• HOME
  • News
  • インタビュー , 映画
  • 【インタビュー】山下リオが到達した“憑依”の境地――映画『遺愛』で描く、慈愛と呪いが交錯する不穏な境界線
映画『遺愛』

【インタビュー】山下リオが到達した“憑依”の境地――映画『遺愛』で描く、慈愛と呪いが交錯する不穏な境界線

酒井善三監督と大森時生プロデューサーが贈る恐怖映画『遺愛』。主演の山下リオが、介護に疲れ「ナニカ」の呪いに苛まれる主人公を圧倒的熱量で演じた。撮影中にポルターガイストも体験したという彼女が、役とシンクロし「呪い」すら受け入れた壮絶な舞台裏を語る。(読者プレゼントあり)

酒井善三監督と大森時生プロデューサーが手掛ける映画『遺愛』は、2026年6月公開の“愛と呪い”が交錯する恐怖の物語だ。
父の死を機に母の介護を始めた主人公・藤井佳奈(山下リオ)の周囲で起こる不可解な異変を描く。母の抜け殻に入り込んだ“ナニカ”による呪いなのか、介護に追い詰められた佳奈の妄想なのか、現実と虚構が交錯する物語が展開される。ロッテルダム国際映画祭で「ホラーの定義を変える」と絶賛された本作は、家族への慈愛が変貌する「愛と呪い」の真の姿を映し出す。

山下リオ インタビュー&撮り下ろしフォト

‐ 早速ですが、山下さんのコメントで「脚本を読んだ際に、誰よりも映像化を観たいと熱望した」とありましたが、この物語に感じられた印象と、特に強く惹きつけられたポイントを教えてください。

山下リオ(主演・藤井佳奈 役)
そうですね。でも本当に、正直に言うと一回読んだだけでは内容がよくわからなくて(笑)。でも、この脚本に漂う不穏さみたいなものが、読むごとに自分の中で恐怖が増していくというか……。得体の知れない雰囲気があるなというところから、「これが映像になった時はどうなるんだろう」っていうワクワク感がすごくありました。この作品を書く監督に対しても、すごく興味が湧いたという感じでしたね。

映画『遺愛』

山下リオ

‐ 本作は「ジャンルレスな映画」とも表現されていますが、演じる上ではホラーやサスペンス、あるいは人間ドラマといった側面をどのように意識されたのでしょうか。

山下リオ
でもやっぱり、感情に対して嘘をつくということはなかったので、今までのお芝居と特に変わりはないというか、自分で差をつけたつもりはないです。自然に何か物事が起こったことに影響を受けて、反応していくという感じでしたかね。

映画『遺愛』

‐ 佳奈が次第に正気を失っていくように見える、あの「憑依したかのような」迫真の演技に圧倒されました。佳奈の精神状態をどのように捉え、ご自身の気持ちとシンクロさせていったのですか?

山下リオ
ありがとうございます。今は高齢化社会ですし、介護というものは私自身も「明日からやることになるかもしれない」という部分で、すごく身近に感じていました。
私の祖父母も認知症の症状があったので、愛する人に自分を認識してもらえず、 話しかけても私自身が「そこにいるのに、そこにいないように感じてしまう」悲しさと、空回りする愛には、すごく共感できました。
感情を失ったような母は、抜け殻のように見えますが、実は佳奈自身も空っぽだったりして……彼女がしていた介護の愛は、結局「自分が生きている実感が欲しい」という自己愛なのかな、と。そういう愛が歪な形に変化していく映画だなと思っていました。

‐ これまでも『雪子 a.k.a.』などで複雑な役を演じてこられましたが、本作の佳奈役は山下さんの俳優キャリアにおいてどのような位置付け、あるいは挑戦になりましたか?

山下リオ
挑戦、そうですね……。私は感覚が鋭いのもあって、日常的に「あ、幽霊ついたな」とか思うタイプなんです(笑)。これまではお芝居にその感覚は必要ないと思っていましたが、今回は「どんどんついてくれ、呪われるなら呪ってください。それが映画につながるなら」と割り切って、その感覚を研ぎ澄ませていました。
感情的に演じつつも、ある意味「脳みそが何も指導していない物体の瞬間」があるような、身体を超えた感覚の新鮮さを感じながら演じていました。

映画『遺愛』

‐ 山下さんは佳奈という人物を、改めてどういう人物だと解釈されていましたか?

山下リオ
特にやりたいこともなければ、友達、 恋人もいないような……何に熱意を持って生きていいか分からない人という印象です。ただ時間だけをすり減らして生きてきたように感じている。
だからこそ、自分の居場所や役目を「介護」に見出したんだと思います。私の人生の中にもそういった心が動かない時期はありましたし、決して突飛な存在ではありませんでした。

‐ 母への愛が「ナニカ」に変わっていく瞬間を、演じる上ではどのあたりだと解釈されていましたか?

