【インタビュー&撮り下ろしフォト】出演作が目白押しの女優・菜 葉 菜。その魅力。
本年以降、発表前情報を含めて多くの映画作品への出演が決まっている女優・菜 葉 菜(なはな)。保育の仕事から女優へと転身、これまでそのキャリアを歩んできた彼女が主演を務める2月4日より公開となる映画『夕方のおともだち』について話を伺った。
『夕方のおともだち』の原作は、文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した経歴を持つ、鬼才漫画家・山本直樹の“伝説の漫画作品”「夕方のおともだち」。一見すると特殊な環境で出会った男女の美しくも儚いラブストーリーを描く。予想外のラストに待つのは、性別や趣味嗜好など関係なく、誰もが感じずにはいられない“癒し”と“愛”だ。
廣木隆一監督の元、菜 葉 菜と村上淳がW主演を務めた。
菜 葉 菜インタビュー&撮り下ろしフォト
■廣木監督作品の女優は魅力的
-本作出演の決め手は?
菜 葉 菜(ミホ 役)
原作を読むととても素敵な作品だと思ったことと、廣木監督だからということもあります。
『東京ゴミ女』(2000)、『ヴァイブレータ』(2003)など、廣木監督作品の女優さんは魅力的で、私が役者を始めた頃から廣木組の主演をいつかやってみたいというのが目標だったんです。
あと、原作者の山本直樹さんもおっしゃっていただいたんですが、主人公のミホと私は、顔や身体などビジュアルが似ていて、これは運命だって勝手に思ったこともあります(笑)
-ビジュアルが似ていると。
菜 葉 菜
はい。内面は似てないです。私は嫉妬深いですし(笑)
-演じられたミホはどういう女性だと理解して役作りされましたか?
菜 葉 菜
ミホのことを理解するのがほんとに難しくて、どういう女性だと決めつけずにやっていた感じがあります。
廣木監督からは、クランクイン前に「ミホは男性にとって女神みたいな存在だ」って言われていました。たしかにミホは物分りがよく、ある種冷めていなとできない言動にも見えました。でも私は喜怒哀楽の感情が激しい性格なので、役を作る上でわからないことが多かったです。
ただ、黒沢久子さんの脚本を読むと、共感できる部分が見えてきて、自分とのギャップを考えながらも、芝居としてはやりやすくなりました。
ミホはヨシオに好感は持っているけど、それは恋愛なのか、男女を越えた人間愛なのかはわかりませんので、そこを決めつけて演じると偏っちゃうので、セリフの掛け合いのテンポなどを大切にしながら、だんだんと自分の中に落とし込んで役作りをしていきました。
-原作コミックと映画とで、ミホというキャラクターの違いがあれば教えてください。
菜 葉 菜
(原作では)もっとサバサバしていて無愛想です。あまり笑わないし、感情が見えにくいキャラクターです。
■身体的なものだけじゃなく、信頼関係が無いとできない
-SM指導のイヴさんからどういう指導がありましたか?
菜 葉 菜
技術面として、ムチの使い方も練習しましたし、言葉責めの言葉についてもイヴさんはどう言ってるんですか?とお聞きしました。
一方、イヴさんはどうして女王様をやろうとしたんですか?とか、役作りにおいて内面的な部分も伺いました。
イヴさんは職業としてやっていて、自分の性的嗜好でやっているわけじゃない。そういうプロフェッショナルな部分を聞かせていただいたのが大きかったです。ミホも自分の性的嗜好というよりは、職業としてやってますからね。
-なるほど。ミホとしての役作りにおいて大きかったということですね。
菜 葉 菜
はい、大きかったです。単なる身体的なものだけじゃなく、信頼関係が無いとできないものだし、Mの人も誰が鞭を打っても気持ち良いわけじゃなくて、イヴさんだからという精神世界の繋がりもあると。
-深いですね。ふだん、SMの世界に触れてない人からすると驚きの発見もありそうです。
菜 葉 菜
そうなんです、深いんです!って、私が教える立場じゃないですけど(笑)
この映画も、一見するとSMの強烈なビジュアルイメージが先行しちゃって、観に来られない方がいたらもったいないなって思うので、決してそういう点の映画じゃなくて、ほんとに、男と女の2人が田舎で出会って、日常の中でお互い少しずつ変化していく物語です。ただ、ヨシオは完全なドMですけど(笑)
-ヨシオのような性癖についてイヴさんは何かおっしゃってましたか?
