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映画 太陽の子

「日本人が当たり前だと思い込んでいて海外では理解されないこと」『映画 太陽の子』公開記念トークイベント

7月31日、デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスにて、「デジタルハリウッド大学大学院×『映画 太陽の子』公開記念トークイベント」が行われ、黒崎博(『映画 太陽の子』監督)、森コウ(『映画 太陽の子』プロデューサー)が登壇。日米合作となった本作製作の裏側を語った。

終戦75周年を迎えた2020年。この記念すべき年に発表された「太陽の子」は、NHKとELEVEN ARTS Studios(USA)による、日米合作作品として製作された。
戦況が激化し、最終局面を迎えた1944年、日本にも存在した「原爆を作る」という目的で、それが日本の未来を作ると信じた若い科学者たちの葛藤を、主演・柳楽優弥、有村架純、三浦春馬の豪華共演で描く。

この日のイベントでは、本作の脚本仕上げ段階や、撮影後のポスプロをアメリカで行ったことにより、日本人が当たり前だと思っている感覚を海外視点で客観的に見つめ直し、作品の描写に反映させたことなどが語られた。

イベントレポート

■日本人が当たり前だと思っていることが当たり前じゃないことも。

落合賢(デジタルハリウッド大学大学院准教授/映画監督)
本作のポスプロは、アメリカで行ったそうですが、脚本仕上げ段階でもアメリカ側とのやり取りをされたんですよね?その時、どういう意見がありましたか?

落合賢

落合賢

黒崎博監督
本作の物語の背景は太平洋戦争で、日本はアメリカが開発した原子爆弾を落とされたという事実があります。
ですが、当時の日本の若い科学チームも原子核分裂について軍の依頼を受けて開発していました。
また、多くの戦争ドラマが、日本は負けた側として描かれており、そこが強調されて描かれることが多いです。
日本人の僕が脚本を書いて、アメリカ人のスタッフがそれを読み、意見交換する中でひとつ印象的なことがあります。
日本人の私たちが、当時も戦争は勝てるわけないとどこかでわかっていたのに戦争を継続した事実を、日本人としてはドラマや歴史教育を通して理解しています。
ただ、それは、アメリカ人からすると不合理に見えて、「負けるとわかっているならなぜ戦争を止めない?当時の日本人はおかしいよ」って、一番根本的なことの理解が食い違っていることに気づいたんです。
でも、当時の日本人の行動の結果は事実だから変えようがなく、その不条理な心理描写をもっとちゃんと描いて、日本人以外の方々にも理解できるようする必要があると気づいたんです。すなわち、当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないということに気付かされました。

映画 太陽の子

黒崎博監督/森コウ プロデューサー

落合賢
本作は音楽も印象的です。ニコ・ミューリーさんという海外の作曲家と一緒に仕事しての印象は?

黒崎博監督
森プロデューサーからニコさんを提案いただき、過去の作品を聴いたら、絶対にニコさんとやりたいと思いました。
ニューヨーク在住の方ですが、日本人の方と一緒と思ったことと違うなと思ったことがありました。
戦勝国の人だけど、戦争についての歴史観については、ニコさんとは通じあうことができ、それは新鮮でした。
違うなと思ったのは、ニコさんが持っている作曲家としての特性。ものすごく直感的に曲を作っていく人ということもあり、日本とニューヨークのリモートでのやりとりだと、これだというところに辿り着けずもどかしい思いがありました。
やっぱり会わなきゃと思って、森Pと一緒にニューヨークに行って、本作の映像を観せながらこちらの意図を説明することをニコさんとガッツリやりました。
するとすぐに理解してくれて、その場で作曲。すぐにOKとなりました。続きは一晩で書けるからと僕らはいったん追い払われたり(笑)とても印象的なやり取りでした。

森コウ(『映画 太陽の子』プロデューサー)
人間のコミュニケーションってこういうことなんだなと。熱量が伝わると、ニコさんみたいなミュージシャンはその場で作っていく人ですね。

森コウ

森コウ プロデューサー

落合賢
有村架純さんが、「戦前の自分が生きていない時代をどう表現するか。」と撮影初日のインタビューで答えられています。その点について、監督はキャストにどう演出されましたか?

