「想うた」シリーズCMでも注目の女優・古川琴音 登壇。映画『蒲田前奏曲』公開記念舞台挨拶
9月26日、都内にて映画『蒲田前奏曲』の公開記念舞台挨拶が行われ、4つのエピソードからなる本作の“第1番「蒲田哀歌」”より、プロデューサー・出演の松林うらら、古川琴音、須藤蓮、中川龍太郎監督が登壇。
本エピソードで描かれている蒲田の街を舞台に、現代と75年前の女性“節子”との不思議な物語について、その意図や役作りの苦労などについて語った。
野口節子役を演じた古川琴音は、今注目の女優。現在、「お姉ちゃん、待ってぇやぁ」というセリフで始まる、JT「想うた」シリーズ『姉妹を想う』篇のTV CMに石井杏奈の妹役で出演中。待機作に、映画『街の上で』(今泉力哉監督/21年春公開予定)などが控える。
『蒲田前奏曲』は、売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。
これを4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品。
舞台挨拶レポート
この日の舞台挨拶のMCは、プロデュース・企画、そしてマチ子としても出演している松林うららが行った。
■蒲田の街でロケーション
-お題は「蒲田」で中川監督には作っていただきました。劇中、蒲田の街の人にインタビューするドキュメンタリー風のシーンがありますが、その意図は?
中川龍太郎(監督・脚本)
登場人物がカメラを持って、どのように世界を切り取るのかということに非常に興味がありました。
最初のお話しをいただいた時に、お姉さんが弟の恋人に嫉妬するというのは、自分にはわかり得ない世界だったんですが、そのことを通して、蒲田という街の歴史だったり、過去の人間が現在をどう見ているのかということを通すことによって現在が見えるんじゃないかなと思いました。
実際にある「味の横綱」という中華料理店で撮影したのは、自分が昔からよく行っているお店ということと、蒲田の街の歴史として映像に残したいと思ったからです。
-古川さん、蒲田のロケで印象に残っていることはありますか?
古川琴音(野口節子 役)
蒲田の街ってしょっとノスタルジックな感じがしています。今でも古い商店街が残っていること、屋根が低い建物が並んでいる細い通りがあったり、鞄の専門店だったりとか。
昔の日本を感じる景色が印象に残っています。
-古川さんが蒲田の商店街を走っているシーンがすごい印象的ですが大変でしたか?
古川琴音
あのシーンは、早朝の誰もいないアーケードを好きなだけ走ったので、爽快感もあってとても楽しかったです。
-須藤さんは蒲田ロケで印象に残っていることは?
須藤 蓮(蒲田タイ蔵 役)
古川さんの印象が強すぎて、蒲田の印象が残っていない(笑)こんな変わった女優さんがいるんだって。中川監督もおもしろいなって思って、この作品では、人の記憶がすごく残っています。
■75年前の蒲田空襲
-中川監督は75年前の蒲田空襲もからめて描かれましたが、その意図について教えて下さい。
中川龍太郎監督
自分の在り方とか、反省しなくちゃいけないなと日々思うことがある中、わずか75年前に生きたくても生きられなかった人々がいたわけです。
そういう人たちが今の僕たち、僕たちが作ってきた今の街を見たら、どのように思うんだろう?っていうのが発想の起点としてありました。
-古川さんは空襲で亡くなった幽霊ということで、演じられる上で心がけたことは?
古川琴音
現代に住む二人(マチ子と弟のタイ蔵)とは浮いた存在に見えてほしいなと思っていたので、佇まいとか、喋り方とかをシャンとしたり、観る人に少し違和感を持っていただけるようなキャラクターにしたいなと思って演じました。
中川龍太郎監督
あの存在感を出せる人はなかなかいなくて、それは古川さんの素晴らしさですよね。
-須藤さんは現代的な若者の役でしたが、演じる上で心がけたことは?
須藤 蓮
普段の僕があんな感じで作り込んだことはなかったです(笑)
中川監督からは、現代的な若者の空虚な感じで演じてほしいと言われたので、欠落しているものを他人で埋めようとする感覚を大事にしながら演じました。
■古川琴音「75年前の女の子として、アドリブで演じるのは難しかった」
-須藤さんが古川さんを撮影しながらインタビューするシーンはどういうことを考えて質問を?
須藤 蓮
潜在意識にある意図されていない面白さをどうやったら引き出せるかというのを中川監督と相談しながら考えました。
中川龍太郎監督
けっこうアドリブもあったよね。古川さんはどうでしたか?
古川琴音
私はそのアドリブに苦しめられました(笑)
というのも、私の役は戦時中に亡くなった女の子なので、その時代に(私は)生きていないから、いろいろ作り込まなきゃいけない、知らなきゃいけない情報が多かったんです。
その役を演じながら、アドリブの質問をもらうと今の自分の答えしか出せないけど、私はその時代の女の子じゃないしという葛藤がありながら答えを捻り出しました。
そういう思いもあって、私が質問に答えるシーンは、今でも良かったのかなぁとか、どう答えれば良かったんだろうって考えながら、映画を観てしまいます(笑)
■僕たちにとっては白黒の世界
須藤 蓮
中川監督に質問なんですけど、75年前という僕たちが白黒でしか知らない世界、時間の隔たりによって直接触れられない世界をどう描こうと思わましたか?
中川龍太郎監督
古川さん演じる節子がカラーの存在として、そういう人が若く生きていたんだということを映像化する必要があるなと思いました。
その存在感を古川さんが丁寧に演じてくれました。これは編集している時に改めて思ったのですが、現代的な役のうららさんと須藤さんの間で、古川さんじゃなかったらあの役は成立しないなと。白黒だった存在をカラーにしてくれたんじゃないかなと思いました。
-古川さんが劇中で歌われている「蘇州夜曲」が素晴らしかったですね。
古川琴音
歌が苦手だったのでカラオケでずっと練習しました。でもこの歌はすごくいい歌だなって思って、他のオーディションで歌が必要な時に歌うこともあります。勝負曲として。
■最後にメッセージ
古川琴音
蒲田の街並みが、雰囲気毎スクリーンに残っていますので、それを楽しんで観てもらいたいのと、ファンタジーの部分も楽しんでいただけたらなと思います。
須藤 蓮
中川監督はけっこう難しく哲学的なことに挑戦されているなと思っています。たとえば冒頭になぜ空襲のシーンがあるのかとか、そもそも節子は何者なのかとか、時間の断絶の中で何を描きたいのかとか、監督の意図を汲み取りながら観たら面白いんじゃないかなと思います。
中川龍太郎監督
僕たちは最初のエピソード“第1番「蒲田哀歌」”を作りましたが、『蒲田前奏曲』は4つのエピソードで1つの作品となっています。どうしてこの4つのエピソードが並んでいるのか。4つ並んだ時にどういう化学反応があるのかという点を楽しんで観てもらえたら嬉しいなと思います。
■舞台挨拶動画レポート
[写真:Ichigen Kaneda/動画・記事:Jun Sakurakoji]
映画『蒲田前奏曲』
◆INTRODUCTION
売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく。
これを4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品。
監督には日本映画界の若手実力派監督が集結。
最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集める中川龍太郎、長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSIC LAB グランプリ受賞、東京国際映画祭上映の穐山茉由、『Dressing Up』(第8回CO2助成作品、OAFF2012)で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の安川有果、最新作『叫び』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝き、第22回ウディネ・ファーイースト映画祭では大田原愚豚舎作品、渡辺紘文監督特集が組まれるなどの渡辺紘文(大田原愚豚舎)が務める。
『飢えたライオン』で主演を務め、舞台、TVドラマなどでも活躍する松林うららが自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演。
また、伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』)、瀧内公美(『火口のふたり』)など、旬の俳優が名を連ねる。
◆STORY
第1番「蒲田哀歌」
監督・脚本:中川龍太郎
出演:古川琴音 須藤蓮 松林うらら
オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優、マチ子。
ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女を紹介されショックを受ける。
だが、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけとなる。
第2番「呑川ラプソディ」
監督・脚本:穐山茉由
出演 : 伊藤沙莉 福田麻由子 川添野愛 和田光沙 松林うらら 葉月あさひ 山本剛史
アルバイトをしながら女優をしているマチ子。
大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。
そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案する。
5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていく。
第3番「行き止まりの人々」
監督・脚本:安川有果
出演 : 瀧内公美 大西信満 松林うらら 吉村界人 二ノ宮隆太郎 近藤芳正
映画のオーディションを受けたマチ子。
セクハラや#metooの実体験やエピソードがあれば話すという内容だったが、皆、思い出すことに抵抗があり、上手く演じられない。
そんな中、マチ子の隣にいた黒川だけは迫真の演技を見せる。
マチ子は共に最終選考に残ったが・・・。
第4番「シーカランスどこへ行く」
監督・脚本:渡辺紘文(大田原愚豚舎)
出演 : 久次璃子 渡辺紘文
マチ子の実家は大田原にある。
大田原に住む親戚の小学5年生のリコは、大田原で映画の撮影現場にいる。
そこへとある映画監督が撮影現場の待合所にやってきて・・・。
渡辺紘文監督ならではの視点で東京中心主義、映画業界、日本の社会問題批判を皮肉に表現し描く。
出演 : 伊藤沙莉 瀧内公美 福田麻由子 古川琴音 松林うらら
近藤芳正 須藤蓮 大西信満 和田光沙 吉村界人 川添野愛 山本剛史
二ノ宮隆太郎 葉月あさひ 久次璃子 渡辺紘文
監督 ・脚本 : 中川龍太郎 穐山茉由 安川有果 渡辺紘文
プロデューサー・出演 :松林うらら
エグゼクティブプロデューサー: 市橋浩治 小野光輔 大高健志 小泉裕幸
コエグゼクティブプロデューサー: 伊藤清
コプロデューサー : 汐田海平 麻生英輔
アソシエイトプロデューサー : 橋本鉄平 富澤豊
企画:うらら企画
製作:「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ
(和エンタテインメント ENBUゼミナール MOTION GALLRY STUDIO TBSグロウディア)
特別協賛:ブロードマインド株式会社 日本工学院
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
(C)2020 Kamata Prelude Film Partners
2020年 / 日本 / 日本語 / 117分 / カラー&モノクロ / Stereo
公式サイト:kamataprelude.com
公式Twitter:@kamataprelude
2020年9月25日よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森 他全国順次公開予定
松林うらら プロフィール
1993年生まれ、東京都大田区出身、映画好きの両親の影響で幼少期から映画の世界に魅了される。
18歳でスカウトされモデルとして活動を開始、2012年、『1+1=11』(矢崎仁司監督)で主役に抜擢され映画デビュー。
その後、映画中心に活動し、2017年には『飢えたライオン』(緒方貴臣監督)に主演、東京国際映画祭でワールドプレミアされ、その後、ロッテルダム映画祭など数多くの映画祭で絶賛され、プチョン国際ファンタスティック映画祭では最優秀アジア映画賞にあたるNetpac賞を受賞。
最新作は山戸結希企画プロデュース『21世紀の女の子』の中の山中瑶子監督作品「回転てん子とドリーム母ちゃん」で北浦愛、南果歩などと共演。
本作『蒲田前奏曲』が初プロデュース作。第15回大阪アジアン映画祭では『蒲田前奏曲』がクロージング作品として上映され、コンペティション部門国際審査委員として選出される。
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