
松下洸平「広瀬すずが結んでくれたネクタイが短すぎて…」映画『遠い山なみの光』完成披露舞台挨拶
2025年8月7日、東京都千代田区のイイノホールにて、映画『遠い山なみの光』の完成披露舞台挨拶が開催され、広瀬すず(悦子 役)、二階堂ふみ(佐知子 役)、吉田羊(1980年代の悦子 役)、松下洸平(悦子の夫・二郎 役)、三浦友和(二郎の父・緒方 役)、そして石川慶監督が登壇し、作品への深い想いや撮影秘話が語られた。(動画&フォト)
舞台挨拶レポート
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登壇者からの挨拶と作品への期待
まず、登壇者全員が観客へ感謝の言葉を述べた。
広瀬すずは、「長崎時代の悦子を演じさせていただきました。楽しんでいただけるか、どう伝わるのかをすごく楽しみにしていました」と語り、観客への期待感を高めた。
二階堂ふみは、昨年の暑い時期に撮影されたことに触れ、「良い作品ができたので、この作品の世界観に浸っていただければと思います」と呼びかけた。
吉田羊は、「ちょっとトリッキーなところもある映画なので、この舞台挨拶が皆様の鑑賞の一助になれば嬉しいです」と、作品の多面性を匂わせた。
松下洸平は、この素晴らしい作品の一部になれたことに感謝を示し、「一度見ただけでは読み取りきれない複雑な人間模様を、何度でも映画館でご覧いただきたいです」と、繰り返し鑑賞することの意義を強調した。
三浦友和は、挨拶の冒頭で「この映画はミステリー映画です」と述べ、イベント前後の日程が広島・長崎の原爆の日であることに触れ、「それを心に留め置きながら映画を見ていただけると、また違った見方ができるかもしれません」と、作品に込められた歴史的背景への意識を促した。
最後に、企画始動から約5年で完成を迎えたという石川慶監督は、「こんな素晴らしいキャストの皆さんに集まってもらって、こんなに大きな映画に育った」と、感慨深い様子で語った。
キャストが語る役柄と作品への想い
広瀬すずは、戦後長崎を生きる悦子の役を演じた感想を問われ、「なかなか言葉がすっと出てこなくて、『いやあ』としか言えませんでした」と、言葉にならないほどの深い感動を表明した。
完成した作品については、「だんだん紐が緩んでいく感じだけど、急にキュッと縛られるような姿もありました。登場人物たちの顔がどんどん重なって見えてくる、不思議な感覚でした。一度見ただけではまた見たくなるような、ずっしりと受け止めるものがたくさんありました」と、作品の奥深さと多層的な魅力を表現した。
二階堂ふみは、佐知子役のキャラクター構築について、「広島や長崎の原爆の日であったり、戦争体験者の方々が戦後どのような思いで暮らしていたのか、どのような人生を辿っていたのかという当事者性を大切にしたいと思って演じさせていただきました」と、役作りの根底にある意識を明かした。
広瀬すずと二階堂ふみの共演シーンについて、広瀬は二階堂を「すごく力強くて、潔ぎいい目」と評し、二階堂を通じて悦子の景色が実感できたことに喜びを表した。
一方、二階堂は広瀬が演じる悦子について「しなやかさと静かな強さ」があり、「座長としてすごく頼れる存在」だったと称賛した。石川監督は、二人の役が複雑であったため、悩みながらの演出だったが、「一緒に悩みながら、悩みも聞いてもらいながら、話し合いながら進んでいく、すごく丁寧に悩ませてもらえた」と、感謝の気持ちを伝えた。
吉田羊は、イギリスでの撮影について、「監督もスタッフさんも全員英語でコミュニケーションを取っていて、言葉を聞き取る大変さはありました」と振り返った。
しかし、「その(英語を)浴びる環境はまさに悦子が過ごしている環境でもありましたので、まさにこんな感じかなと思いました」と、役柄への没入感を語った。
さらに、「母国語ではないもどかしさもありましたが、そのおかげで余計なことを考えずに済み、芝居において脱散的なことを考えずに済んだのは役者としてはすごく幸せな時間でした」と、制約が演技に良い影響を与えたことを明かした。
石川監督も、吉田が「英語の言葉の問題とかもう関係なく、本当にそのハードルは余裕で超えてきてくれた」と、そのプロフェッショナリズムを絶賛した。
カンヌ国際映画祭での貴重な体験
本作は第78回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、5月15日にワールドプレミアが行われた。
広瀬すずは、10年ぶり2度目のカンヌ参加だったが、「10年前の記憶があまりなくて、カヌー国際映画祭という大きさやすごさが全然分からなかった。『海外に行ける』くらいのテンションで、今思えば、あの時の自分を殴ってやりたいくらい贅沢な経験でした」と、当時の初々しい心境を告白し、会場の笑いを誘った。そして続けて、「映画の愛に溢れた街で、素晴らしい反応をいただけたのは夢のような時間でした」と、改めてその価値を噛みしめている様子だった。
松下洸平は、カンヌでのスタンディングオベーションに「感極まり、泣く一歩手前でした」と語った。
