【インタビュー】生駒里奈「誰か答えがわかるかな？」映画『忌怪島』

清水崇監督最新作映画『忌怪島／きかいじま』（6/16公開）にて、主演・西畑大吾（なにわ男子）演じる天才脳科学者・片岡友彦ら＜シンセカイチーム＞のメンバーとしてプログラマー役を演じた生駒里奈。海への印象が変わったという奄美大島でのロケなど、撮影エピソードなどについて聞いた。

大ヒットを叩き出した『犬鳴村』、『樹海村』、『牛首村』の「恐怖の村」シリーズを生み出した東映と清水崇監督が手がける映画『忌怪島／きかいじま』。
2022年4月～5月にかけて奄美大島を中心に撮影が行われた本作では、島という閉鎖空間を舞台に今話題のVRの世界を表現。「VR」研究チーム“シンセカイ”に次々と降りかかる不可解な死と謎、解き放たれた「赤い女」の怨念、真っ赤に染まる島。現実と仮想という2つの空間で今までにない最強の恐怖が待ち受ける。

生駒里奈 インタビュー＆撮り下ろしフォト

■海、いいじゃん！

－本作のオファーがあったとき、そして台本を最初に読んだ時のお気持ちは？

生駒里奈（プログラマー・深澤未央 役）
オファーの話を聞いたのは家族で奈良県生駒市に行った帰りで、「えっ？ほんと？」って思いました。でも私は意外と映像作品の出演ではホラー作品が多いですし、いただいたチャンスは受けるという思いがあるので、「やります！」とお返事をしました。
その後、夏の奄美大島でロケだということを伺って、それもビックリしました。でも、（川添）野愛ちゃんや（水石）亜飛夢くんとは共演したことがあったので、知ってる人もいるし、台本を読んでも私の未央という役が物語が進んでいく上でのバランサーでもあったので、新しい挑戦ができるなと思い、それを目標に頑張りました。

－夏の奄美大島のロケで驚いたというのは？

生駒里奈
私は秋田県出身の雪国育ちなのもあり、冬は大好きなんですが、夏がとにかく苦手で、虫に刺されると、普通の蚊でも皮膚が荒れてしまうので、奄美大島に行ったら大変なことになるんじゃないかなという心配がありました（笑）。、暑いのも日焼けも苦手なのに…って思って行ったんです。
私は海は日本海しか知らなくて、磯臭くてベタベタするイメージだったんですが、初めての南の島の海は、ぜんぜん磯臭くなくて、海水もサラサラしていて、「いいじゃん！」って思いました（笑）。
でも現地では蚊に刺されないように、ずっと長袖を着ていました。楽屋に蚊がいようものなら、ギャーって大騒ぎしながら、虫よけグッズで退治していました（笑）。

－ということは海への印象が変わった？

生駒里奈
ぜんぜん変わりました。「海、いいじゃん！」って思えるようになりました。

－山本美月さんは、奄美がすごく美しくて、オフの時間もとても楽しかったとおっしゃっていますが、生駒さんはそういった楽しい思い出はありますか？

生駒里奈
世界で奄美大島だけで行われている染色方法として「泥染め」という天然の染色方法があって、大島紬（おおしまつむぎ）を泥で染めるんです。その泥染体験を（祷）キララちゃん、野愛ちゃん、平岡（祐太）さんと４人で行きました。そのとき、雨が降ってたんですが、雨が降ると奄美大島の緑がすごい生き生きとしてくるんですよね。
泥染めは田んぼのようなところでやるのですが、せっかくだったらと思って、みんな裸足になって、泥の中に足を入れて、みんなではしゃぎながら、自分のだけじゃなく、撮影で来れない方の分も分担して染めました。私は高校生のとき修学旅行に行けなかったので、修学旅行に来てるみたいだなぁと思いながら。
で、奄美大島といえば「ビッグツー」なんです。スーパーマーケットとホームセンターが融合したような最強のお店があって、スタッフさん含めてビッグツーの虜になっていました。そこから、ビッグツーＴシャツというのがあったのですが、西畑さんが着始めたことをきっかけに、スタッフさんの間でも流行っていました(笑)。私も「それほしい～！」と思って、平岡さんにみんなで連れて行ってもらって、Ｔシャツを着たときの感動は今でも忘れられないです（笑）。

－そのＴシャツは今もありますか？

生駒里奈
あります！お気に入りです！
もう、ビッグツーに私たちはどれだけ救われたことか。奄美大島はコンビニも東京ほどはないですし、自然もいいんですが、時々都会が恋しくなったときは、ビッグツーに行けばなんでもあるので。日焼け止めもビッグツーで買いました。

