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『MOTHER マザー』オンラインシンポジウム

観たら誰かと語りたくなる映画『MOTHER マザー』。大森監督ら迎えオンラインシンポジウム開催

全国公開中、長澤まさみ主演の映画『MOTHER マザー』。本作を観た者の多くが「誰かと語りたい!」という心境になるだろう。そういった声が多数あがり、7月17日、大森立嗣監督らをパネラーに迎えたオンラインシンポジウムが開催された。

パネラーにはその他に、河村光庸プロデューサー(スターサンズ)、佐藤順子プロデューサー(スターサンズ)、SYO(映画ライター/編集者)らも参加。そしてこのシンポジウムへ応募し、抽選で当選した約50名の参加者との“語り場”が実現した。

MOTHER マザー

『MOTHER マザー』オンラインシンポジウム レポート

『MOTHER マザー』オンラインシンポジウム

まず、本作の企画の成り立ちについて聞かれた河村プロデューサーは「モチーフになった事件の新聞記事に2015年に出会ったことがきっかけ」と述べ、過去スターサンズが手掛けた映画『かぞくのくに』(2012)では「最大のアイデンティティである“国家”と、最小限のアイデンティティ“家族”というものを描いたが、さらに身近で“へその緒”をきった後、つまりさらに最小のアイデンティティである“母と子”をずっと描きたかった」からだったと明かした。
加えて「これまでは母と子の愛憎を描く作品は多かったが、今回の作品『MOTHER マザー』は、それらとは全く異質なもの」「親族同士の殺人は古くはギリシア悲劇、シェイクスピア、そして聖書など定番のようにあった」が「母の誘導によって祖父母を殺害した、という物語は非常に現代的で新しいテーマだと思った」からだと話した。

大森立嗣監督に本作をオファーした理由について佐藤プロデューサーは、「大森監督は、社会の真ん中から弾き出された人たちの姿を厳しくも誠実に捉える演出をされてらっしゃる方」という印象があったからだとし、その上で「『MOTHER マザー』は、甘い考えでは絶対にチャレンジできない作品だと思っていたので、大森監督の厳しくも優しい視点というのは絶対に必要だと思った」と答えた。
また、実事件をモチーフにフィクションを描く、という難しさに関しては「企画のスタートはあくまで新聞記事ですが、プロットを作るときに脚本の港さんに最初お願いしたのは、事件の起こった土地で、どんな生活があって、どんな人がいる環境で彼(周平)は育ったのかについて取材していただいた」という。
つまり、実事件にはインスパイアされてはいるが「あくまでも“物語”は、こちらの想像の中で埋めていく作業。この母と息子の関係を映画が断罪してしまうということを避けたかった」と語った。

実事件と作品との距離の取り方問われた大森監督も「原作ものの映画を撮るときと同じ感覚なんですが“映画は映画だ”と。あんまり引っ張られちゃうといろいろ間違っていきそうな気がする」「事件は事件で裁判の記録もあり、犯罪者の視点から見てしまいますが(それは)僕の映画では必要ないかなと。一人の人間として秋子(母親)という人間をどう見つめるか、というのを考えています。そして、社会からどこかはみ出てしまった人たちに対して、僕たちと全く関係ない人たちじゃないんですよね。同じ社会で生活してきた人たちの中で生まれているわけで、人として、同じ地平で興味を持ちます。その人を見つめるという視点ですね」そこに「今、がんじがらめになっている社会が少しでも良くなっていくヒントがあるんじゃないかと思っている」と想いを明かした。

その大森監督の作家性について、SYO氏は、「社会というものが根底にあって、大森監督は、人は間違うものだ、ということをちゃんと描いてくださるところが好きです。人は間違うもので、それが真実であり、生物なんだよということを描かれていると思います」と語った。

続いて母・秋子を演じた長澤まさみさんの“ほかの女優とは違った強み”について大森監督は「経験も豊富だし、もちろん実力もあるし、でも、すごく現場で悩むんですよね」とそのギャップの面白さを語り、そして「肉体がこぼれ落ちるというか。それは俳優にとってはすごく大事です」と、ただいるだけで存在感を感じさせる女優としての凄みを絶賛した。

続いて行われたシンポジウム参加者からの質問では「見終わって知人におすすめする時、どうやって伝えたらいい?」という問いかけに対して、自身の体験を交えながら「一生忘れられない映画だよ、って勧めてあげてください」と答える大森監督からのメッセージや「カットされてしまったが印象的なシーン」「一番こだわったシーン」「秋子と周平が歩く“長い橋”に込められた意味」など観賞後ならではの貴重なトークが展開。

また、6歳の子供と一緒に観てしまったという母親の参加者からは「いまもずっと映画のことを考えていて、これからの自分の子育てについて考えさせられるいい機会になった。」と感想を伝えていただき、登壇者にとっては観客の方の感想を直接聞くことができた、貴重な1時間となった。

◆本イベントのアーカイブ映像も公開中:https://bals.space/theater/87/

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映画『MOTHER マザー』

INTRODUCTION
長澤まさみ×阿部サダヲ×《新人》奥平大兼×大森立嗣監督
母と息子。ひとつの殺害事件。実話をベースに描く感動の衝撃作——
男たちとゆきずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきた秋子。シングルマザーの彼女は、息子の周平に奇妙な執着を見せ、忠実であることを強いる。そんな母からの歪んだ愛の形しか知らず、翻弄されながらも応えようとする周平。
彼の小さな世界には、こんな母親しか頼るものはなかった。やがて身内からも絶縁され、次第に社会から孤立していく中で、母と息子の間に生まれた“絆”。それは 17 歳に成長した周平をひとつの殺害事件へ向かわせる……。
何が周平を追い込んだのか?彼が罪を犯してまで守ろうとしたものとは——?事件の真相に迫るとき、少年の“告白”に涙する。

あらすじ
17 歳の少年が起こした殺害事件。すべてを狂わせた彼の母親は、怪物(モンスター)?
それとも聖母(マリア)だったか——。
男たちとゆきずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきた秋子。
シングルマザーの彼女は、実の息子・周平に奇妙な執着を見せる。
幼い周平にとってもまた、頼れるものは母親しかいなかった。やがて身内からも絶縁され、次第に社会から孤立していく中で、母と息子の間に生まれた“絆”。それは成長した周平をひとつの殺害事件へ向かわせる——。
何が少年を追い込んだのか?事件の真相に迫るとき、少年の“告白”に涙があふれだす。彼が罪を犯してまで守りたかったものとは——?

出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野花
監督:大森立嗣 脚本:大森立嗣/港岳彦 音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:スターサンズ/KADOKAWA
製作:2020『MOTHER マザー』フィルムパートナーズ
(C)2020「MOTHER」製作委員会
公式サイト:mother2020.jp
公式Twitter:@starsands_movie #映画マザー

全国公開中

MOTHER マザー

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