山下リオ
佳奈の目線で言うと、やっぱり確信になったのは、本人に「あなた、お母さんじゃないの?」と聞いたシーンですね。知人の不幸なニュースがあった時に、お母さんがそれを笑っているように感じて、手に呪いの人形のようなものを持っていた……あそこが佳奈としての確信だったなとお芝居をしていて思いました。

映画『遺愛』

場面写真  ©︎2026「遺愛」製作委員会

‐ 劇中に登場する、赤い字で書かれた母のメモを見た時の佳奈には、どのような感情が湧き上がったのでしょうか。

山下リオ
あれこそ「愛」だと思いました。ずっと母の中に探し求めていた愛を、文字で実感した瞬間というか。認知症で掴みきれなかった「私を愛してくれている母」がそこにあった感覚でした。

映画『遺愛』

‐ 酒井善三監督の現場での演出はどのようなものでしたか?

山下リオ
とてもスムーズで、何度もテイクを重ねることもなく、論理的に淡々と進められる方でした。監督自身はいつも冷静で、感情的な私とは全然違う感覚の方でしたね。監督自身も掴みきれないところがある「未知な人」で、質問をしても「本当に考えてないんだよ」とおっしゃったり(笑)。でも、監督が出したOKを信じていくという感じでした。

‐ 監督は答えを俳優に委ねるタイプだったのでしょうか。

山下リオ
感情の部分を任せてくださる、本当にありがたい現場でした。答えをはっきり言われる監督さんが多い中で、おっしゃらないのは珍しいなと。だからこそ、嘘のないリアリズムが描けたんだと思います。

映画『遺愛』

‐ 完成した映像をご覧になっていかがでしたか?

山下リオ
想像を超えたとんでもない映画だなと思いました。最初から最後まで気持ち悪い不穏さがある中で、一種の爽快感や愛を感じたり。見る人によって全然違う映画になると思います。
監督はホラーではなく「恐怖映画」とおっしゃっていましたが、人物の心情や「愛と呪い」が浮かび上がってくる描き方がすごく面白いです。

‐ 佳奈の妄想なのか、実際に呪いが起きているのか、演じる側としては意識されていましたか?

山下リオ
自分の中では正解というか、佳奈が信じているもの、佳奈が見ている世界を明確に持って演じていました。ただ、監督の中での正解は私も知らないので、そこは見た方に委ねたいと思います。

映画『遺愛』

‐ マキタスポーツさんや小川あんさんとの共演について教えてください。

山下リオ
マキタスポーツさんは元々知り合いだったので、一番緊張せずにできました。あの飄々とした雰囲気が、この不穏な空気にマッチしていて素晴らしかったです。
妹役の(小川)あんちゃんとは本当に仲良くなって、撮影期間中に彼女の誕生日をコース料理とワインでお祝いしたりしました(笑)。そういうお芝居以外の積み重ねが、あの複雑な姉妹の愛の表現に繋がったのかなと思います。

映画『遺愛』

場面写真(マキタスポーツ/小川あん)  ©︎2026「遺愛」製作委員会

‐ 撮影現場の雰囲気や、印象に残っていることはありますか?

山下リオ
とにかく酒井監督は撮るのがめちゃくちゃ早いんです! スタッフさんの連携も取れていて、集中して没入できる現場でした。スケジュールも素晴らしくて、休みもしっかりあって健康的でしたね。これは監督の論理的な構成力のおかげだと思います。

‐ 「現場は和やかだった」とのことですが、何か不気味なことは起きませんでしたか?

山下リオ
実は、自宅でポルターガイストが起きました(笑)。物が落ちたり動いたり……久々の心霊体験で恐怖でした。こういう映画を撮っていると、より感じやすくなってしまうのかもしれませんね。

映画『遺愛』

 

‐ ロッテルダム国際映画祭で「ホラーの定義を変える」と絶賛されましたが、山下さん自身、本作を通じて「恐怖」についての新たな発見はありましたか?

山下リオ
「分からない」ということが一番怖いんだな、と思いました。目に見えない心や、信じてきたものが分からなくなること。人の心なんて自分にしか分からないからこそ恐ろしい。現場でもその恐怖を体感していたかもしれません。

‐ 最後に、これから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。

山下リオ
家族愛を描いたヒューマンドラマでもありますし、日常にスッと入ってくる気持ち悪さという部分で、見たことのない新たなジャンルの映画になっていると思います。最後の最後まで見逃すシーンは一つもないので、ぜひ劇場で体感してください。

映画『遺愛』

山下リオ(やましたりお)プロフィール
1992年10月10日生まれ、徳島県出身。2007年3月、「三井のリハウス」12代目リハウスガールに選ばれる。
ファッション誌のモデルなどを経て、ドラマ『恋する日曜日 第3シリーズ』(2007)で俳優活動を本格化。2008年にはドラマ『ラブレター』、映画『魔法遣いに大切なこと』(2008)で主演を務める。
代表的な出演作に、映画『寝ても覚めても』(2018)、『あのこは貴族』(2021)、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013)など。最新主演作は、映画『雪子 a.k.a.』(2024)。