菜 葉 菜
人によって何が気持ち良いのかぜんぜん違うそうです。女王様との関係性もありますし、一概にMの人はこうだとは言えないそうです。
ただ、ヨシオは水道局員で、職場では同僚には少し冷たい、そっけない態度を取りますが、これはM男の典型だそうです。自分の女王様に対してはMだけど、それ以外の人に対してはそういうわけではない。実際、ヨシオは鮎川桃果さん演じる同僚の女性には冷たいですしね。
-そのヨシオを演じた村上淳さんの印象は?
菜 葉 菜
村上さんとは『ヘヴンズ ストーリー』(2010)という作品で初めてご一緒して以来、交流はありました。この作品は毎年上映会と舞台挨拶があって、そこで顔を合わせて、食事もしたり。村淳(村上淳)さんは、映画やお芝居の話が大好きな方で、私も映画が大好きだからいろんなお話させてもらって、仲良くはさせていただいていました。
そして、今回、お芝居としては初めてガッツリご一緒させていただけてとても嬉しかったです。
■「これだ!こういうことか!」
-1月28日公開『ノイズ』も廣木隆一監督ですが、廣木監督からはどういう演出がありましたか?
菜 葉 菜
廣木組はほんとに怖いといろんな役者さんから聞いていました。たとえば、何がダメとは言わず、何十回とテイクを重ねる方だと。
私はこれまでも脇役として呼んでいただくことは何度かあったので、どういう演出かはなんとなくわかってはいたんですけど、今回は主演ということで、その何十テイクというのをついに経験しました。「これだ!こういうことか!」と思いつつも嬉しくもありました。
監督にはすべてを見透かされている感がすごくあって、そういう意味では私の中で一番怖い監督かもしれないです。
-その何十テイクを重ねる上で、何をどうしてという指示はあるんですか?
菜 葉 菜
何がダメというのは言わないので、「何がダメだったんだろう?」と思いながら、いろいろやってみるんですけど、「もう1回」みたいな感じです。
テイクごとに何かしら自分の中で違和感を感じたり腑に落ちないと思ったことを次、改善してみようという感じで進めました。
でも自分で考えすぎても、それが必ずしも正解にたどり着くわけではないので、結局何がダメで何が良かったのかって、完成した作品で、使われているテイクを観て、「あぁ、こういうことだったのか」と監督の演出の意図をそこで初めて知るわけです。「なるほど、私がこういう仕草をしたことでミホは魅力的に見えるんだな」とか、そういうことは完成品を見終わってたくさん感じました。
-廣木組をご経験されてご自身の中で成長を感じられた部分はありますか?
