河合優実×佐藤二朗×稲垣吾郎が「生きている!」と感じる瞬間とは?映画『あんのこと』公開記念舞台挨拶【完全レポート】
2024年6月8日、丸の内TOEIにて、映画『あんのこと』公開記念舞台挨拶が行われ、河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、入江悠監督が登壇。いよいよ全国公開となった今の想いを明かした。
舞台挨拶【完全】レポート
■最初のあいさつ
河合優実(香川杏 役)
この作品は自分にとってどの作品とも比べがたい特別なものなので、昨日から公開されて、皆さんが見てくださることにすごく意味があるんだと今、感じています。
稲垣吾郎(桐野達樹 役)
この作品は、僕らにとって本当に大切な作品で、ようやく皆さんに観ていただけてとても幸せです。もしご覧になって気に入っていただけたら、皆さんの大切な映画の仲間の一つとして入れていただけると嬉しいです。
そして、僕も皆さんのいろんな感想も聞きたいので、見終わった後、お友達とかSNSとかで感想を伝えていただけるととても嬉しく思っています。
入江悠(監督・脚本)
元は一つの新聞記事に掲載された事件だったんですけど、なかなか抱えきれないものをそこから受け取って、ここにいらっしゃる素晴らしい俳優の皆さんと作って、ようやく公開にたどり着きました。
映画を観終わったら、是非一緒に『あんのこと』を考えていただけると嬉しいです。
■それぞれの役を演じてみた想い
‐河合さんはインタビューでも、モデルになった方に話しかけながら現場に立っていたとおっしゃっていましたが、こうして映画が公開された今のお気持ちは?
河合優実
この映画は、さっき監督が言ったように一つの新聞記事から作られていて、そこに登場する方はハナさん(仮名)っていう方で、その方に思いを馳せることから始まったんですけれども、昨日、私、別の作品の撮影をしていて、撮影の帰りに車の中で、この感想を読んだんです。でも簡単ではなかったですし、ハナさんのことを考えて映画にするっていうことにずっと恐れがありましたし、そういうものが、皆さんが語ってくれた感想の言葉を見ていて、すごく別の気持ちに初めてなって。
ハナさんのことや、“あん”のことを観てくださった方が真剣に考えてくださったのが伝わってきて、そのことが本当に嬉しいです。一人でも多くの方に観ていただきたいなと思っています。
‐今日も満席となっていますが、それだけこの映画が届いているということなんですよね。
河合優実
満席と聞いて、心から良かったなと思っています。
‐佐藤さんはコミカルなお芝居もされますが、今回はとてもシリアスでした。どんなところを心がけて演じられましたか?
佐藤二朗
(上映前の舞台挨拶なので)ネタバレになるので言えないこともあるんですけども、ある種の矛盾を抱えた・・・これはネタバレは大丈夫かな?
稲垣吾郎
大丈夫です。このあと2時間後に皆さんわかってますから。
佐藤二朗
そういう問題じゃない!だったら何言ったっていいじゃないか!(笑)
(会場笑)
佐藤二朗
そういう複雑な人間でもあって、でも矛盾を抱えている人間ってわりとそうだと思うから、そういう厄介な生き物である、人間らしい生々しいキャラクターを演じるのは、やり甲斐がありましたし、やりたいと思いました。
‐稲垣さんはジャーナリストの役としてオファーを受けたときのお気持ちは?
稲垣吾郎
事実に基づいたお話ということで、脚本を読ませていただいた時は、衝撃と動揺がありました。本当に胸が張り裂けそうな思いで、その時の気持ちというのは今でも忘れないんですけれども、でもその時の気持ちを大切に思いながら、忘れずに。撮影中はとにかくこの“あん”ちゃんの声、心の叫びを一人でも多くの方に伝えたいなという思いで取り組んでいました。
そして、ジャーナリストという役は、ある種の矛盾を抱えている・・・ネタバレになるので詳しくは言えないですが、葛藤と闘う役です。板挟みになって。
でも、そういうのも大切にしながら、前半は、比較的僕が演じる役の目線で、ストーリーをフラットに見ていくことができるんじゃないかなと思ったので、そんなことも考えながら演じました。僕もとてもやりがいのある、そういった作品に出会えました。
■河合優実への手紙
‐実際の話しを映画化されたということで、監督はそれだけ覚悟があったんじゃないかなと思いますし、さらに、河合優実さんにお手紙を書かれたと伺いました。
入江悠(監督・脚本)
そうなんです。でも、佐藤二朗さんと稲垣吾郎さんには書いてなくて・・・さっきそれを裏で詰められたんですよ。
佐藤二朗
なんでそれを言うの?