■引いてバランスを取る役をやりたかった

－“プログラマー・深澤未央”を演じるにあたって役作りされたことは？

生駒里奈
清水監督がキャラクターひとりひとりの設定を細かく作ってくださっていたので、それに沿ってやろうというのと、私より頭もいいし、コミュニケーションも取れる子なんだなと思ったので、普段の私よりも少しテンションを上げつつ、でも同時に普通で居ようとも思いました。片岡友彦くん（演：西畑大吾）など、クセが強い人物が多いので、みんなの芝居を見て、引けるとこは引こうという塩梅を考えて演じました。

プログラマー・深澤未央（生駒里奈）

－まさにバランスを取る役ということですね。

生駒里奈
はい、そういう役をやりたかったので嬉しかったです。“生駒ちゃん”の印象もあるし、舞台も映像作品も、ありがたいことに真ん中に立たせてもらうことが多くて、“引く”ということがわからなかったので、どうやって引いてバランスを取るかをすごくやりたかったんです。

－共演者の中で刺激を受けた方は？

生駒里奈
境遇が似ていると言ったらおこがましいかもしれませんが、西畑大吾さん。アイドルをやっていて、そして俳優もやっているという点で、それぞれの悩みで共感してくれたのが、すごい嬉しかったんです。彼も奄美大島と東京を何度も往復するという忙しい中、でもしっかり役を作ってきているし、私だけじゃなく、みんなが、「こんなに忙しいのにこんなにいい人だなんて、ファンになるしかない」と感じましたし、仕事に対する取り組み方についても、みんなで頑張ろうって思わせてくれる方です。
あと、平岡さんにも刺激を受けました。奄美大島のいくつかの公民館を楽屋として使わせていただいていたんですが、奄美大島は相撲が有名なせいか、土俵があって、平岡さんはそこで遊んでいたりしたんですが、撮影になったらスイッチの切り替えがすごくて、なんだそれ？って思わされるほどのギャップに、「私もちゃんとやりたい！」と思わせてくれました。勉強になるし、心を動かされます。そうすると、私もより一層この作品に還元したいという気持ちにもなれますし、それが良いシーンに繋がっていったと感じています。

＜シンセカイチーム＞後列：川添野愛／平岡祐太／山本美月／水石亜飛夢、前列：西畑大吾／生駒里奈

－本作に登場する“イマジョ”（演：祷キララ）のメイクを実際に見ていかがでしたか？

生駒里奈
「とても痛々しい・・・、ごめんね！」と思いました。
それほどリアルな特殊メイクで、仕上げるのに何時間もかかるし、メイクの過程も見たので、そうやってやるんだというのも勉強になりました。いざ仕上がったキララちゃんのイマジョはとっても怖かったです。
でも、キララちゃんはいったんメイクしたらご飯も食べられないし、身体的にも精神的にも負担がかかっているし、撮影では海に入るし。でも私たちは日傘をさしていてごめんねと思いました。

－初めて共演される方との距離の縮め方は？

生駒里奈
仲良くならなければいけない役だったら頑張ってしゃべりますが、仲良くならなくてもいいんのであれば、しゃべらないかもしれません（笑）。
でも、今回のシンセカイチームは、元々知っている方がいたということもあり、安心して現場に入れました。スタッフさんの中にも、私の弟の大学の後輩もいたり、そういう偶然の繋がりもあったので入りやすかったです。ちなみにそのスタッフの方は、弟のことを「生駒さん」、私のことを「生駒ちゃん」って呼び分けられてます（笑）

－完成した作品をご覧になっていかがでしたか？

生駒里奈
野愛ちゃんの隣に座って観ていたんですが、一緒に泣きながら観ていました。私達は演じる側なので、怖いというよりは切なくて泣きました。こういうことが正しく世の中に伝わって世界が変わったらいいのにという感想を持ちました。

－清水崇監督とのお仕事で印象に残っていることはありますか？

生駒里奈
私が自分で用意する部分がほぼ無いぐらい、監督が細かいところまですべて考えていらっしゃるんだなと感じました。
私が演じた未央については、すべてのシーンが作品で描かれているわけではないので、「今の未央はこういうことがあって、こういう行動をします」と、監督がとても細かく説明してくれて、「そこまでしてくれるんだ！」と思いました。当然ですがどんな場面でも手を抜かないし、かっこいい監督だなと。。

