東西分裂時代から現代まで。映画を通して今のドイツを知る『ドイツ映画祭「HORIZONTE 2019」』開催中
ドイツの今昔を知ることができる映画祭
3月8日(金)~3月15日(金)の8日間、東京・渋谷のユーロスペースにて『ドイツ映画祭「HORIZONTE(ホリツォンテ) 2019」』が開催。日本未公開の作品をメインに、現代ドイツ映画の注目10作品を紹介する映画祭となっており、映画を通して、戦後の、現代のドイツという国を体感できるようになっている。
初日となる3月8日、LOFT9 Shibuyaにて、ドイツ映画界の最重要人物たちが来日記者会見を行い、ドイツ映画の魅力をPRしたほか、モデル・女優の市川実和子もアンバサダーとして登場した。
ドイツは、2018年は406本のドイツ国内で製作された映画が外国で紹介され、観客動員数は2640万人となっており、映画文化が非常に盛んだ。
そうした中、2年ぶりに日本で開催された本映画祭は、ドイツ文化の振興を担うゲーテ・インスティトゥート東京とジャーマン・フィルムズとの共催。
記者会見に登壇したのは、ドイツ映画賞7部門受賞作『ロミー・シュナイダー〜その光と影〜』の監督エミリ・アテフ、『希望の灯り』『未来を乗り換えた男』の2作品で主演を務め、ベルリン国際映画祭シューティング・スター賞、ドイツ映画賞主演男優賞に輝いた今ドイツで一番の注目俳優フランツ・ロゴフスキ、日本プレミア上映となる2作品の監督、ラース・クラウメ(『僕たちは希望という名の列車に乗った』)、トーマス・ステューバー(『希望の灯り』)。それぞれの作品上映後にQ&Aが行われる。
今のドイツのアクチュアルな映画を写す鏡
記者会見冒頭に登壇した、ドイツ連邦共和国大使館広報文化部のジャメル・カタクパオ=トゥレー氏は、「ドイツの映画を見ることは、ドイツという国を知る“窓”となるでしょう。」と語り、
また、本映画祭を主催するゲーテ・インスティトゥート東京・所長のペーター・アンダース氏は、「今のドイツの一番アクチュアルな映画を写す鏡と思っていて、ドイツの映画監督が何に心を動かされているのか?というのがわかる幅広いラインナップです。」と、本映画祭が重視するテーマについて語った。
東西ドイツの分裂の裂け目は今も残る
– 東ドイツとの壁崩壊の映画を今なぜ描こうとしたのですか?
トーマス・ステューバー(映画『希望の灯り』監督)
ドイツを分断していた“裂け目”。それは人々の間にもあるもので、フィクションなんですけども、その部分に光をあてて、その人たちの声を届けたいと思ったからです。
– 東ドイツの存在は今のドイツの人々にとってどういう思いがありますか?
ラース・クラウメ(『僕たちは希望という名の列車に乗った』監督)
1956年の東ドイツの状況を今の若いドイツ人が見てほしいと思い、この作品を撮りました。
壁が崩壊してから30年経ちますが、まだ今のドイツには当時の分断されていた爪痕は残っています。
統一からこれだけ時間が経ってもまだ諸問題が完全に解決されているわけではありません。
解決までは何世代もかかることだということは多くのドイツ人が共有していることです。
日本の映画は食事のシーンが多い
– 日本の文化・映画で影響を受けたものは?
エミリ・アテフ(『ロミー・シュナイダー ~その光と影~』監督)
是枝監督の『そして父になる』が好きです。人に対する眼差しがとても優しいというところに惹かれます。
それ以来、是枝監督の作品は全部観ています。
あと、娘がジブリ映画が大好きで私も観るのですが、ジブリ映画はどれもイマジネーションを掻き立てられる素晴らしい作品です。
自然の描写が特に私の心に響きます。自然の描写という意味では、河瀬直美監督の作品も私たちが知っているのものとは違う自然の描写を感じます。
そして、日本の映画で特徴的だと思っているのは、食事のシーンがとても多く描かれているということです。
それは観るものの感覚に訴えかけてくる、そそる食べ方で、ドイツの映画には無いものです。
ただ、ラーメンをすすってるだけのシーンでも、刺激されるので、お腹がすいている時に日本映映画を観てはいけないなと思います(笑)
オープニングセレモニー
記者会見の後のオープニングセレモニーでは、駐日ドイツ大使・ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン氏が登壇し、本映画祭について「ドイツの文化を垣間見ることができる素晴らしい機会だと思っています。」と語った。
また、アンバサダー・市川実和子は「ドイツ発祥のバームクーヘンですが、今のドイツの方はあまり食されないということを聞いて、日本国内で独自発展したバームクーヘンをおみやげに。」と、登壇者ひとりひとりに手渡した。
ドイツ映画祭「HORIZONTE 2019」
公式サイト:https://www.goethe.de/japan/horizonte2019
予告編:
3月8日(金)~3月15日(金)ユーロスペースにて開催中
[写真・記事:Jun Sakurakoji]
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