佐藤二朗「間違いなく本気で演じた作品」映画『はるヲうるひと』公開記念舞台挨拶
6月5日、テアトル新宿にて、映画『はるヲうるひと』の公開記念舞台挨拶が行われ、監督・出演の佐藤二朗、そして、山田孝之、仲里依紗、坂井真紀が登壇。コロナ禍で公開が1年延期となった本作への思いを語った。
本作は佐藤二朗自らが主宰する演劇ユニット【ちからわざ】で2009年に初演、2014年に再演され演劇界からも絶賛された舞台を、主演に山田孝之、共演に仲里依紗、坂井真紀ら豪華キャスト陣を迎え、映画化を熱望していた佐藤二朗が約5年を掛けて完成させた”入魂”の作品。
佐藤二朗監督曰く≪架空の島の売春宿で、生きる手触りが掴めず、死んだ様に生きる男女が、それでも生き抜こうともがく壮絶な闘いのおはなし≫。
舞台挨拶レポート
山田孝之(真柴得太 役)
映画を観てくれて、そして得太をはじめとするこの寂しい孤独な人たちに少しでも寄り添ってくれて、ありがとうございました。
あの、後は『るろうに剣心』を観に行ってください。
佐藤二朗(監督/真柴哲雄 役)
何てこと言うんだ!?やめろ、ほんとに。
山田孝之
映画はもう全て仲間ですから。
佐藤二朗
そりゃそうだ。そりゃそうだけども。
仲里依紗(真柴いぶき 役)
昨日は土砂降りの雨で強風も凄かったんですけども、今日は昨日の雨が嘘の花のように晴れていて。
でも、この作品はどっちかというと昨日の方がなんかぴったり合ってたかなみたいな感じの内容なんですけども、今日、皆さんにこうして無事家のお届けできることができてすごく嬉しいです。
坂井真紀(桜井峯 役)
早く皆さんに観ていただきたいなってずっと思っておりましたので、今日はとても嬉しいです。皆さんの感想を聞きたいなと思っております。
佐藤二朗(監督/真柴哲雄 役)
今、『るろうに剣心』の話が出ましたけど、いろんな作品があるということが豊かなことであると思いますので、それとは全く雰囲気の違うこういう作品も得がたいと思いますので両方観てください。
私、なんで何回も『るろうに剣心』って言わなきゃいけないんでしょうか。
山田孝之
“佐藤繋がり”ということで(笑)
佐藤二朗
あぁ、あちらは佐藤健くんですもんね。
この『はるヲうるひと』は、大エンターテイメントっていう映画ではありませんけれども、何か心に残ったら、周りの人にぜひ伝えてください。
■山田孝之「やっと重荷が取れた。少し救われた」
-当初公開予定から1年延期。今、公開日を迎えたお気持ちをお聞かせください。
佐藤二朗
元々は、昨年5月に公開予定でしたが、コロナ禍で1年以上延びました。
でもそのおかげで、その間に韓国の江陵国際映画祭という映画祭で、最優秀脚本賞を取れたりしましたので、延びたことは前向きに捉えております。
俳優としてもらった賞がNG大賞だけの僕がですね、まさか異国の地、しかも映画大国の韓国で最優秀脚本賞を取れたのは、書くことを続けてきて良かったなって励みになりました。
また、状況的にも抑圧されている現在の状況もありますので、今だからこそ観てほしい作品によりなったなと思います。
山田孝之
二朗さんが「はるヲうるひと」というストーリーを十数年前に生み出してから、二朗さんが(舞台で)演じ続け、そして今回僕も少し寄り添うことができましたけど、でも“得太”がかわいそうだなってずっと思ってたので、今、こうやって映画が公開されて大勢の人が観てくれて、“得太”の事を知ってくれて、何か少しでも彼が気持ちが楽になってんじゃないかなと思っています。
僕もやっと重荷が取れたような、すっと抜けた気がします。すごい嬉しい気持ちです。
佐藤二朗
山田孝之がこの作品を受けた理由の一つが、僕の本を読んで、何回読んでも泣くと。“得太”が可哀想すぎて、孤独で。
僕が舞台で“得太”の役をやったんですけど、山田孝之が「舞台の上では、二朗さんが“得太”に寄り添ったけど、それ以外ではフワフワ浮いてて、だから映画では僕が寄り添わなければ。」と言ったことを後から聞いて、ちょっと頭おかしいなって思ったんです。
だけど、2月の寒い時期に愛知県で撮影しましたけど、(山田は)もうどう考えてもそう考えているとしか思えない現場の居方でした。
特に特にクライマックスのあるシーンでは、カメラが回ってないところでも、ずっと一日中泣いてるんです。だから誰も近づけなくて。
僕は(俳優としての)同業者だからわかるけど、死ぬほど辛いと思うんですけども、だから山田孝之とは他の役で共演してるけど、カチンコが鳴ったら、すぐに切り替えられる役もあると思うんだけど、孝之にとって、“得太”のクライマックスのシーンは、もうそれしか方法が思いつかなかったんだと今は思います。
-山田さんもこの役は何年かに一度じゃないとできないという言葉もおっしゃってました。ようやく上映されて、“得太”を皆様に観てもらえることができました。
山田孝之
皆さんが何を感じるかは、境遇も違うのでそれぞれだと思いますが、ただただこれだけ多くの人が知ってくれたのが本当に僕は嬉しいです。
皆さんの気持ちに少し傷がついてしまったかもしれないんですけど、その覚悟を持って皆さん観に来てくれたと思ってるので、本当にどこか“得太”が救われた気持ちです。僕も少し救われました。
■「二朗さんのこの本面白いよね」
-2年前の撮影を振り返っていかがですか?
