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【インタビュー&撮り下ろしフォト】小野莉奈「『POP!』を通して大人になれた気がする」

映画『POP!』(12/17公開)で主演を務める小野莉奈に、本作の見どころ、そして、中学生来の友人だというYOASOBIの幾田りらとの関係について話を伺った。

小野莉奈が演じるのは、チャリティー番組でオフィシャルサポーターをつとめる女優・柏倉リン(19)。
番組内では「世界平和」を謳って募金を呼びかけているものの、実生活では上手くいかないことが多い。徐々に社会の欺瞞&不寛容さに苛立つリン。
子どもと大人の狭間で、社会の欺瞞と不寛容さにもがきながらも成長する主人公の姿を、ポップな映像とシュールな解釈で紡ぎあげるシニカルコメディとなっている。
そんな本作は、第16回大阪アジアン映画祭正式出品されたほか、「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」では、グランプリ&最優秀女優賞(小野莉奈)のW受賞を果たした。

小野莉奈は、2020年に大ヒットした映画『アルプススタンドのはしの方』、『テロルンとルンルン』に出演、さらにはNHK大河ドラマ「青天を衝け」に主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の娘・うた役で出演も決定するなど、ネクストブレイクの呼び声も高い。

小野莉奈 インタビュー&撮り下ろしフォト

■リンは小野莉奈の当て書き

-小野さんが演じられたリンという女の子についてご紹介ください。

小野莉奈
リンちゃんは俳優をやりながらチャリティーサポーターをしたり、駐車場バイトもしている女の子で、この作品の中で、“大人”という節目を迎えます。でも、(精神的には)まだまだ子どものままの女の子。
そういう中、チャリティーサポーターをやっている「明日のアース」という番組では大人のスタッフたちに囲まれていて、その大人たちに対して、いろいろと一筋縄では解決できない疑問を持ち続けています。
とてもまっすぐでピュアで正直な子でもある彼女が、自分の中で迷いながらも大人に変わる瞬間というのを見てほしいです。

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小野莉奈

-駐車場のバイトではお客さんがいないのにきっちり手順をふんだり、律儀な面もありますよね。

小野莉奈
はい。

-また、チャリティ番組のスタッフの庄司さん(演:小林且弥)への誕生日プレゼントとして手描きの似顔絵を額縁に入れてプレゼントしたところ、庄司さんが引いてしまうというシーンもありました。

小野莉奈
リンちゃんは喜んでもらえると思ってやっていることなんですけどね。お金も無い中で自分ができることはなんだろう?って考えて、絵を描いている時も相手が喜んでくれるだろうなと思いながら描いていると思います。

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©2G FILM

-リンは、小野さんの当て書きと伺ってますが、演じられてみて、例えばどんな点がご自身と似ていると思われましたか?

小野莉奈
(唐突に)ちなみに、リンちゃんが庄司さんへプレゼントした似顔絵は、実は私が描きました。

-そうなんですか!?

小野莉奈
はい。私も人に似顔絵をプレゼントしたことがあって、リンちゃんが人のために絵を描く気持ちはよくわかります。
あと、俳優として頑張ろうとしているところも同じですし、周りの人から見るとしょうもないことでも、自分の中で筋が通ってないと前に進めないところはとてもわかるなって思います。

-リンは「人に喜んでもらいたい」という気持ちが強い子のようですが、その点も小野さんと似ていますか?

小野莉奈
はい。たとえば人にサプライズするのが好きで、それは自分も楽しいんです。サプライズを考えている時は、相手がどういう顔をするかなと考えながら準備しています。

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■「小野さん自身の魅力をこの作品で出したい」

-役作りにあたって、小村監督とお話されたことはありますか?

小野莉奈
リンちゃんについてはもちろん、私たち自身のことも話し合いました。「ふだん、何を食べますか?」「好きなことはなんですか?」「どういう映画を観ますか?」とか、そういう話をしました。

-お互いのことを話し合った理由は?