しかし、周囲の共演者が毅然とした表情で拍手を受けていたため、「僕一人泣いている場合ではないなと思って、ぐっとこらえました」と、感動的ながらもユーモラスなエピソードを披露した。続けて松下は、「多く経験させていただけることではないので、貴重な経験をさせていただきました」と感謝の意を述べた。
三浦友和、広瀬すず、松下洸平、石川慶監督の4人はカンヌで食事に行ったと語られ、三浦友和は「思ったより食事代が高かったな」と会場の笑いを誘いつつ、「年配が声かけないとみんな来てくれないんでね。自分から誘うんですよ」と、率先して食事会を提案したことを明かした。
吉田羊は、カンヌでトム・クルーズの偽物に出会ったというユニークな体験を披露した。SPまで伴っていたため本物だと思い、こっそり自撮りを試みたが、よく調べると偽物だったという。しかし、吉田は「SPの人も本気で演じている。そういう雰囲気すら楽しめるのは映画祭ならでは」と、ポジティブにその体験を語った。
原作者カズオ・イシグロとのやり取りと役作り
石川慶監督は、原作者であるカズオ・イシグロとのやり取りの中で、「『これはあなたの映画なんだから、原作に忖度しすぎてすごく良くない映画になることってすごく多いので、もう本当に自信を持って、あなたの映画を作りなさい』と言っていただいたのがすごく印象に残っています」と、イシグロからの力強い後押しがあったことを明かした。
1950年代の長崎のセットや衣装について、二階堂ふみは「セットが素晴らしかったです。一気に映画の世界観に入っていける、役作りの中ですごく助けられる部分がたくさんありました」と、そのリアリティを絶賛した。
広瀬すずは、撮影前にセットに入り、「二人でご飯食べてたらこの位置に座るよねとか、佐知子さんが来たらこういう距離感かなとか、寝る方向性とか布団を引く向きとかも、生活のディテールをみんなでじっくり考えたりする時間を設けていただけて、それがすごく自分にすっと入ってくる感じがあった」と、細部までこだわった役作りができた喜びを語った。
松下洸平は、悦子の夫で傷痍軍人の二郎役を演じたことについて、「戦争を体験しているわけではありませんが、役柄を通してこの日本で何があったのか、戦中戦後、人々がどう変わっていったのかということを僕自身非常に考えさせられました」と述べた。
さらに、「日本人として忘れてはいけないこととして、二郎という役をやらせていただけたのは本当に光栄に思いましたし、考えるきっかけをいただけたような気がします」と、歴史と向き合う機会を与えられたことに感謝した。
吉田羊は、松下洸平が演じた二郎役について、「傷を抱えてもあからさまに露呈することもできない、昭和の日本男児ならではのプライドがひしひしと伝わってきました」とコメントし、「自分が奥さんとしてそばにいたら、彼が抱えているこの傷にどうやったら寄り添えるのかなということを日々考えながら生活するだろうなと思いました」と、役柄への深い共感を示した。
広瀬すずと松下洸平の共演エピソードでは、広瀬が松下のネクタイを結ぶシーンで、初めてのネクタイなので、練習したにもかかわらず本番で「幼稚園児くらい、こんな短いネクタイになっちゃって」と失敗したことを明かし、会場は笑いに包まれた。
松下は「なんでも器用な広瀬すずさんだけど、ネクタイは結べないんだと驚きました(笑)」
それを受けて広瀬は「撮影本番中なので、そのままお芝居を続けてくれる松下さんはいい人だなと思いました」とコメントを返し、二人の良好な関係性が垣間見えた。
その現場にいた石川監督は「こちらからはそのネクタイの様子が見えず、いいお芝居をしているなって思っていたので、その後2人がコソコソ笑い合っていたのがなんでかなって思ってました(笑)」と振り返った。
三浦友和は、広瀬すず、松下洸平とは初共演だったが、「初共演という距離感が今回のお芝居では生きたかなと逆に思っています。つかず離れずみたいな、お互いに気を使っている感じとかですね、そういうものがあったから良かったです」と、新しい共演関係が作品に良い影響を与えたことを語った。
自身が演じた二郎の父・緒方役については、「戦前・戦中にかけて軍国主義を子供たちに教え込んだ人間」であり、「戦後の変わり様を全部見ていて、人々の生活も変わっていくのを見て、改めて自分を振り返るとすると、後ろめたさも出る。だけど軍国主義をやってたことを全否定するのも嫌だっていう、その中にはお国のためを思って良いこともあったんだっていうことを無理やり思い込もうとしている人」と、役が抱える葛藤を詳細に説明した。
石川慶監督は、改めて撮影現場を振り返り、「とても和やかに現場は進んでいて、皆さん、プロフェッショナルな方たちなので、緊張感のあるシーンの時にはカメラの前に立つと一気にそのシーンになっていました」と、キャスト陣の集中力と演技力を称賛した。
広瀬すずも、石川監督の人柄により現場は和やかな空気だったと語りつつ、「監督が『ただの戦争映画にしたくない』とおっしゃっていたことがすごく印象的で、台本に自分が見逃しているものがあるんじゃないかと思うようなことがたくさんあるんじゃないかと思いました」と、監督の演出意図への深い理解を示した。
