趣里「『ブギウギ』の撮影現場でも『ほかげ』と共に居ました」映画『ほかげ』公開記念舞台挨拶
2023年11月25日、渋谷ユーロスペースにて、映画『ほかげ』公開記念舞台挨拶が行われ、趣里、塚尾桜雅、河野宏紀、森山未來、塚本晋也監督が登壇した。
塚本晋也監督が、戦場の極限状況で変貌する人間を描いた『野火』(14)、太平の世が揺らぎ始めた幕末を舞台に生と暴力の本質に迫った『斬、』(18)。本作ではその流れを汲み、戦争を民衆の目線で描き、戦争に近づく現代の世相に問う。
舞台挨拶レポート
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現在放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」で主演を務めている趣里が本作の舞台挨拶に登壇するのは本日が初めての場となり、「こうして皆さんにまた久しぶりに会えてうれしい。映画が完成したんだなと実感しました」と笑顔を見せる。
塚本監督も「趣里さんと皆でようやく一緒に舞台挨拶ができて光栄です」と再会を喜んだ。本作の主人公と「ブギウギ」のヒロイン・鈴子、同じ時代を生きた女を演じたことについては「一見すごく対照的な役に見えますが、戦争というものが残したものに苦しめられながら、それでも生きていくんだという一本の筋は一緒だなと思います」と共通点を語った。
役作りについて尋ねられた森山は、「とにかく塚本監督といろいろとお話をさせてもらいました。深い闇や傷を持っているけれども、生きるということに対する貪欲さやある種の健やかさというか、“生”をちゃんと掴んでいく真っすぐさを意識しました」と振り返った。
復員兵を演じるにあたり、ダイエットをして撮影に挑んだという河野は、「とにかく自分の精神に余裕を持たせないようにしようと、なるべく幸せみたいなものを感じないように生活をしていました。どこまでいっても当事者にはなれないんですけど、敬意をもって演じないといけないと思っていたので、復員兵が抱える心の傷について専門家に直接お話を聞いたり、ショッキングな映像を見せてもらったり、やれることは全部して撮影に臨みました」と念入りに準備したと明かした。
撮影時の思い出を尋ねられた塚尾は、「みんなでアイスを食べたり、駅の名前だけでしりとりをして遊びました」と懐かしそうに教えてくれた。
塚本監督は、「コンクリートの道の上に土を敷いて撮影した後に、スタッフやキャスト皆で土を掃いていたのですが、森山さんの動きがすごくて!」と振り返り、「iPhoneで皆が掃除する様子を撮っていたのですが、遠くから砂埃を立てて何かが迫って来るんです。よく見ると、ほうきを持った森山さんだったです!僕が“ダンスみたいですね”と言ったら、“やっぱり無心でやるのがいいんだな”と仰っていました。Blu-rayとかの特典映像に是非入れたいです」と、森山の身体性の素晴らしさを垣間見たエピソードを語った。
趣里は、「ある日の撮影の合間に尋常じゃないほどの叫び声が聞こえてきて、え!?と思ったら、河野くんの肩にカミキリムシが止まっていて。こんなに物静かな河野くんが見たこともない顔と声ですごかったよね」と塚尾と共にビックリした出来事を話すと、河野は「自分でも聞いたことがないような声が出ました…」と恥ずかしがった。
最後に趣里は、「スタッフさん一人一人がものすごい力をくださって、すごく私のエネルギーになりました。そして、憧れの塚本映画に出演できて本当にうれしく思っています。監督のメッセージ、祈りが一人でも多くの皆さんに届きますように願っています」と思いの丈を伝えた。
そして、塚本監督は「“新しい戦前”という言葉もあるように不安な世の中になっていますが、なんとか自分たち、民衆の者たちがそういう場に行かないで済むようにという祈りを込めて、体感して実感できるような祈りを込めて作りました。その祈りを俳優さんたちがとにかく全身で表現してくれたのが一番の見どころです」とアピールし、舞台挨拶を終えた。
■フォトギャラリー
[動画・写真:三平准太郎]
映画『ほかげ』
第80回ヴェネチア国際映画祭NETPAC賞受賞
第61回ウィーン国際映画祭 Standard Readers’Jury Award受賞
《INTRODUCTION》
新日本映画社配給にて、映画『ほかげ』がユーロスペースほか全国にて上映中です。
『鉄男』(89)でのセンセーショナルな劇場デビュー以後、世界中に熱狂的ファンを持ち、多くのクリエイターに影響を与えてきた塚本晋也。戦場の極限状況で変貌する人間を描いた『野火』(14)、太平の世が揺らぎ始めた幕末を舞台に生と暴力の本質に迫った『斬、』(18)、本作ではその流れを汲み、戦争を民衆の目線で描き、戦争に近づく現代の世相に問う。
主演は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインを演じている、今最も活躍が期待されている俳優、趣里。孤独と喪失を纏いながらも、期せずして出会った戦争孤児との関係にほのかな光を見出す様を繊細かつ大胆に演じ、戦争に翻弄されたひとりの女を見事に表現した。
片腕が動かない謎の男を演じるのは、映像、舞台、ダンスとジャンルにとらわれない表現者である森山未來。
戦争で家族をなくし、焼け残った居酒屋で体を売って生きている女と交流を深めていく戦争孤児を『ラーゲリより愛を込めて』や大河ドラマ「青天を衝け」に出演している子役・塚尾桜雅。
復員した若い兵士役に、PFFグランプリ受賞作品『J005311』の監督でもある河野宏紀。
そして、映画監督、俳優としても活躍する利重剛、大森立嗣が脇を固める。
本作は、第80回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門に出品され、同映画祭では日本人初のNETPAC賞(最優秀アジア映賞)を受賞。また、先月開催された第61回ウィーン国際映画祭ではStandard Readers’ Jury Awardに輝いたほか、第48回トロント国際映画祭 センターピース部門出品、第36回東京国際映画祭ガラ・セレクションでの上映等、国内外から熱い視線を集めている。
《STORY》
女は、 半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしている。
体を売ることを斡旋され、戦争の絶望から抗うこともできずにその日を過ごしていた。
空襲で家族をなくした子供がいる。 闇市で食べ物を盗んで暮らしていたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にしてそこに入り浸るようになる。
復員して間もない若い兵士が客として居酒屋を訪れるが、久しぶりに熟睡できたと戦争孤児とともに女の家にいついてしまう。3人は仮の家族のような様相になるが、若い兵士の様子がおかしくなり、その生活も長くは続かなかった。
女と子供は互いに切り離せない仲になっていくが、ある日、闇市で暗躍していたテキ屋の男から仕事をもらったと言い残し、 悲しがる女を置いて 子供は旅に出てしまう。
テキ屋の旅の目的も 知らされないままに… 。
出演:趣里 / 塚尾桜雅 河野宏紀 / 利重剛 大森立嗣 / 森山未來
監督・脚本・撮影・編集・製作:塚本晋也
製作:海獣シアター
配給:新日本映画社
©2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER
公式サイト:hokage-movie.com
公式X:@hokage_movie #ほかげ
大ヒット上映中
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