■生駒里奈の霊体験

－ホラー映画に対する恐怖心や苦手意識はありますか？

生駒里奈
無いです。むしろ楽しいです。特に出演すると。普通のお芝居よりもファンタジーな部分があるし、たとえば走って逃げたり、日常生活には無いことなので演じていてとても楽しいです。お芝居をするときは、せっかくだったら普段の生活ではできないことをして刺激がほしいという気持ちがあるんです。そういう意味もあり、ホラー映画を演じるのは楽しいです。

－生駒さんは霊感は強い方ですか？

生駒里奈
お化けは見えませんけど、この場所は気持ち悪いなぁというのは感じます。たとえば引っ越しのために内覧に行ったとき、「ここはヤダ！」と直感したり。

－お仕事中の怖い想いは？

生駒里奈
ありました。乃木坂46にいたとき、心霊スポットのロケがあって私は大型のロケバスの中で、モニターを見ながら応援する係だったんです。モニター越しに心霊スポットを訪れているメンバーに頑張れって声を送っているときに、ロケバスのドアの上部が「バーン！」っていう大きな音をたてて揺れたんです。大型バスなので、人が簡単に揺らせるようなものでもないし、しかもバスのドアは崖側に面していたので、誰かがそこに行けるわけでもないのに。あれはお化けの仕業だったと思います。

－今回の奄美大島のロケではいかがでしたか？

生駒里奈
奄美大島では怖いことは何も起こりませんでした。でも、東北には無い不思議なパワーがある土地だと感じました。やっぱり神様の土地だと言われているからかなと思いましたね。

■生の五感を大切にしたい

－本作の物語のキーとなっているメタバースについて、生駒さんはどういう印象をお持ちですか？

生駒里奈
難しいなぁと思っています。
でも、メタバースというようなものがあるからこそ広がる世界もあるだろうし、あと、本作はコロナ禍を経ての撮影だったので、メタバースは会えない人に擬似的にでも会えたりできるという意味で必要なものだなと思ったのと同時に、ただ、こういう怖い思いはしたくないなとも思いました（笑）。

－メタバースに対する不安もあるということですよね。

生駒里奈
はい。もっと技術が進んで人の感情をメタバースに残せるようになったとしても、私はそういう使い方はしたくないかなと思います。だったら直接会いに行くし、生の五感を大切にしたいです。舞台をやっているから余計にそう思うのかもしれません。

－例えば誰かの頭脳に入れるとなったらどういう人に？

生駒里奈
私はほんとうに勉強が嫌いで、教科書を見ると頭痛がするぐらい（笑）。なので、一度、お勉強ができる人の脳みそになって、数学もスラスラ理解できるようになってみたいです。

■お客さんの楽しかったっていう反応が励みになる

－生駒さんは舞台をずっとやってこられて、最近はドラマ「にがくてあまい」では、主演も務められたり、映像作品の出演も増えていますが、俳優としての手応えはいかがでしょうか？

生駒里奈
映像作品にもだいぶ慣れてきました。舞台は身体を大きく動かせるので、それと同時にセリフも覚えたりとわかりやすい側面がありますが、映像作品はそれこそ撮影直前に台本に修正が入ったりすることもよくあって、どうやって身体と結びつけて言葉を出せばいいのか難しかったんですが、経験を重ねるうちに映像作品も楽しいなと思えるようになってきました。

－ご自身の中で自信を持てたなという瞬間はありますか？

生駒里奈
それは無いですね。私、自信を持つとダメなタイプなんです。自信は持たないですが、やっていて楽しいな、お客さんがいい笑顔しているなと思えるようになれば私の中では納得できるようになりました。
お芝居って結局は観てくださる方のためにやっているので、お客さんからの楽しかったという反応があったら、「よっしゃ！」と励みになります。

－「元アイドル」と言われることがあると以前おっしゃってましたが、今でもそう言われることはありますか？

生駒里奈
今でもリスペクトを込めて言ってくださる方が多いです。私が乃木坂46にいた頃に、中学生・高校生だった子たちと共演することが増えてきて、そういうとき「あ、生駒さんだ！嬉しい！」と言ってくれたり、覚えやすいのか「（乃木坂46時代からの愛称の）生駒ちゃん」って呼んでくれることはすごくありがたいなと思っています。
逆に「元アイドルだからさ・・・」と否定的に言ってくる人がいたとしても気にならなくなりました。私、大人になりました（笑）。