稲垣吾郎
まぁでも、河合さんは主演ですからね。
でもどういうことですか?詳しく。
佐藤二朗
ほんと、どういうことですか?
入江悠(監督・脚本)
私は、男兄弟で男子校なんで、(佐藤さんと稲垣さんとは)すごくしゃべりやすいんです。
佐藤二朗
いやぁ、なんか言いくるめられた感じだなぁ。なんか。
稲垣吾郎
それで、優実さんと会ったりすると・・・?監督はシャイですからね。
入江悠(監督・脚本)
そうですし、女性に役どころとか、深いところみたいなのを喫茶店で喋りましょうとかなっても言えなくないですか?
佐藤二朗
今回の“あん”のキャラクターを考えると、ちょっと喫茶店では話せないね。
入江悠(監督・脚本)
じゃ、どこで話すの?ってなるじゃないですか。
それで手紙にしたためたんです。僕はこう思っているということを。
佐藤二朗
便箋何枚くらいで?
入江悠(監督・脚本)
けっこう推敲したんで・・・
佐藤二朗
推敲した!?
入江悠(監督・脚本)
手書きじゃないですよ。パソコンで打って。
稲垣吾郎
でも嬉しいよね。監督からいただくと。
ちなみにどんな内容だったの?
河合優実
えっと(笑)
今おっしゃったように、言葉で伝えるのが難しいじゃないですか。どういう心づもりで作品の取り組もうと思ってるのかとか、役のこととか。そういうとてもセンシティブなことでもありますし、大切に触れなきゃいけない話だから、言葉を選んで書いてくださってるっていうのがすごく分かる内容でした。
なので、自分の想いを爆発させた文章というお手紙ではなくて、どういう態度でこれから一緒に映画を作りましょうっていうことが分かるような内容で、とても嬉しかったですし、(お芝居で)迷ったときはそれを思い出し、指針としました。
佐藤二朗
監督が主演女優に書くお手紙って、相当推敲もするだろうしね。
入江悠(監督・脚本)
今回特に実在する方がモデルのお話なので、その方にどう向き合うかというのが大切でしたから。
河合優実
そうですね。
入江悠(監督・脚本)
佐藤二朗さんとは、現場でタバコのポイ捨てしていいかとか、フランクに聞いてくれるので、「いいっすね」みたいなやり取りはありました。
佐藤二朗
そう、昔ながらの昭和からの叩き上げの刑事の役なので。なので、もちろん今はダメですよ。他にも今はダメなことをやっていますけど、これは役なんでということで。
入江悠(監督・脚本)
そういうやり取りはけっこう現場でできますが、もっと深いところは難しじゃないですか。
河合優実
難しいですね。
それを伝えなかったら後悔するみたいなことも、私も監督の立場だったらすごくそう思なと思いました。
‐稲垣さんには?
入江悠(監督・脚本)
稲垣さんには、カラオケの歌を歌ったことありますか?ってお聞きしました。
稲垣吾郎
そういうシーンがありますよね。でもそんな深い話は・・・(笑)
でも、それぞれ役が違うし。監督は言葉が少ない中でも、監督の作品に対する思いみたいなものは感じました。
入江悠(監督・脚本)
(佐藤さんと稲垣さんの)2人にはすごく浅い話しかしてないようになってますけど(苦笑)
稲垣吾郎
そんなことないですよ。衣裳合わせのときに。ね。二朗さんが深い話をしたんでしょ?
