希(ケイ 役)
この役は、私にできるんやろかっていう不安とか恐怖がずっとあったんですけど、それに負けないように挑みました。
■コロナ禍での撮影。コロナ禍での公開。
-オダギリさん、コロナ禍での撮影、そしてコロナ禍で公開ということについてどう捉えていますか?
オダギリジョー(田中陽一 役)
この作品の撮影は、昨年の8月末頃でした。緊急事態宣言が明けて初めて僕が参加した作品であったので、今はこうなっているんだと思うことがたくさんありましたね。例えば本番ギリギリまでフェイスシールドをしたりとか、ご飯も独りで喋らないで食べてくださいとか。
今までのシステムがすべてひっくり返ったような、こんな状態で映画作っていくんだと感じました。
そんな中でも、監督は日々戦いながらこの作品に挑まれていて、コロナ禍だからこそ描きたい事がちゃんと描けていると思います。
今、テレビドラマや映画を見てても、マスクのない世界をできるだけ描こうとしてますよね。それはきっと現実の辛さを、作品を見てる時ぐらいは忘れようよ、忘れさせてよっていう、そういう思いなんだとは思います。
でも、一方で、現実的にはこういうコロナの世界の中で我々は生きているわけで、そこには監督もおっしゃられたような理不尽な社会の状況が待っているわけです。
その中で、一生懸命もがきながら生きている人たちの姿をこうやって作品にしないで何を作品にするんだと。僕もそう思うので、本当にとても尊い作品だなと思います。
■「尾野真千子さんの一番の映画。でも悪いところは・・・」
-尾野さんの鬼気迫る演技を間近で見ていた永瀬さん。いかがでしたか?
永瀬正敏
鬼気迫っていましたね。でも、小野さんは現場を温かくハグして頑張りましょうって温めているような雰囲気でした。
お芝居の中では鬼気迫ってましたが、それ以外では現場をなんとか守り続けようってしているのを感じました。
-尾野さんはどのような思いで撮影に臨まれましたか?
尾野真千子
主役ってことを気にせず、楽しくやろうと思って。こんな時だから、いっぱい気をつけなきゃいけないことがある中で、だけどそんなことしてても何も面白くないやんって思って。
だったら、距離が遠くても、ニコニコしてれば、楽しくやってれば、きっといいものになると思うし、私たちのもどかしい気持ちが少しでも晴れるんじゃないか、この現場に来たら楽しくやれると思ってもらえるんじゃないか。
そんなことを思いながら、あとはただ“田中良子”を伝えたいと思ってやってました。
母になったことはないですけど、母の気持ちが少しでもわかったような気がしました。
-和田さんはそんな小野さんとの親子役の共演はいかがでしたか?
和田庵
お会いする前は、ほんとに勝手なイメージなんですけど、怖い人だなっていう印象がありました。
なので、初めてご挨拶した時は緊張してたんですけど、実際はそんなことなくて、とても優しくて、明るくて、面白い人だなって思いました。
共演シーンのひとつに、土手沿いを自転車で二人乗りして走るシーンがあるんですが、カットの度にまた元の場所に戻るんですけど、戻る時に二人乗りしたままこいでくださって。
さすがに悪いので「降ります」って言っても、「そのまま乗ってていいよ」って、まるでほんとうの親子のように接してくださいました。
-オダギリさんは、その二人のお父さん役ですが、共演シーンはほとんどありませんでした。
オダギリジョー
ですね。でも10年以上前から共演させてもらっていて、同期のような、同じ時代を歩んできた仲間のような気がしています。
そんな中での、今回の尾野真千子さんは大変素晴らしかったです。今までの尾野さんの作品は全部見ましたけど、今作が一番ですね。
本人にはこんなこと言わなかったですけど、(記事に)書いてほしいので。
ただ、ひとつウソを言ったのは、尾野さんの作品を全部見たっていのはウソです(笑)
あと、尾野さん、悪いことも言ってくれと事前に言われていたのでひとつ申し上げますと、どうしても眉間にシワを寄せるクセがあるんですよ。で、低めに流れる眉毛になっちゃうんですね。それがマスクをしているとより目立っちゃうんです。そのクセがひとつ気になるところかなって。
ただ、この作品においてはそれが闘う表情になるので、この作品に関してはアリかなと思っています。
なので、悪いところは無いってことですね(笑)
■どんな時も手放さないものとは?
-本作はどんな苦境にも懸命に生きる様が描かれています。そこで皆さんに質問です。皆さんにとって、どんな時も手放さない、大切にしているものはなんでしょうか?