■山下リオさん直筆サイン入りチェキ読者プレゼント

山下リオさんの直筆サイン入り撮り下ろしチェキを抽選で1名様にプレゼントします。
NB Press OnlineのX(旧Twitter)アカウント(@NB_Press_Online)をフォローの上、下記の本記事紹介&プレゼント応募告知ポストのRP(リポスト)で応募完了。
ご当選者には、XのDMにてお知らせいたします。(参考:個人情報の取扱いについて
応募締め切り:2026年7月19日(日)23時59分

映画『遺愛』

■撮り下ろしフォトギャラリー

[インタビュー・写真:三平准太郎/ヘアメイク:牧野裕大(vierge)/スタイリスト:髙野 智史]
衣装クレジット:
ワンピース ¥118,800※参考価格(ジョセフ/ジョセフジャパン info@joseph-jp.com)
シューズ ¥52,800 (カチム/カチム info@katim.sc)

映画『遺愛』

《INTRODUCTION》
『このテープもってないですか?』(2022)、『SIX HACK』(2023)などでタッグを組んだ酒井善三監督と大森時生プロデューサー(テレビ東京)が手掛ける劇場長編映画『遺愛』が、2026年6月に全国公開いたします。
父の死をきっかけに、母の介護を始めた女性・藤井佳奈。やがて彼女の周囲では説明のつかない異変が次々と起こり始めます。それは、母の抜け殻に入り込んだ“ナニカ”による呪いなのか――それとも、介護に追い詰められた娘の心が生み出した虚構なのか。家族への慈愛に満ちた介護が、次第に不穏さと違和感をまとい、やがて恐怖へと変貌していく。“現世に遺(のこ)された愛”の本当の姿を描く、新たな“恐怖映画”が誕生しました。
主人公・藤井佳奈を演じるのは、『雪子 a.k.a.』での熱演が話題を呼んだ山下リオ。母の介護に疲れ、次第に常軌を逸していく女性の狂気を体現しています。
監督は、短編映画『カウンセラー』でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭SKIPシティアワードを受賞し、近年は配信ドラマ『フィクショナル』(2024)を手掛けるなど注目を集める酒井善三。
企画プロデュースは、『フェイクドキュメンタリーQ』、『TXQ FICTION「神木隆之介」』、『イシナガキクエを探しています』『UFO山』などのフェイクドキュメンタリー作品や、展覧会イベント「行方不明展」「恐怖心展」などを手掛けるテレビ東京の大森時生が務め、本作が初の劇場映画プロデュースとなります。
また本作は、オランダで開催された第55回ロッテルダム国際映画祭にてワールドプレミア上映され、現地の観客からは「ホラーの定義を変える」「かつてない恐怖の解釈」といった声が寄せられるなど、大きな反響を呼びました。“愛と呪い”が交錯する恐怖の物語、是非ご注目ください。

《STORY》
実家で母の介護を続けていた藤井佳奈(山下リオ)が、ある日、妹・杏里(小川あん)のもとを訪ねてくる。
佳奈は血色が悪くやつれた様子で、自分たちの母が“もう母ではない、ナニカになってしまった”ことを告げる。
父の死を機に実家に戻り、献身的に母の介護を続けていた佳奈。だが彼女は、話しかけてもほとんど無反応で、食べ物をこぼし、部屋を散らかし、ときに突然噛みついてくる母に対して次第に苛立ちを募らせ、疲弊していく。
そんななか、佳奈の周囲で不幸な出来事が立て続けに起こり、彼女はその原因が母――今はもう母ではない“ナニカ”――による呪いだと考えるようになる。
そしてその呪いの次の標的は、一家と懇意の精神科医・熊谷(マキタスポーツ)、さらに次は勇太の番なのだと。
果たして、佳奈が言うように本当に呪いが存在し、家族に危険が迫っているのか。
それとも、介護に疲れ心身ともに限界に達した彼女が生み出した偽りの真実なのか。佳奈と共に母の暮らす実家へと向かった杏里は、そこで驚くべき光景を目にする。

主演:山下リオ
出演:小川あん 藤井京子 / マキタスポーツ
監督:酒井善三
企画プロデュース:大森時生(テレビ東京)
プロデューサー:藤山晃太郎(テレビ東京) 鈴木祐介(ライツキューブ) 百々保之(DrunkenBird)
製作委員会:「遺愛」製作委員会(テレビ東京 ライツキューブ)
制作プロダクション:DrunkenBird
配給:ライツキューブ
©︎2026「遺愛」製作委員会
公式サイト:https://tx-iai-movie.jp
公式X:@iai_movie
公式Instagram: @iai_movie
公式TikTok:@iai_movie

本予告

YouTube player

2026年6月19日(金)全国公開

映画『遺愛』

ポスタービジュアル

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA