「日本映画界の何かが動くかもしれない作品!」映画『辰巳』初日舞台挨拶
2024年4月8日、ユーロスペースにて映画『辰巳』初日舞台挨拶が行われ、遠藤雄弥、森田想、後藤剛範、佐藤五郎、倉本朋幸、松本亮、藤原季節、小路紘史監督が登壇。撮影から5年かけて丁寧に作り上げた本作の劇場公開への喜びを語った。
小路紘史監督の『ケンとカズ』は、2015年の第28回東京国際映画祭<日本映画スプラッシュ部門>にて作品賞を受賞したほか、将来性のある新人監督を選出して贈る2016年度の「新藤兼人賞銀賞」を受賞するなどし、劇場公開後はインディペンデント映画でありながら、その作品評価の高さから上映期間が2度延長されるなどロングラン上映となった作品だ。あれから8年。鮮烈なデビューを果たした小路監督が再び新たなノワール作品を作り上げたのが本作『辰巳』である。
日本のリアルな裏社会を描きながら、“日本的”なものを極力排除した無国籍ムードを全編に漂わせ、アウトローたちの慟哭とロマンが胸を打つ、日本映画の枠を拡げる可能性を秘めた、これまで誰も観たことのない“ジャパニーズ・ノワール”となっている。
舞台挨拶レポート
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■テキストダイジェストレポート
冒頭の挨拶で、主演の遠藤雄弥が「撮影から5年という月日がかかって、ようやく今日公開することができました。」と喜びを語ると、藤原季節は「閉塞した日本映画界に風穴を明けに行きたいと思っている作品」と力強く語った。
完成までに5年かかった理由を問われた小路紘史監督は、「この作品は、何かが起きるんじゃないかと期待できる映画。それはこのメンバーがその目標を設定して、そこに向かって団結して、力を合わせたからです。そういう映画を作るためには、この年月は必然でした。」と話した。
ちなみに、脚本については、2016年頃から書き始めていたそうで、当初は、2019年に撮影、2020年公開を目ざしていたという。それについて小路監督は、「追加撮影や、編集でさらに良くなる可能性もすごい秘めてた映画」ということで、さらに時間をかけたという。実際、編集は公開日の2ヶ月ぐらい前まで行っていたとも明かした。
そういう小路監督について、キャストが感じる監督らしさは?という質問に。
遠藤は、「たくさんありますが、例えば、この作品には車が登場します。映画の撮影用の車だとレンタルするのが普通ですが、今回は自主制作ということで、監督ご自身で実費で買われたそうなんです。そして監督自ら運転して現場に持ってこられて撮影してました。」というエピソードを紹介した。劇中、その車がボコボコにされるが、修理して今でも監督は乗っているそう。
続けて森田想は「挑戦的な物語ですが、監督の人柄のおかげだと思いますが、現場は本当に穏やかで、且つとても真剣でした。私が一番歳下なんですが、そういうことを感じることもあなく、とてもありがたかったですし、なかなか他では味わえないなと思いました。」と振り返る。
それを受けて佐藤五郎は、「今の映画現場はリスペクト講習、ハラスメント講習を受けるのが当たり前になっていますが、5年前はまだそういうものはなかった。でも、小路監督はそのときから役者をものすごくリスペクトしてくれていました。バイオレンスな映画なんですけど、小路監督ならではのリスペクトの空気が作品に出ています。」と話した。
本業は演出家で、本人曰く今作限りの俳優出演だったという倉本朋幸は、「小路監督が作る雰囲気が、カメラマンや照明スタッフにも伝わっていて、演じる側としては撮られている気がしなかった。それほどに自然でストレスなく撮影に臨めた。」と明かした。
この作品が自身にとって映画初出演となった松本亮は「一つの目標に対してキャストとスタッフさん全員がそこに向かってるっていう感覚が撮影中にずっとあって、それが印象的に残っています。何かすごいものを作ってるんだろうなっていう感覚がありました。だから今日は本当に嬉しいです。」と感慨深げに振り返った。
そして藤原季節は「主人公を含めた全員が、度重なるオーディションで勝ち得た役なので、そんな日本映画って今はなかなか無いんじゃないですか?」と、本作がフルオーディションでキャストが決められたことを強調した。
森田の役も元々は男性として書かれていたが、森田がオーディションに参加してことで、女性キャラクターに変わったという。それについて森田は「とても嬉しいことです。やっぱり、受かりたいと思って受けたオーディションで、私に合わせて脚本をアレンジしてくださったわけですから。」と、改めて監督へ感謝の言葉を話した。
そのオーディションでの決め手を聞かれた小路監督は、「芝居の上手さはもちろんなんですけど、この人と一緒に映画を作りたいって強く思える人間性も大きいです。長い映画制作の中で信頼しながら作ることはとても重要だと思うからです。」と明かした。そして「改めて自分一人では映画は作れないし、この仲の良いメンバーのチームワークがあってできた作品だし、僕らにとって本当に大切な作品になりました。この経験は今後の映画作りにも活かしたいと、心の底から思えました。そしてこの『辰巳』はこれから観る人がワクワクと期待してくれていい、それに応えられる作品になっています。」と自負を込めて続けた。
監督のこの言葉を受けて、改めて藤原が「僕は映画が好きなんです」と力を込めて話す。「映画が好きなんですけど、ちょっとむかついてもいて。この数年間、映画とのご縁が全然なくて、オファーがいただけなかったっていうのもあるかもしれないし、企画が途中で何度も倒れたことも。その間、いろんなことを言われて、俳優って人気商売で、季節には数字が足りないから企画が動かないんだよみたいな。でも、じゃあ数字を持ってない俳優が日の目を浴びるチャンスはどこにあるんですか?」
こう憤った藤原は、隣の小路監督の方を抱き、「ここにチャンスがありました!」と、今度は笑顔になって明るく話した。
「『辰巳』という映画には、平等なチャンスを勝ち抜いた俳優たちがいます。この作品は日本映画界に対するリベンジです。そのためには、皆さんのお力も必要です!大きな竜巻を起こしていきたいです。よろしくお願いします!」と、藤原は観客に呼びかけた。
そしてMCから最後のメッセージを求められた遠藤は、「本当に素晴らしい豊かな108分です。だからもうちょっと小路監督には短いスパンで映画を撮っていただいて、たくさんの夢を届けてください。そして最終的には映画をご覧になった方々のお力添えが必要ですので、なにとぞ映画界のためにも映画館にぜひお越しください!」と語り、舞台挨拶は幕を閉じた。
■フォトギャラリー
[動画・記事:三平准太郎/写真:金田一元]
映画『辰巳』
《INTRODUCTION》
『ケンとカズ』は劇場公開の前年である2015年の第28回東京国際映画祭<日本映画スプラッシュ部門>にて作品賞を受賞したほか、将来性のある新人監督を選出して贈る2016年度の「新藤兼人賞銀賞」を受賞するなどし、劇場公開後はインディペンデント映画でありながら、その作品評価の高さから上映期間が2度延長されるなどロングラン上映となった作品だ。あれから8年。鮮烈なデビューを果たした小路監督が再び新たなノワール作品を作り上げた。
映画は、日本のリアルな裏社会を描きながら、“日本的”なものを極力排除した無国籍ムードを全編に漂わせ、アウトローたちの慟哭とロマンが胸を打つ、日本映画の枠を拡げる可能性を秘めた、これまで誰も観たことのない“ジャパニーズ・ノワール”となっている。
裏稼業で働く孤独な辰巳(遠藤雄弥)は、ある日元恋人・京子の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵(森田想)を連れて、命からがら逃げる辰巳。
片や、最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は、京子殺害の犯人を追う。犯人は辰巳と同じ組織に属している沢村兄弟。生意気な葵と反目し合いながらも復讐の旅に同行することになった辰巳は、彼女に協力するうち、ある感情が芽生えていくー。
主人公・辰巳役には、カンヌ国際映画祭「ある視点」に出品され、仏・セザール賞で4部門ノミネートした話題作『ONODA 一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)の遠藤雄弥。
さらに、行き場のない怒りを復讐に変える少女・葵役には、今注目の若手女優、森田想。
その他、ドラマ「全裸監督」シリーズ(NETFLIX武正晴監督)にて、ラグビー後藤を演じ大きな注目を浴びた後藤剛範、『福田村事件』(23/森達也)の佐藤五郎、本作が映画初出演となり、劇団「オーストラ・マコンドー」を主宰する倉本朋幸、『佐々木、イン、マイマイン』(20/内山拓也監督)の藤原季節ら実力派が顔を揃えている。
《STORY》
裏稼業で働く孤独な辰巳(遠藤雄弥)は、ある日元恋人・京子(龜田七海)の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵(森田想)を連れて、命からがら逃げる辰巳。片や、最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は、京子殺害の犯人・沢村兄弟を追う。生意気な葵と反目し合いながらも復讐の旅に同行することになった辰巳は、彼女に協力するうち、ある感情が芽生えていくーーー。
出演:遠藤雄弥 森田想
後藤剛範 佐藤五郎 倉本朋幸 松本亮
渡部龍平 龜田七海 足立智充 / 藤原季節
監督・脚本:小路紘史
配給:インターフィルム
©小路紘史
公式サイト:https://tatsumi-movie-2024.com/
新予告
2024年4月20日(土)より、渋谷ユーロスペース他全国ロードショー
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