黒崎博監督
私たちは、当時の時代を知らないので、たくさん想像するしかない。なので、わかったつもりでやるのが一番危険だと思ってました。
たくさん話し合うこと、わからないことは取材もたくさんしました。当時を知ってる方に聞いたり。わからないことをやるんだから、ギリギリまで想像をふくらませるという心がけしかない。

黒崎博監督

黒崎博監督

落合賢
有村さんは当時の時代を生きる強い女性というキャラクターですが、現代的な女性のイメージもありますね。

黒崎博監督
そうですね。そこは確信犯です。現代の僕たちが撮るし、現代の人が観る映画。当時を忠実に再現することも大事ですが、何を伝えるかが大事だと思ったんです。
コロナ禍でどっちを向いていいのかわからない今の時代へのメッセージだと思って、有村さん演じる“朝倉世津”という女性に託しています。

森コウ
有村さん演じる“朝倉世津”はこの映画の最大のキーとなっていて、現代に生きるぼくらへの代弁者です。
そして、有村さんの現場での役づくりのストイックさ、役者としての凄さを強く感じました。

■戦争勝者、敗者と単純に分けると古びたものになる。

落合賢
日米合作ということで、アメリカでポスプロし、海外の方々にも観てもらう映画づくりという視点として監督が思うことは?

黒崎博監督
戦争に勝った側、負けた側、単純に分けると、古びたものになってしまう。なので、そこを飛び越えた目線を作品に持たせたいと思いました。
なので、森Pやアメリカ側のスタッフともたくさん話しして、ひとつひとつのカットがどう伝わるかを検証しながら進めました。日本人マインドとして当たり前だと思っているものが、海外には伝わらない場合があるからです。
例えば、“石村修”の目の中に宿った狂気。柳楽優弥さんはそれを素晴らしく演じていますが、それをアメリカ人が観ても伝わるのか、ひとつひとつ確認しながら進めました。そしたら、アメリカ側が「わかるよ!」と背中を押してくれたカットもたくさんあります。
日米の文化の違い、すれ違いもたくさんがありますが、普遍的なものとして伝わるものとして励ましてくれたものもたくさんあります。

落合賢
完成した作品のアメリカ側の反響は?

森コウ
戦争映画は政治的に偏って見られがちなところがあるので、反応は国によって変わります。
でもこの話は日本とアメリカの話なので、アメリカ人は極めて興味深く観てくれて、当時の若者はこんなことを考えていたんだと、かなりポジティブな良い感想をいただきました。

映画 太陽の子

(C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

■このやり方しかないんだと決めつけない

落合賢
映像製作を目ざす若い人へのメッセージをお願いします。

落合賢

落合賢

黒崎博監督
日米文化の違いがすごくポジティブに通じたことが大きかった。人の違いや文化の違いなどで、いろんな視点があって、映像の伝わり方は、面白いなとも思いました。
落合さんは、多く日米で仕事をされて、『太秦ライムライト』(2014)に、アメリカのやり方を持ち込んでやられたりしてますね。

落合賢
日本とアメリカで、撮影のシステムがぜんぜん違うところがありますので、当初、太秦の人々の中にアメリカの作り方に抵抗がある人もいました。

森コウ
落合さんはアメリカで映画を学んだ人。結果的に落合さんは監督として自分のやり方を貫き、現場でスタッフ、役者に説明して、出来上がった作品を通して、みんなを納得させました。そういうことはすごく大事だと思っています。
その点について、若い人へ伝えるとしたら、日本にもたくさんいい点はありますが、国によって撮影方式は違うし、いろんな国でいろんな仕事ができるようなことを目ざしてほしい。いろんな国で撮影を経験して、逆に、それを日本に持ち込んでほしいですね。

森コウ

森コウ プロデューサー

黒崎博監督
本作を通して、改めて頭を柔らかくしなきゃけいけないなって思いました。このやり方しかないんだと決めつけずに、頭を柔らかく。でも自分の信念とのバランスは考えて。自分の意見を貫くというのは、頭を固くすることだけじゃなく、現場のスタッフやキャストとやりたいことを説明して共有し、みんなの熱量を上げていくことが大切です。

黒崎博監督

黒崎博監督

-日米合作ということで、脚本以外に、例えば日本での撮影の現場に影響を与えたことはありますか?