石井裕也監督
映画作りが今は当たり前じゃなくなってしまってますので、改めて映画作りは大切だし、貴重なものだと思わされました。
それに気づかされたのは、コロナ禍で、唯一良かった点です。
片山友希
さっき、前室で「ぬいぐるみ」と言ったらブーイングだったので、ぬいぐるみはやめて、天日干しをしたお布団で寝ることです!
太陽の匂いを感じて寝るのは幸せな気持ちになります!
和田庵
昨年の誕生日に、仲の良い先輩からいただいたワイヤレスイヤホンをずっと大事に使ってます!
尾野真千子
手放したら嫌なものって家族ですね。今後、自分がもし結婚して家族を持ったとしても、手放せないものになると思います。
永瀬正敏
信じるという“思い”です。
映画を信じていますし、人との出会いを信じていますし。そういう“思い”です。
あとは“猫”ですかね(笑)
オダギリジョー
難しいですねぇ。。。
ちょっとカッコイイことになっちゃうんですけど、このマイクですかね。
このマイクを手放したら死んじゃうんじゃないかなって思います(笑)
■最後にメッセージ
石井裕也監督
先ほど、映画作りが当たり前じゃなくなってきてると言いましたが、その中で、こういう素晴らしいキャスト、スタッフの方々と一緒に映画を作れた事がすごく貴重でしたし、そしてなにより、尾野さんが、命がけで全力でこの映画に携わってくれたことにすごく感謝しています。
そして尾野さんだけじゃなく、皆さんの強い気持ちが乗り移った映画になっていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
尾野真千子
今、監督からも話がありました通り、この映画撮る前に、監督に「命がけで頑張ります」って言いました。
それは今の状況で、「もう私は仕事ができないんじゃないか」とか、いろんなことを考えてる中で、この作品が飛び込んできて、「今やらんと無理やん。ここで止まってたらあかんやん」と、自分の背中を押してくれました。
それだけ自分にとってすごく大切で、“田中良子”や、出演者の気持ちを、皆さんに届けたいと力強く思った作品です。
自分にとって最高の映画だと思ってます。是非、映画館で観れるようになってほしい、そういう気持ちです。どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。
■フォトギャラリー
[写真:金田一元/動画・記事:桜小路順]
映画『茜色に焼かれる』
悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界で母ちゃんも、僕も、生きて、生きる。
INTRODUCTION
この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。まさに弱者ほど生きにくいこの現代に翻弄されながらも、正面から立ち向かう一組の母子がいた。この生きにくい世の中で、もがきながらも懸命に生きる親子、不器用ながらも己の信念に従って生きる主人公・良子の姿が、観る者の胸に深く突き刺さる感動作。
果たして、彼女が最後まで絶対に手放さなかったものとは?これは、圧倒的な愛と希望の物語。あえて今の世相に正面から対峙することで、人間の内面に鋭く向き合ったのは、若手実力派監督の石井裕也。
傷つきながらも、自身の信念の中で真っ直ぐに生きる母親を、尾野真千子が驚くべき存在感で体現。茜色の希望をたなびかせて、厳しくも澄みきった人間賛歌がここに誕生。激しくも切ない魂のドラマが、真っ赤な希望をともす。
あらすじ
1組の母と息子がいる。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇に傾倒しており、お芝居が上手だ。中学生の息子・純平をひとりで育て、夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒もみている。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。社会的弱者―それがなんだというのだ。そう、この全てが良子の人生を熱くしていくのだからー。はたして、彼女たちが最後の最後まで絶対に手放さなかったものとは?
出演:尾野真千子
和田庵 片山友希 / オダギリジョー 永瀬正敏
大塚ヒロタ 芹澤興人 前田亜季 笠原秀幸 / 鶴見辰吾 嶋田久作
監督・脚本・編集:石井裕也
製作:五老剛 竹内力
ゼネラルプロデューサー:河村光庸
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕
プロデューサー:永井拓郎 神保友香
共同プロデューサー:中島裕作 徳原重之 長井龍
主題歌「ハートビート」/ GOING UNDER GROUND(ビクターエンタテインメント)
『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ:朝日新聞社 RIKIプロジェクト
製作幹事:朝日新聞社
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
配給:フィルムランド 朝日新聞 スターサンズ
(C)2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ
2021年/日本/144分/カラー/シネマスコープ/5.1ch R-15+
公式サイト:akaneiro_movie.com
予告映像
5月21日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
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