仲里依紗
(撮影は)2年前ですから、あの時と今は全然状況が変わっちゃって、自分もこの作品観て、当時は髪の毛が短かったなぁとか(笑)、いろいろ考えたんですけど。
私は、現場では「ようい、ハイ!」とかかるまでは、なるべく自分自身でいたいタイプなんです。
でも、“いぶき”を演じる上ではそうはいかない感じだったんです。
宿泊するところと撮影現場もめちゃめちゃ近くて、歩いて15秒ぐらいだから、隔離された空間に近く、もうその役になってなきゃいけないような環境だったので、いつもは切り替えるまでヘラヘラしている私なんですが、その私でもけっこうきました。
坂井真紀
私も二朗さんとのお付き合い長いですね。
そんな佐藤二朗監督の作品に出られることがすごく嬉しくて、二朗さんが書いた本に込められた思いを全てわかったかどうかはわからないんですけど、それを受け止めておりましたので、公開、ほんとうにおめでとうございます。これから映画が動き出しますね。
あとは、“得太”のことも、“いぶき”の事も、自分の子どものように見ていたので、誰かに認められたい、必要とされたいという気持ちでずっといました。
佐藤二朗
真紀ちゃんとはほんとに付き合い古くて、飲んだこともあるんだけど、毎回毒舌で(笑)
坂井真紀
なんで今それを言うの?(笑)
毒舌じゃなくて、素直ってことです。
佐藤二朗
素直な毒舌さんなんだけど、撮影の時、俺が廊下を歩いていたら、女性の楽屋から「二朗さんのこの本面白いよね」っていう真紀ちゃんの声が聞こえた時の嬉しさといったら。真紀ちゃんが素直なのを知ってるから、そりゃ嬉しかったです。
■最後にメッセージ
坂井真紀
この物語が、皆さんの心の中で、皆さんそれぞれの形となって、育ち、動いていたりするのかなと思っております。
この映画の話を家族やお友だちにしてくださったら嬉しいなと思います。
仲里依紗
私も映画館がすごく大好きなので、今は大変な状況ですけど、こうやってやっぱり映画が好きっていうことで、足を運んでいただき、本当にありがたいなと思います。
口コミなどで、この映画のことをよかったよっていろんな人を誘って、また明るく笑顔と向き合える時代が早く来るといいなと思っています。
山田孝之
面白い映画だから観なよみたいな感じで勧める映画ではないかもしれません。
でも、ここに出てくる子たちは、とても孤独で、とても一人では背負い切れないものを背負っている人たちで、そこを救うことはできないですけど、この映画を皆さんが観て、その子たちのことを感じてあげることで少しでも救われるんじゃないかなと僕は思います。
そういった意味で、知り合いの方に勧めていただいて、少しでもここに出てくる人たちを救う手助けをしてくれたらなと思います。
よろしくお願いします。
佐藤二朗
この作品には、皆さんに知られていない人たちも重要な役で出ています。僕は、作品のためになると思ってその人たちに託しました。
顔を知られていない人って本物に見えるところもあるからです。
そして、ここにいる山田孝之、仲里依紗、坂井真紀。我々俳優は、当たり前のことなんですが、どの作品も本気でやります。そして、この作品でも間違いなくみんなが本気でやりました。
以前も言いましたけど、自分が生きるために生傷を抱えながら、簡単には登れないような山を必死に登りつめるような芝居を、有名無名に関わらず、すべての俳優が演じた作品です。
■トークノーカット動画
■フォトギャラリー
[写真:金田一元/記事・動画:桜小路順]
映画『はるヲうるひと』
STORY
その島は、至るところに「置屋」が点在する。本土からは日に二度連絡船が出ており、客の往来の足となっている。住民たちはこの閉塞された島で一生を過ごす。女は客から「外」の話を聞いて思いをはせる。男は、女たちのそんな「夢」を一笑に附して留まらせる。
ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄は店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太は哲雄にこびへつらい、子分のようにしたがっている。長女のいぶきは、長年の持病を患い床に伏しいてる。ここで働く4人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。
しかも、いぶきはだれよりも美しかった。その美しいいぶきを幼少から見守り寄り添う得太であった…
山田孝之
仲里依紗 今藤洋子 笹野鈴々音 駒林怜 太田善也
向井理 坂井真紀 佐藤二朗
原作・脚本・監督:佐藤二朗
企画・配給:AMGエンタテインメント
配給協力:REGENTS
製作:AMGエンタテインメント/ハピネット
(C)2020「はるヲうるひと」製作委員会
公式サイト:https://haru-uru.com/
テアトル新宿ほか全国にて公開中
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