“人類ってこんなもの?”ってセリフが突き刺さる。『8日で死んだ怪獣の12日の物語』公開直前イベント
7月28日、岩井俊二監督最新作『8日で死んだ怪獣の12日の物語』-劇場版-(7/31公開)の公開直前イベントがスペースFS汐留(東京・港区)にて行われ、斎藤工、のん、武井壮、穂志もえか、樋口真嗣、岩井俊二監督が登壇した(トークノーカット動画&フォトギャラリー)。
本作は全編ほぼリモートで撮影されたため、本日のイベントが、出演者・監督にとって初対面となった。なお、司会を務めたのは、元フジテレビアナウンサーの中井美穂。
本イベントの前には、キャスト向けの試写が実施されたため、各キャストは作品を観終えたばかりの状態で登壇し、トークを繰り広げた。
(*速報版を改訂し、レポート記事としては完全版となります)
イベントレポート
■トークノーカット動画(66分)
斎藤工「心の薬である芸術を楽しむことも はばかれる中で、僕らは速度感を持って対峙した。のんさんの“人類ってこんなもの?”というセリフが突き刺さる作品」
■トークまとめ
1時間以上にわたって繰り広げられたトークから一部抜粋してテキストでもお届けします。
岩井俊二監督
僕の中では非常に短い時間の中で作り上げた作品です。
最初に樋口監督からメッセージをいただいたのが4月28日のちょうど3ヶ月前でした。
そこから卵を育てて怪獣にするというアイディアが生まれてあれよあれよいう間に物語が大きくなって、気がついたらこのメンバーで映画を作ることになりました。
自分自身まだ夢を見ているような不思議な心地です。
樋口真嗣(樋口監督役)
私だけ役名もなく、セリフもなく、台本には「怪獣について説明してください」とあるだけで非常にドキドキしました。
岩井さんとは30年来のお付き合いですが、岩井さんが怪獣映画を作ったらこうなるんだと、嬉しさで胸がはちきれそうな思いですね。
◆リモート撮影について
のん(丸戸のん役)
岩井監督とはご挨拶も演出も画面越しでした。
斎藤工さんとの共演シーンは、実際には画面はなくて、声を頼りに演じてたので、スリルもある撮影でした。
声だけだと耳が研ぎ澄まされる感じです。斎藤さんはアドリブもされますし。
斎藤工(サトウタクミ 役)
そうですね。僕は性格がねじ曲がっているので、筋書き通りにはやらず、変な玉をのんさんに投げるんですけど、ものの見事に打ち返してくださるんで、じゃ、もっと変なボールを投げてみようってなってなにかが生まれたり。見事でしたね。
◆俳優・樋口真嗣
斎藤工
さっき試写で、照れくさそうにしている樋口さんを見て、ざまあみろと思いました(笑)
役者が自分のシーンって堂々と見れない感じを共有していただけたなという(笑)
◆それぞれの自粛期間中
穂志もえか(もえかす役)
ひたすら映画やドラマを観たり、ネットショッピングしたり、お菓子作りにハマったり。
あと、リモートで演技レッスンもして、私にとってインプット期間になり充実していました。
のん
毎日自炊して、焼きそば食べたり、パスタ食べたり。
あと、竜田揚げに初めて挑戦したんですが、1回目は生焼けになっちゃって、2回目は生焼けを恐れすぎて黒焦げになっちゃって。
計5回やったんですけど、まだ4回分は黒焦げのやつしか食べられてないから、次は美味しいのを作りたいです。
また、「おうちで観るライブ」というのを企画して、ライブを生配信することもやっています。
武井壮(オカモトソウ役)
コロナ禍に僕は負けてたまるかと思いまして、能力を伸ばすというのをテーマにしていました。
自宅にはほとんどすべてのトレーニング機器を置いているので、トレーニングしまくってたら、まず5Kg痩せました。
そして有名な現役のチャンピオンの格闘家さんから身体能力勝負のオファーが来たのでやったら僕が勝つというまさかのことが起きました。
また、YouTubeも始めて、動画編集技術も身につきました。
自粛期間中はかなりのスキルがついて成長できたので、たぶん何匹かのコロナは倒していると思うんですよね。カプセル怪獣を待たずして。
斎藤工
木目と話したり、壁の傷と話したりしてたので、武井さんの動画にけっこう救われていました。
のん
心を通わすということじゃなくて、言葉に出してしゃべってたんですか?