菜 葉 菜
成長できているはずと思いたいです(笑)
でも、今まで感じたことは、
もちろん主演させていただいたこともあるんですけど、廣木組をやったからこそ改めて感じた“芝居の原点”がたくさんありました。
ものすごく当たり前でシンプルな話ですけど、相手のセリフをちゃんと聞いてそれに対して反応することの大切さに、廣木組をやって改めて再確認させてもらったし、やっぱりお芝居って難しいなっていうのも思いました。
でも、完成したものを観た時に「あぁ、監督が言ってたことってこういうことだったんだ」と、今回は学びの多い現場でした。
■作品とは巡り合わせ
-菜 葉 菜さんが、出演を決める決め手があれば教えてください。
菜 葉 菜
巡り合わせな気もします。とても幸せなことに自分がこういう役をやりたいなって思っている時にそういう役のお話をいただいたり。
もちろん、脚本を読んだ時に面白いと思えたり、キャラクターが素敵だなと思えるかどうかも決め手のひとつですけどね。いつもありがたいことにそういう作品に巡り会えている気がします。
この作品は7年前からずっと実現できないまま続いてきたけど、7年前にやってなくて良かったなと思えることもあります。歳を重ねて、役者としても成長してきているはずの“今の自分”だからこの作品をできて良かったのかなと感じるからです。そう考えるとこれも巡り合わせだなと思います。
-俳優としての取り組みとして心がけていることがあれば教えてください。
菜 葉 菜
私はもともと保育の仕事をしていて、役者の仕事をスタートしたのは遅かったんですが、(事務所の)社長が「まずはいっぱい本を読んで映画を観なさい」と言っていただき、私自身好きというものもありますが、多くの作品に触れて、そこから学ぶということを十数年続けていて、それが俳優としての基本になっています。
あと、歳を重ねると考え方が変わってきますよね。昔とんがってたことがやっと丸くなってきたりとか(笑)
私は昔、全てが敵だと思ってかなりとんがってましたが、そういうことで損してきたこともたくさんありました(笑)
最近、ようやくちょっと丸くなってきた部分もあるので、そういう意味では歳を重ねていくのは悪くないなと思いつつ、これからもたくさんの本を読んだり映画を観ていこうと思っています。私は怠け者だから続けることは苦手なんですけどね(笑)
■女性を描いている作品が好き
-ふだん、オフの日はどうやって過ごされてますか?
菜 葉 菜
私の日常はなんてことない日常なんですけど、 オフの日は実家の茶々と名付けたチワワのことで頭がいっぱいです。
言うこと聞かないんですけど、世界一可愛いんです(笑)
-好きな食べ物は?
菜 葉 菜
お肉です。牛の焼肉が大好きです。
-先ほど本や映画を観るようにしてるとお話ありましたが、これまで観た中でお気に入りの作品をいくつかご紹介ください。
菜 葉 菜
いっぱいあるんですよね。
私はジュリエット・ルイスが大好きで、彼女の作品はたくさん観ていますし、その他もジャンルを問わず、女性を描いている作品、特に大人の恋愛を描いた作品が好きです。女性はいくつになっても恋愛もセックスもするかもしれないし。日本の作品で大人の恋愛を描いたものは少なくなってきているので海外の作品を観ることが多いです。
日本映画で一番好きなのは、川島雄三監督の『洲崎パラダイス赤信号』(1956)。また、若尾文子さんの昔の作品も好きですし、こういった作品をやってみたい。やっぱり女性映画が好きなんです。いろんな女性を見れるから。
■長続きしない私が役者だけは続けている
-ここ最近、まだ情報解禁前の作品も含めて菜 葉 菜さんの出演作品が目白押しですが、今後の抱負がありましたら教えてください。
菜 葉 菜
コロナ禍になって先のことなんてわからないよなって思い始めているので、こんなに何事も長続きしない私が、唯一役者を細々としてですけど続けてこれているので、ひとつひとつの目の前にあるお仕事を大切に丁寧にやっていきたいと思っています。
それをいつまで続けられるかはわからないですけど、それが続いていけたら幸せなことだなっていうのは思います。
-長続きしないご性格なんですね。趣味とかも続かない?
菜 葉 菜
まったく続かないです(笑)やればなんでもできる子なんですけど、極めることができないんですよ(笑)
-そういう中で、役者だけは続けて極めていきたいと。
菜 葉 菜
はい。そういう感じで書いてください(笑)
-最後に『夕方のおともだち』をこれからご覧になる方に、見どころ含めたPRメッセージをお願いします。
菜 葉 菜
SMのビジュアルの印象が強いかもしれないですけど、それを怖がらず観てくださったら、最後きっと違う世界が待っていると思います。とても爽やかな男と女の日常を切り取ったお話になっているので、多くの女性の方はもちろん、男性にも観ていただきたいし、きっと共感していただけると思います。是非ご覧になって爽やかな気持ちになってください。
■撮り下ろしフォトギャラリー
[写真・インタビュー:桜小路順]
菜 葉 菜(Nahana) プロフィール
2005年映画『YUMENO』で主演し本格的に女優デビュー。以後、『夢の中へ』(05)園子温監督、『孤高のメス』(10)成島出監督、『ヘヴンズ ストーリー』(10)『64-ロクヨン-』(16)瀬々敬久監督、『百合子ダスヴイダーニヤ』(11)浜野佐知監督、『ラストレシピ~麒麟の下の記憶~』(17)滝田洋二監督、『後妻業の女』(16)鶴橋康夫監督など多数の話題映画に出演。2012年には『どんづまり便器』小栗はるひ監督でゆうばり国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優賞を、近作では主演作品『赤い雪』(19)甲斐さやか監督で第14回Los Angeles Japan Film Festival 最優秀俳優賞を獲得した。最新作は『モルエラニの霧の中』(21)坪川拓史監督、『ノイズ』(22年)廣木隆一監督、『ホテルアイリス』(22)奥原浩志監督などがある。
映画『夕方のおともだち』
INTRODUCTION
「あさって DANCE」「BLUE」「ありがとう」など過激な描写とメッセージ性の強い作品で熱狂的なファンを獲得し、「レッド」では第14回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した経歴を持つ、鬼才漫画家・山本直樹の“伝説の漫画作品”「夕方のおともだち」(イースト・プレス刊)の実写映画化。
メガホンとるのは、エロティシズムを奏でる最高のマエストロであり、『余命1ヶ月の花嫁』、『100回泣くこと』などでヒューマンドラマの名手としても知られる廣木隆一監督。ヨシダヨシオに扮するのは、廣木組には欠かせない村上淳。そして、ミホ役には、『赤い雪』の凄まじい演技で絶賛された菜 葉 菜。この2人によるW主演となる。
音楽は、廣木監督、村上と親交が深く、連続テレビ小説「あまちゃん」や、『花束みたいな恋をした』などでも知られる大友良英、さらに大橋トリオのバラード「はじまりの唄」がエンディングとして流れ、激しいけれど、切ない愛のアレンジが心奥深く染み渡る。
一見すると特殊な環境で出会った男女の美しくも儚いラブストーリーの予想外のラストに待つのは、性別や趣味嗜好など関係なく、誰もが感じずにはいられない“癒し”と“愛”。
コロナ禍、まだまだ不安が拭えぬこの世界で、大切な人との繋がりや、生きるということへのメッセージが、現代を生きる全ての者へエールとなる作品が誕生した。
STORY
ヨシダヨシオは、寝たきりの母親と暮らし、市の水道局に勤める一見、真面目な男。その一方で、筋金入りの“ドM”な一面を持ち、夜になると自分が住んでいる街で、ただ一軒のSMクラブの“女王様”ミホの元に通いつめいている。
しかし、このところ、なぜかプレイに身が入らずにいた。理由は、ヨシオをこの世界に目覚めさせ、彼の前から突然姿を消した“伝説の女王様”ユキ子が忘れられず、いつもどこかで彼女の残像を追いかけながら暮らしていたからだと気づき始める。そんなある日、太陽の下、ミホと釣りに出かけたヨシオは思いがけない場所でユキ子を見かけ、ミホを置き去りにして必死に追いかける。彼が、たどり着いた先にあるものとは・・・。そして、ヨシオとミホに待つ運命とは?
出演:村上淳 菜 葉 菜/好井まさお 鮎川桃果 大西信満 宮崎吐夢/田口トモロヲ AZUMI/烏丸せつこ
監督:廣木隆一 脚本:黒沢久子
原作:「夕方のおともだち」©山本直樹/イースト・プレス
音楽:大友良英
エンディングテーマ:大橋トリオ「はじまりの唄」
配給:彩プロ
©2021「夕方のおともだち」製作委員会
映倫R-18
公式サイト:http://yugatanootomodachi.ayapro.ne.jp
公式Twitter:@yugatamovie
公式Facebook:@yugatamovie
公式Instagram:yugatamovie
2022年2月4日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ 全国順次ロードショー
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