佐藤二朗
してないような・・・
稲垣吾郎
でも言葉じゃなくても、感覚でお互いが共有できることってあるもんね。
佐藤二朗
そう!そうだし、“あん”は特別だと思うよ。
それは深い話をした方が演技に反映されますしね。入江監督もそう思ったんだと思うから。
稲垣吾郎
だからそんなことは気にしてないから。
佐藤二朗
浅い話しかしていないのは気にしていないから大丈夫です。
(会場笑)
■「生きていると実感する瞬間」
‐ここで皆さんにテレビ的な質問です。本作にちなんで、皆さんが「生きていると実感する瞬間」ことはなんでしょう?
佐藤二朗
即答で私が!晩酌です!
(会場苦笑)
佐藤二朗
割と予想通りみたいな、皆さんのリアクションが薄くて悔しいので別のを考えます!吾郎ちゃんは?
稲垣吾郎
朝起きた時!
佐藤二朗
「あ、朝起きれた!寝たまままにならなかった!」ってこと?
稲垣吾郎
やっぱり朝起きたときに、今日も1日が始まる、生きてるなって思うし。
佐藤二朗
もうなんか、いい答えなんだか、さほどでもないのかよく分からない。
(会場笑)
稲垣吾郎
朝の時間が僕はとても好きで、自分のルーティンの中で、例えばお散歩したり、ペットのお世話をしたりとか。
佐藤二朗
だって、めっちゃ早く起きるでしょ?
稲垣吾郎
5時とか6時とかに起きます。
佐藤二朗
9時とか俺にとって昼とか言ってたじゃん。
稲垣吾郎
そうです。早寝早起きが健康の秘訣なので。
佐藤二朗
それはそうですよね。
稲垣吾郎
朝の時間っていうのは、すごく気持ち良くて、自分の趣味として、例えば植物に水をあげたりとか、猫も飼っているんですけどお世話をしたりとか。あと部屋の掃除したりとか、散歩したりとか、仕事も朝しますし、台本読んだりとか、部屋の掃除とか、そういうのを全部自分でやります。
佐藤二朗
吾郎ちゃん、俺と結婚してくんない?
稲垣吾郎
いいですよ。
佐藤二朗
予想外・・・
稲垣吾郎
でも(佐藤さんは)妻帯者じゃないですか。
佐藤二朗
私はね。ま、そうですね・・・
稲垣吾郎
だから、朝起きたときに生きているって思うし、でもそういう瞬間はいろいろありますよ。
佐藤二朗
そうだよね。
稲垣吾郎
だから、心が動いたときだよね。
佐藤二朗
うわっ!なんちゅうカッコイイ顔で!
稲垣吾郎
顔がカッコイイのは元々なんで大丈夫です。
(会場爆笑&拍手)
佐藤二朗
俺もそういうことをサラっと言えたらいいんだけどね!
稲垣吾郎
ここだけ(記事で)切り取られたらちょっと(汗)
佐藤二朗
(爆笑)
稲垣吾郎
優実ちゃんは?
河合優実
「心が動いたとき」っていうのは、本当にそう思いますね。
観客席に座って、何ていい作品なんだろうと思ってる時とかです。舞台でも映画でも、涙している時とか、声を出したくなっちゃうぐらい感動の極致にいる時に(生きているって)感じてます。そのとき、自分の生命力を感じます。
佐藤二朗
ちょっと本当にお二人の答えが良すぎるので、晩酌はカットです!
(会場笑)
佐藤二朗
やっぱり、感動した時ですかね。あとはまぁ、朝のルーティン。
(会場笑)
稲垣吾郎
(河合へ)お芝居とかの仕事をしているときはどうなの?
河合優実
(お芝居しているときは)作っているという意識が強いかもしれないです。
稲垣吾郎
冷静でいるのか。
河合優実
そうですね。
稲垣吾郎
佐藤さんは?
佐藤二朗
ゴメン、今まったく聞いてなかった!
(会場笑)
稲垣吾郎
冷静に役に対して、客観的に俯瞰的に自分のことを見ているっていう話です。
佐藤二朗
なるほど、俳優にとって大事ですよ。
正直に言いましょう。(稲垣さんと河合さんの)2人が話ているときずっと、入江さんってほんとに日本人かな?って考えてました!
入江悠(監督・脚本)
撮影現場でもそれを言ってましたよね?(笑)
(会場笑)
河合優実
南国の人?って言ってました(笑)
入江悠(監督・脚本)
でも、それこそ僕は作品が終わると、絶対に海外一人旅をするんですよ。何か儀式みたいな感じで、それが生きているなと思います。
佐藤二朗
なんで海外?
入江悠(監督・脚本)
映画監督って一応現場の中心みたいな感じで、何もしないけども、一応何か担がれるみたいなところあるじゃないですか。だから一回ゼロに戻したいというか。
何でもない自分に戻りたいので、海外でバックパッカーしたりします。野垂れ死ぬかもみたいなところまでいったりします。
稲垣吾郎
そこでは作品のことは考えないんですか?
入江悠(監督・脚本)
考えないです。
佐藤二朗
どのぐらいの期間?
入江悠(監督・脚本)
でも長くて1週間ぐらいです。今日何を食おうかとか、そういうことしか考えない。
■最後にメッセージ
‐最後に河合さんと入江監督からメッセージをお願いします。
河合優実
こうして色々お話して、どういう想いで作ったかということを皆さんにお伝えてしましたが、本当にまっさらな状態で、どういう風に見ていただいても結構ですので、皆さんの素直に今日感じるものを感じて書いてくださったら本当に嬉しいなと思います。見終わった後に皆さんが自分の口から語ってくれる言葉に、私も勇気をもらいますので、ぜひ何か感じたら周りの方に伝えていただけたらすごく嬉しいなと思います。今日は本当にありがとうございました。
入江悠(監督・脚本)
今日の舞台挨拶のように、ほんとうに座談会みたいな感じで喋りながらこの映画を作ってきたんですが、もしかしたらこの4人が集まるのは今日が最後かもしれないので、佐藤さんと稲垣さんもコメントあれば。
佐藤二朗
この映画は爆弾が爆発したり、国家スパイが登場するということもないので、良い意味で地味ですが、だからこそこの作品の可能性信じたいです。
稲垣吾郎
今こんなに楽しくお話した空気とは違う映画ですが、僕らが大切に育ててきた作品なので、その気持は皆さんに伝わったと思います。あとは早く皆さんの感想を聞いてみたいですし、それが励みになります。そしてここからがこの映画のスタートでもあると思います。
入江悠(監督・脚本)
ヒットすればいいってだけじゃないんですけど、またこのメンバーが集まれるように、この映画が広まってくれたら嬉しいです!
■フォトギャラリー
[記事・写真:三平准太郎]
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映画『あんのこと』
《INTRODUCTION》
2020年6月、新聞に掲載された「ある1人の少女の壮絶な人生を綴った記事」。その1本の記事に着想を得て描いた人間ドラマ『あんのこと』が2024年6月7日(金)より全国公開となる。今注目の若手俳優・河合優実が機能不全の家庭に生まれ、虐待の末にドラッグに溺れる少女・杏を演じ、『SRサイタマノラッパー』や『ビジランテ』などで現代社会の問題にスポットライトを当ててきた入江悠監督がメガホンを取った衝撃作。
《STORY》
香川杏、20歳。シャブ中でウリの常習犯。ホステスの母親と足の悪い祖母と、3人で暮らしている。子どもの頃から、酔った母親に殴られて育った。小4から不登校。初めて体を売ったのは12歳で、相手は母親の紹介だった。希望はおろか絶望すら知らず、ただ繰り返される毎日。そんな薄暗闇の世界が、ある出会いをきっかけに少しずつ変わり始める。だが、やっと繋がった細い糸も突然のコロナ禍に断ち切られてしまい──。
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり
監督・脚本:入江悠
製作:木下グループ 鈍牛倶楽部
制作プロダクション:コギトワークス
配給:キノフィルムズ
© 2023『あんのこと』製作委員会
公式サイト:annokoto.jp
公式X:@annokoto_movie
2024年6月7日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開
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