斎藤工
ケースバイケースです。どっちもできるんで。木目はけっこういろんなものになってましたね。
この作品の中でも、無機物を有機物として扱うというフィロソフィーがありますが、それがすごく僕の中でスライドしていきました。
なので、このコロナ禍で突然、自分だけの小宇宙にぽっかりと置かれてしまったような人は、この作品に乗っかってより楽しめるんじゃないかなって思いますね。
中井さんはどうだったんですか?この自粛期間中。
中井美穂(MC)
結婚して以来初めてずっと一緒に夫といましたね。年金生活の夫婦ってこんな感じなんだって思いながら過ごしました。まだまだ夫のことで知らないことがあったことにも気づきました。
斎藤工
映画などの映像作品は観ましたか?
中井美穂(MC)
はい。“不時着”したりしてましたね。
斎藤工
あ、“不時着”ね。僕もしました(笑)
◆怪獣ダンサーに込めた思い
– 本日のイベント前に怪獣ダンサーとして、ダンスを披露された引間文佳(ひきまあやか)さん。劇中にも登場しますが、このアイディアに込められたものを教えて下さい。
岩井俊二監督
誰もいない街や、STAY HOMEしている状況を具象化するのに直感的に浮かんだアイディアです。
コンテンポラリーダンサーの方に、顔は怪獣にしてもらって踊ってもらいました。出来上がった映像はイメージどおりで、「そうそう!これを頭の中に思い描いていたんだ。」って思いました。
◆役づくり
穂志もえか(YouTuberもえかす役)
YouTuberらしさは絶対に入れたいなと思っていて、加えて、もえかすとしてのオリジナリティも入れたいとも考えました。
歌も自分で歌いました。
アドリブで言ったことも監督が採用してくださって、とてものびのびとできました。
斎藤工
僕の役割としては、(中井美穂さんの旦那さんのように)キャッチャーで、起こりうるいろんなことを受け止める役です。
これだけほんとにバラエティ豊かな共演者の方たちの玉を受けるっていう。そこにあまり設定を背負いすぎてもリアルな反応ができなくなるのかなと思い、極力自分の素の状態で演じました。
– 撮影場所はどこですか?
斎藤工
完全に自宅です。この作品の予告編にも映っていて、それがTV CMにも流れるので、TVに自分の自宅が映っているというすごく不思議な状態なってます。
のん
星人と一緒にいるという面白い役でした。そこにいる体でしゃべったりしているうちに、(星人が)心強い存在になってくる気もしてきました。
斎藤工
そこにいないのにいるように見えてくる表現がすごいんですよね。のんさん。これはもう表現力の賜物だと思います。
(本作が)SF作品に昇華しているのは実はのんさんのおかげなんじゃないかと。
◆小泉今日子の主題歌起用について
岩井俊二監督
「連れてってファンタァジェン」は、僕の大好きな曲で、今回新たに歌ってもらったんですけど、エンディング曲っていうよりは、もうひとりの出演者として映画の最後を締めくくってくれる、それくらいの迫力を感じました。さすが小泉今日子だなと、僕自身ものすごく感動しました。
◆最後にメッセージ
斎藤工
心の薬である芸術を楽しむっていうことをも、はばかれている中で、速度感を持ってある種対峙するっていう鮮度を、思いとクオリティーも同時に果たしながら、即座に順応して発信する姿がSNSやYouTubeで活躍している人たちの中にありました。
そういう意味でこの作品も、のんさんの「人類ってこんなもの?」っていうセリフが突き刺さってきますし、なにかハッとするような後味を、今後も変化していくであろうコロナ禍の世の中に対して、何かを突きつける存在として、どんどん育っていくんじゃないかなと思います。
のん
この自粛期間中にオファーをいただけると思っていなかったのですごく嬉しくて、脚本を読ませていただいた時に、「この状況下でもアイディアとパワーがあれば映画を作り出すことができるんだ」ってすごく感動しました。
岩井組初参加で、映画の生命力をすごく感じられました。この作品は遊び心もあって楽しんで観られる中にも、胸にグッとくるメッセージも込められています。
この状況下で私たちはしっかりと生きていかなくてはいけないんだなってことを改めて実感しました。
武井壮
この作品を通して新しいエンターテイメントの形を生み出せたと思います。
人類の歴史、地球の歴史という長い年月の中で、僕らが生きる数十年っていうのは、ほんと一瞬の時間だと思うんですけど、でもこのように人類皆が苦しんで、危機感を感じて過ごす時間は、僕らがリアルタイムに感じているものです。