■“いぶりがっこを救う会”！？

－秋田出身の生駒さんは、秋田を舞台にした2021年の映画『光を追いかけて』にも出演されていますし、インスタグラムでも「東北でのお仕事は楽しいです」と語っていらっしゃいます。改めて生駒さんが思う秋田の魅力、東北の魅力をお聞かせください。

生駒里奈
秋田はとってもすっきりするところで、自然も美しいし、海も山も畑も全部あって、古き良き日本の姿が秋田県にはたくさん詰まっています。でも、だからこそ、変化を求める人が少なくなっていくのかもしれません。
でも、秋田に帰って食べるお米は美味しいし、秋田出身でUターンして頑張っている人もたくさんいるので、そういったところにスポットを当てたいなって思っています。

－生駒さんが好きな秋田の食べ物はなんでしょう？

生駒里奈
秋田の食べ物はいろんなところで紹介されているので、新しいものっていうのはないですが、改めて“いぶりがっこ”って美味しいなと思います。
でもその“いぶりがっこ”にも危機が訪れているんです。（2021年に）食品衛生法が変わって、新しい衛生管理基準に合わせるためには、製造・販売しているところの建物を整備しなくちゃいけないそうなんです。それで、「お金かかるならやめるわ」という農家さんが増えてしまっているらしく。
居酒屋でも提供されるタルタルソースがかかった“いぶりがっこ”とか、そういうのが無くなってしまわないか、すごく心配です。ちょっと立ち上がらなければとも思っていますね。

－“いぶりがっこを救う会”というような？

生駒里奈
はい！

■監督の真意がわからなかったので、誰か答えがわかるかな

－最後に、本作のPRとして見どころ含めたメッセージをお願いします。

生駒里奈
ホラー映画を観たくないという人は、大きな損をしていると思ってしまうほど、本当に面白い作品ができあがったなと思っています。
清水監督は何を伝えたかったのか、それを考えるとゾッとするところもあり、そこまでしっかり観てほしいなと思います。
台本を読んでいるときも、演じているときも、試写を観たあとも、監督に直接聞いても監督の真意がわからなかったので、誰か答えがわかるかなと、そこも期待しています。

生駒里奈（いこまりな）プロフィール
1995年12月29日生まれ、秋田県由利本荘市出身。
乃木坂46ではデビューシングルから5作連続でセンターを務め、2018年に同グループ卒業後は俳優として舞台やテレビドラマ、映画などで活躍中。NHK Eテレ「ストレッチマン・ゴールド」にマイマイ役としてレギュラー出演中で、2021年には舞台『僕とメリーヴェルの7322個の愛』で初のひとり芝居に挑戦。日本テレビ系ドラマ『真犯人フラグ」では謎の女・本木陽香役として出演し、その怪演が話題を呼んだ。
そのほかにもABCテレビ「OTHELLO」で連続ドラマ初主演を務め、現在Lemino・東海テレビで放送中のドラマ「にがくてあまい」では主演・江田マキ役を務める。
6月4日(日)から明治座で上演中の舞台「水谷千重子50周年記念公演『ニンジャーゾーン』にも出演するなど、活躍の場を広げている。

■撮り下ろしフォトフォトギャラリー

[衣装協力：Ground Y（ヨウジヤマモト プレスルーム）／スタイリスト：津野真吾（impiger）／ヘアメイク：スズキユウジ(MAXSTAR) ／インタビュー：安田寧子／写真：三平准太郎]

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映画『忌怪島／きかいじま』

《INTRODUCTION》
大ヒットを叩き出した『犬鳴村』、『樹海村』、『牛首村』の「恐怖の村」シリーズを生み出した東映と清水崇監督が手がける映画『忌怪島／きかいじま』。
2022年4月～5月にかけて奄美大島を中心に撮影が行われた本作では、島という閉鎖空間を舞台に今話題のVRの世界を表現。「VR」研究チーム“シンセカイ”に次々と降りかかる不可解な死と謎、解き放たれた「赤い女」の怨念、真っ赤に染まる島。現実と仮想という2つの空間で今までにない最強の恐怖が待ち受ける。

出演：西畑大吾(なにわ男子)　⽣駒⾥奈　平岡祐太　⽔⽯亜⾶夢　川添野愛 當真あみ ／ ⼭本美⽉
監督：清水崇
脚本：いながききよたか　清水崇
音楽：山下康介
映倫区分：PG12
©2023「忌怪島／きかいじま」製作委員会
公式サイト：https://kikaijima-movie2023.jp/
公式Twitter：@Kikaijima2023
公式Instagram：@kikaijima2023
公式TikTok：@kikaijima2023

2023年6月16日（金）全国公開

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