小野莉奈
小村監督がおっしゃるには、「小野さん自身の魅力をこの作品で出したい。そのために小野さんの出演作品や小野さんの話を聞いて、どういう役だったら小野さんが魅力的に見えるか考えた」ということでした。
その目的で、お互いのことを話す中でヒントを得ながら、リンちゃんというキャラクターが誕生したそうです。
たとえば、リンちゃんは受け身なところがありますが、それは「そういうキャラクターの方が小野さんの良さが出る」と考えてくださったからだそうです。

-なるほど。では脚本の内容が固まる前にそうしたプロセスを経たわけですね。

小野莉奈
はい。脚本に取り掛かったのは私のことを知ってくださってからだと思います。

-以前、役者同士として小村監督と共演経験(*)があるそうですが、監督としての小村組の撮影現場はいかがでしたか?
*「セシルのもくろみ」スピンオフドラマ「セシルボーイズ」(2017年フジテレビ)

小野莉奈
駐車場のシーンはとても暑い日の撮影で、みんな大変だったと思います。朝から夜までの撮影が連日続いて、体力的には大変な撮影現場ではあったんですけど、この映画のリーダーとしての小村監督の情熱が私にはとても伝わって、体力的には大変でしたけど、小村さんの映画に対しての想いを感じて、自分も頑張ろうって思えたことがとても大きくて、それが撮影の原動力になっていたので、それは自分だけじゃなくて、他のキャストさんやカメラマンさんなどのスタッフさんたちみんながそう思ったんじゃないかなと思います。

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場面写真(小野莉奈) ©2G FILM

-駐車場のシーンは暑かったということですが、車内のシーンもあって更に暑かったのでは?

小野莉奈
はい、暑さで頭がボーッとしてました(笑)

■ハート型のカツラをしているとリンちゃんになれている気がした

-シュールなシーンが比較的多い作品ですが、冒頭のオーディションシーンもそのひとつ。実際にこんなやる気の無さそうな面談者のオーディションのご経験はありますか?

小野莉奈
ないです。でも、あんな怖い感じではないけど、いろんな人に見られる中、どよ~んとした空気感が漂っていて、役者としてはやりづらいなと思ったオーディションはありますね。

-チャリティー番組「明日のアース」でリンが着ている衣裳やヘアスタイルがとても奇抜です。

小野莉奈
あれは小村さんのアイディアで早い段階から決まっていたと聞いています。

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場面写真(小野莉奈) ©2G FILM

-あのハート型のカツラの装着は大変でしたか?

小野莉奈
カツラは重たかったですが、私にとってはよりリンちゃんになれている気がしていました。

-三河悠冴(みかわゆうご)さん演じる連続爆弾魔の青年(自称:ジャスティス)に、リンが妙に惹かれていく様が描かれています。リンは、彼のどこにシンパシーを感じたんだと思われますか?

小野莉奈
同じように子どものままで孤独な人だと思ったんだと思います。爆弾魔の青年も子どものままなんです。
リンちゃんって一人暮らしだし、駐車場のバイトでも独りだし、「明日のアース」のスタジオでは自分以外大人ばかりで、自分の居場所が無い。他者と自分との間に壁を感じています。
そういう生活の中で、爆弾魔の青年に会った時に、怖いというよりも自分と同じ心境に居る人なんだというシンパシーを感じたんだと思います。

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場面写真(小野莉奈/三河悠冴) ©2G FILM

■作品として評価されたことが嬉しい

-MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)[JOINT]2020-2021 では、グランプリ&最優秀女優賞を受賞されましたが、改めてお気持ちをお聞かせください。

小野莉奈
女優賞は嬉しいですが、みんなで作ったものが評価されたということで作品賞が特に嬉しいです。小村さんが熱量を込めて脚本と監督をやられて、その努力が実った瞬間だと思いました。
これら2つの賞をいただけたことで、より多くの方にこの作品に興味を持って観てくださることになってくれたら嬉しいなと思います。

-先日、『アルプススタンドのはしの方』でお話を伺った時、小野さんは「仲間と一緒にものづくりしていくことが楽しい」とおっしゃってましたが、作品賞が特に嬉しいとおっしゃったのは、そのお考えからですね。

小野莉奈
はい、そうです。とても嬉しいです。

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■YouTube見ながら気づいたら寝てる

-劇中、リンが眠りにつくために、ベッドの中に入りながらスマートスピーカーとしりとりをするシーンがあります。小野さん自身は、スマートスピーカーは使ってますか?

小野莉奈
ぜんぜん使ってないです。

-では、眠りにつくためにやられていることってありますか?

小野莉奈
私は、寝る前にYouTubeをたくさん観ちゃうんです。逆にあんまり寝ようとしないようにしています。自分が勝手に眠たくなる時間になるまで、ただひたすらYouTubeを観ています。眠たくなかったら寝ないって思ってたら、気づいたら寝てたりします(笑)

-なるほど。やりたいことをやって、眠たくなったら勝手に寝るって感じですね。

小野莉奈
はい、その方が私には合っています。眠ろうとして眠れないのが一番イヤなので(笑)

小野莉奈

■中学時代からの親友ikuraとはお互いの活躍を喜び合う関係

-本作にもコメントを寄せられているYOASOBIのikura(幾田りら)さんとは、中学時代からの親友ということで、小野さんが女優を目ざしていることを最初に打ち明けた相手もikuraさんだと伺いました。その時の想いを改めてお聞かせください。

小野莉奈
彼女も歌手を目ざして頑張っていて、歌手と俳優は違うけど、人の前に立つという点では一緒だなって感じたこともあって、ほとんど直感的に、彼女に一番最初に言いたいって思ったんです。

-お二人はほとんど同時期に世に出て活躍されていて、私からは不思議な運命のお二人だなとも見えたのですが、ご自身でそういうことを感じることはありますか?

小野莉奈
お互い、とても良い刺激になる存在ですし、悩みがあったら話せる存在でもあります。
デビューする前から将来なりたいことを話し合い、励まし合っていましたし、お互いの大変なこともいろいろ見ているし知っている。上っ面じゃない、深いところまで知ってるからこそ、仲間として活躍している姿は自分のことのように嬉しい。
その二人の関係がプラスに働いて、とても良い刺激になって、自分ももっと頑張ろうという気持ちになり、そのエネルギーは仕事に繋がっていて、こうしていろんな仕事をさせていただくというのは、まったく(運命とは)関係無いわけではないような気がします。

-切磋琢磨し合うライバルという意識は?

小野莉奈
ライバルという気持ちはなくて、お互いの活躍を喜び合っている関係かなと思います。

-お二人の関係を見ていると偶然という言葉では表現できないような素敵な出会いに感じます。

小野莉奈
はい、そうですね。

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■『POP!』を通して大人になれた気がする

-これも以前のインタビューで伺ったことですが、今後の抱負として、観た人を笑わせる作品に出てみたいとおっしゃってました。今回の『POP!』はシュールではありますが、観る人を笑わせるシーンが多いですよね。

小野莉奈
そうですね。そういう意味では夢が叶いましたし、不思議な気もします。いろんな役を演じていて、それらひとつひとつの役からいろんなことを学んだり、それこそその役から刺激を受けることもあるし、リンちゃんを演じてから自分も一緒に大人になったような気がします。

-たとえばどういうところが大人になったなと感じますか?

小野莉奈
自分中心じゃなくなって、周りのことを見て動くようになったことです。自分のためだけじゃなくて、誰かのためにもっと頑張りたいとか、そういう想いが強くなったことで、人に対しての対応がちょっと変わったような気がします。

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■最後にメッセージ

-最後に、本作の見どころ紹介と共に、公開を楽しみにしているファンの方へのメッセージをお願いいたします。

小野莉奈
この作品は、決してわかりやすい表現はしていなくて、それは魅力のひとつでもあるのですが、難しい側面もあります。なので、観てくれた方がどう感じてくれるのかなと想像ができないのですが、でも、この作品の中で起こっているひとつひとつのことに小村さんが込めた想いがたくさん詰まっていて、それらに気づいた時に、面白いの先に感動がある作品でもあります。
観終わって、ただ面白かったで終わりの場合もあるけれど、観る人の考え方や視点によってはこの作品はより魅力的になることもあるということです。
作品を観ながら、自分はどのキャラクターに似てるかな?とか、自分はまだ子どもなのかな?とか、そういうことも考えながら観るとまた面白くなると思いますので、それぞれの考え方を持ってこの作品を楽しんでいただけたらなと思います。

-確かに、2回目、3回目と見返すたびに感じることは変わりそうな作品ですよね。

小野莉奈
そうですね。永遠に追求できる作品だと思います(笑)

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インタビュー部屋に訪れていた小村昌士監督と。

■撮り下ろしフォトギャラリー

[写真・インタビュー:桜小路順]

小野莉奈(おのりな)プロフィール
2000年5月8日生まれ。東京都出身。2017年ドラマ『セシルボーイズ』(CX)で女優デビュー。
2019年3月、ファーストPHOTO BOOK『好みの問題』を発売。同年6月、『アルプススタンドのはしの方』で初舞台。同舞台の映画化でも主演を務め、第12回TAMA映画賞特別賞を受賞。
主な出演作に、テレビドラマ『中学聖日記』(TBS 系)、映画『テロルンとルンルン』『リビングの女王』『たぶん』(20)などがある。2021 年は4月期連続ドラマ「コントが始まる」(日テレ)にレギュラー出演。


撮影データ:Nikon Z 6II/SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art (A014)/Godox AD300Pro/Godox AD100Pro ほか

映画『POP!』

INTRODUCTION
チャリティー番組でオフィシャルサポーターをつとめる柏倉リン(19)。番組内では「世界平和」を謳って募金を呼びかけているものの、実生活では上手くいかないことが多い。徐々に社会の欺瞞&不寛容さに苛立つリン。やがて二十歳という人生の節目を迎えることになるが…
子供と大人の狭間で、社会の欺瞞と不寛容さにもがきながらも成長する主人公の姿を、ポップな映像とシュールな解釈で紡ぎあげるシニカルコメディが誕生!
主人公・リンを演じるのは、昨年映画大ヒットした映画『アルプススタンドのはしの方』、『テロルンとルンルン』に出演、さらにはNHK大河ドラマ「青天を衝け」に主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の娘・うた役で出演も決定するなど、ネクストブレイクの呼び声も高い女優・小野莉奈。

STORY
地方テレビ局のチャリティー番組でオフィシャルサポーターをつとめる19歳の柏倉リン。番組内ではハート型のかぶりものを被り、「世界平和」を謳って募金を呼びかけているものの、実生活では周りの大人達とは馬が合わず、バイト先でも上手くいかないことが多い。徐々に社会の欺瞞&不寛容さに苛立つリン。やがて二十歳という人生の節目を迎えることになるが…

出演:小野莉奈  三河悠冴 小林且弥 野村麻純 菊田倫行 ・木口健太 成瀬美希 ・中川晴樹

監督・脚本・編集:小村昌士  音楽:Aru-2
エグゼクティブプロデューサー:井上義久 企画・プロデューサー:辻村草太
企画協力:直井卓俊 撮影:千田瞭太 照明:堅木直之 録音:中村未来
衣装:佐伯勅 ヘアメイク:吉田冬樹 助監督:川名正人 ラインプロデューサー:萩原里枝
スチール:内田有香
製作:FLaMme
制作:2G FILM / YAMATON PRODUCTION
©2G FILM
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
公式サイト:idod.jp
公式Twitter: @POP_film2021

予告編

YouTube player

2021年12月17日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

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