黒崎博監督
短くカット割りするよりも、カメラの長回しをすることが増えました。まるでドキュメンタリーを撮るように。それによって、柳楽優弥さん、三浦春馬さん、有村架純さんが演じる若いキャラクターたちの予想外の動きを追うことで、映像に躍動感が生まれたと思います。

映画 太陽の子

柳楽優弥/有村架純/三浦春馬 (C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

-その3人のキャスティングのプロセスは?

黒崎博監督
ある意味、科学者の狂気を描く難しい役どころということで、ぱっと頭に浮かんだのは柳楽優弥さん。そして、三浦春馬さんも有村架純さんも、本作の製作のGOが出る前から脚本を渡して、出演交渉していました。

森コウ
キャスティングについても監督はクリアなビジョンを持っていました。それを受けて役者側は製作が決まってない段階からOKしてくれました。

■最後にメッセージ

黒崎博監督
こうやって作品についてお話することで、自分自身振り返れるし、新しい発見もできました。
本編では、キャストが全身全霊で演じていますし、撮影やサウンドもそうで、日本映画だからこういうセオリーというのは壊していっているところがあります。映画製作者のタマゴである皆さんは、その観点でも注目してご覧になって、また感想をお聞かせください。

森コウ
役者さんたちの演技が素晴らしいです。そこは是非感じていただけるはず。
それに加えて、日米共同プロジェクトということで、サウンドデザイン、カラーデザインなど、ちょっと違った感覚も感じてもらえるはずです。

映画 太陽の子

落合賢/黒崎博監督/森コウP

[記事・写真:桜小路順]

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『映画 太陽の子』

僕らは、未来を作っていると思ってた――悩んで、泣いて、笑った3人の300日!

ストーリー
戦況が激化し、最終局面を迎えた1945年の夏。軍から密命を受けた京都帝国大学・物理学研究室で研究に勤しむ実験好きの若き科学者・石村修(柳楽優弥)と研究員たちは、「今研究しているものが完成すれば、戦争は終わる。世界を変えられる」と、託された国の未来のために情熱的に原子核爆弾の研究開発を進めていた。
研究に没頭する日々が続く中、建物疎開で家を失い、修の家に住むことになった幼馴染の朝倉世津(有村架純)。
時を同じく、修の弟・裕之(三浦春馬)が戦地から一時帰宅し、3人は久しぶりの再会を喜んだ。3人でのひとときの幸せな時が流れる中、戦地で裕之が負った深い心の傷を垣間見た修と世津。
一方で物理学研究の楽しさに魅了されていた修も、その裏側にある破壊の恐ろしさに葛藤を抱えていた。そんな二人を力強く包み込む世津はただ一人、戦争が終わった後の世界を考え始めていた。
それぞれの想いを受け止め、自分たちの未来のためと開発を急ぐ修と研究チームだが、運命の8月6日が訪れてしまう。日本中が絶望に打ちひしがれる中、それでも前を向く修が見出した新たな光とはーー?

柳楽優弥 有村架純 三浦春馬
イッセー尾形 山本晋也 ピーター・ストーメア
三浦誠己 宇野祥平 尾上寛之
渡辺大知 葉山奨之 奥野瑛太 土居志央梨
國村隼 田中裕子

監督・脚本:黒崎博
音楽:ニコ・ミューリー

プロデューサー:コウ・モリ 土屋勝裕 浜野高宏
エグゼクティブプロデューサー:井上義久 山口晋 佐野昇平 森田篤 松井智 有馬一昭 東原邦明
共同プロデューサー:山岸秀樹 松平保久 淺見朋子
ラインプロデューサー:小泉朋 撮影:相馬和典 照明:鈴木岳 録音:弦巻裕 美術:小川冨美夫 衣装:宮本茉莉 ヘアメイク:永江三千子 スクリプター:天池芳美
助監督:柿田裕左 制作担当:篠宮隆浩 キャスティング:おおずさわこ 編集:大庭弘之 サウンドデザイン:マット・ヴォウレス カラリスト:アロン・ピーク
VFXスーパーバイザー:オダイッセイ
制作:KOMODO PRODUCTIONS 宣伝:KICCORIT 配給:イオンエンターテイメント
製作:「太陽の子」フィルムパートナーズ
Presented by ELEVEN ARTS STUDIOS / NHK
(C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ
公式サイト:https://taiyounoko-movie.jp/

特報

8月6日(金)、未来へ

映画 太陽の子

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