そして、「監督も『まだ僕も迷ってるんです』と言って、現場でリハーサルをしたら『そっちの方向性もいいですね』『こっちもいいですね』みたいな、言葉に表すのが難しいシーンとかもいろんなことを共有してくださったので、とても貴重な経験だった」と、監督との共同作業が自身の成長につながったと感謝を述べた。
結びのメッセージ
最後に、石川慶監督は、「昨日が広島、明後日が長崎。やはりこういう時期に完成披露できるのは感慨深いです。色々トリッキーな映画と思われそうですが、そんなことはなく、本当にいろんな見方ができる映画になっています。皆さんの見方が正解です。素直に見て感じたものを、皆さんの言葉で伝えていっていただければ、これ以上ない喜びです」と、観客それぞれの解釈を尊重するメッセージを送った。
主演の広瀬すずは、「この作品を通して、人の幸せだったり、平和を願うことであったり、人それぞれ見ている方向性、求めている方向性が違うんだなと感じました」と語り、「その中で強く生きた女性たちの姿を、ぜひこの大きなスクリーンで多くの方に見ていただける日をとても楽しみにしていました」と、映画への期待を込めて締めくくった。
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[写真:山田健史/動画・記事:三平准太郎]
映画『遠い山なみの光』
《INTRODUCTION》
1989年にイギリス最高の文学賞であるブッカー賞、2017年にノーベル文学賞を受賞し、二つの世紀を代表する小説家となったカズオ・イシグロの鮮烈な長編デビュー作「遠い山なみの光」を、『ある男』(22)で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞含む最多8部門受賞を果たした石川慶監督が映画化した『遠い山なみの光』は9月5日(金)にTOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショーいたします。
ある女が語り始めたひと夏の記憶
その物語には心揺さぶる〈嘘〉が隠されていた
1950年代長崎と1980年代イギリスを生きる3人の女たちの知られざる真実に涙溢れる、感動のヒューマンミステリー
日本人の母とイギリス人の父を持つニキ。大学を中退して作家を目指す彼女は、長崎で戦争を経験した後イギリスへ渡った母の悦子の半生を綴りたいと考える。
娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは30年前、戦後間もない長崎で暮らしていた頃に出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。だが、ニキは次第に母が語る物語に違和感を感じ始め――。
長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに悦子の夫に松下洸平、その父親に三浦友和と、日英映画界の煌びやかな至宝がそろった。そのほか、日本パートには柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜(子役)らが出演。豪華実力派キャストが集結し、物語を彩ります。
《STORY》
日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、執筆のため、異父姉の死以来足が遠のいていた実家を訪れる。
母の悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。
夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間を共にする中で、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、佐知子という女性と、その幼い娘の夢だった――。
- 場面写真:広瀬すず/二階堂ふみ
- 場面写真:広瀬すず(主人公・悦子 役)
- 場面写真(広瀬すず)
- 場面写真:二階堂ふみ(佐知子 役)
- 場面写真(二階堂ふみ)
- 場面写真(吉田羊)
出演:広瀬すず 二階堂ふみ 吉田羊
カミラ・アイコ 柴田理恵 渡辺大知 鈴木碧桜 松下洸平 / 三浦友和
原作:カズオ・イシグロ/小野寺健訳「遠い山なみの光」(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集:石川慶『ある男』
製作幹事:U-NEXT
制作プロダクション:分福/ザフール
共同制作:Number 9 Films、Lava Films
配給:ギャガ
助成:JLOX+ ⽂化庁 PFI
©2025 A Pale View of Hills Film Partners
公式サイト:https://gaga.ne.jp/yamanami/
公式サイト:https://gaga.ne.jp/yamanami/
本予告
2025年9月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
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