でもこういう時に我々は変化する力を持っていて、それを“進化”とも呼ぶと思います。
この作品はミニマムな環境で、新しいカタチで生まれた新しいエンターテイメントです。これはもしかしたら、岩井監督をはじめ皆さんが生み出した、エンターテイメント界の“進化”なのかなと僕は感じています。
穂志もえか
私もなにかできることはないかなって考えていた中でのオファーでしたので、俳優としても、岩井組のファンとしても嬉しく思っています。
映画としても、人のいない渋谷や新宿が映し出されていて、映画史に残るような作品になっていると思います。
そして、人と人のつながりを生むきっかけにもなる作品です。きっと観ていただいた方にとって救いになる作品だと思います。
岩井俊二監督
元々は、「カプセル怪獣計画」という、樋口さんとその仲間が始めたリレー動画のチャレンジ企画が本作のきっかけになっています。
STAY HOME期間、怪獣を使って皆で遊ぼうという興奮もある中、卵が怪獣になるというアイディアが生まれ、ほんとに夢のような早さで作品の形になっていきました。
これまでの撮影現場ではそれぞれの楽屋だったりるすので意外と密じゃない。でも、今回はオンラインの不思議なチームワークの良さがありました。相手が目の前にいる、楽屋兼現場というような、役者さんとの親密な関係の中で作品にすることができました。
まだまだつらいことが続く状況の中、この不思議な怪獣ごっこ映画が、ちょっとでも観ていただいた皆さんの心の癒やしだったり、励みになってもらえたらこんなに幸せなことはないと思います。より多くの方に観てもらえればなと思っています。
こんな過酷な機会も人生の中でなかなか無いでしょうから、ここで何かを見出し、何かを作り、何かを手に入れていくっていうことを、そのきっかけにこの映画がなってくれたらすごく嬉しいと思っています。
■劇中登場のカプセル怪獣(海洋堂製)発売&サントラ配信決定
本作オリジナルカプセル怪獣フィギュア(全7種)が、2020年7月31日より順次、一部劇場・WEBにて販売予定(フィギュア材質:レジンキャスト)。
樋口真嗣は、「とうとう岩井俊二さんが怪獣造形をしたという記念碑的なものがグッズとして購入できます。」と、その貴重さをPRしていた。
また、劇中で使用されているサウンドトラック「KAIJU」が8月14日(金)より、SPACE SHOWER MUSICより配信される(全14曲)。
いずれも詳細は、映画公式サイトなどで順次発表される。
■フォトギャラリー
[写真:Ichigen Kaneda/動画・記事:Jun Sakurakoji]
映画『8日で死んだ怪獣の12日の物語』
ストーリー
通販サイトでコロナと戦ってくれるというカプセル怪獣を買ったサトウタクミ(斎藤工)。毎日怪獣の成長を配信しているタクミの元には、通販で宇宙人を買ったという後輩の丸戸のん(のん)や、コロナの影響で無職になってしまった先輩のオカモトソウ(武井壮)など、色々な人から連絡がくる。日に日に怪獣は成長していくが、どうもYouTuberもえかす(穂志もえか)が育てる怪獣とは種類が違うようだ。怪獣に詳しい知り合いの樋口監督(樋口真嗣)にノウハウを聞きながら、日々怪獣を育てていくタクミ。果たしてタクミはきちんと怪獣を育てることができるのか? そして、この怪獣はコロナをやっつけてくれるのか?
スタッフ
脚本・監督・造形:岩井俊二
原案:樋口真嗣
主題歌:小泉今日子+ikire 「連れてってファンタァジェン」
音楽:蒔田尚昊=冬木透 ikire
プロデューサー:宮川朋之 水野昌
キャスト
斎藤工、のん、武井壮、穂志もえか、樋口真嗣
制作:ロックウェルアイズ
配給:ノーマンズ・ノーズ
(C)日本映画専門チャンネル/ロックウェルアイズ
YouTube版リンク:https://www.youtube.com/playlist?list=PLtt5h2o3ddfAQk3fWNxlM95aTOCxFMnLe
映画公式サイト:https://12daymonster8.com
Twitter 岩井俊二映画祭 @iwaiff: https://twitter.com/iwaiff
予告編
2020年7月31日(金)より全国のミニシアターで順次公開!
コメント ( 1 )
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またまた沢山の画像と動画ありがとうございます。
現場に行けないファンには、たいへんありがたいです。
またお願いします。